2003年5月


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本は売ったが、読まなかった
2003年5月1日(木)
□小説シリーズ・その11(1983〜86年)□

高校を卒業して大学に入ると、映画を観るか
バイトするかで、小説を読む時間というのは
増えませんでしたね。


映画の原作本を読むことが多かったですが
映画とはまた違った良さがあった作品として
タイトルを覚えているのが
李恢成「伽耶子のために」(映画は小栗康平監督)
灰谷健次郎「太陽の子」(映画は浦山桐郎監督)
遠藤周作「海と毒薬」(映画は熊井啓監督)
山本周五郎「赤ひげ診療譚」(黒澤明の「赤ひげ」)
など。

−−−
脱線します。「伽耶子のために」はイイ映画です。
南果歩さんのデビュー作(かな?)で、タイトルの
“伽や子”を演じているのですが・・・この映画、
母親役で「園佳也子」さんが出演してるんですよね。
私、わりとこの人が好きで。キンチョーサッサのTV
CFでの
「お友達になりたいわア」
「遊びに行ってもええやろか?エヘ」
というフレーズが思い起こされます。
何が言いたいかというと、「佳也子のために」という
ダブルミーニングで印象強いわけです。おわり。
−−−

TVドラマ(だったか?)の原作として
三島由紀夫「青の時代」なんかも読み、
リチャード・レスター監督の映画の原作として
デュマの「三銃士」を読みました。これら
超有名作家の唯一の読書経験か。寂しい。

ヴォネガット「スローターハウス5」のことは
前に書いたので省略。素晴らしい小説だと思います。

原作といえば、大島渚監督の傑作映画
「戦場のメリークリスマス」の原作ということで
ヴァン・デル・ポストの
「影の獄にて」
を読みました。
映画観て→原作読んで→また映画観て→また原作読んで
・・・ということをしましたが、結論的には大島渚の
天才性を強く確認する作業となりました。
映画後半、錯乱したヨノイが収容所の全員を広場に
集めて処罰しようという混乱の中でセリアズが歩み出て
衆人環視の中でヨノイにキッスする、という場面があり
ます。
大島渚の演出力が爆発する素晴らしいシーンですが、
ここって全く原作通りなんですよね。空はどういう色
で風がどういうふうに吹いて、人間が混乱する中で
セリアズがユックリと歩を進める−っていう情景が、
ビックリするぐらい再現されていて驚きました。
なぜ驚くかというと、別に再現フィルムをやっている
わけではないのに・・・何というかな・・・文字と
カメラという異なる表現様式でも、そこに描かれている
以上の次元の・・・表現を志向する人間が究極的に
描こうとする「何か」が共通していることに驚いたわけ
ですが。ちょっと説明がちゃんとできなくてごめんな
さい。


映画原作以外で読んだ小説というと...


井上ひさし

井上氏といえば我々にとっては東映動画系のアニメで
素晴らしい歌曲の数々を提供してくれた人。
「ひみつのアッコちゃん」(すきすきソング)
「長靴をはいた猫」「おそ松くん」
「ムーミン」(スノークの唄のばからしさ・・・)
「悟空の大冒険」(マーチ)
「アンデルセン物語」(ズッコのうた)
、etc・・・
作曲家の宇野誠一郎氏とともに もうこれだけで
殿堂入り、という存在であります。

さて、この頃「ブンとフン」を読んでたいへん感激。
すでに兄貴が井上氏が好きで(今でも芝居は必ず見て
いるようだ)、本もいくらか家にあったので何冊か
読みました。
なかでも好きだったのが

「野球盲導犬チビの告白」

という一冊。五味康祐の「一刀斎は背番号6」を発展
させたような話で、盲目の青年が心眼で快打を連発、
プロ野球に入って活躍する顛末を彼の盲導犬が回想形式
で語る、という奇想天外な話です。
井上氏の作品に特長的な仲間との友情の描写が良く、
主人公の青年が一時悪に染まり大金を手にして手術、
視力を取り戻す。傲慢になってしまった彼を心配して
盲学校の友人達が訪れた時、主人公は一人の女の子に
「君は奇麗だ」と言う。女の子が「あなたはそんな
無神経なことを言う人じゃなかったのに・・・」と
彼を諌めるくだりが特に印象に残っています。


山田太一

山田氏といえばシナリオライターであるわけですが、
小説も書いています。やはり兄貴が好きで本が家に
あったので読みました(←主体性ないネ)。
「飛ぶ夢をしばらく見ない」「丘の上の向日葵」
「異人たちとの夏」「君を見上げて」など、
TVドラマのシナリオでは表現しにくい?性描写に
こだわりがあったようです。どの作品も主人公の屈折
ぶりが身近なものでした。

シナリオ集も好きで
「岸辺のアルバム」「ふぞろいの林檎たち」
「深夜にようこそ」など読みました。
ちなみに有名な話ですが「ふぞろいの林檎たち」の中で
石原真理子・手塚理美の二人の使う偽名が

槙村ふさこ
くらもちさとる

っていうのが、わかりやすいですね、という感じで
おかしかったです。



これは(またもや)読んでないっていう話ですが・・・


新井素子

本屋でバイトしてたんですが、新井さんの本はたいへん
よく出ていました。補充しながら、いかなるものか一度
読んでみたいものだと思っていました。するとある時、
家に、兄弟の誰が買ったのか
「グリーン・レクイエム」
がころがっていました。
さっそく読みましたが、いや〜これが面白くて。

普通ならば、じゃあ他の作品も読もう、ということに
なるのですがここで私がどういう心的プロセスを
たどったかというと

「これはたいへん面白い」→「面白すぎる」→
「これはカンペキにハマってしまうのではないか」→
「これによって身を滅ぼす結果になるのではないか」→
「危険なので避けたほうがよいであろう」

ということになり、他は読まないことにしました。
みずからの欲望に非・忠実であることは、後日
おそろしい災厄をまねくことになりがちですが、
20年たった今のところは平穏に生活できています。

とはいうものの、一個だけ読んだな。沢口ジャスコ主演
でTVドラマ「結婚物語」になったやつ。
「眠たい瞳のお嬢さん」「正彦くんのお引っ越し」
「大忙しの二日間」の三冊。
名調子で、面白く読みました。

小林信彦(小説以外で失礼)
2003年5月2日(金)
□小説シリーズ・その12(1983〜86年)□

入学してすぐに、大学の図書館で
岩波文庫(当時は絶版)の
「トム・ジョウンズ」全4巻を
読みました。18世紀のイギリス小説で
作者はヘンリー・フィールディング。

何で読んだかというと。
この小説は1963年に映画化(邦題は「トム・
ジョーンズの華麗な冒険」)されています。
アルバート・フィニー主演、監督はトニー・
リチャードソン。この監督の「長距離走者の
孤独」が良くて。で、代表作と言われるこの
作品も観たかったのですが当時はビデオ化も
されておらずTV放映もなかったので
「しようがない、先に原作読んじゃおう」と
いうことで、読んでしまったわけです。

古い作品なのでどうかな〜と不安だったのです
が、これが大変面白かった。笑えるんです。
金持ちの家に捨て子として拾われたトムが成長
して誤解から家を追い出され、ロンドンへ向かう
旅、彼の出生の秘密は?というお話。
出てくる人物がみんな非常にクセがあり、作者
の人物の描き方がおかしいんですよ。18世紀に
書かれたものですが、優れた笑いの感覚って
腐らないものだな〜と思いました。


さて、作家の小林信彦氏が大学の卒論で取り
上げたのがヘンリー・フィールディングだった
と後で知って、「へえー」と思いました。
(作品は「トム・ジョウンズ」ではなく
「ジョウゼフ・アンドルゥズ」だそうですが)

小林氏の肩書きは「小説家」ですが、
映画、それから“笑い”全般に関する批評・
評論は他の追随を許さないものです。

大学時代、この人の書くものには むちゃむちゃ
影響を受けました。

映画雑誌『キネマ旬報』でコラムの連載を
されていて高校の頃からそれは読んでいました。
最初に買った本は・・・「地獄の観光船」か
「地獄の読書録」だったか。受験前にコソコソ
読んでました。

大学入ってから「日本の喜劇人」「世界の
喜劇人」「笑学百科」を読み、う〜ん
なんと凄い、と再読、再々読、再々々・・・
(キリ無し)を何度読んだことか。

ボーダイな知識と確かな批評眼。
ホントに凄い人です。
今は「週刊文春」でコラム連載中。
(「人生は五十一から」)

さて、この人は小説家なので、小説も読むには
読んだのですが・・・
正直言って、批評・評論の方ほどは入れ込んで
読めませんでした。
「オヨヨ島の冒険」
「唐獅子株式会社」
「発語訓練」
「ちはやふる奥の細道」
「僕たちの好きな戦争」
など、面白いのですが、どこか冷たく意地悪い
ところがあって、あまり好きになれませんで
した。

大学4年のときだったか、朝日新聞の夕刊で
小説の連載が始まりました。
「極東セレナーデ」です。
朝日新聞はずっと読んでますが、小説を読んだ
のは井上ひさし「偽原始人」とこの作品のみ
です。
「極東セレナーデ」、脇役の人物が映画について
コメントする場面が多く、ここだけが面白かった
です。すんません。

そうだ、最近大瀧詠一と共同で責任編集した
「小林旭読本」をまだ買ってなかった。
映画の本は高くて・・・なかなか手が出ない
んだよね〜。

読めば面白いんだけどナカナカ読まない
2003年5月3日(土)
□小説シリーズ・その13(1987年〜)□

学校を卒業して会社に入ってからは、今までにも
まして小説を読まなくなってしまいました。
それゆえ語るべき事はほとんどないんですけど、
時たま思い出したように読むこともあり。
そんななかで、ちょっとしか読んだことないけど
この人の作品はまとめて読んでみたいなあと
思っている作家さんを、みずからの備忘録がわりに
記してみます。


吉本ばなな

この人は「ちびまる子ちゃん」のさくらももこ氏
と同じく昭和40年生まれで、私と学年は違えど
同い年ということになります。「キッチン」が出て
話題になっていた頃「少女まんがっぽい」という評
がなされていたので、読んでみました。
平易な文章だし、確かに文学・ブンガクしていない
ところが好感をもてたので、出るたび続けて読みま
した。
「うたかた/サンクチュアリ」「哀しい予感」
「TUGUMI つぐみ」「白河夜船」「N・P」
たしかこのへんでブランクがあったはずで、こちら
も関心が切れてしまって、その後は読んでません。
今はどんなの書いてるんでしょうか?



村上春樹

たくさん本が出ていますが、ホントに少ししか
読んでないんですけど。
高校の時に「風の歌を聴け」を読みました。まだ
単行本はこれと「1973年のピンボール」しか
出てなかった頃です。ありきたりな感想だけど、
やはり当時初めて読んだ“大友克洋のまんが”と
同様に何とも言えない「白っぽい感じ」を受けて
うむむむむ・・・と思いました。
−−−
恥ずかしくて言いにくいことだが、自分の撮った
8ミリフィルム(風景とか)に「風の歌を聴け」の
あの有名な「まえがき」の朗読を付けてみたりした
ことがあります・・・。何を表現しようとしていた
のか、自分???
−−−
大学時代は一冊も読まず、その後ベストセラーに
なった「ノルウェイの森」をよんだぐらい。
人にかりて読んだ「ねじまき鳥クロニクル」が
スゴク良くて、読もう!という気運が高まって
います。小説じゃないけど「村上春樹、河合隼雄に
会いにいく」、それからティム・オブライエンの
小説を翻訳した「本当の戦争の話をしよう」を
読みました。

そういえば村上春樹の短編小説を山川直人が映画に
した(16ミリだったかな?)「100%の女の子」
というのを学生時代に上映会で観たことがあります。
自主映画界ではつとに有名だった“室井滋”を
初めて見た作品でした(ミスキャストだったと思う
けど・・・)。


同じ村上の村上龍ですが、気まぐれで一冊
「69 sixt y nine」
を読んだだけなのですが、これは面白かったです。
他のもイイんだろうか?
どうも、監督した映画「だいじょうぶマイ・フレンド」
の悪印象が残ってて、これが障害になってるんです。
まあもう20年たってるので時効にしようよ。


宮部みゆき

たったの2冊しか読んでないので挙げるのも
はばかられるけど、「ちゃんと読んでみたい度数」
が(私の中で)高い値を示しているので。

矢田亜希子ちゃん主演の映画を観て感動し、原作の

「燔祭」(正編)
「クロスファイア」(続編)

を読んだワケです。

念じただけで物を発火させられるという特殊能力
を持った女性を主人公にした作品なのですが、
なんというか主人公のたたずまいとか寂しい感じが
良く出ていてイイです。文章もすごく巧いし。
「燔祭」は短編で、文庫では「朽ちてゆくまで」
「鳩笛草」という別の能力を持った人たちの作品
が載っていたけど、これもまた良かったです。

−−−
小説とは関係ないけれど、宮部さんは市川崑監督の
「竹取物語」を誉める発言をしている、きわめて
数少ない存在で、私にとってはそれで得点アップして
います。「竹取物語」は私も悪くないと思うんですが
皆さんそんなにダメですか?


