1999.07.25


ウィリアム・ワイラー監督の「ベン・ハー」を観た。

中学の時初めて観て、たしか高校の時もう一度観た。3度目か。いずれもTVで鑑賞。
前に観たときはいずれも民放で、前・後編2週に分けての放映。当然トリミング版。当然吹き替え。
チャールトン・ヘストンの吹き替えは初見は納谷吾郎、2度目は石田太郎と記憶している。
今回、7月25日という日にNHK教育(3CH)で放映されたのを観たわけだが、何故なぜこの日に
放映されるのかは不明だ。何かキリスト教にちなんだ日なのだろうか?夏休みの初めの日曜日に
のんびり超大作をご覧くださいということか。そんなことか。

しかし、むかしは3CHの映画といえば30年代フランス映画か戦後イタリア映画かと相場が
決まってたものだが。「巴里の空の下」、「望郷」、「女だけの都」とか「自転車泥棒」、
「戦火のかなた」など。あと、「モロッコ」「禁じられた遊び」「居酒屋」。白黒の、文芸作品に
限られてたような。カラーだとイキナリ「石の花」...。「赤い靴」とか。
それがカラー・シネラマ超大作の「ベン・ハー」。民放でもやらなくなったから、国営放送でヤルゾ
ということか。商業的な、価値は無くなったってわけじゃないよね。

思えば、昔は「ベン・ハー」とか「戦場にかける橋」とか「大脱走」とか民放の洋画枠でよくやってた
ものだが。いまにして思えばこれは年少映画ファンがウィリアム・ワイラーやデビッド・リーンやジョン・
スタージェスに出会うきっかけとなる非常に教育的効果の高い番組であったのだ!そう考えると、最近の
若き映画ファンはこういった映画とどこで出会うのだろうか。WOWOWで見るの?ビデオ屋で借りるの?
それとも、見てないのかなあ?そごく気になるナ。世代を超えて語り合える映画って減ってるのかなあ。
「タイタニック」とか「アルマゲドン」とかの話しかできないってさみしいなー。なんて思うけど。

それはそうと雑誌「スクリーン」とか「ロードショー」とかの売り上げってどうなんだろう。そういえば
毎号スターベストテンみたいのがあって、私が熱心によんでたころ(1970年代末)は、女優は毎週
トレーシー・ハイド、リンゼイ・ワグナー、テイタム・オニール、ファラ・フォーセットといったところ
が上位の常連。男優はロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン、アラン・ドロンといったところ
が上位常連だった。あとジュリアーノ・ジェンマとか。でも「ベン・ハー」やればヘストンが、
「アラビアのロレンス」やればピーター・オトゥールが上位にはいってくるあたりがなんとも良かったの
だが。新しい出会いがあったってことだものねえ。閑話休題。

しかし3chの映画といえば、画質は最悪ということで有名でしたよね。16ミリ映写会かよ!と
怒りたくなるような雨降るフィルム。コントラストもぶっ飛びか真っ黒で細部が良く見えナイ。字幕も
えらいはしょった簡略文で、オイオイもっと色々しゃべってるよ、とツッコミ入れたくなる代物。
事前にそんなもんだとわかっていても、見たい映画だから黙ってみていたし、色々な不満はあっても
やっぱり感動!したりしたけど。また、変な人の変な解説がつくんだよね、番組の最後に。この人誰?
って人がなんかダラダラ喋るんだよ。見なきゃいいのに見て腹立ててるんだから、自分が悪いんだよ。
それがテレビだよ。だけども今回の「ベン・ハー」は字幕スーパーだよ。ノートリミングだよ。画質も
良好だよ。いやあ、時代も変わったもんだね。ソニー提供の深夜の字幕・CM1回!(画期的!)の
ノーカット映画劇場(とかそんな名前の番組)が15年くらい前(1984年頃)にあった時すごく感激
したけど。くどいが時代も変わったネ。

さて私は現在はTVでも映画はほとんど見ないんだけど、何故に今回見たかというと。今年の米アカデミー
賞授賞式の番組で「IN MEMORIAM」というコーナーで例によって昨年の物故者が紹介されて
いったんだけど、その中で「ヤキマ・カヌート」氏の名前があったのよ。有名なスタント師で私は
「駅馬車」と「ベン・ハー」しか知らないケド。で、番組ではもちろん!「駅馬車」のあの、あのシーン。
インディアンに追われる駅馬車。馬の先御者がヤラれて手綱が落ちる!で、リンゴォ・キッドが頭まで
馬の背をジャンプしてゆくあの決死の大スタント。見るたび胸震え涙が落ちるあのシーンである。要は
「あのスタントをやった凄い人」がカヌート氏である。一応、その追悼というのが、大義名分である。

で、観たワケですが、しかしノートリミングは...窮屈だな。なんか遠くから舞台を見てるみたい。
もうちょっとなんとかならんか。でも、けっこう舞台的な人物配置もしてるし、演出意図を理解するため
にはこれでやむなしとも思う。映画の感想は、双葉十三郎氏が「アカデミー賞50回事典」(キネマ旬報
78年4月28日号増刊)の中の「寸評的アカデミー作品賞全解説」で書かれている“ありがたい霊験記
の部分などどうでもよろしく、大規模で壮烈な戦車競争の迫力場面がなによりの魅力”という一言につきる。
以上(感想ナシかい)。


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