1984年に書いた文章

日本映画(MY)BEST10!!

2002.08.06


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大学二年生の時に書いた文章が出てきました。
サークル(映画研究部)の同僚が編集していた『クラス文集』に、無理矢理
寄稿させてもらったものです。学部も学年もクラスも違うのに大変失礼
いたしました。当時、都内の名画座を巡って「面白い面白い」と観ていた
邦画について語りたい!という気持ちだけは何となく伝わって・・・くるかも
しれません
。どうかな?

当時書いたままの状態で再録しましたが、現時点(2002年)での補足を
赤字で注(★)を入れました。


特別寄稿/日本映画(MY)BEST10!!

大久保勲(映画研究部/商学部2年)
 どうもみなさん、こんにちは。私、映研の大久保勲と申します。映研のM君の好意で、今回ちょっと文を書かせてもらえることになりまして、ちょっと書かせてもらいます。
 私の好みで、娯楽性の高い10本の日本映画をとり上げてみました。「時代を先取りしすぎて当時全く評価されなかった映画」「文学かぶれした映画評論家にはケナされたが、映画的楽しさにあふれている映画」などです。日頃、昔の邦画はクラい、ダサイとバカにしているあなたたちを、危険な悦楽の世界へ誘います。どれを観ても損はないと、私は確信しています。

「隠し砦の三悪人」(58・東宝/黒澤明監督作品)

(ストーリー)
 時は戦国時代。戦いに敗れた武将・真壁六郎太(三船敏郎)が、百姓の太平・又八を手下に使って、黄金と姫君(上原美佐)を守って敵中を突破するとゆーはなし。(上映時間139分)

(解説)
 「クロサワ?影武者つまんなかった〜」・・・なんて言わないでくれー!黒澤明が49才、油の乗り切ったころの作品で、スリルとアクション満載の傑作だ!「七人の侍」(54年)、「用心棒」(61年)、「椿三十郎」(62年)などをTVで観た人もいると思うが、黒澤明は娯楽映画づくりにも天才的な手腕を発揮する人で、上記の作品群は海外に与えた影響も大きく、黒澤ファンも多く、有名なところではコッポラ、ルーカス、スピルバーグ、ジョン・ミリアスなど。
★アンドレイ・タルコフスキー監督も。
さて、この作品は「スター・ウォーズ」「レイダース」の原点ともいえるもので、「レイダース」を撮る前にルーカスがスピルバーグにこの映画を観せたとゆー話は有名。「スター・ウォーズ」で、C−3POとR2−D2が砂漠でケンカするシーンは、「隠し砦…」のファーストシーンと全く同じ。危機また危機を主人公がある時は知恵、ある時は武勇で乗り越えていくという、「スター・ウォーズ」「レイダース」でおなじみの展開。菊島隆三、小国英雄、橋本忍、黒澤明の4人がシナリオを担当し、一人が絶対に突破できないような設定をつくり、他の三人が突破方法を考え、一番いいアイデアを採用するとゆーおそるべきシナリオ執筆法をとった。

(見所)
 武将の三船敏郎が馬に乗って敵の騎馬武者を追いかけ、追いぬきざまに斬るシーンはスピード感にあふれ、スゴい。雪姫に扮する上原美佐嬢のキャラクターは非常によひ。
★三船の追撃シーンは「SW/ジェダイの復讐」でもランドスピーダーで再現されていました。

(どこで観れるか)
 3年前にTVでやった。ビデオになる日もそう遠くないはず。本年6月の「乱」公開をひかえ、都内名画座でクロサワ特集がふえるのは必至。みるチャンスはけっこうあるはず。
★都内名画座はほとんど閉館しちゃいました。DVD化が予定されています。

「幕末太陽伝」(57・日活/川島雄三監督作品)

(ストーリー)
 舞台は品川遊郭。遊んだが金がなく居残った佐平次(グランキー堺)は気がききよく働くので遊女たちにもてる。そこへ高杉晋作(石原裕次郎)とその一味が品川のイギリス領事館焼き打ちを策して泊まりこみ、佐平次の協力で目的を達する。佐平次はその後どこへか消える。(111分)