片岡義男

高校時代に読んでいる人が多かったけれど、私は
タイトルなどから ちょっと手に取る気にならな
かったのでありますが。

たまたま人から新潮文庫版の
「さっきまで優しかった人」
を借りて読んだらこれがかなり良くて、それ以降
初夏の頃に年一冊、というペースで読むように
なりました。
「スローなブギにしてくれ」
「ボビーに首ったけ」
「彼のオートバイ、彼女の島」
など、映画にもなった作品群をまず読みましたが
「ボビーに首ったけ」が今のところ一番よかった
です。短編で「モンスター・ライド」というのが
あって、バイク仲間が死んだのでたくさんの人達が
弔いのために大集合。みんなが去った後、アスファ
ルトに排ガスだけが残った・・・という結末が
なんとも言えない省略の美学です。


どうも年々、あっさり系が好みになっているような
気がします。

読まずに死ぬか。
2003年5月4日(日)
□小説シリーズ・その14(1987年〜)□

さて、少年の日々に好んで読んでいた
SFやら推理小説やらは完全に読まなく
なってしまいました。


SFもの
についてはことに。ここ20年ぐらいで
読んだのは
ハインライン「夏への扉」
ロバート・ネイサン「ジェニーの肖像」
梶尾真治「美亜へ贈る真珠」
ぐらいでしょう。いちおう時間テーマに
関心はつないでいるとは言えますが
あまりにも基本の基本ですね。
まんがですが、清原なつのさんのタイムトラベル
シリーズが“ハヤカワ文庫”に入りました。
単行本を持ってるのにまた買っちゃったよ。


荒俣宏の「帝都物語」

というのはSFのジャンルに入るんでしょうか。
サイエンスは無いからただの伝奇読み物かな。
文庫で読みましたが、私の読書経験では最大の巻数
(全10巻)ということになります。一冊の分量が
少ないんだけどね。ちなみにそれに次ぐのは
「Zガンダム」のノベライズ本・全6巻か。
日本中に馬鹿まるだしを宣伝してるようなもん
です、これ。

読んだきっかけは、やはり映画(実相寺昭雄監督)
を観て感銘を受けた(←マジ)ということでして。
あの映画は本当に好き好き好き好き好き好き好き
(くどい)なんです。原田美枝子がカッコ良くて。
この映画の魅力の詳述は後日に行うとして、
あと一つ言いたいのは続編映画「帝都大戦」の
ことです。第二次大戦秘話なわけですが、日本軍
が超能力者の力を使って、ルーズベルト大統領を
呪い殺して戦争に勝とうとする、という話です。
コメディじゃないんですよ。
しかもオチが、「呪いのかけ間違い」でヒトラー
を自殺させちゃって、まあ結果的には戦争が終わる
という・・・何とも言えぬ脱力系でした。まあ、
私としては日本軍の霊能チームのエライさん役で
丹波哲郎さんが出演していたので、それで万事OK
なのですが。


推理小説
は・・・


トニー・ケンリックという、ややコミカル調も
入った犯罪ものを書く人が好きで、角川文庫版が
絶版になっていたので古本買ってでちょこちょこ
読みました。
「暗くなるまで待て」「バーニーよ銃をとれ」
「スカイジャック」など。

この人の「マイ・フェア・レディーズ」という
小説を金子修介監督がTVムービーで撮ったことが
あります。主演は柴田恭平、田中美佐子。
ケンリック=金子=柴田とMyフェバリットな人が
集合したので期待したのですが、わりと良い出来
でした。ちなみに放映タイトルは
「マイ・フェア・レディーズ〜お嬢様を探せ!」
でした。80年代中盤に“お嬢様ブーム”なるもの
があったことを思い出させます。


チャンドラーとかハメットといった作家の作品は
数年に一冊、といったペースで読んでいます。
こういうのは たま〜に読むのがよろしいようで。


「脚の奇麗な女の人」が探偵事務所に
やってくるお話は嫌いになれません。


10年ぐらい前に「ミステリの原点に立ち戻ろう
じゃないか」と思い立って、“基本物”を読んだ
時期があります。これは楽しかったナー。
「モルグ街の殺人」
「シャーロック・ホームズの冒険」
から開始(笑)。いやーマジで面白い。

ジョセフィン・テイの「時の娘」
も面白かったなあ。ホントですか?って感じで。

わけてもうれしかったのは

ハリイ・ケメルマン「九マイルは遠すぎる」

ですね。連作集だけど、初作で表題作の「九マイル
は遠すぎる」は(笑っていいものなのか知らないが)
涙が出るほど笑いました。通りすがりの人が発した
「九マイルは遠すぎる」という言葉から、推理を
展開していって、その推理によるとここに犯人が
いるはず!って行くと本当にいて犯人逮捕。
「んなわけねーだろ!」というツッコミ心を満喫
させる、アクロバティック推理ものでした。落語の
世界ですね。


世の中には面白そうな小説がいっぱい。
どこから手をつけていいやら迷っているうちに
あの世からお迎えが来そうです。丹波氏の著作
でも読んで備えますかな・・・。

ドストエフスキーの感動はこれほどか!
2003年5月5日(月)
□小説シリーズ・その15(2001年〜)□

ということで、前世紀の古い話を続けてきましたが
今世紀の話に移りましょう。


2001年6月1日に全社システムを入れ替える、という
案件があって、システム部門にいたのでその5・6月は
かなり仕事が忙しかったのです。
片道35分のバス通勤で、仕事で疲れてる時は軽い
本を読むのが習慣でした。しかし、この尋常でない
時期、「今俺には私生活がない。ここは常日頃
読まないような重い物を読んでみよう」と思い
たちました。

JRのN駅の「みんなの本」コーナーは、
放出図書が並んでいて 勝手に持っていける
本棚でした。古本屋でも引き取られないような
実用書とか全集本が置いてあるのです。
そこに、その本はありました。

−−−
さて、1969年にまんが雑誌『COM』に
「おとうと」という傑作短編が載りました。
ある女性作家の作品なのですが、姉の視点から
弟と、自分達の成長を綴った素晴らしい一編です。
このまんがの中で、弟君がスノビッシュな国語の
教師の悪口を言うシーンがあります。その教師は
生徒の感想を素直に受け入れずに嫌みを言うのだが
その中に
「ドストエフスキーの感動がこれだけとは!」
というセリフがありました。

私はドストエフスキーを読んだことが・・・っつー
か、ロシアの小説を読んだことがなくて・・・。
文庫コーナーで、野球選手の名前の人が訳した
(江川卓のことヨ)本をパラパラ見ると、文字の
ギッシリ感と、人名の覚えられそうになさそう感
から、どうも読む気にならなくて。
−−−

そこにあった本は、ドストエフスキーの


「罪と罰」

でありました。
ケース入りの全集本の一冊で、やや古くて
使用されている漢字も古いけれどマア読めないこと
もないようなので、ようし、これに挑戦だ! と
持ち帰りました。さっそく翌日から読み始め。

結局読むのに一ヶ月ぐらいかかりましたね。
二段組みビッシリの文字列の威圧感は相当なもの
でしたが、以外やこれが面白くて。
マア、“古典”といわれるものの感想というのは
常にそうなのかもしれない。ありきたりですみま
せん。
殺人事件がある「ミステリ」だからね。
しかしこの主人公の悩みっぷりも大したもので、
さすがに寒いところに住んでる人は粘りが違う、
と作者に感心したり。
出てくる人物がこれがまた「キャラが立ってる」
というか、クッキリした人達で。清濁・聖俗、
取り揃えましたと言わんばかりのキャラ万華鏡。
恐れ入りました。
結局どうなるんだろう・・・と読みすすめて、
あの展開、あの終幕。
仕事の疲れも吹き飛ぶ、充実の読書体験を
させてもらいました。


読み終えた私はどうしたかというと、二冊の本を
取り出し・・・

(1)買ったけど読んでなかった
手塚治虫「罪と罰」(手塚治虫全集版)

(2)同居人の本棚のユーミンコーナーから
大島弓子「ロジオン・ロマーヌイチ・ラスコーリニコフ」
(サンコミ版)

日本の二大巨匠がいかように まんが化したか、を
早速読んでみたワケです。細かく感想は書きません
が、どちらも“ダイジェスト版”にはせずに
みずからの表現にしている力技に恐れ入りました。
個人的には大島氏のごちゃごちゃっとした絵が
合っていたと思います。しかし古典を取り上げつつ
「ちきが・・・」(手伝った大矢ちき氏)なんて
いうセリフを入れてしまう大島氏の感覚には感動
しました。



宮澤賢治

同居人が
「わたしは学芸会で『よだかの星』の
“いじわるなヒバリさん”の役を演った
ことがある」
と言いました。
「よだかの星」とはナニカと問えば
宮澤賢治の童話であると言う。すみません
知識が無くて・・・。


いつも同じような展開ですが、
宮澤賢治といえば素晴らしいアニメ映画
「セロ弾きのゴーシュ」
「銀河鉄道の夜」
に原作を提供した(←オイ!その言い方は無い
だろう・・・)人であります。

高畑勲監督の「ゴーシュ」には思い入れが
あるのですが、また別の項目で書きます。

「銀河鉄道の夜」といえば、前に別のところでも
書いたのですが、ザネリの
「ジョバンニ、お父さんから、らっこの上着が
来るよ!」という声が耳から離れません。
「新・オバケのQ太郎」でQ太郎を演じ、名曲
主題歌を唄った堀絢子さんのボイスです。


アニメはともかく、小説(童話)はいくつかしか
読んでなかったもので。教科書に載っていた
「やまなし」っていう短編は良かったです。
「クラムボンは かぷかぷ笑ったよ」っていうのが。

で、古本屋で文庫本を買ってきて「よだかの星」
読みました。いじわるなヒバリって ほとんど
出番ないじゃん。
それにしてもこの話、なんとも言えないヒンヤリ
した感覚がありますね。悲しさというのは熱さを
通り過ぎるとこんな冷たい感じになっていくのか。
私は老いてからの初読で残念でしたが、小さい
頃にこれを読んだ人は、夜空の星を見上げて
この小さい話を思い出す人もいるのかも知れません。

ちなみに、話の後半は、よだかが星空を駆け巡る
展開になるんだけど、同居人に
「これって舞台でどう表現したの?」
と聞いたら
「忘れた」
とのことでした。
血液型A型の人間にとって、B型というのは
あっけらかんとしていて うらやましい限りです。

「桜を斬る」
2003年5月6日(火)
□小説シリーズ・その16□

このシリーズ、明日で終わります。
お世話になりました。
今日は、他人のふんどし系の話題です。


よしもとよしとも

・・・氏といえば、寡作のまんが家として有名な
人です。言葉が足りませんでした。
寡作だが、魂に響く優れたまんがを描く作家
ですね。ファンの人はとても多いです。
単行本リスト
最近では「コミックH」などで描かれている
ようです。

さて、10年前の話になってしまいますが、
このよしもと氏が雑誌『スタジオ・ボイス』の
「特集★ニュー・テキスト
/スタジオ・ボイス副読本全300冊」
(1993年6月号)
「クリエイターが影響を受けた一冊」で
挙げているのが

