「たかくらあつこ」・・・はじめから青年誌で描いているとお思いの方もいらっしゃるかもしれませんが、少女まんが誌『りぼん』でデビューしています。
『りぼんオリジナル1984年春の号』で「いよっ勝盛くん!」を読んだ時の私の感動を、あなたにどうやったら伝えることが出来るのでしょうか・・・。
一言で言うと「アホな男の子とアホな女の子の出会い」というストーリーはコメディとしては類型かもしれないが、ここには「人間の愚行への愛」があった。主人公に限らず登場人物は全員「アホ」だが、これは人間の普遍的な性向をあらわしているだけであり、作者の人間への愛情が真実を描かせていたのだろう。高倉あつこさんは「人間愛の作家だ」と断言しよう。
87年以降『りぼん』を読まなくなった私が、高倉あつこさんがヤンマガ誌で描いていてその「ハゲしいな!桜井くん」がヒットしていることを知った時、どんなにうれしかったか・・・。しかも作品を読むとデビュー作から変わらぬ「アホ」な登場人物への愛情があふれたもので、再び私は感動したのだった・・・。
学生時代8ミリ映画を撮っていた私はひそかに「勝盛くん」と第二作「とうとつですけど…」をミックスしたシナリオを書いていた。結局映像化は果たさなかったが、人生においては「アホ」なスト−リーをまっとうしよう…と、心に焼き込まれた高倉作品は生きている。
【高倉あつこさんのプロフィール】
1962年11月9日生まれ。東京都杉並区出身。84年『りぼんオリジナル春の号』でデビュー。デビュー作は「いよっ勝盛くん!」。『りぼんオリジナル』誌で数作描いたのち、1987年『ヤングマガジン』の第7回ちばてつや賞に「どこが小心だ!」が佳作入選。翌88年『ヤングマガジン海賊版』に「その瞬間(とき)のために」を発表して青年誌で再デビュー。89年から『ヤングマガジン』で連載を開始した「ハゲしいな!桜井くん」が大ヒット。著作に「中村動物病院の犬」「修平でもう一杯!!」「もっと一緒にいたくって −老犬と暮らすということ」「あしたも通販」がある。『ヤングチャンピオン』誌に「泌尿器科医一本木守!」を、『イブニング』誌に「ハゲまして!桜井くん」を連載中。
(2002年5月現在)
掲載誌の版元は全て「集英社」です。
年度 |
SEQ | 作品名 | 掲載誌及び号 | 頁 |
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1984(昭和59)年 |
1 | いよっ勝盛くん!
【デビュー作】 |
りぼんオリジナル春の号 | 32 |
〃 |
2 | とうとつですけど… | りぼんオリジナル夏の号 | 31 |
1985(昭和60)年 |
3 | どらまちっくハッピータイム |
りぼんオリジナル初夏の号 |
31 |
1986(昭和61)年 |
4 | 城之崎惣吾郎のヒーローは死なず |
りぼんオリジナル初夏の号 |
32 |
版元は「集英社」です。
りぼん新人まんが傑作選【3】 |
りぼんマスコットコミックス RMC−327 | ||
1985年3月20日発行 | |||
編者:一条ゆかり | |||
作品タイトル | 作者 | 掲載誌・号数 | 頁数 |
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コバルト・ブルーのひとしずく | 柊 あおい | りぼんオリジナル1984年初夏の号 | 32 |
いよっ勝盛くん! | 高倉 あつこ | りぼんオリジナル1984年春の号 | 32 |
ラディカル・ロマンス | 吉住 渉 | りぼんオリジナル1984年初夏の号 | 31 |
3匹の竜 | しゅろ まさこ | りぼんオリジナル1984年秋の号 | 16 |
教えてやるんだありがたく思え! | さくら ももこ | りぼんオリジナル1984年秋の号 | 10 |
あの日見た青空 | 水野 節子 | りぼんオリジナル1984年冬の号 | 16 |
あの夏 | 矢沢 あい | りぼんオリジナル1985年早春の号 | 32 |
【作品解説】 「虹を渡る7人」をえらんで |
一条ゆかり (りぼん新人漫画賞 審査員長) | (5) |
『虹を渡る7人』について(私のコメント)
古本屋で売ってます。よかったら読んでみて下さい。
のちのビッグネームがならんでいる。全作『りぼんオリジナル』で読んでいるので感慨深いが、特に「さくらももこ」氏を読んだ印象は強烈だった。
柊あおいさんの「コバルト・ブルーのひとしずく」、ずーっと後に岩井俊二監督の映画『四月物語』を観たら“本屋”とか“傘”とか“雨”とかの道具立てが一緒で(話は違う)、ちょっと「へえ〜」と思ったことがある。岩井俊二監督は『りぼん』の漫画家、「田渕由美子」さんのファンだったと聞いたことがある。典型的な少女マンガ的な“パターン”を使った−ということであろう。