(解説)
 タイトルの「太陽」は前年の日活の大ヒット作「太陽の季節」を意識したもので、“まげものスタイルの太陽族”が田中啓一(「若者たち」の山内久の変名)、今村昌平、川島雄三のシナリオのねらい。全編『居残り佐平次』『芝浜の革財布』『品川心中』の三つを中心とした落語ダネによるギャグの連発。63年に45歳の若さで死んだ奇才川島雄三の最高傑作で、テンポの軽快さは今みても驚異的。

(見所)
 主人公の居残り佐平次に扮するフランキー堺の演技! 時代劇初出演の裕次郎もよかった。二人が品川沖の小舟の上でやり合うシーンは有名。

(どこで観れるか)
 にっかつからビデオがでてる。また、都内の名画座でもよくやるし、今はやってないけど京橋のフィルムセンターでも観れる。
★「今はやってない」と書いたのは、この年フィルムセンターで火災が発生し休館していたため。

「豚と軍艦」 (61・日活/今村昌平監督作品)

(ストーリー)
 舞台は基地・横須賀。チンピラ欣太(長門裕之)ら一群のヤクザが米軍の残飯の払い下げを受け、豚を飼育してひともうけたくらむが、豚の処分をめぐって仲間割れが生じ、機関銃までもちだして争ううちに、逃げ出した豚の大群に踏みつぶされてみんな死んでいく。(108分)

(解説)
 今村昌平とゆーと去年「楢山節考」でカンヌ映画祭のグランプリとって、うわーといって観に行った方は、うわーつまんないと思ったことでしょう。今村氏は最近、横浜放送映画専門学院の学院長の仕事の方で忙しいためか何だか知らないけど、「ええじゃないか」(81年)に続いて全く不調だ。初期の彼は自ら“重喜劇”と称する喜劇を何本か作っており、これはそのうちの最高傑作。山内久のオリジナルシナリオは社会性が強いが、それ以上にコミカルで面白い。重い題材を重く描くのはバカでもできる。映画はやはり面白くみせなきゃ−−−という私の映画製作哲学はこの作品から生まれました。

(見所)
 主演の長門裕之青年を中心に、個性的な助演陣がとてもよかったが、中でも特筆すべきは丹波哲郎大先生だ。威張っているが小心の、胃病もちのヤクザとゆー役で、スゴむたびにウッとうなって帰ってしまったり、自分はガンではないかとおびえたり、出てくるたび爆笑ものだった。彼は重厚な役が多く、最近は<特別出演>のカッコつきばかりだが、はっきりいって彼は本質においてギャグだ。私はこのことにTV「バーディー大作戦」で気付き、以後できるかぎり彼の出演作はフォローするよう心がけてきた。近頃は丹波道場の経営、死後の世界や霊についての著作(TVでもやった)、TV「青い瞳の聖ライフ」のおじいちゃん役などで広くギャグ体質が理解されてきた。最近の最高傑作は映画「唐獅子株式会社」の親分役。映画は全くつまらなかったが、丹波先生の演技は異常に笑えた。そうそう、去年の「日本海大海戦・海ゆかば」とタイアップしたアロン・アルファのCFも衝撃的だった。

(どこで観れるか)
 これはなかなか難しい。名画座やオールナイトでもあまりやらないので。「ぴあ」の早見表の“ふ”のところを毎回注意深く観てほしい。
★日活からビデオが出ている

“渡り鳥”シリーズ (59〜62・日活/斎藤武市監督)

【1】「ギターを持った渡り鳥」(59年)
【2】「口笛が流れる港町」(60年)
【3】「渡り鳥いつまた帰る」(60年)
【4】「赤い夕陽の渡り鳥」(60年)
【5】「大草原の渡り鳥」(60年)
【6】「波濤を越える渡り鳥」(61年)
【7】「大海原を行く渡り鳥」(61年)
【8】「渡り鳥北へ帰る」(62年)

(ストーリー)
 地方都市へ流れてきた主人公・滝伸次(小林旭)が良民から土地や工場を奪おうとしている地元のやくざ(金子信雄)を倒し、土地や工場の持ち主の娘(浅岡ルリ子)の慕情を断ち切ってまた旅に出る。これは全作品ほとんど同じ!!