五味康祐「桜を斬る」

新潮文庫の「秘剣・柳生連也斎」に収録されて
いる短編です。文庫で19ページ。
何だろう、と思いつつ読んでみました。

寛永11年、将軍家光の前で行われた
御前試合、その中での菅沼紀八郎と油下清十郎
の真剣勝負。
紀八郎は、家人を倒した敵への復讐心から
妖剣を身につけてしまった若者。
一方、清十郎は剣の使い手といわれるが
穏やかな勤め人で、本当に強いのか一向に
わからない男。
この二人が御前試合で相対するが、その
結末は・・・

読後、いろいろ考えさせる不思議な作品です。
よしもと氏の「レッツゴー武芸帖」に相通ずる
スピリットがあるかも・・・。
いいですよ。一読をおすすめします。


田渕由美子

・・・さんといえば少女まんが誌『りぼん』の
70年代黄金時代を支えた作家さんで、
育児休業の期間を経て 今では『YOU』系の雑誌で
活躍されており、新刊単行本も続けて出ています。
ファンとしては御同慶の至り。

さて、この田渕さんのファンサイト
「田渕由美子私設応援団
〜もう田渕由美子しかありません!」


を運営されている しん・Yさんは近年、小説家−

吉田親司

−氏としてデビューされ、旺盛な執筆活動を行って
おられます。
本も好評で、新刊の出版が続いています。
単行本第一作
「北海の旭日旗/新世界大戦 エピソード1」
を読みましたが、
奇抜な設定、大胆な歴史シュミレーションが楽しく
アクション・シーンも手に汗握る面白さです。
SF・戦記がお好きな方にはおすすめしますが、
あとひとつ言うと、作中にさりげなく“田渕ネタ”
が入っているのがおかしいです。詳しくは読んでの
お楽しみですが、軍隊ものなのに「フランス窓便り」
ネタがこっそり出てくるミスマッチ感覚よ・・・。


情報経路がまんが系から・・・というケースが
増加しています。

(残念だが)
2003年5月7日(水)
□小説シリーズ・その17(終わり)□

私はイニシャルが「KM」になる まんが家さんの
ファンで、検索ヒットされないようここでは
同じイニシャルの昔のプロレスラー
「木村政彦(きむら まさひこ)」にちなんで
仮に「木村」という名前にして話を進めます。

さて、木村氏の作品を読んで その独自性を知るに
つれ、以下のようなことを考えました。



「良いもの」というのは、時の新旧、地の東西
を問わず存在し続けていると思われる。

木村氏とても、無から生じたわけではなく、
いろいろなものを吸収して、個性の中で結晶した
ものが作品となって現れたものであろう。

表現の違いはあれど、木村作品の美点を備えた
作品が世には多く存在するに違いない。

ミッション:
「木村テイストの作品を探せ!」


別に、木村作品と同じ題材を扱ってるとか、
同じセリフが出てくるとか、そういうことじゃ
ないんですけどね。

作品というのは小説、絵画、音楽、その他イロ
イロなのですが、では木村テイストとはいったい
何なのでしょう。

うまく言えませんが、それは
自らの成長への志向であったり、社会との関わり
を考えることであったり、遠い他者への共感で
あったり、教条的でないことであったり、
羞恥心であったり、まさにイロイロであるのです
が、無理矢理一言でいえば「人間の良心」とも
いえ、言い換えると

「俺には無い物」

と(残念だが)いうこともできます。


今のところ小説分野で、読み終わった後
「ああ、これは木村系だなあ」と思ったのは
こんなのがあります。


ハーパー・リー
「アラバマ物語」
TO KILL A MOCKINGBIRD
(1960年)

ペーパーバック風の体裁で、本屋でバイトしてた
頃から気にはなっていたんですが。数年前に
古本屋で発見して やっと読みました。

1930年代アメリカ南部の小さな町を舞台に
弁護士の父、兄と妹の三人家族を妹の眼から
見た話です。偏見のお強い地で父が黒人の
弁護をしたことから遭遇したある事件が
描かれています。

30代になった主人公が少女時代を回想する
形式で書かれていて、父親の行動や思いの
意味を確かめていくわけですが、全編に
あふれているのは「人は何とものごとの
本当の意味に気づかずに生きているのだろう」
ということです。本編では主人公の「気づき」
がごく控えめに書かれていて好感が持てます。
整理された大人の分別でなく、少女時代の
“わけわかんなさ”が生き生きと描かれている
ので説教臭さは無いです。

ミステリ的な興趣もあるので、ネタバレになる
ことは書きませんが、終盤の ある瞬間に
心うつものがありました。サプライズ。

後で知ったのですが、木村氏はこの本を読んで
インスパイアされ、初期のある作品を描かれて
いた、ということです。ご自身の書かれた、
ある文章から最近知りました。


ウイリアム・サローヤン
「人間喜劇」
THE HUMAN COMEDY
(1943年)

なんだか上に続いて、「お前はアメリカの
ハイスクールの“推薦図書”一覧表から題名
を写してるんじゃないの?!」と言われそう
ですが・・・

第二次大戦中のカリフォルニアの小さな町。
父は死に、兄は出征中の家族。家計を助ける
ために14才のホーマーは電報局で働く。
戦死通知を配達するのはツライ。4才の弟
ユリシーズは見るもの聞くものに驚いたり
よろこんだり。

という話です。第1章の終わりの“卵”の話、
最後のワンセンテンスからハッとする。
母親や、電報局の局長が“大人”です。
大人が子供に知恵を伝えて、それをヒントに
子供たちが自分で考えて成長していくという。
何とも、植物の種から出た芽が太陽の方に
向かってグイグイ育っていくような。
雨が降ってヘタることもあるんだけどね。

単行本と文庫本で訳が違うけれど、個人的には
文庫版の方が好きです。


リリアン・ヘルマン「ジュリア」
PENTIMENT(1973年)

人からすすめられて読みました。著者は有名な
劇作家。とはいえ映画を観て初めて知ったん
ですけど。父親から「『ラインの監視』はいい
よ」と言われた記憶もあるけど、これは中々
観る機会がないですね。

ヘルマン女史が70近くになって書いた自伝的
な本で、今までに出会った人たちのことが描か
れています。短編7編から成って、「ジュリア」
はそのうちの一つ。本の原題は
「ペンティメント」で、美術用語?
絵を描いて、長い月日が経つと、塗った下の
絵や下書きが浮き出てくる現象をいうらしい。
昔の事件や、人物を振り返ってそこに何を見る
か。どの文章も非常に著者の厳しい視線を感じ
ます。淡々と書いていて鋭い。怖いようなところ
もあるが、冷たいワケではない。
「ジュリア」が一番劇的な話だけれど、ハメット
とのやりとりが強い印象を残す「亀のこと」が、
わからないながら ひっかかってしまい、何度か
読み返してしまうんですよね。

ダジャレではないんですが、そこまで、底まで
物事を見つめるんですか、という何かこう・・・
らしからぬけど読む人を敬虔な気持ちにさせる
ような本です。

ハヤカワ文庫は絶版?らしいけど図書館には
あります。


あ、私が勝手に「・・系」と言って遊んでいる
だけですので、その点はご了承下さい。


本を読む人にはいろいろな視点があると思います
が、まあ興味関心のポイントは多数あったほうが
面白いでしょうかね。

「小説読まず」の私ではありますが、まあ今後も
適当にちょこちょこカジっていきたい
と、思うのであります(←松たか子風)。

おわり

TVアニメ「鉄腕アトム」
2003年5月8日(木)
放映開始から、ひとつきが経ちました。

初回の日、てっきり夜かと思っていたら
朝の放映で、起きたら終わっていました。
よって2回目から見てるわけです。
どうなのかナアと不安があったのですが。

去年、いや一昨年か。やはり古典といえる
「サイボーグ009」が再アニメ化されて、
期待のうちに何回かは見たんだけど・・・。
ある人が
「大人向けのものをわざわざ子供向けに
している」
と評したのが印象に残っていますが、たしかに
原作好きな人には少々チルデッシュだった
カモしれません。わたし的には、008が
カッコ良かったことと、やはり技術の進歩か
“加速装置”の表現が洗練されていて、その点
ではイイなあ、と思いました。あの、
大気圏突入のシーンはどんなアニメ映像に
なるのかな・・・とちょっと気にはなって
いたのですが。

さて、アトムですが、何年か前の映画
「メトロポリス」同様に、人がごちゃごちゃ
いる感じなど、初期手塚テイストを生かした
絵作りになっているようです。流線形では
ない、やや丸みを帯びたハードのデザインも
いま風、ですね。

と、いうよりも、やはり今回の再アニメ化
にあたっては「なぜ今アトム?」という
スタンスの問題が最重要ではないかと思われ
ます。子供たちにとっては
「♪はじめての〜アトム〜」
でありますし。
とりあえず4回ほど見た限りで言うと
アトムというイノセンスを通じて世の矛盾を
追求していくアプローチはやや生硬で古い
かナア、とも思います。けれど、タイトル
バックでも強調されている、天馬博士との葛藤
部分は現代的でいいかも。迫害される側の
悲しみに偏りすぎず、生んでおきながら憎んで
しまうダークサイドを描いてほしいなーと
期待しています。

2回目はアトムがサッカーを通じて“ルール”
を学ぶ話。通過せねばならないポイントでは
ありますが、やや説明調。

3回目は未知の宇宙生命体に遭遇する話。
これは良かった。

4回目は有名な「電光」のエピソード。
スカンク草井って若いんだな(たしかage27と
表示有)。

5回目は、ロボット農場がテロにあう話で、
犯人が“反ロボット主義の過激派”というのが
スゴイ。子供番組なのに、過激派と明示。
製作者の並々ならぬ意欲を感じる。

ちなみにこの回で農場を経営する祖父と娘。
娘の声は宮村優子さん。アトムに対して
「あんたバカ?!」みたいなセリフを
連発するのがサービスサービス?いつもながら
メリハリがきいていて良い演技です。
おじいちゃん役が、おお!
槐柳二(さいかち・りゅうじ)さんだ!
やっぱり農園ではたらくジイさん、といえば
この人しかいないでしょう。西部劇だろうが
SFだろうが。
−−−
ここで話しは今年の正月の我が実家に飛びますが、
久々に会った兄貴から「最近仕事どう?」
と聞かれた私、「そうさな・・・」とつぶやくと
「お前、ましゅうかよ」とツッコミを受けました。
一瞬、え、マシュー?藤井隆が何なの?と思い
ましたが、ああ、「赤毛のアン」の“マシュウ”
のことを言ってるのか、と思い当たりました。
兄貴はアニメファンじゃないけど赤毛のアンと
ペリーヌ物語が好きなんだよな・・・
−−−
で、何かというと、槐柳二さんといえばマシュウ
でおなじみですよね、ということ。

声の配役からも、古きものとあたらしきもの
の組み合わせ、若々しい野心を受け取れるの
であります。これからもがんばってね。

今はいている革靴、ボロくて歩くたびに
かかとがキュッキュッと鳴るんだよな。
アトムチック?

「煩悩クラス」
2003年5月9日(金)
マーガレットコミックス、片岡吉乃・著の
「煩悩クラス」
を読みました。

知らない人の作品を新刊で買うのは久しぶり
のこと。本屋で見かけた時に、先日(4月20日)
朝日新聞の書評
載っていたのを思い出したので。

ここで紹介されているように、“殴りグセ
のある女の子”と“キス魔の男の子”のラブ
ロマンス(?)であります。我が同居人にも
殴りグセ(及び蹴りグセ)があるので、その
心的メカニズムを解明したい、という動機も
あって読んだのですが、この作品の魅力は
クラスメイトたちの“壊れっぷり”にある
ことは明らかです。

書評では“脳内麻薬全開”と表現されています
が、タガのはずれ方は相当なものです。
さりとて、こういった傾向は近年のギャグまんが
では親しい風景ですよね。クロ高とか、あず
まんがとか・・・。笑いというよりも、ある種
「桃源郷」ともいえる魅力があります。論理を
超越し、意味を持たない悩み−というのは
なんと魅力的なのでしょう。なんて。

この作品、去年の「別マ」で3回連載された
そうなのですが・・・作中、学内に掲示された
試験の順位表の中の人名に、「別マ」往年の
名作のヒロイン名をもじった“大久保舞”
(本来は麻衣)を発見。微笑ましいことです。

それと、ケンカが始まった教室で例のクラス
メイトが突然ピクニック気分(?)になる場面
で、微笑んでいる女の子の顔が・・・
“川崎苑子”さんの絵になってるよ!

