あべりつこさんについて


戻る

“講談社系”の少女まんがってあまり読んだことがありませんで、あべりつこさんについても最近まで読んだことがなかったのです。なぜ“講談社系”を読まなかったのか?さすがにメガヒット作「キャンディ・キャンディ」「はいからさんが通る」「アリエスの乙女たち」ぐらいは読んでいたが...。原作付きの作品が多く、作者の個性が感じられないところからか。はたまた、絵は巧いんだけど、会社(編集者?)によって禁じられてるのか、作者の肉声(落書きとか)が一切ないのがイマイチ親しみがわかない原因だったか。私にとっては、唯一大和和紀さんだけが親しみが持てる人だったのですが。

あべりつこさんの名を知ったのは、雑誌『CREA』1992年9月号“特集THE少女マンガ!!”においてです。“大アンケートによる永遠の少女マンガベスト100”に入っていた−−−わけではなく、まんが家・女優・タレントの挙げた“私だけのベスト10”の中で... 女優・工藤夕貴が『でっかいちゃんと集まれ!』を堂々一位に挙げていたのです(彼女の2位は何故か『ドラえもん』。少女まんがか?)。それ以来、工藤夕貴のワールドワイドな活躍(応援してます!)とともに、『でっかいちゃんと集まれ!』という奇妙なタイトルが私の頭の中で大きくなってきて、たまたま古書サイトで見つけたので、“ついでに”(目当ては他作だった)買ってみたのです。

読んで驚きました。工藤夕貴もコメントしていたように“単純明快!!兄弟愛が最高に感動的”ではあるのですが、その作品世界にグイイイイィインとひきこまれ、すっかり魅せられて、『でっかいちゃん』以外の単行本も読んでみたところ...

題材的には「兄弟愛」「家族愛」。新しい題材、新しい表現に果敢に挑戦!という作家さんではないようだが、ここにあるのは...「思いやりの心」や「くじけない精神」。メインは「他人への共感」...。兄弟、親子、また友人との間での。

登場人物はかなりギリギリのところまで追い込まれるんだけど、描写が悲惨にならないのはこの作者の資質「愛敬がある」ところか。どこかユーモアがある。単行本のプロフィールで、ちばてつや先生のアシスタントをしていた−と知り納得。個性は当然違うけれど、家庭内の描写のディティールなんかはちば先生譲りかも。絵は、顔は大和和紀さん似かな。人物の身体全体の描き方が非常に伸びやかで時々あらわれるスタイル画のような大きな絵は特に素晴らしいなあ〜。ホンワカした雰囲気をあらわす「花びら」がフワーと飛ぶ描写も特徴的。
あと、人物をあだ名で通す(徹底的に押し通す)センスが好きです(カッコ内が本名)。
『でっかいちゃん』の「でっかいちゃん」(町田一美)、「ブーちゃん」(高木進)
『すえっこ台風』の「貴公子」(山辺さん)、「雪男」(雪山岳夫先生)
『ママの王子さま』の「一歩一歩」(南郷正)、「ゲジゲジ」(石動先生)
ユーモラスでかつ独特な作品の雰囲気の一因となっているなあ〜。

作品は傑作揃いで、私は出会いの『でっかいちゃん』が最もインパクトが強いですが、代表作としては、『すえっ子台風』の名を挙げたい!「スポーツものとしては何か、盛り上がりに欠けるな〜」とかいう声もあるようですがどうしてどうして。この、高校バスケット部を舞台としたこの作品は、たとえれば、原石が磨かれて宝石になる過程を見るような...身を削る苦しみと それゆえに生まれる人間の心の輝きがあふれています。ディティールも素晴らしく、ちょっと例を・・・なんて書ききれないほどです(別のところに書きます)。別マの沖倉利津子さんの"セッチ"シリーズ(これも素晴らしい)なんかは、『すえっこ台風』の発展系と...と私は認識。両者とも大いに再評価したい!

文庫本で出ている みなもと太郎氏の『お楽しみはこれもなのじゃ』で、あべりつこさんは子育てのため休筆された−という記述を読んでそうか...そうなのか... とちょっとがっかりしました。あべりつこさんの本は、私は古本屋の書棚ではお目にかかったことはなく、古書サイトで時々見かけるくらいなので、軽く「読んでみて」というのには抵抗があるのですが、あえて言います。なんとかどこかで探し出して是非読んで下さいっ!!!

講談社さんへ復刻を熱烈要望。他社でもOK。

戻る