(解説)
 ついにでてしまいました。一部に熱烈なファンを持つ日活アクションのうちでも最高の人気を誇る“渡り鳥”シリーズであります。“無国籍映画”とかいって批判もされましたが、今では日本映画の狭い視野を広げた、国際化時代への先がけ作品として評価は高まるばかり。特に【4】と【5】がよひというのが定説。また、宍戸錠は主人公と敵対しつつも、しだいに友情を感じて味方するライバル的な一匹狼を連続して演じて大人気を得た。私は、裕次郎も好きだが、より軽い小林旭の方が好きだ。建物の二階から飛びおりても平気とゆー素晴らしい運動神経、あのカン高い声・・・。そうそう、スットンキョーなのは声だけでなく性格もらしく、有名なエピソードをひとつ。あるアクション映画の撮影のとき、スタッフがリアルさを追求して、本物のピストルを密かに手に入れ、アキラにそうとは知らせずに使わせた。本番で撃ったアキラ、「あれー、これ本物だぜー」といったそうな。

(見所)
 大瀧詠一や小林信彦によって語り継がれている、伝説の“アキラの階段”がなんといっても見逃せない。それは何かというと、土地の権利書かなんかをとり戻しにきた青年が悪党どもの巣食うキャバレーでピンチにおちいると、どこからともなくギターがきこえてきて、旭がキャバレーの階段を歌いながら降りてくる。そうして彼は一曲歌うのだが、歌い終わるまで悪党どもはビールびんかなにかを持って時々チクショウとかいいつう待っていて、歌が終わるとやっと殴り合いになるという、すごい場面だ。

(どこで観れるか)
 これはもう、オールナイトで観るしかテはないです。
★昔は土曜の夜に昔の映画をオールナイト上映してる映画館が都内にけっこうあったのですが・・・
★日活からビデオが出ている。

“暗黒街”シリーズ(59〜61・東宝/岡本喜八監督)

【1】「暗黒街の顔役」(59年/出演=鶴田浩二、宝田明)
【2】「暗黒街の対決」(60年/出演=三船敏郎、鶴田浩二)
【3】「暗黒街の弾痕」(61年/出演=加山雄三、佐藤充)
【4】「顔役暁に死す」(61年/出演=加山雄三、平田昭彦)
【5】「地獄の饗宴(うたげ)」(61年/出演=三橋達也、佐藤慶)

(ストーリー)
 【5】以外は舞台は悪のはびこる地方都市。刑事、または父を殺された青年などが活躍して、悪の組織を潰滅させる。

(解説)
 岡本喜八監督は、企業上層部から嫌われたという点では日活の鈴木清順と双璧をなす人物だ。真に時代をみつめ、実験的な作品をつくる個性的な監督は企業にキラわれるもので、森田芳光なんかはいい時代に現われたものだ。さて、岡本監督の特長はとにかくカット数が多いことで、それが日本映画ばなれした軽快なテンポを生んだ。また彼は俳優の持ち味を生かすのが大変うまく(加山雄三、佐藤充、中谷一郎、田中邦衛など)、特筆すべきは平田昭彦とミッキー・カーチスだ。今は亡き平田氏は“ゴジラ”シリーズなど東宝特撮もので科学者の役などを多く演じ、東宝特撮ファンから神のごとくあがめられているが、彼が“暗黒街”シリーズで演じたインテリ風の悪役は彼の最良の資質だったのではなかろうか?と私などは思う。それほど彼はキマっていた。さて、ミッキー・カーチスはロカビリー歌手で、昔のフィルムなどTVでみた人もいると思うが、彼は【5】以外のシリーズ全作に登場し、スネた殺し屋やニセ新聞記者などを軽妙に演じた。そうそう、ついでに言うと、当時の日活の若手監督たちは岡本喜八を目標に、いかに面白いアクション映画をつくるかに苦心し、それが“日活アクションの華麗な世界”を生んだ、というのが通説。