ヒザ(膝)?
2003年5月10日(土)
根岸線の石川町駅で、女の子がスキップしながら
乗り込んで来た。制服は新しくややサイズが大きい
ので中学1年生と思われる。うしろからお父さんと
お母さんがゆっくりついてくる。
娘、クルリと振り返りお父さんに

「『シャンデリア』って5回言ってみて!」

・・・車中の空気が引き締まる。
私も、つり革につかまり顔は本だが 耳は完全にこの
父子のやりとりに向かった。私だけでなく、車両の
全員が同じ気持ちであったろう。

「シャンデリア、シャンデリア・・・」

お父さんが小さくつぶやいている。私の頭の中は回想
モードに。「パールライスって10回言ってみて」
「(×10)」「世界で一番速い男は?」
相手にカール・ルイスと回答させるよう仕向け、実は
答えはベン・ジョンソン、というヤツだ。人名から、
ソウル・オリンピックの1988年のことだろうか。

娘の意図は。初めて聞くナゾナゾだが、明らかに
アレを狙っていると思われる。

私の脳裏に浮かんだもう一つの事象。受験生の多くが
手にしていた「でる単」こと「試験に出る英単語」
(青春出版社・刊)。この本の前書きで、著者が 昔
シャンデリアと“ある童話の登場人物”を間違えた、
というエピソードを紹介していたことである。

さて、お父さんが言い終わったあと、娘は間髪を入れず
にこう言った


「リンゴを食べて死にかけたのは?」


全乗客は息をのんだ。ここで、父親にはとるべき
四つの道があった
(1)娘の期待通り「シンデレラ」と答える
(2)間違えて「シャンデリア」と言ってしまう
(3)冷静に、「白雪姫」と答える
(4)「赤ずきんちゃん?」とボケをかましつつ、
娘をグリム童話の世界に引き込む
さて、いったいどの道を・・・。私も、思わず顔を
そちらに向けてしまった。

父親は、無表情で黙っていた。
電車の走行音だけが響く、異様なこの車両。

ここでの父親の沈黙をどう解釈すべきか。
(1)本当にわからない
(2)車内の注目を集めてしまい、どう答えて
いいかわからない困惑
(3)娘に判らない回答が頭に浮かんでしまった。
「マカロニほうれん荘」第一巻P.106で文子先生に
毒りんごをたべさせようとするきんどーちゃん。
(4)実は、複雑な事情を抱えた親子

結局この真面目そうな父親は返答をしなかった。
もう答えは無い。乗客の緊張感も解けてきた。
私も降りる駅が近い。しかし娘は言った

「『ピザ』って5回言ってみて!」

根岸駅で降りる私は最後に見た

「ここは何?」
娘が自分の腕の一部を指差していたのを。

下ネタ
2003年5月11日(日)
このページは女性の方も読んでいるかもしれませんが
今日のは下ネタですので、とばして下さいね。


この間、WOWOWでやっと
「オースティン・パワーズ:デラックス」
を観ました。シリーズ第二作です(3も未見)。

冒頭、現在のNo.1美人=エリザベス・ハーレーが
出てきてちょっとアクションがあって、その後が
オープニング・タイトル。

この作品、感想は「まあまあ」としか言いようがない
のですが、OPには本当に驚きました。

例の「ソウル・ボサノヴァ」が流れるのですが、
この曲にのってオースティンが

全裸

でホテル内を練り歩くんですよ!
局部はタイトル文字で隠されています。

マイク・マイヤーズの妙に“なまっちろい”、
いかにも鍛えられていない「文科系肉体」は
世紀末(1999年の映画)にふさわしかったと
言えましょう。

16年の歳月を経てシリーズ再開、全世界が待っていた
といわれる「スター・ウォーズ エピソード1 
ファントム・メナス」が公開後、3だか4週間後にボックス
オフィスの1位を明け渡したのが、たしかこの「デラックス」。

想像を絶する膨大な手間ひまをかけた精緻な特撮映像を、
イッパツ全裸になっただけの者が蹴落とすという・・・
これが世の真理か。

丸出しで笑わせる、という究極の行為。

覚えている人はあまりいないと思いますが、
ビートたけし(だったかツービートだったか)司会の

「テレビに出たいやつみんな来い」

という視聴者参加の俗悪番組がありました。
その放映一回目で、ある青年が出てきて
「『象』と『桃』をやります」
と言う。
まず桃。うしろを向いてズボンに手をかける。
その瞬間映像が止まる(収録番組なので)。
会場の爆笑音声だけが響く。
続いて、象。もう詳述しませんが、同様に
直前で映像が停止。前にも増して大きな爆笑音
がテレビから聞こえました。

麻薬と同じで、笑いを取れるという“快楽”を得る代わりに
人間をやめなければならない危険な行為です。

「デラックス」の下ネタの数々を見て、いろいろな事が
(手垢にまみれた表現ですが)走馬灯のようにまぶたに
浮かびました。「ファントム・メナス」に教訓があるように、
「デラックス」にもあります。
下ネタの笑いに依存しない勇気を持ちたい−と思います。

サラ金のTVCMについて
2003年5月12日(月)
数日前に某サラ金のCMソングをもじった
ことを書いてしまい、心にひっかかりが
残ったので。

永遠に続くとも思われる不景気。こんな中で
業績の良いのは製薬会社と消費者金融会社
だけであるとか。

サラ金の宣伝も昔は深夜番組でしかお目に
かからなかったのですが、もう最近では
ゴールデンタイムでも常態化しています。

大手銀行もさかんに小口金貸しのCMを
流す。新聞の投書欄で母親が、子供から
「たまにはババンと!」などと言われて
困る、などと意見。

新聞の投書欄は、多様な見解を示すために
バカらしい意見も載るし、取り上げた記者の
神経を疑うケースも多いけれど、上の母親の
意見は傾聴に値すると私は思います。

同居人に「ゴールデンでサラ金のCMはさあ、
子供も見てるからやめてほしいよね」と言うと
「他にスポンサーつかないんだからしょうが
ないじゃん」との返事。たしかに。

(1)パンが無いならケーキがあるじゃない
(2)金が無いなら借りればよい
(3)パンが無いならイモを食うがいいさ

構文は一緒であるが、それぞれ思想は全く
異なる。21世紀を担う子供たちには各種
文献をあたってもらって、健やかな感覚を
身につけて欲しい。俺はもう駄目だから。

なお、東京三菱のキャッシュワンのCM、
おなじみのフレーズを並べているだけで
加藤茶への愛情が全く感じられない。別に
カトちゃんのファンじゃないけど、起用
するならそれなりのリスペクトをして欲しい
ものだ。主として共演者の資質と演出の
タイミングに問題があると思います。

今タイプミスして気づいたんだけど、
「カトーチャ」ってロシアの「カチューシャ」
のもじりなんですか?

漂流者たち(The Drifters)
2003年5月13日(火)
昨日、加藤茶のことを書いてしまったので、
私のザ・ドリフターズへの態度を明らかにして
おく必要があると思われます。すでに文面に
苦渋の色が滲んできていますが・・・。


70年代。ソ連のブレジネフ時代が

♪いついついつまでも(*1)

続くかのように思われたが如く、日本では
ザ・ドリフターズが小学生の話題を支配し
続けていました。(←文章がおかしいけど)

いろいろな流行(はやり)言葉もこの番組
から出たし、見ていないと話題について
いけないというところはありました。

共通言語

とでもいうのでしょうか。
まあ確かに、友達と話をするのは面白かった
けれど、TVで見ているのはそんなに充実
した時間ではなかったですね。間延びして
るんだよな〜。
面白がってみていたことが無かったか、と
言われればそうでもないんだけど。

やはりザ・ドリフターズは、通過点でしょう。

♪卒業式とは いうけれど
何を 卒業するのだろう

というチェッカーズの歌がありましたが、
ザ・ドリフターズを卒業するとは、やはり

「群れて笑う」

という段階から離脱することを意味していた
と思います。


とは いうものの。

いかりや長介さんは今でも好きです。

それと、
やっぱり荒井注が抜けたのがね・・・。
こんなコントを覚えています。


建物に篭城する犯人。
警官隊の隊長のいかりや氏が、隊員に
犯人を説得セヨ! と檄をとばす。
各人、メガホンをもって入れ替わりに叫ぶ
高木「完全に包囲されているぞ!」→反応なし
仲本「武器を捨てて出てこい!」→反応なし
加藤「両親も泣いているぞ!」→反応なし
最後に荒井、ものものしく歩みでて一言
「ジス イズ ア ペン!」
→犯人・警官隊、全員ズッコケる。


中学に入って初めて習う英語の授業で、
先生が“This is a pen.”と言った時に
起こったクスクス笑い。アジアじゅうでも
日本だけの現象でありましょう。

まあ、こんな小事を笑って話せる世代を
生んだ、ということからも、その存在の
巨大さを思い知るのであります。

ブレジネフ時代は良かった、という老人も
ロシアにはいます。いや、ザ・ドリフターズ
がソ連共産党というわけではないんですが。


*1「さらばシベリヤ鉄道」より

指輪を捨てる旅=俺たちの旅
2003年5月14日(水)
前にファンタジー系は苦手なのよね、と
書いたんですが、観てみました
「ロード・オブ・ザ・リング」
WOWOWにて。

そういえば、このあいだ店で見かけたけど
1979年のアニメ映画「指輪物語」が
「ロード・オブ・ザ・リング〜指輪物語」
というタイトルでDVDになってました。
商魂。ラルフ・バクシの監督で、かなり
賛否両論あった映画。観てないんだけど、
音楽だけFMラジオでエアチェックしてて
愛聴していました。「エデンの東」
「理由なき反抗」で有名な作曲家レナード・
ローゼンマンの書いた勇壮な曲です。

で、「ロード・オブ・ザ・リング」。
それを手にすれば世界を支配する暗黒パワー
を持つ指輪。これを捨てに旅立つ仲間たち。

後で読んだ映画評で、
「『捨てに行く』というのがみみっちくて
一向に面白くない」
と書いてあるのを読みました。これって、
特殊意見だよね?
私も、多くの観客(視聴者)同様に
主人公たちの素晴らしい勇気に胸が熱くなり
ました。

■例えば■

♪たとえば たとえば たとえば〜(*1)

数日前に書きましたが、「笑い」を指向する者が

下ネタ

の魔力に負けてしまうことが ままあります。

・ドバッと脱げば、満場爆笑
・(書きたくないけど)「うんこちんちん」と
言えば笑いが取れる

努力も要らず、思うがまま・・・。まさに、
人間を支配する暗黒パワー。

この力を捨てることが、人間の叡智。
それにこそ仲間で力を合わせて当たるべきだ
というメッセージ。
人間賛歌じゃありませんか!

