1999.03.17


岩井俊二監督のTV・ビデオ作品を見た(2本ずつ)。

ミュージック・ビデオ
サザンオールスターズ「エロティカ・セブン」(1993年)
サザンオールスターズ「素敵なBirdy(No No Birdy)」(1993年)

TV
「GHOST SOUP」(1992年・フジテレビ)
「FRIED DRAGON FISH」(1993年・フジテレビ)

「エロティカ・セブン」

スタジオ演奏に、モノクロのニュース映像・無声映画の断片が挿入される。
桑田がドラキュラ風マントをまとったり、合成で顔がグロテスクなモンスター調になったり。
ニュース映像はナチスドイツの熱狂する群集、行進する軍隊、演説するヒットラーなど。
特に特筆すべきことなし。なぜナチスとのモンタージュなのか意図不明。
題名がわからないがインサートされた無声映画画面(人が恐竜?に追われるカット)が面白い。

「素敵なBirdy(No No Birdy)」

ロケ作品。サザンのメンバーが江ノ電(江ノ島電鉄)、鎌倉の海岸で歌う。
サザンメンバーの出てるところは凡庸(というかもうどう加工もできまい)、海岸の老人が
最後に花火を見るところの画面のつながりがおかしいナド、どうも調子が出ないとの印象。
捨てカット的な点景に面白いところあり。走る江ノ電を切り取った数カット、自転車二人
乗りの男女。

「GHOST SOUP」

クリスマス。東京のマンションの一室に越してきた学生スズキイチロウは天使のナナ・マール
に翻弄されるが、成仏できない霊たちに「ゴーストスープ」を配ろうとする彼らを理解協力し
別れるまでの物語。
「FRIED…」ともども、「食べ物」をテーマにしたドラマ・シリーズの一編と想像される
(資料未調査)。約50分。
ナナが鈴木蘭々、マールはデーブ・スペクター、他に藤田弓子と私の苦手な演技タイプの人
ばかりで、正直言ってへきえきした。
饒舌と沈黙のチェンジオブペースが岩井作品の特長と勝手に考えている(love letterぐら
いしか見てないのに)が、饒舌部分が、私にとって本作ではみるに(きくに)たえられない。
ストーリーも、「成仏スープ」という根幹設定がイマイチわからないので天使二人の努力も空転。
日本兵(サカタ一等兵)の霊が街中にいるのも不可解。
だけど、映像感覚はとても良い。マンションを占拠しようとする天使とサカタの陰謀による迷子
作戦によりイチロウが町をさまようシークエンスがあるがここがとても良い。東京都港区(との
セリフあり)の古い建物、裏道の風情が「8ミリ映画的」(と言いたい)感性で切り取られてい
る。カーペンターズの「遥かなる影」の流れる別れのシーンが現実離れした印象を残し、ファン
タジーとして成立したようだ(歌のおかげかナ?)。
制約の多い(キャスト、話)条件の企画で苦しく、部分的に見所あり、というのが私の感想です。

「FRIED DRAGON FISH」

探偵事務所に、コンピュータ会社からプーという女性が派遣される。たまたま扱っていた事件、
熱帯魚「ドラゴンフィッシュ」の貴重な種類の一匹(時価一千万円)の調査に関わるが、どうも
依頼者の生物学者トーマス・アーウィングもうしろぐらい人物で、謎の人物トビヤマ、そして
トビヤマの連れている殺人者の少年などが明らかになってくる。プーは少年と知り合い心を通じ
ようとするが、アーウィングは逮捕され、トビヤマと少年はいずこへか去る。
プーは芳本美代子、少年は浅野忠信。私見で失礼だがミッチョンはブスだし演技もヘタ。浅野は
演技も上手で役柄を把握してミステリアスな雰囲気を出している。
話はミステリー調で、画面もTVドラマらしからぬ凝ったつくりである。少年は港湾地区のロフト
みたいなところに隠れて住んでいる。水槽、クラシック曲(マーラ−)...、誰でもジャン=
ジャック・ベネックスの「ディーバ」を連想したのではないでしょうか。
オリジナルな感動はなかったけれど、退屈せず見ました(←TVドラマに対しては誉め言葉です)。
最後の方、少年が連れていかれる車のシーンは小林旭の「女を忘れろ」風でちょっとせつなくなり
ました。


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