(見所)
 「暗黒街の対決」でのこと。悪の組織に中央から3人の殺し屋が派遣されるが、殺し屋たちは黒ずくめの、いかにもといった扮装をしており、そのカッコでブラブラされてても困るので、悪の組織が経営するバーのコーラスグループになるという恐るべき展開をみせるところがある。3人の殺し屋のうちの一人が稀代の怪優天本英世氏で、真面目な顔で歌っているのは最高に笑えた。岡本喜八の映画ではこのようなトボけたギャグが随所で登場し、驚かされる。
★新作「助太刀屋助六」には岡本映画常連メンバーが多数ゲスト出演。天本英世氏ももちろん出てらっしゃいました

(どこで観れるか)
 これも“渡り鳥”シリーズと同じく、都内名画座のオールナイトぐらいでしかお目にかかれないのが悲しい。そのうえ、日本の映画会社はプリントの保存が非常にいい加減なため、カラーの退色が著しい。皆さん、カラー映画は早めに御覧下さい。
★「暗黒街の対決」は東宝から出たビデオ買ったが、他は???

「殺人狂時代」(67・東宝/岡本喜八監督作品)

(ストーリー)
 犯罪心理学の大学講師桔梗信次(仲代達矢)のもとに、ある日「大日本人口調節審議会」の者と名乗る殺し屋が桔梗を殺しに来るが、あっけなく死ぬ。この団体は、人口調節のためにムダな人間を殺すのが目的で、会長はヒットラーに心酔する精神病院院長・溝呂木(天本英世)で、元ナチスの将校も加わっている。桔梗は「審議会」に迫る。同会は次々に殺し屋をさし向けるが全て失敗に終わる。そして桔梗はついに院長溝呂木を倒し、同会を潰滅する。(原作・都筑道夫『飢えた遺産』。96分)

(解説)
 ストーリーを読んで、17年前にこんなナンセンスな話の映画があったんかいな、とオドロいたあなた、その通りです。この映画は会社に全く理解されず、完成してから1年も公開してもらえず、さらに公開してみれば“東宝創立以来の不入り”ですぐ打ちどめになってしまったのです。しかし、近年都内の名画座で若い人に大ウケで常連作品となった。まるで、初放映時は低視聴率に苦しみ、のちに評価され再放送するたびに視聴率がウナギ上りという「ルパン三世」旧シリーズのようなケースだ。義眼に毒針を仕込んだ女、松葉杖からメスを発射する男などの殺し屋や、オロシガネやジャガイモの皮むきで殺し屋と闘う、時価5000円のシトロエンに乗った水虫の主人公など、当時としては意表をつきすぎたようだ。ジャンルとしてはアクション・コメディ。ちなみに、「チャップリンの殺人狂時代(Monsieur Verdoux)」とは違いますので、お間違えのないよう。
★新作「助太刀屋助六」の仲代達矢は良かったなあ!

(見所)
 終盤、桔梗VS溝呂木の精神病院内での“スペイン式決闘”シーン。“スペイン式決闘”とは、お互いの左手をハンカチで結び、右手にナイフを持って斬りつけ合うという恐ろしいもの。病院の奇妙なセットとあいまって、映画史上に残るであろうすさまじいシーンとなった。

(どこで観れるか)
 都内の名画座で思い出したようにやる。池袋の文芸地下など。
★その後、ビデオ化されたので、ご近所のレンタルビデオ店にあるかもしれません。

「満員電車」 (57・大映/市川崑監督作品)

(ストーリー)
 ビール会社に就職した大卒の青年(川口浩)は、父親の発狂、彼自身が白髪になってしまう職業病、失業などと闘いながら次第にドロップ・アウトし、ついに辺地の小学校の小使いになるが、そこもクビになる。(100分)

(解説)
 痛烈な社会風刺の喜劇。奇妙なタッチゆえ“映画漫画”などと呼ばれた。野心的な監督はよく社会に挑みかかってそいつをギャグにしてやろうと試みるが、必ずしもうまくいかない。市川崑しかり、大島渚しかり。チャップリンの「独裁者」「殺人狂時代」、キューブリックの「博士の異常な愛情」などは珍しい成功例だ。この作品「満員電車」は社会や人間の誤りを攻撃するためスラップスティックの方法を用いたが、あまり笑えない。スラップスティックの方法によって世界のバカバカしさがムキ出しにされるため、笑うより前に唖然としてしまうのだ。だから笑えないといっても無価値じゃない。最近のコメディは何だい一体、世紀末的な笑いばっかりでよー。ああそうそう、市川崑についてもいっとくと、この作品のときはまだ42歳、才気煥発、実験精神旺盛なところから「コン・コクトー」(ジャン・コクトーをもじったあだ名)と呼ばれたそーな。