(注・
下ネタを全否定してるわけじゃありま
せん。安易なのが嫌なだけで・・・
がきデカ なんか 好きよ 私 )

本来、たとえで言うなら“核兵器”とか
そういうことを言うべきなんでしょうが、
まあここは自分に関心のある話でまとめて
みました。いろいろな見方が出来ると思います。

と、言うことで「ロード・オブ・ザ・リング」
気に入りました。2作目も観ようかな。来年
WOWOWで・・・。


*1 渡辺真知子「たとえば」より

みっつ違い
2003年5月15日(木)
「仁義なき戦いを作った男たち」
という番組を見ました。

先日NHK教育テレビで放映された
ETVスペシャル録画しておいたもの。
映画「仁義なき戦い」を作った監督&脚本家
=深作欣二&笠原和夫が相次いで亡くなった
ので、ある種 追悼番組。二人の生い立ち、
映画の関係者のインタビュー、スタジオでの
井筒和幸(映画監督)と山根貞男(映画評論
家)のトークで構成。

まあNHKらしいとしかいいようのない薄味
の番組でしたが、唯一面白かったのは

笠原和夫=昭和2年生まれ
(戦争に行っている。終戦時18歳)

深作欣二=昭和5年生まれ
(戦争に行ってない。終戦時15歳)

という年齢差、二人の戦争(終戦)体験の
共通点と相違点が、映画「仁義なき戦い」に
重層的な面白さを加えた、という視点です。
特に第二作「広島死闘編」における
山中(北大路欣也)=戦中派
大友(千葉真一)=戦後派
という登場人物の対比で語られていました。

見る側としては、千葉真一の演技(あの
セリフ!)の方に注目してしまいましたが。
たしかにこの対比はシリーズ中でも最も
きわだっているところですね。


だんだん年をとると年齢差が気にならなく
なってしまいます。38才でも41才でも
子供から見れば同じようなオッサン、
というような・・・。
でもやっぱり、トシ三つというのは
随分な違いになるハズ。

例えば私と兄貴は三つ違い(生まれが昭和
37と40年)だけど感覚がだいぶ違う
(資質の違いというのが大きいが)。
一番の相違点は、ものごころついた時が
「社会変革が信じられた時代」
だったか否か−ということではないかと
思ってるんだけど。
兄貴は60年代末期、熱血革新教師に鍛えら
れたようだからなあ〜。
一方、オイルショックと日本沈没・ノストラ
ダムス予言の中で感性を育んでいった私。
まあ、社会がどうあれ、どう育つかは個人の
資質の問題なんだけど。
個人の成育史を世代論にしたくないとは常々
思っているのですが。つい、世代論を語りた
くなる誘惑に負けることが多いです。
以下次号。

世代論(前)
2003年5月16日(金)
♪誘惑の〜 熱い 砂〜

というのは、サーカスの歌
「ミスター・サマータイム」の一節です。

で、何かというと“誘惑の”世代論に
ついてです。人はなぜ世代論が好きなのか。
なぜ名付ける。本当にその定義は有効なの
か?

よく耳目にするものに
●昭和ヒトケタ
●団塊の世代・全共闘世代・
ビートルズ世代(ベビーブーマー)
●万博世代、シラケ世代
●新人類
●団塊ジュニア
などがあります。

人間、自分がどういう性質なのかというの
は気になることであります。
新聞やら雑誌で○○世代という記事がある
とつい読んでしまいます。
読んで、あてはまるコトもあればあてはまら
ないモノもある・・・星占いみたいなもん
だなあ・・・なんて思ったり。曲がりなりに
も社会学を学んだ者とは思えない この感想。

私が常々ぼんやりと考えていたのは

「人間の良い面は、どの時代も変わらない。
目立たないので、論議にならない」

「人間の悪い面は、その時代に応じたものが
ある。目立つので、論及される」

というものです。

ちなみに私個人は昭和40年(39年度)
生まれ。大学の頃、雑誌などで盛んに
“「新人類」出現!”
などといわれた世代であります。

岡崎京子さん(38年生まれ)が まんが
単行本の後書きで書いてました。タクシー
の運転手さんから「キミらみたいなのが
今ハヤリの『新類人』っていうの?」と
言われて、自分はつくづくヒヨッ子だなあ
と思った、ト・・・。

定義としては、
・東京オリンピック前後に生まれ
・まんがやTVアニメを浴びるように育ち
・社会への関心が薄く 趣味への関心が強く
・その趣味はかなり専門的であり
・集団行動より個人行動を好み
・・・
なんていうところでしょうか。
そんな人、前からいたじゃん!わざわざ
「新・人類」なんていう、人類でない
ような・・・直立で歩行しないかの如き
インパクトがあったのかなあ。
でもちなみに、私は上の定義に全部あては
まってしまうんだよな。

こういうダメ人間はいつの世にもいたと
思う。

結局、

その量(比率)が増加した

ことが、あえて名前まで付けられてしまった
原因と思われます。
(以下、明日へ)

世代論(中)
2003年5月17日(土)
ナントカ人類−なんていう呼び名はともかく
私が世代論にこだわるのは、自分の性質が
どの程度一般的なものなのか?という関心
によります。

「うちらの世代はみんなそう思ってる」

と考えた時に、それがどの程度当たっている
のか。

「みんな」・・・みんなねえ。

この日記の文章中で時々
「我々は」と書いて「(←誰だよ)」と
一人でツッコミを入れてる場面があります。
例えば
「ヤマトのイスカンダル到着に涙した
我々(←誰だよ)としては・・・」
うんぬん。
ここでのカッコ矢印には、次の逡巡が
含まれています

(1)ヤマトを見ていた人は多かったが...
(2)学校の40人のクラス中で何人が
見ていたのか?10人?25人?
(3)見たとして同じ感想を持ったのか?

要するに自分は、
同じ体験をしている、ということで
他人をひとくくりにしようとしているが、
あくまでも個人の意識感覚は多様である
ことに思い至らねばならーん、
という当たり前のことで。

当たり前のことを陳述しても面白くも
何ともないのですが、自分の悪い傾向を
諌めるイミで書いてみました。すんません。


いや、「我々は○○世代だ!」って
勝手に命名してみると面白いもので。
圧倒的な“量”のものに接した場合に
とりあえずそれを冠してみる。例えば
「ゲーム世代」とか「携帯世代」とか。
もっともらしくなるんだよね。

お遊びで、明日はそれを。(続く)

世代論(後)
2003年5月18日(日)
「感じやすい時期」(思春期・前期)に
ナニと遭遇したか、という命名パターン
が先行例としてあります。「ビートルズ
世代」とか「万博世代」など。

以前、会社で同年輩の男性・M君と冗談で
こんな話をしたことがあります。上の文の
ような前置きを経て

M「僕らってナニ世代ですかね?」
私「『ミヤザキ世代』っつーのはやめて
ほしいんだよなー」
M「考えたんですけど、やっぱり僕らは
『少チャン世代』じゃないスか」
私「ああ、少年チャンピオン200万部の
黄金時代ね。でも、がきデカじゃない」
M「『マカロニ世代』?」
私「そうそう!そうだよ。青春の入り口
で立ち尽くす我々(←また言ってる)の
前に現れたのが『マカロニほうれん荘』
だったよね」
M「決まりですね」


マカロニ世代。

わたし的にはこれ以上にハマるものは
ないと思う。1964年生まれの人は
1977年の連載開始時に13歳。
最も多感な時期であろう。そこで遭遇。
ジャストミート。ここで示されたモデルの
「25歳」を経て、来年度には
「40歳」を迎える。どんな乙女になる
のか。そして、その後はどうする。
ここから始まる新しい物語。

とはいうものの。女子はそんなに読んで
なかっただろうし〜。世代とまで言い切れ
ないか。作品内容に合わせて実証したい
ところですが、それはまたの機会に。

不完全燃焼感ありですが
おわり

熟睡
2003年5月19日(月)
夕方の中央線にて。中学生らしき男の子が
座って寝ている。テニスラケットが足元に
あるので練習帰りか。前のめりの姿勢で
爆睡している。終点の東京に到着。乗客は
一斉に出口へ向かう。彼は起きない。
気付いたおばさんが、肩を「ぽんぽん」と
叩くが、全然反応が無い。それを見た別の
おじさんが、ヒザを「ばんばん!」と
はたいたら、やっと目覚めた。


運動疲れで熟睡というのはいいですね。
初老の男は何もしてなくても疲れて眠い。
中学の時だったか、文化祭の準備でバタバタ
飛び回って帰宅、7時ごろだったと思うけど
部屋でかばんを置いたら意識を失って、
朝まで熟睡したことがあったが・・・。
そういう充実の眠りが失われて久しい。
若くないから当然だが。
永遠の青春映画、「太平洋ひとりぼっち」
(市川崑監督)には このへんについての
素晴らしいイメージがあります。未見の
方に強くおすすめし・・・たいけれど、
ビデオ廃盤かな。


サラリーマンの熟睡はなにか物悲しく。
かつて、同期のJ君は爆睡のあまり
横須賀線でサイフを抜き取られた。
おのおのがた、ゆめゆめ油断なさるるな。

十代みんな集まれ!
2003年5月20日(火)
さてこの日記、どういった年代の人に
読まれているのか。おそらく30〜40代の
人が中心でしょうか。多分最年少は安室奈美恵
と同い年の人であろうと推測されます。
3950(サンキューゴメンネ)*1。

■ 実 は ■

このページ、赤裸々な具体例をあげながら

「若いあなた、おたく化せずに
まっとうな人生を歩んで下さい」

という強いメッセージを発している日記
なので、10代の人に読んで欲しい(笑)
と思っているのです。まあ7才でも3才
でもいいんだけど。

そのために、一つ工夫をすることにしました。


朝日新聞の人気連載である
「ティーンズメール」が
最近単行本になりました。


これだ。いまここで

若者 悩み 相談 回答

と入力することによって、迷える若者の
インターネット検索にひっかかるかも
しれない(←姑息)。

おたく 社会 アニメ 友人 まんが 人生

さらに、検索・該当の度合いがアップした
ように思われる(←愚か)。

これで終わりだとうそつきになってしまう
ので、明日から

「ティーンズメール相談室」

というタイトルで、二三回やってみたいと
思います。


*1・・・ビジネスホテルの広告より。
(電車の中で見ました)
オープン記念の特別宿泊価格¥3,950
に、このルビが振ってあったのが何となく
可愛かったです。でも何故「ゴメンネ」と
謝る必要があるのか不明。

十代タイムトラベル相談室(1)
2003年5月21日(水)
(予告とタイトルが変わっておりますことを
お詫びいたします)


【質問】
ぼくは食べ物の好き嫌いがあります。
いろいろなものが食べられません。
たまご、おさしみ、カレー、そのほかにも
ネギとか たくさんあります。
どうしたらいいですか。
(横浜市・いさぞう君・10才)


【回答】
私もいさぞう君と同じように偏食でした。
ひとごととは思えません。
しかし、はっきり言わねばなりませんが、
食べ物の好き嫌いは しにものぐるいで
直さなければいけません。

このような場面を思い浮かべてください。

あなたは美人の女性と結婚しました。
奥さんは一生懸命料理を作ります。
いさぞう君はそれを残してしまいました。
奥さんは怒って、残した料理を皿ごと
ごみ箱に叩き込みました。

あくまでも、想像の世界です。

でも、いさぞう君が16年後にその
ような場面に遭遇、そして最悪の結末へ
至る可能性は・・・ないではないです。
いや、それが恐いからとかいう意味だけ
ではなく、毎日三度する食事を楽しんで、
健康な身体をつくるためにもですよ。

まず口に入れて、もぐもぐ噛んで
「これ、うまいな〜」と考えていると
なんとなく食べられるような気になり
ます。宗教みたいですが。
あ、「好き嫌いがなくなる壷」も
ありますよ。たったの50万円です。
家内安全にどうですか。


【おすすめソフト】

(相談内容に応じた本や映画をご紹介
します)

画・ビック錠/作・牛次郎
「包丁人味平」

料理まんがの古典ですが、ジャンプ誌
で毎週楽しみに読んでいました。
私は、カレーが苦手だったのですが、
このまんがの“味平カレー”を真似て
食べられるようになりました。まんがの
通り 醤油を入れてみたら美味しかった
のです(正確には一晩寝かす)。
料理はただ受け身に食べるだけでなく、
積極的に工夫をして食べるのもよいと
いうヒントを得ました。単行本では
読んだことないのですが、たぶん今
みても面白いと思います。ただし、汗の
入ったチャーハンは不潔かもしれない
ので真似しないほうがいいですよ。
文庫になっているはずです。

十代タイムトラベル相談室(2)
2003年5月22日(木)
【質問】
ぼくは小学校5年生です。ぼくはテレビの
みすぎでしょうか。
春休み、朝おきるとアニメの再放送を見て、
お昼に「ベルトクイズQ&Q」を見ます。
そのあと島かおりさん主演の昼メロ、
続いて時代劇、青春ドラマの再放送。
夕方になるとまたアニメの再放送、
クイズ・グランプリとスター千一夜、
歌謡番組、ドラマを見ると一日が終わって
眠ります。翌日起きると、また同じ生活です。
これでいいのでしょうか?
(横浜市・いさじろう君・11才)

