あるた〜ねいてぶ

分離型マスタリングと一体型マスタリング

 さて。おかしなタイトルを付けてみましたが、どんなことをイメージされますでしょうか?

 今回は、ちょっと変則的なマスタリングを二種類ほど紹介したいか、と。なお、分離だの一体だのは、「プレーヤーとPC」の間のスタンスをさします。
 一体型ではおもに「PCとの同一感」を高め、ある種の臨場感を出す為に使用します。私は主にサイバーパンク物で使い、PC同士やNPCとのつながりの脆さを表現するために使用しています。
 分離型ではおもに「客観的な面白さ」を高めるために使用します。私は主にホラー物で使い、映画を見ているようなドキドキを表現するために使用しています。

 ああ、念のため。分離型は問題無いのですが、一体型の場合でも、最低限の「プレーヤーとPCの分離」はしておきましょう。
 PCとして本気で怒りの感情を湧かせる、くらいまでは(恐らく)許容範囲内なのですが、その怒りをプレーヤーにぶつけたり、といった事は、まず間違いなく許容範囲外です。その辺りは、各自しっかりと留意して下さいませ。

 では、もう少し具体的な技術論を。
 一体型で、私はサイバーパンクを使用しているのには訳があります。
 マスターにもよるのでしょうが、基本的に私は「誰が真実を述べ、誰が嘘を付いているかわからない」という不透明感を割と大切にしています(面白いので)。
 で、どうせならその不透明感をプレーヤーレベルでしっかりと味わって頂こうか、と。こういう趣旨の元に、以下のマスタリングを行っています。
 まず、あらゆる情報は、完全に伏せた状態で行われます。例えば、何気ない「君宛てに、誰誰さんから連絡が入っているよ」といったささやかな情報ですら(本当にささやかか?)、口頭では伝えません。紙に書いて、該当するPCをプレイしているプレーヤーに、直接手渡しをします。
 こんな事を続けていると、「誰がどんな情報を持っているか」「こいつが今しゃべっている情報は真実なのか」がプレーヤーレベルですら不透明になります。
 結果、信じる事の大切さとか、疑う事の必要性とか、裏切る事への快感とか、詐欺師への道の歩み方とか、罠にはめ(られ)た瞬間の快感とか、色々な物を肌で感じ取る事が出来る訳ですね。
 私がこれをやった場合、大抵途中から「PC同士(っていうかプレーヤー同士)」でのメモのやり取りが連打され、マスターは純粋にジャッジ(判定/裁決)としての存在意義のみとなり、NPCの動きに集中できます。
 「自分のシナリオどおりにPCが動いてくれないと困る」というマスターには大変かもしれませんが、私の場合、このくらい派手にPCが動いてくれる方が、歯ごたえがあって楽しめます。うまく行けば、NPCを完全に出しぬいてあるPCがストレート一本勝ちを修めてくれるかもしれませんし(それはそれで非常に楽しい−私の場合−)。
 これらの応用として、例えば「PCのうちの一人が実は化け物だった」「PC全員に、実はかなりまずい裏設定がある」なんてセッションを執り行う事が出来ます。
 まずい裏設定は、ソードワールドでやった事があります。あるPCが敵と付けねらうやつ(無論PC)の背中には小さな刺青があるのですが、その刺青をみようとして(んで、敵役のPCは見られまいとして)、なんとなく出した(GMの悪意ぷんぷん(笑))温泉一つで一騒動ありました。GMとしての至福の瞬間です。

 分離型は、ホラー物で良く使います。
 これは、主に「ホラー映画を見ている感覚」でセッションを楽しんで欲しい時に多用します。
 ちとルール的な話しになりますが、ホラーが出来るシステムとしてクトゥルフとゴーストハンターを使用する事が多いのですが、どちらも「みえたか?」というチェック(知覚ロール)のほかに、「見た物を認識できたか?」という判定が存在します(アイデアロール、ないし分析力チェック)。
 もちろん、なにかやばい物を見て、この判定に成功してしまうと「恐怖を認識」する事が出来、得てしてPCには不都合な精神的衝撃が発生する物なのですが。
 逆に言えば、何かを見ても、認識できなければそれは恐怖の対象にはならないものです。
 そして、それ以前に、見えなければそれは「無い」はずの物なのです。

 おいといて。

 例えば、こんな風にして、分離型のマスタリングを行います。
 適当な屋敷(廃虚)の中にいる、とイメージして下さい。
PC:「じゃぁ、そこの廊下を、周囲を観察しながら慎重に右に曲がる」
GM:「知覚ロール。−40%で」
PC:「失敗」
GM:「OK。かどを右に曲がると、何か人影が横切った。明らかに人間の−体格のいい男、というくらいの−サイズなのだが、月の光に照らされた足にあるのは、人間とは思えないほどの剛毛だ。どちらかというと、狼を連想する事が出来るような感じである。そんな人影は、君には見えなかった
 そう。PCは「なにも見ていない」んですね。

 屋敷にあるドアの一つで、PCが聞き耳を立てました。もちろん、知覚ロールには失敗しています。
GM:「ぴちゃぴちゃと、なにか液体を舐めるような音。そして、かりかりと、何か硬い物をかじっているような耳障りな音。かすかだが、明らかに生物の呼吸音。そういった音は一切聞こえてこない

 陰険ですね(笑)
 PLの想像を書き立て、場合によっては何がいるかある程度想像できるくらいの情報を与えつつ、PCは何も知らない。
 このギャップが、非常に面白いセッションをうみます。たまに、PCとPLの知識をごちゃ混ぜにして台無しにされてしまう事もあるのですが。

 今回紹介した二つは、いずれも変則的なセッションのやり方です。
 ただ、いいアクセントになるのも事実です(時々世話になってますし)。たまにはこんなセッションも面白いのではないでしょうか?

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