1999.05.09


『F(エフ)』を観た。

TBSの深夜枠(ビデオ録画)にて。
羽田美智子、熊川哲也主演の松竹映画。松竹マークの金子作品は『山田村ワルツ』以来かな?
しかし金子監督もにっかつ、東映、松竹、ATG,東宝、大映、と全系列のスクリーンを飾っ
ているのはすごい。信用と信頼のなせるわざ。「平成の山本薩男」という尊称を冠したい(言
われて嬉しいかは別として)。
さて、この『F』だが、私は「なんで羽田美智子?」という疑問を持ったし、封切りではさほ
ど話題にならなかったように記憶している。で、テレビで見た訳だが、一般的な評価はさてお
き、これは結構私には面白かった。
メロドラマです。イギリスで有名になった天才バレエダンサーが足に怪我をして日本に帰国。
たまたま出会ったラジオ屋の娘とお互いひとめぼれ。ラジオDJになった彼とラジオ放送を通
じたやりとりがあり、彼女は婚約した恋人との葛藤を経て、再び舞台に立った彼と結ばれる−
という話。
この映画、放送なんとか協会という民放ラジオ局の企画作品らしく、実は「ラジオ放送」が主
役とも言える作品だったのです(←中村正ふうに読む)。うーん、こりゃあ観るまでわからん。
ラジオと言えば「アメリカングラフィティ」とか「トークレディオ」(つらい映画だった。O.
ストーン作品)なんかが連想されるが、本作中でも「アメリカングラフィティ」について嫌味
なく言及されている。10CCの「I'm not in love」等の洋楽ポップスが劇中に挿入されるが、
日本映画にしては珍しく内容(登場人物の感情)にマッチしたいいセンスで、同様の趣向がうま
くいかなかった『波の数だけ抱きしめて』という映画タイトルをふと思い出した。
さて、おそらく封切り時には熊川哲也めあての女性客が見に来たものと思われるが、彼女たちに
は冒頭何十分かの導入部分がださくてもたついて帰りたくなった人もいるかも知れない。流れが
よくないし、セリフが臭いのである。が、ラジオが始まるあたりから楽しい展開になる(クサイ
と思い続ける人もいるかもしれないが)。恋人役の野村宏伸が、ラジオで熊川と羽田が会話して
るのを偶然聞いた瞬間の、呆然とした表情は爆笑必至。思えば野村デビュー『メイン・テーマ』
(森田芳光監督)では金子修介は助監督やってたんだよね。で、最後には当然熊川哲也の舞台の
シーンあり。素晴らしい!これだけでも観る価値あり。これがあってこそドラマが成立したの感
あり。熊川哲也はセリフも上手だし是非また映画にでてほしい。
羽田美智子についてはコメントなし。だが、いつも男優だけ誉めて女優にコメントしないため筆
者にホモ説が流れているので、ひとことだけ。あのあつぼったい顔はメロドラマ向きじゃないナ。
演技パターンも小泉今日子みたいだしちょっと。ということで。
総じて、70年代の熱いラジオの時代へのオマージュと「熊川哲也」という存在を軸にした作劇が
成功した、水準の娯楽作品だと思う。ベストテンうんぬんと申すつもりはありません。

【余談】
最後の出演者のクレジットで、ラジオDJなどの名前が固まって出ているところに「つボイノリオ」の
名がありビックリ!!!どこかに出ていたのだろうか???


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