【回答】
私も、昭和50年に11才だった時は同じ
ような体験をしました。いさじろう君の悩み
はひとごととは思えません。

結論から言うと、あなたがテレビを見るのが
好きならば、いいとかわるいとか思う必要は
ありません。その生活を続けて、TV番組の
知識を蓄積し続けてください。将来その知識
は役に立つこともあります(たぶん)。
でも、心の中で自分に問い掛けて、他のこと
もしたいな、と思ったら他のことをしたら
いいです。

あなたは 多分、きっと、番組の「連続性」
に過度のこだわりがあるのだと思います。
途中で2、3話見なくても人間は死にはしま
せん。もう一度言います。

テレビは 見なくても 死にません。

え?死ななくても、死ぬほどつらい?
たしかに私も、TV「日本沈没」の最終回の
頭15分ほど見逃した時は地を叩き天を仰ぐ
ほど悲しみましたが・・・。
将来、ビデオというものやDVDというもの
が出来てお金さえあれば見れる世の中になる
可能性もあります。未来を信じて下さい。
「日本沈没」もDVDになりました。

ひとつ提案ですが、最近野球まんがを楽しんで
いるあなた、町内の野球チームにはいってみて
はどうですか?実際にプレーしてみるのも面白
いですよ。ひとつアストロ戦士になったつもり
で やってみて下さい。

【おすすめソフト】
だらだらした日々を これでいいのか? と
過ごしている いさじろう君には、

石坂啓さんのまんが
「下北なあなあイズム」

を一読することをおすすめします。高校生の話
なのであなたにはまだ早いかもしれませんが。
勉強嫌いで映画ばかり見て、仮想世界に耽溺
している主人公・ロクスケ君が、同じくアウト
サイダーな友人達との関わりの中で、周りを見、
将来を考えるようになります。映画を観るだけ
ではあきたらず、映画研究部に入って能動的に
活動していくようになる彼の姿は、あなたの
未来像かも知れません。
朝日ソノラマ・絶版なので古本で探して下さい。

十代タイムトラベル相談室(3)
2003年5月23日(金)
【質問】
小学校6年生です。よろしくおねがいします。
ぼくはともだちにさそわれて、町内の野球
チームにはいっています。でも、からだが
小さいし、打てない・守れない・走れないで
ぜんぜんレギュラーになれません。
どうしたらいいですか。
(横浜市・いさのすけ君・12才)

【回答】
私も いさのすけ君と同じような経験があり、
ひとごととは思えません。
身体が小さいのは、野球の上手い・下手とは
関係ありません。ちゃんと練習をしています
か? チームの練習に参加しているだけでは
なく、自主的に練習していますか?たとえば
「打てない」のは、素振りをしてスイングを
安定させたり、筋トレで力を付けたりすれば
打てるようになります。
同じような体格でレギュラーのK君は、
あなたが「みごろ!たべごろ!笑いごろ!」
を見てる時に素振りしてます。
朝、あなたが「ウルトラファイト」を見てる
間にランニングしてます。
残念ながら、人は生まれながらにして資質が
平等ではありません。劣っている人はそれなり
に行動しなければ結果はでませんよ。
練習試合で自主的に三塁コーチャーズ
ボックスに入り“金やんダンス”を踊って
笑いを取るのもあなたの個性だとは思います
が、少しはまじめにやってみてはどうですか。

【おすすめソフト】

故・ちばあきおさんの
「キャプテン」「プレイボール」

ジャンプ(週刊・月刊)でリアルタイムに
読んでいました。単行本で読んだことはない
のですが。
泥臭いけれど、自分たちの劣っているところ
は練習で補って力をつけよう、という人たち
の姿を見て下さい。話も面白いです。

十代タイムトラベル相談室(4)
2003年5月23日(金)
【質問】
中学1年のいさきよといいます。相談に
のってください。
ぼくは小学校のときから、授業中に冗談を
言ったり、休み時間に寸劇を演じたりして
人を笑わせる道化師を演じてきましたが、
最近どうも疑問を感じてきました。人から
期待される役割にこたえられないのです。
以前はリクエストがあれば歌ったり踊ったり
していた僕ですが、パスすることが多く
なってきました。どうしたらいいですか。
(横浜市・いさきよ君・13才)

【回答】
いさきよ君の今の悩み、私にも思い当たる
季節があったので他人事と思えません。
自分が人を笑わせたい、という内的衝動から
始めた行為が、人から要求されておこなう
パフォーマンスになってしまったのですね。

“あまりバカなこともやってられない”と
いう意識になり、それよりやりたいことが
あるのならば、無理して周囲の期待に応える
こともないですよ。「最近つまんねーじゃん」
とか「面白くねーな」と言われても、一時の
ことですから。私もクラスメートに「お前、
最近小さくなったナ」と言われた時は驚い
たりしましたが。

今までのあなたの鍛練は、将来仕事で役立つ
こともあるでしょう。私も、20年後に
「沢田研二の歌まね」で取引先との商談を
成立させました。

♪片手にパソコン 心に芸人魂

誰でも芸風の転換期はあります。まわりを
気にせず、自分のキャラを確立して下さい。

【おすすめソフト】

GAINAX製作、庵野秀明監督
「新世紀エヴァンゲリオン」

“なぜエヴァに乗るのか?”

“ほめられるから?”

・・・自分の役割がなんなのか、なぜそう
いう行動をとるのか。「できること」と
「やりたいこと」というタームは年をとる
ごとに切実なものになってきます。
チルドレンのあなたも、主人公のシンジ君
と一緒に考えてください。
老いた私にはシンジと言われたら

♪あ〜ああんあん やんなっちゃ〜った
♪あ〜あああん おどろいた

ウクレレ漫談の牧シンジしか連想できません。
DVDあり。リニューアル版発売

十代タイムトラベル相談室(5)
2003年5月24日(土)
【質問】
ぼくの名前はいさたけです。中学2年です。
卓球部をやめようかどうしようか迷っています。
クラブはア・テスト前の長いテスト休みが
あって、そのあとぼくはクラブに出ていません。
卓球は好きなのですが、それより土日は映画が
見に行きたいし、平日は受験勉強もしたいし。
でも、顧問の先生に言いにくいので・・・
毎日下を向いて歩いています。
(横浜市・いさたけ君・14才)

【回答】
こんな簡単な相談もないですね。今すぐ
顧問の先生のところに行って「やめます」と
言ってきたらいいじゃないですか。おわり。

「ア・テスト」という響き、久しぶりに聞き
ました。私も神奈川県人なので2年3学期の
この共通テストは受けました。それと私も
いさたけ君と同じ時期にクラブを辞めたので
他人のような気がしません。

しかし、先生やクラブ仲間に対して何を
びびっているのですか。これが軍隊であれば
あなたが勝手にやめたら逃亡罪で処刑される
かもしれません。しかしこれは自由意志で
入部したクラブなんですから。自分の意志で
退部できます。「なんでやめんだよー」と
しつこく絡んでくる同僚もいるかもしれま
せんが、あなたがハッキリ意志表示をすれば
それ以降は何も言いません。仮に「点取り虫」
と言われても、それは17年後にアスカが
綾波レイに向かって言うセリフでトレンディ
になってますから、平気です。意味不明です
か?
なんにせよ、あなたは「人がどう思うか」
「人からどう思われるか」を気にしすぎです。
それでは、
(1)人から期待されることをするだけ
(2)人から隠れておとなしくしてるだけ
の二つの道しかありませんよ。アニメ
「もーれつア太郎」のED曲の

♪いいたい こと 言え ニャロメ〜
♪こころの 底に しまうな ニャ〜

というシャウトを思い出して下さい。

【おすすめソフト】

あべりつこ・著「すえっ子台風」(全2巻)

高校のバスケット部を舞台にしたまんがです。
主人公の女の子が(それと知らず)「自分」と
いうものをつかまえようと悪戦苦闘するさまが
描かれています。
つまんないことでクラブに出れなくなった
ウツウツとした日々がリアルだ〜。
クラブに残るにしても、他に見つけるにしても、
“自分をかけるもの”をつかんだ瞬間は美しい!
表面上はコメディ調なのですが、すご〜く
まじめなまんがです。「真面目」というと
堅苦しく感じられるかな。それより
「真摯」
という表現が適切かもしれません。
非常に残念ながら講談社・絶版。

十代タイムトラベル相談室(6)
2003年5月24日(土)
【質問】
クラスに好きな女の子がいます。この気持ち
を伝えたいのですが、できません。
(横浜市・いさとも君・15才)

【回答】
いさとも君・・・。ここ三回の質問者の子、
いさきよ・いさたけ・いさとも と、まるで
犬神家の三人のような名前ですが、気のせい
でしょうか。偶然だと思います。市川崑監督
の映画「犬神家の一族」での あおい輝彦の
「偶然です・・・恐ろしい偶然です」という
セリフを思い出しました。

さて、質問ですが、あまりにも古典的なので
答える気になりません。他をあたってもらえ
ますか。

うそです。
私も君ぐらいの年の頃に似たようなことで
悩んでいたこともあって、まあ ひとごとと
突き放すこともできないし。

ある人は「とにかくドーンとアタック!」
と言うかもしれませんが、あなたは
「いやいや、とても僕なんか・・・」と
いじいじしているのではないですか。
結論から言うと、そういうふうに思って
いるならば、スパッとあきらめて、
男の友達と遊んでいるほうがいいですよ。

「僕なんか」という意識があるんなら、
じゃあどういう僕ならいいの?と よくよく
考えてみてください。多分あなたは自分の
子供っぽさにあきれているのだと思います。
気付くのが遅すぎるとはいえ、まあスタート
はいつからでもいいので。子供っぽくない、
大人らしい・・・いや、「らしい」は余計
か。大人ってなに?か、よくよく考えてみて。

いま、手元の水晶玉に、君の将来が写って
いるんだけど、「もうどうでもいいや」と
問題を投げ出して、目先の受験勉強とか
TV番組とかに時間を費やしているうちに
同じ悩みを抱えたまま初老にさしかかる
姿が見えるよ。

とにかく、キミの「気持ち」を否定する
つもりはないけれど、幼児のような感情
だけでは相手は迷惑だからさ・・・。
昨日の いさたけ君にはアジったんだけど
今日は逆の意味で「もーれつア太郎」。

♪ニャロメ〜イ オレと結婚しろ
♪ニャロメ〜イ しあわせにするニャ〜

(唄・大竹宏)
・・・と言われても、赤い猫じゃね・・・。
しあわせになれないと思う。

【おすすめソフト】

千明初美さんの
「蕗子の春」「ときめき」

短編のまんがです。
どちらも引っ込み思案の女の子が、かっこ
いい男の子を好きになる話。当事者の
なおみちゃんとユウコさんは、それを
きっかけに自己変革の努力を続けるんだよ
ね〜。端緒や結果はどうあれ、友人との
交流の中で、自己を充実させようと悪戦苦闘
する姿が感動を呼びます。

日本は蒙古襲来(元冦)の時に、たまたま
台風が来て辛くも侵略を免れました。
その“神風”は人生においては吹きません。
タナボタを待たない女の子のがんばりを
よく読んでください、というものの
集英社・絶版。やれやれ(←C村上春樹)。

十代タイムトラベル相談室(7)
2003年5月24日(土)
【質問】
新しく高校生になりました いさのしんと
申します。よろしくおねがいします。
僕の入った高校はいわゆる進学校です。
もう今から受験勉強をバリバリやっている
人もいます。自分もやらなきゃ・・・とは
思うのですが、周りのレベルが高くて授業に
ついていくのが精一杯です。それに、学校
以外の本やら映画やら読んだり観たりしたい
ものが一杯で、あせったり何やらで非常に
混乱しています。
(横浜市・いさのしん君・16才)

