昔々あるところに、エルフの王国があり、そこには1人のお姫様がいました。
お姫様は大変に美しい御方で、その美しさは隣近の花屋にまで噂されるほどでした。
ある時、魔王が噂を聞きつけ、お姫様をさらってしまいました。
さぁ、驚いたのは、王様です。
王様は、早速国中にお触れを出しました。
「姫を助けたものには、たくさんの褒美を取らせる」
しかし、魔王は強く、数多くの人々が魔王に挑んでは、すべて手折られてしまったのです。
何年かたった後、人間の勇者達が、その王国に訪れました。
そして彼らは、魔王に挑んだのです。
魔王の力は、人間の勇者達を倒さんばかりのすざましさでした。
が、勇者達は、その攻撃を避け、払い流し、或は耐えて、勇敢に戦いました。
そして、勇者が放ったとどめの一撃は、見事、魔王を倒したのです。
さて。回りを見渡しても、お姫様の姿がありません。
よく探すと、何と、玉座の真上でつるされているではありませんか。
早速お姫様を降ろすと、お姫様は干からびていました。何年もの間、ずっと吊るされ、乾燥保存されていたのでしょう。
勇者がたらいに水を張り、お姫様を浸すと、あっという間にお姫様はもどりました。
「ありがとう勇者よ、これでようやく、お父様の元に帰れます」
こう言ってはらはらと涙を流す姫に、勇者はそっと呟きました。
「姫。どうか泣きやんでください。また干からびてしまいますから」
おしまい