わたしのベスト10


「わたしにとってのベスト」という意味で、「完成度」とか「歴史的価値」といった尺度とは無縁に挙げました。
基準は「わたしにとっての衝撃度」「繰り返し繰り返し読んでしまう度」とした。自分で決めたことながら、
10作だけとはつらい。『夏の歌』も『カッコーの娘たち』も『菜の花畑のこちら側』も入れられないではないか。

『ウルグアイからの手紙』(1973年)

冬の沖縄へ一人で行ったおり市中の古本屋で出会う。夜、ホテルで読んだ時の感動は忘れがたい。
テーマ主義的でないためかあまり論評の対象にならないが、印象的なセリフやシーンが満載の作品だ。

『悪い子』(1980年)

ストーリーまんがとしては初めて読んだ樹村さんの作品。それまでのわたしの狭いまんが観を
一変させた衝撃の作品。以来、西の市川崑さん、東の樹村みのりさんと信奉する日々。

『早春』(1976年)

樹村みのりさんにしか表現しえない複雑な感情の世界。人に紹介する時「友情の話」とか「親友の話」
というしか言葉がないが、内容を伝えきれない非力を痛感。まんがは読んでもらうしかないか。

『見えない秋』(1974年)

“シリーズ・ポケットの中の季節”の他の作品『贈り物』、『雪どけ』(1974年)、『菜の花』(1975年)
と同様に難解な作品だが、何度も何度も読んでは考え込んでしまう。本作は特に再読度高し。

『40−0』(1977年)

樹村さんには珍しい“テニス・スポーツまんが”。スポーツに限らぬ上達・成長の過程の喜びがストレートに
伝わるし、相手の立場を思いやり、がんばれあきらめるなと励ます愛情が胸を打つ。

『帰り道』(1987年)

衝撃作。読んだ翌日は仕事になりませんでした。樹村さん作品の1ジャンルである“ルポルタージュもの”
はどれもインパクトが強いが、本作は「信じられないような」と形容したい、入魂の一作。必読!

『かけ足東ヨーロッパ』(1979年)

ご本人主演の本作、変名「黄村うねり」の『ジョニ・ミッチェルに会った夜の私的な夢』(1983年)、
ともに樹村みのりさんのキャラクター(人格)の魅力が全開の好編。単行本再収録が多いのも人気ゆえか?

『マルタとリーザ』(1979年)

ナチ時代の強制収容所を舞台にした本作は、読み返すたびに主人公のリーザと一体化して困惑してしまう。
良心が無力となる世界。人間の残酷と人間の美しさがコラージュされた、まんがならではの傑作。

『また明日、ネ』(1984年)

『夏を迎えに』(1985年)、『わたしが人類ですっ』(1989年)と続く“妙子さんシリーズ”の
代表として。いかなる状況、いかなる時代においても前向きに生きる樹村イズムの真骨頂。必読!

『わたしの宇宙人』(1977年)

エンタテインメント作品(?!)系列では突出した一編。人物のユニークなリアクション、意外性のある
ストーリーの転がり方、樹村さんのプロフェッショナルな手腕を堪能できる、しかも「感動作」。


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