【回答】
十で神童、十五で才子、二十過ぎればただ
の人・・・ということわざがあります。
あなたは別に神童でも才子でもありません
でしたが、だんだん上級にあがるにつれて
伸び悩んでいく、典型的なパターンですね。
無理して上のランクの学校行ったんだから
仕方ないでしょう・・・と突き放して終わり
にしてもいいのですが、まあ「ありがち」
な悩みにも それなりに意味はあるカナ...。
私も似たような経験があって、あまり冷たく
もできないので お話しをしましょう。

あなたは、まず大学へ進学することを決めて
いるようですね。親が行かせてくれるの
ならば、それはそれでいいでしょう。
だから、受験勉強をしなくちゃいけない、
と思っている。それも結構です。しかし、
「できるだけやって、できるだけ上のとこ」
というアイマイな発想でやっている限り、
ろくな結果にはならないでしょう。無駄が
多すぎて、あらゆる意味で後悔が一杯の
高校生活になることは必定です。

「え〜」と思われるかもしれないけど、
「できるだけ」はやめて、受験勉強なんか
「決めただけ」に割り切ってやったほうが
いいと思いますよ。あなたの問題点は
何事につけて“けじめ”が無いことです。
ベターッと何かをやってりゃあいい、
というのは非生産的です。気分も良くない
し。思いつめる意志よりも、気持ちを
切り替える意志を強く持った方がいいよ。

あとねえ、あなたは商業ベースに乗りすぎ。
予備校やら何やらは、「高校1年の今から
が勝負!」とか何とかアオるけどさあ、
こんなコピー考えてるのは、あなたとさほど
年の変わらない若造だよ。何でもかんでも
真面目に受け止めるのはよしな〜。

よほど専門的な技術を勉強するんじゃなけ
れば、どこの大学行っても同じだよ。極論
すれば。極論ついでに言えば、高校生活で
一番大事なのは「友達とハメをはずしてバカ
をやること」に尽きると思うよ。僕は出来な
かったけどね。

無責任に聞こえたかもしれないけど、結局
他人はあなたに責任を持たないから。でも、
大事な意見や評価は人の口からしか聞けない。
人にまじって自分で決める。この繰り返し
で少しずつ迷いを解消していってください。
まあ何にしても、簡単じゃないよ!
「がんばれ」とは言わない。
考えて。それだけ。

【おすすめソフト】

ティム・バートン監督
「マーズ・アタック!」

火星人が地球を襲撃するSFコメディです。
この映画で面白いのは−

・見栄坊の大統領(ジャック・ニコルソン)
・俗物の大統領婦人(グレン・クローズ)
・タカ派の軍人(ロッド・スタイガー)
・卑小なマスコミ人
(マイケル・J・フォックス)
・資本主義の権化(ニコルソン二役)

−こういった人たち、および軍人・政治家は、
全員火星人に殺されてしまう。


一方、活躍するのは−

・元ボクサーの中年黒人オヤジ
・ひきこもりの青年
・ボケかけてるばあちゃん
・ニューエイジおたくのアホ女
・歌手トム・ジョーンズ

−といった人たち。

「おたく」的な脳内世界が展開しているだけ
という批判もあるかもしれないけれど、

キャリア・ハッスル(出世主義)の人間の
脆弱さ

および

世間的には周縁かもしれないけれど、
自分の価値観で生きている人たちの強さ



ハッキリ・クッキリ造形化した作品なんです
よね〜。

「バカ映画」の系列で語られることもあるけど、
これは真の意味で“人間賛歌”の映画であると
思います。

「何のために生きるか」悩める青年には
ゼヒ観て欲しい一本です。

DVDが廉価版で出ています。
ばあちゃん(シルビア・シドニー)の
「ミュ〜ジック!」という日本語セリフが良い
ので、吹き替え版をオススメします。

十代タイムトラベル相談室(8)
2003年5月25日(日)
【質問】
高校2年になり、来年には受験があります。
準備をしなければいけないとはアセるのです
が 気ばかり急いて、思うようにすすみません。
何か時間を切りつめるしかないなあと、人
づきあいもしなくなってしまいました。
(横浜市・いさざえもん君・17才)

【回答】
そうとう思いつめているようですね。
たぶん、ベッタリ机に張り付いているだけで
勉強ははかどっていないでしょう。不器用な
人間の典型例と言えましょう。

何か思い描く理想の状態があって、それに
到達しないことでアセっているのでしょうが、
望んでいるのは何ですか? 模擬試験で志望
校の合格率が100%になることですか?
それは、どうやっても無理です。無理なこと
をしようとしてアセって暮らしてどうするん
ですか。あとは、志望校の選定に問題がある
んじゃないですか。他の人にもいいましたが、
「できるだけ上」というのは意味ないです。
意味の無いことに向かって無理なことをしよう
としている、っていうのはバカです。

と、言ってしまいましたが、私も実はバカな
高校生だったことがあるので、胸が痛みます。
他のことはどうでもいいので、学力ではない
「本当のバカとリコウ」が判る17才になって
ください。

ちなみに質問を読むと いさざえもん君は今
人づきあいを断ってしまっているそうですが、
私が高校の頃もそういう人がいました。
進学校だったので、思いつめて受験ノイローゼ
みたいになってしまう輩が・・・。
そういう人は「廃人」と呼ばれてました。

用例としては
「なんかAの奴、最近 廃人になってるよ」
みたいな。
世界的に知られている例を紹介。
「アラビアのロレンス」という有名な映画で
主人公のロレンスが悩んで砂漠にじーっと
黙って座っている、というシーンがいくつか
あります。横浜ピカデリーでこの映画の
リバイバル上映を一緒に観た友人が
「ロレンスって時々、廃人になってたナ」
と言ったのが印象に残っています。

あまり廃人状態が続くと、身体を壊します。
私もとうとう熱を出して学校を数日休みました。
不自然なことは長く続けられるものではない
です。何が本当に大事か と言う授業料として
体験してみるのもいいですが・・・あまり
お勧めできません。

【おすすめソフト】

千明初美先生の
「七夕」「バイエルの調べ」

少女まんが誌「りぼん」で活躍された千明初美
さんは、“叙情派”と形容されることが多い
ですが、いろいろなモチーフの多様な短編を
発表されています。

作品系列の一つに、受験勉強のプレッシャーに
自ら押しつぶされてしまう少年少女を描いた
ものがあります。上に挙げたタイトルが代表例
ですが、「勉強しなきゃ勉強しなきゃ・・・」
と思いつめる主人公の心理が超リアルに描写
されています。

普通はこういう心理は、できれば目をそむけたい
部分であるでしょうに、正面から描こうとした
作者の努力に、本当に頭が下がります。

主人公は二人ともやっぱりぶっ倒れて、
「再生」します。前に書いた「ちひろのお城」
もそうでしたが、作者の読者(少年少女)への
熱いメッセージは、今現在でも値打ちがそこな
われることはありません。

それなのに、単行本絶版。
次世代のために、復刊熱望。

十代タイムトラベル相談室(9)
2003年5月25日(日)
【質問】
横須賀に寄港する空母に核搭載の疑いがある
との報道がなされました。とても信じられ
ません。なぜそういうことが許されるので
しょうか。抗議デモに参加しようとしたの
ですが、保守派の友人に「声をあげたところ
でどうなるわけでもない。それは自己満足に
過ぎない」と反対され、穏健派の友人からは
「受験も近いし、よけいなことしないほうが
いいよ」と諭されて、ヒヨってしまいました。
僕は一生涯、日和見主義者というレッテルを
背負って生きていくのでしょうか。
(横浜市・いさのじょう君・18才)

【回答】
いさのじょう とは昔風のお名前ですね。
「は〜いステップジュン」というアニメで
“ゆきのじょう”というロボットが出て
いました(雪之嬢)。その兄貴分ロボ=
吉之助の声をあてていたのが つかせのりこ
さん。惜しくもお亡くなりになってしまわ
れましたが。

前振りが意味不明と思われたかもしれません
が、命短し、ということです。人の生きて
いるは時間などは一瞬ですから、その中で
昨日の細かいことにこだわり続けるのは
やめましょう。

さて、私も高校時代には“日米安保体制”
については色々考えるところあって、
あなたと似たような出来事もあって、
他人事とは思えません。社会に眼を向ければ
頭の中にハテナマークが浮かびっぱなしの
年齢ではないでしょうか。最近の歌では
「なんでだろう」というのがあって、子供が
♪なんでだろ〜う
と踊っているのを見たりもしますが、
わたし的には、コント55号のTV番組

「なんでそうなるの!?」のアイキャッチ

なんでそォ〜なるの(萩本欽一)
ヒィヒィヒィヒィヒィ(坂上次郎)

が耳の奥で鳴ります。
時はめぐり また夏が来ても、世の中的には
「なんでそうなるの!?」的な出来事だらけ
です。

政府、米国戦争支持→なんでそうなるの!?
有事法が衆院を通過→なんでそうなるの!?

頭の中が、コント55号の映像・音声で
いっぱいになります。

ふざけて書いているわけではなくて、
人間にはイロイロな意志表示の方法があり
ます。デモに参加して声をあげるのもいいし、
選挙権を得たら投票によって意趣返しをする
のもいいでしょう。どちらも手応えの無さに
「意味あんのかな?」と疑問を持つことも
あるかもしれませんが、それはあなたの考え
かた次第です。若いうちに歴史を勉強して、
今が昔に比べてどうかを見てみてください。
『爆笑問題の日本原論』なども良いテキスト
になるかもしれません(←なるかよ!)

【おすすめソフト】
樹村みのり先生の
「わたしたちの始まり」「星に住む人びと」
「翼のない鳥」「水の町」

自分たちが生きている世界をより良いもの
にするために行動しよう

ということと

その活動が失速して、すべてが失われたよう
に思われても、個人に中には希望が残されて
いる

ということ。うまく書けませんが、そういった
ことも・・・えがかれている まんがです。
過去の物語ではなくて、現在においても
将来においても、広く読まれて欲しい
作品群です。
「翼のない鳥」は作品集で読めます。
他は単行本・絶版。←なんでこうなるの!?

十代タイムトラベル相談室(10・最終回)
2003年5月25日(日)
【質問】
大学に入学したばかりの男性です。
受験ノイローゼっぽい高校時代を終え
今は ぼ〜っとしていて、のんびり
「うる星やつら」を見ている毎日です。
来年にはどの専攻ゼミに入るか決める
のですが、特になにもイメージがありま
せん。経済学科に入ったのも単に「ツブシ
がききそうだから」というだけで・・・。
そして僕は途方に暮れています。
(横浜市・いさたろう君・19才)

【回答】
途方に暮れクレタコラですか。知ってます
か「クレクレタコラ」。無用の知識です。

さて、もう19才にもなろうという人に
説教をする気もありません。貴方が敢えて
眼をそらしてきたことは、今からでも正面
きって向き合う必要があります。

私の手元にある水晶玉には、あなたが
先輩から来いと言われた会社に 何も
考えずに入社して、14年後に空前の
不景気の中で倒産・失業する姿が映って
います。その通りになるかどうかは
わかりませんが。

前に他の質問者の人に言いましたが、
「やれること」と「やりたいこと」が
あります。「やりたいこと」がわからな
くて「やれること」だけやっても暮らして
いけますが、
“ただ生体活動を維持していること”

“生きること”
は全然違います。
冒頭で するつもりはないと宣言したん
ですが、説教モード はいってますか。
柄ではないので、これでやめます。
あなたが将来見るであろう傑作アニメ映画
のセリフだけ贈ります。


生きろ。



【おすすめソフト】
市川崑監督「太平洋ひとりぼっち」

初の単独太平洋横断ヨット航海を成し遂げ
た堀江謙一の同名書を映画化。海洋アド
ベンチャーであるが、“海”をメタファーにした
人生ドラマとしても見ることが可能。
航海前の入念な調査・準備の描写を見よ!
“出航前”の大学生必見。
ビデオ(海外公開版)、LD(完全版)
ともに廃盤。無念。


【最後に】♪
【そして最後に】♪♪
【そして最後に】♪♪♪(←佐野元春調)