(見所)
 セリフが機関銃のごときテンポで連発され、展開もそれに劣らず非常にスピーディーで、野田秀樹の芝居も真っ青だ(と思う)。川口浩・川崎敬三と最近ではすっかりギャグにされてしまった二人が若さで主演。なお、TV「うる星やつら」(チーフディレクターやまざきかずお)がアイデア・構図・編集の特異さでマニアを感涙にむせばせていますが、よく似た感覚がこの映画で味わえる(と思うよ)。

(どこで観れるか)
 これは非常に難しい。名画座でも、よっぽど大規模な市川崑特集でも組まない限りやらないし、これは都内の図書館での16ミリ上映でも待つしかテがなさそうだ。
★現在ではDVDが発売されています。

「太平洋ひとりぼっち」 (63・石原プロ/市川崑監督作品)

(解説)
 ストーリーは説明不要だろう。62年夏、たったひとりで94日間の太平洋ヨット横断旅行をやってのけた堀江謙一青年の壮挙を映画化したもの。さて、なぜ私はこの映画をとり上げたのでしょう。それは、うーん、うまくいえないが、なんとゆーか、ひとつの時代のひとつの青春像をみた!とゆー感動があったからかなー。“青春”なんてコトバを使ってしまいましたが、まあ我慢してつき合って下さい。さてさてこれを読んでいるアナタ、1年の猶予をあげるから“今”の“青春”像を描いたシナリオを書いてごらんなさい、といわれて書けますかな?ちょっと難しいでしょう。私はとても書けません。その、なんというかまあ、この「太平洋〜」についていえば、主人公の堀江青年の行動と、その時代相にズレがないんだなー。−−−とゴタゴタ書いてきて、突然無力感に襲われた。文字で説明できるか!文章で説明できるか!!やっぱり、映画は自分の眼でみてほしい。しまった、この一文さえかきゃ終わりだったんだ。今まで俺は何を書いてきたんだ・・・。でも、こんな雑文でも、映画を自分の眼でみる、という行為へ誰かをかりたてるキッカケになるかもしれんという希望のみで、最後まで書かせてもらいますっ!

(見所)
 堀江青年に扮した石原裕次郎の軽い演技と大阪弁。また、私は事情通じゃないんでよく知りませんが、この作品で円谷英二の“円谷プロ”が初仕事(マーメイド号が暴風雨に襲われるシーンの特殊効果)をしたらしいですので、ファンの方もどうぞ。ついでにつまらない話をつけ加えますと、武満徹の作曲したこの映画の音楽はたいへん美しいもので、私は拙作「ブラック・ホールの逆立ち」のラストに、この映画の中でマーメイド号が太平洋上でアメリカ客船と出逢ったときの音楽を使わせていただきました。

(どこで観れるか)
 去年の9月19日の月曜ロードショーでやったので誰か録画してる人もいるかも。ちなみに上映時間は97分なのでTVでは4分ほどカットされていました。ついでに言えばTVでやったのは海外版らしく、私が映画館でみたのとは冒頭のタイトルが全く違いました。
★この10年ぐらい後に、レーザーディスクで「太平洋ひとりぼっち・オリジナル版」が発売されました。

「にっぽん泥棒物語」 (65・東映/山本薩夫監督作品)

(ストーリー)
 話は昭和24年にはじまる。義助(三国連太郎)は“破蔵師”(蔵専門の泥棒)で、苦手の安藤警部補(伊藤雄之助)と追いつ追われつしている。地方でのある仕事の夜、線路のそばで見知らぬ一団と出あったが、この夜列車転覆の大事件が起こった。その一団に関して義助が目撃したことを法廷で証言さえすれば、無実の罪をデッチ上げられている被告たちは救われる。しかし、自分はその夜泥棒したことがバレてムショ送りになるので、迷いに迷うが、意を決して真実を明らかにする。(117分)

