笠井
今回はピアズ金沢で行っているピア・カウンセリングの具体的な内容についてお話させて頂きたいと思います。
1、ワン・ストップ福祉サービスの指向
現代の医療や福祉システムは縦割分業体制になっています。もしそこで、病院や行政などの関連受け皿がお互いに横の連絡を取り合い流れ作業のように途切れのない連続した福祉サービスを障害者に提供できれば理想的です。
例えば、退院するとき病院は行政へ引継ぎをし、行政は関連各機関へ情報連絡し、当事者も交えて引継ぎを行い必要な医療や福祉サービスが途切れなく受けられるようにする。
しかし、現実には病院や行政には守秘義務が課せられており図1に示すようにサービス提供者サイドでの横の連絡はあまり取れてはいません。
また、守秘義務だけでなく自分の担当セクション以外の他人の職務領域を侵害することに抵抗があるようです。
そのため、横の連絡はサービス需要者である障害者や家族が自分でマネージしなければなりません。とはいえただでさえ突然脳血管障害という重病になって気が動転している状況で、予備知識のないこれらのことを情報もなくマネージするのは大変な負担となります。その結果情報さえあれば享受出来たサービスを知らないため受けられなかったという人が多いのです。この情報の狭間をピア・カウンセリングで図2のように自分たちの経験に基づいてナビゲーションできればと思っています。
例えば、年金、介護、保険、復職、失業保険、障害者手帳、企業福利厚生制度、公的福祉サービス、自動車免許の取得、運転時の注意、自宅のバリアフリー改造・・・などです。ただ、障害者やその家族に代わってマネージすることはできません。先輩としてできる範囲でナビゲーション・サポートするだけです。
2、後遺症との闘いについての先輩の経験を話す
脳血管障害では病理治療した後でも機能障害、体調障害、心理的障害など多くの後遺症がのこります。これら後遺症に対して現代の医学で対応できる範囲は限られています。その結果障害者とその家族には明日の見えない孤独な闘いが続くのです。しかし、現代の医学で対応できないこれらの苦しみも同じ病気の先輩たちの経験を聞くことにより、ある程度自分たちの明日が類推できるのです。
もちろん、先輩がよくなったからといって自分がよくなるわけではありません。しかし、同じ症状の多くの先輩を見ていると自分の将来がある程度推測できるのです。それも医療関係者が言う「一生車椅子でしょう」とか「これ以上よくなりません」といった悲観的なものではなくバラ色ではありませんが、それなりに希望がわいてくる未来が推測できるのです。
「明日への希望がわいてくる」ということは「生きる勇気がわいてくる」ということなのです。
3、生甲斐のある生活への手助け
現在の地域の障害者受け皿はADL(Active Daily Life日常生活)への支援が中心です。QOL(Quality of Life 生甲斐のある生活)は自分で見出さなければなりません。とはいえ障害者が一人で生甲斐のある生活(QOL)を求めるのは至難の業です。そこで生甲斐のある生活(QOL)を実践している先輩や、そのサークルを紹介し「仲間の輪の中で生甲斐探(QOL)探し」のサポートが出来ればと思っています。
4、家族への支援
後遺症との闘いは家族にとっても辛い孤独な戦いです。
@ 右往左往するのではなく医療機関や福祉機関などとの賢いマネージメントが大切です。
A 次に相互依存症からの脱却です。冷たすぎず、甘やかしすぎず回復状況に応じて自立を促すことが大切です。
B 同じ症状の障害者を持っている家族同士を紹介し、悩みを打ち明けあうことは家族にとって救いになるようです。