今回、ティーンの皆さんからの質問を
受けて、いつの時代も十代の悩みは変わら
ないのだなー、と実感しました。

映画第一作の「ロッキー」のように、
「オレが若いヤツに説教なんて・・・」と
つぶやきながら、背を丸めている状態です。

でも意外と、他人事と思えない相談が多く、
若者の悩みも類型的だなア・・・とおもわず
“遠い目”になってしましました。

将来、架空の人生相談をデッチあげるような
「自己完結」した中年にならないよう、
健康な心身を鍛えて下さい。それから何度も
言いますが、アニメを見る時は部屋を明るく
してテレビから離れて見て下さい。
皆さんの将来に期待しています。
おわり

ロボット超特急
2003年5月26日(月)
「鉄腕アトム」の5/25放映分
「ロボット超特急」を見て思ったこと。


このアニメ番組の監督の小中和哉という人は
自主映画(8mm映画)の世界では有名だった
人で、私も学生の頃、池袋の上映会に行った
ことがあります。2学年上の人で、まあ世代的
には近い人です。

「ロボット超特急」の話は、知能を持った
ロボット列車の運行開始の日、テロリストに
爆弾が仕掛けられるが、彼(列車)とアトムが
協力して爆破を切り抜ける、というものです。

開業の華やかな式典、乗り込む乗客の明るい
表情・・・これって、“昭和40年代の未来”
なんだよね〜。
「ウルトラQ」の、M−1号が出てくるエピソード
のノリ。なんとも懐かしい未来像。

爆弾が仕掛けられたことが発覚すると、一気に
描写は“パニック映画”へ。列車速度が700キロ
以下に減速すると爆発するという「新幹線大爆破」
的な犯行。

いかにも(悪い意味でなく)「育ちがわかります」
という感じ。わざとわかりやすく つくっているん
だろうけど。自分たちが吸収した養分を、次の世代
に伝えますという? 畑が枯れないか心配だけど。

爆弾を取り外したアトムが700キロのスピード
のまま地下駅構内をぶっ飛んでいくところの描写
(周りの空気が圧力で歪む)が大迫力で、表現と
しては90年代以降のものだなあ・・・と思う。

この番組、「爆破テロ事件」がやたら多い。原作が
そうだとか、現実の反映なのかもしれないが、やや
単調。

ロボット超特急の声が古川登志夫さん。この前の
アトラス編では内海賢二さんが出てて、やっぱり
ベテランの声を聴くとほっとするなあ。「アニメ
はひさしぶり」というお父さんにも安心感。

同世代のクリエイターの創作物には、点数が甘く
なりがち。仕方ないか・・・。

アキコちゃん
2003年5月27日(火)
今現在も放映されているかわからないが、
キヤノンのプリンターのCM
矢田亜希子ちゃんはかわいい。

ちょっと前の話ですが、
わたしは映画「クロスファイア」が好きなの
です。でも この映画のあとのTVドラマ、
松嶋菜々子主演の「やまとなでしこ」の
“若葉ちゃん”役でお茶の間での好感度が
超・アップしたようですね。
「クロスファイア」はあんまりヒットしな
かった(但しDVDはすごく売れたらしい)
ので、タイミングというものは なかなか
難しいとしみじみ思います。

しかし、矢田亜希子さんは名前
「やだあきこ」が
「わだあきこ」(和田アキ子)と語感一致
するという十字架を背負いつづけていかなけ
ればならない。そんなところも応援しなくちゃ
と思わせるところです。
(別件として、「アコのゴッドねえちゃん」
については後日書きます。)

前述のCF、ヘルメットをかぶってるカット
は謎だが、最後のVサイン(これも意味不明)
が視聴者の心臓をわしづかみにしますね。

わたし的には 生まれ育った環境の中で、
この34年という年月の積み重ねから
口に出せないセリフではあるが
「アキコちゃん かわいい」
と もう一度書いておこう。

文通もの(情報求む)
2003年5月28日(水)
以前ここで公約(何が公か?)した通り
横谷順子さんの

「静かなる夜のほとりで」

買って読みました(1巻・2巻)。
うーん、たしかにここで単行本打ち止めと
いうのはシドい。秋田書店さん、続き出して
下さい。お願いします。ここで書いてもだめ
か。

さてこのまんが、少年と少女の「文通」から
話が始まるのですが、私は小説やらまんが
やらで表現される「文通」に興味関心が
あって探しているのですが、なかなか見つ
かりません。

私の言う「文通もの」とはこんなパターン

》二人は文通をしているが 片方が何らかの
》事情で隠し事をしている。そして、実際に
》会おうよ・・・となった時にサテ

という おはなしです。定型?

今はメールですよね・・・。映画では
森田芳光監督の「(ハル)」、
ノーラ・エフロン「ユー・ガット・メール」
なんかがありますか。
「(ハル)」はパソコン通信の頃の話だけ
れど とても良かったですよ。

筆不精の私には決して出来ないであろうから
か、面白いなあ〜 と思うのであります。

読書の範囲が狭くて量も少ないので ほとんど
タイトルをあげられない。小説だと・・・
「あしながおじさん」基本すぎか。
一方的な報告というところもある
「まぼろしのペンフレンド」眉村卓
相手の女の子は未来人?だったかな
「ボビーに首ったけ」片岡義男
結局、会えないんだよね・・・
「終業式」姫野カヲルコ
これは手紙だけでなく交換日記とか色々。

まんがだと
篠崎まこと「潮のかおりがするかしら」
引っ込み思案なので美人のいとこと入れ
替わるというベーシックラインな一編
陸奥A子・・・の何か。あったような

世の中にはたくさんあるんだろうけれど
(特に昔の)読んでいない。。
私が読んだ中で一番良かったのは
軽部潤子さんの「ケイ先生の通信簿」
これ、ろうあ学校を舞台にした連作なんだ
けど、非常にイイ作品です。最終話が
「文通」というタイトルで、自分が聞こえ
ないことを相手に隠していたけれど 実際に
会うことになって・・・というエピソード。
泣きました。

考えるに、
なんで「文通もの」に関心があるかと
いうと、文章で表現する自分と、実際の自分
のギャップ、みたいなものが後半にクロース
アップされて、そこにどう結論を付けるか、
という展開に興味があるからなのでしょう。

何か他の作品をご存知の方は 教えていただ
けるとありがたいです。

「ナハ」(東京書籍)
2003年5月28日(水)
昨日ちょこっと和田アキ子の名前が出たので
そのつもりは無かったのですが、このことを
書くことにします。



せんだみつお・著
「ナハ」(東京書籍・2002年1月 刊)


和田アキ子と「うわさのチャンネル!」
で共演していた人ですから。あの
「アコのゴッドねえちゃん」コーナーでの
“おねーたま”という呼びかけが気色悪か
ったですねえ〜。

このような本が出ていることは知りません
でした。先日図書館(誰が購入申請したの
か・・・)で見つけて、読みました。
せんだ氏の自伝本なわけですが、
文章がくどくて、真面目には読まなかった
のですが・・・彼がスターダムに駆け上がる
ところは、興味深く読みました。ラジオから
出た人だったんですね。私は例にもれず
「ぎんざNOW!」から知ったので、それ
以前のことを知ることができたので、
この本を読んでよかったです。


せんだ氏については、まともに書こうと
すれば日記10回を費やす必要があるで
しょう。
しかし、今はまだその時ではない、と
心のどこかから声がするので、一つだけ
書いて終わりにします。


ビジネス・シーンのシステム構築において
Javaの優位性が明らかになって久しい。
追いつめられたマイクロソフト社が、
起死回生の一手として打ち返したのが
「.NET」(ドットネット)アーキテク
チャーである。

さて、日本のビジネスマンの100人中
23人までは、この名称を聞いて
あるTV番組を思い出したことと思う。
それは

「せんみつ・湯原のドット30」

そして23人中10人(多分30代後半)
は、「ドット」というところで、額から
ビームを放つポーズをとったはずである。
ああ!

こんな一事をとっても、せんだみつおの
存在の巨大さを痛感させられるのである
・・・って、このフレーズよく使うな。
ワンパターンだナ。ハ。(←死に至る病い)

「雛の章」終了
2003年5月29日(木)
日本国民の99.995%には関心の無い
ことであるとは思いますが、
0.005%の立場から・・・。

TVアニメ「プリンセスチュチュ」が
5/24放映(私が見てるのはテレビ
神奈川)で第2シーズン「雛の章」を終了
しました。これで番組そのものが終わり。

大烏に心を支配された王子と、これまた
大烏に娘とだまされて育ったお姫様が
万難を排して結ばれるまで−という
おはなしでした。
“物語”に支配された町で、なんびとも
決められた結末をむかえるよう運命付け
られているなかで、若者たちがそれを
書き換えようとする、というのが まあ
テーマであったようです。

クラシックバレエの幻想の味をうまく
アニメーションで表現していて、私は
かなり評価しているんですが、世間は
どう見てるんでしょうか。
いわゆる「アニメファン」(←私は
違うけど)だけにしか見られないと
いうのは惜しいと思います。

月に100本のアニメ番組が放映されて
いる現在(“アニメバブル”という呼称も
ある)、私の知らない良質な作品も
たくさんあるんだろうなあ〜。

ともあれ、ひとつ終わってしまいました。
さみしい・・・この気持ちは何?

「ふたり」の間は
2003年5月30日(金)
「恋するふたり」

という大滝詠一の新曲が出ていたそうですね。
全然知りませんでした。ドラマの主題歌とか。
5年ぶりの新曲だト。

大滝詠一か〜。アルバムの
「ロングバケイション」が高校2年(1981)
「イーチタイム」が大学2年(1984)
と、“学生時代ど真ん中”に遭遇しており、
どっぷり漬かって聴き込みましたねえ〜。

● とはいうものの。 ●

あれは・・・状況からすると1997年かな?
こんなことがありました。

会社の同期入社の人たち5・6人とカラオケ
に行って、たまたま私がイイ気になって
大滝詠一の「FUN×4」を歌った後。
同期の女性(既婚。以下Tさん としよう)が
しみじみ言いました

「『ロング・バケイション』、受験勉強しながら
よく聴いたよね〜。私、絶対合格して大学入って
彼つくって海岸をドライブしながらこの曲を
聴くんだ〜って がんばって勉強したんだよ〜」

と。

はあ。

私も同じような状況で同じ曲を何度も聴いたけど、
Tさんのような想念には

一度たりとも

ひとかけらも

いたりませんでしたね〜〜〜。
まあ同じ人間ではないので当然ですが、
それにしても俺って、もうすこしTさんみたいに
ロマンチックなことが考えられなかったの???
と思うだけで。欠陥人間なのかもよ(←「かも」
は不要)。

まあ、そんなことで こちらのほうがしみじみ
してしまったカラオケの夜でありました。


何度も書いてるけど、
私も うかつに「我々世代は」なんて書かない
ようにしよう、と痛感してマス。

「彼女」の事情
2003年5月31日(土)
書店のまんがコーナーで友達どうしが
「あっ、これ知ってる?」
「これ、おもしろいよ」
「え〜 こわいの〜」
などと、単行本を指差して教えあっている
姿を見かけることがあります。

あれはいつのことだったか、ブックオフ
みたいな新古書店でのこと。夏休みで
私服の女の子が二人。たぶん小学校6年生
ぐらい。まんが好きのようで
「ねえねえ、これ読んだ?」
「これは ダメダメ!」
とか、棚の端から次々と大声でコメントして
いく。
私は3メートルぐらい離れているので、
何の本かは判らない状況。
一人が、あるまんがについて熱く語り出した

「これこれこれェ!面白いんだよォ〜
彼女がァ、彼のことを好きなんだけど、
アレでコレでアアなっちゃう(←詳細は
省略していますが、ストーリー)んだけど、
彼女はソウなってコウなっちゃうのよ〜ん」

何のストーリーだろう?学園もの?これほど
までに一人の少女に熱弁をふるわせるまんが
とは?

一通り語り終えた女の子は、最後にボソッと
付け加えた

「彼女って言っても、持統天皇なんだけどネ」

うーん、里中満智子さんの「天上の虹」だった
のか!「彼女」呼ばわりしてた おかしさが
後からかなり効いてきます。

最初に言わないセンスがグー。横浜市金沢区
での出来事でした。


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