(解説)
 昭和35年に、松川事件(映画では“杉山事件”)の真犯人を目撃したという怪盗が現われ、法廷で証言したという事実に基づいた喜劇。監督は去年(83年)の夏に亡くなった山本薩夫。彼は古くは「真空地帯」、新しいところでは「戦争と人間」「不毛地帯」「あゝ野麦峠」など、社会性の強い作品が多いが、「金環蝕」やこの作品など娯楽性の高い作品も作った。彼はイデオロギーまる出しの失敗作も多いが、この映画は泥棒人生をコミカルに描くのを前面に押し出し、私はこれは唯一の成功作じゃないかと思う。

(見所)
 最近は息子の佐藤浩市もがんばっているが、やっぱり親父の三国連太郎はすごいぞー。この映画ではギャグ演技だが、実際の“破蔵師”に指導してもらったという蔵破りのわざもあざやか。最後の法廷での珍陳述シーンは爆笑もん。説明するのは悪いんで、まあ観て下さいな。

(どこで観れるか)
 今まではあまりやらなかったが、去年の12月から今年の1月にかけての渋谷・東急名画座の“山本薩夫セレクト・フェア”でニュー・プリントで上映されてから、ポツポツ名画座でやるようになったので、観るチャンスはけっこうあるはず。
★東映からビデオが出たが、まだ販売されてるのか???

「絞死刑」(68・ATG=創造社/大島渚監督作品)

(ストーリー)
 女子高生頃氏の犯人の朝鮮人少年・Rは絞首刑に処されるが、なんと絶命しない。心神喪失状態の彼になんとか自分の犯した罪を思い出させ、あらためて刑を遂行しようと関係者は躍起になるが・・・。(117分)

(解説)
 ATGの自主製作映画第1弾。58年に起きた“小松川女子高校生殺人事件”に財をとった。とつぜんカタい映画をとり上げたなあと思う方もあるでしょうが、この作品はいちおうスラップスティックの方法にのっとっており、関係者の狼狽ぶりは全くブラックユーモア的に描かれています。といっても、そんなに笑える映画じゃなく、考えさせられる映画だ。時に“国家”について。今までは意図的に楽しめる作品を挙げ続けてきたが、統一性がくずれてしまった。まあいいか。でもまあ、これは今や皆さんおなじみの大島渚の作品では最高のものだと思いますよ。「戦場のメリークリスマス」も傑作だけどさあ。ついでにいえば、この映画は68年のカンヌ映画祭に出品されたけども、映画祭がフランスに同年おこった5月革命の影響で中断されてしまった。そのためカンヌ市内の劇場で上映したらその年最高の大ヒットとなって、圧倒的な支持を得、映画祭やってればグランプリは確実だったといわれた。いやー、いかにも68年頃といったエピソードだが、この頃から“世界のオーシマ”になったワケ。

(見所)
 とにかく、処刑されながら死ななかった人間・Rをつくりだしたというスゴいアイデアのシナリオの勝利。ちょっと考えつかない設定で、全く天才的だと思います。一千万円という超低予算で作られたが、やはり映画はアタマしだいであるということを世に広く知らしめた功績は大! 渡辺文雄、佐藤慶らのコミカルな演技もよひ。“シティ・ロード”誌などでおなじみの映画評論家松田政男氏が検察事務官の役で出演し、さりげないギャグを放っているのも見逃せない。

(どこで観れるか)
 ビデオ発売されている。レンタルあり。
★DVDが発売されているようです。

(あとがき)

 ここまで読んでくれたアナタ、どうもありがとう。でれかひとつでも「観たいなー」と思ってくれたならば、これにまさる喜びはありません!また、「こんなバカなマニアックなヤローの推すエーガなんか見るもんか。オレはオレの好きな映画をみるよ」と思った方、それでも結構、あなたは正しい!

−お・し・ま・い−

1984.11.29
JAPANESE ZOETROPE (R)

2002.08.06/37歳からのコメント

19歳のキミに言いたいことは、

書籍からの引用は明記すること(キネ旬の事典とか、佐藤忠男氏の著作とか)、

「という」を「とゆー」と表記するような見るに耐えない軽薄な表現をしないこと

−である。10代だから許されるというものではありません。自分の表現をしてください。

あと、「ギャグ」という言葉の用法が誤っています。しっかり勉強してください。


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