旧幕府軍艦隊 |
艦隊総帥 榎本武揚(釜次郎) 指令官 荒井郁之助 |
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品川沖の旧幕府・榎本艦隊。(写真、右上から回天・開陽・咸臨・長鯨・美嘉保。手前が・神足。蟠龍と千代田形は写っていない) |
慶応4年(1866)8月19日午後11時。月夜の品川沖に進発のラッパがこだました。勝海舟と西郷隆盛によって取り交わされた江戸城の無血開城が行われた翌日のことである。旗艦「開陽丸」に乗り込んだ旧幕府海軍副総裁・榎本武揚は、総勢2000名の幕臣らを乗せた7隻の船とともに北の大地(函館)を目指してゆっくりと出発した。このとき「開陽」は「美嘉保丸」を「回天」は「咸臨丸」を、それぞれロープで曳航している。美嘉保は帆船であり、かつて大西洋を横断した咸臨丸も老朽化し、蒸気機関は、すでに取り外されていた。品川を出発した榎本艦隊は、この後すぐに台風に巻き込まれて散開する。「美嘉保丸」は曳航のロープが切れた後に「回天」に接触し沈没。「回天」はここでマスト1本と大事な舵を失っている。「咸臨丸」も漂流した後、清水港に避難するが富士山丸・飛竜・武蔵の攻撃を受け新政府軍に拿捕される。ここで副長春山弁蔵の他、30名が殺害される。その時咸臨丸には白旗が掲げられ停泊し、艦長小林文字郎は藩庁に連絡をするため上陸していた。また蟠龍も機関故障のため伊豆の亜良里(あらり)港に寄港した後、艦隊の後を追って北上している。二隻の艦を失い六隻となった榎本艦隊が仙台で集結できたは9月27日の事であった。 |
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艦名 | 開陽丸(かいようまる) |
艦種 | 木造船 蒸気内車 |
大きさ | 全長72.8m 幅13m 2590トン |
馬力 | 400 |
速力(ノット) | 12 |
兵装 | 砲 26門 |
製造 | 1865年 オランダ製 |
船将(艦長) | 沢太郎左衛門 |
備考 | 榎本艦隊の旗艦で北海道の江差沖にて座礁、破壊 (現在は引き上げられて博物館となる) |
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艦名 | 回天丸 |
艦種 | 木造船 蒸気外車(直径6m) |
大きさ | − |
馬力 | 350 |
速力(ノット) | − |
兵装 | 大砲 12門 |
製造 | 1855年 フランス製 |
製造 | 甲賀源吾 |
備考 |
土方歳三以下新選組、彰義隊、フランス海軍ニコル少尉乗船、宮古湾海戦にて幕府軍最新鋭艦「甲鉄」に接舷して切り込む。甲賀艦長戦死ら多数戦死。5月7日。函館の役にて浅瀬に乗り上げ座礁し浮遊砲台となる。後に官軍捕獲 |
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艦名 | 蟠龍丸(ばんりゅうまる) <エンペロール号> |
艦種 | − |
トン | 370 |
馬力 | 60 |
兵装 | 4 |
製造 | 1858年イギリス |
船将(艦長) | 松岡磐吉 |
元ビクトリア女王の遊覧用ヨット。遊撃隊とフランス海軍士官クラトーが乗船、函館の役にて焼失 |
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艦名 | 千代田形(ちよだかた) |
艦種 | 木造 蒸気内車 |
トン | 138 |
馬力 | 60 |
兵装 | 大砲 3門 |
製造 | 1866年 長崎製鉄所 |
船将(艦長) | 松本弘策 |
備考 | 日本初の蒸気内車船。明治2年。5月4日函館の役にて暗礁に乗り上げた後、無人漂流中、官軍に捕獲される。 |
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艦名 | 高雄(たかお)丸 別名:第二回天 |
艦種 | 木造船 蒸気内車 |
トン | 350 |
馬力 | − |
兵装 | 大砲 5門 |
製造 | − |
船将(艦長) | 小笠原賢三 |
備考 | 元秋田藩軍艦だったが函館港で榎本海軍に拿捕される。後に座礁した「神足」の大砲を装備。神木隊とコラッシュ及びフランス軍人が乗船。山田湾出航後、宮古湾海戦の直前に故障、擱座破壊。石浜(岩手県)付近で座礁 |
その他の船
艦名 | 備考 | |
長鯨丸 | 輸送船。996トン 運送船・フランス軍砲兵大尉ブリュネ、伍長カズヌーブ乗船 | |
美嘉保丸 | 輸送船。 700トン 房総沖にて破壊 | |
神足丸 | 輸送船。250トン 江差にて擱座破壊 | |
咸臨丸(かんりんまる) | ヤッパン号(オランダ、カンテルク市で建造) 木造コルベット(一段砲装の三等艦)バーク型 船長49.7m 幅8.53m 排水量625トン 三檣 大砲六門 100馬力。輸送船。勝海舟が艦長となり 太平洋を横断した汽船両用船、清水港に漂着、副長春山弁蔵以下10名死亡。官軍が押収。 | |
長崎丸 | 飛鳥において擱座破壊 | |
大江丸 | 蒸気船 160トン 仙台で押収し艦隊に合流 | |
鳳凰丸 | 黒船に驚いた幕府が浦賀で作らせた日本初の帆船。130トン 仙台で艦隊に合流 | |
回春丸(千秋丸を改名) | 帆船 仙台で艦隊に合流 |
参考:
池田清著「日本の海軍」上巻・学研M文庫
吉村昭著「幕府軍艦『回天』始末」文藝春秋
歴史群像シリーズ58「土方歳三」学研
白石一郎著「日本海軍前史/海の夜明け」徳間文庫