#1006_02

『 踊らされる子供たち 』

日本の子供たちは大人たちに踊らされて生きている。
これは勿論、正確な表現とは言い難いかもしれない。

つまりは、
大人たちが作り上げる”キレイゴト”の殻の中で生かされている、
ということである。
どうして世間の大人どもは、
こうも子供に対して”キレイゴト”を作ってしまうのだろうか。

中学生の時に僕は電車通学をしていた。
今はどうだか知らないが、
当時は通学路でのいわゆる"買い食い"は禁止されていた。
入学して間もないころである。
僕は仲間2人とともに、錦糸町駅のホームでジュースを買った。
今でも覚えているが、トマトジュースである。
仲間2人は僕がトイレに行っている間に、
英語教師と数学教師の2人組に発見されていた。
学年で最も恐れられている教師のベスト1とベスト2であった。
厳めしい表情でなんだかんだと言われているところに、
缶ジュースを持った僕は、知らずに走り寄ってしまったのである。
同じ様に僕も捕まった。

今思えば、そんなことで教師に捕まることなど笑ってしまうようなことなのだが、
当時の僕らにしてみれば、"本物の恐怖"に近いものがあったのだ。
そして、2人の教師も笑み等浮かべるそぶりもなく、
傷害か窃盗を犯した罪人を扱うような口調で僕らに説教した。

当時僕は学級委員長をしており、担任教師からの信頼は厚かった。
だから、2人の教師が最後に、
「明日の朝、担任の先生のところに報告に行きなさい。」
と言った時に、担任の女性教師の悲しそうな顔が頭をよぎった。

3人の罪人は、揃ってヒドく落ち込んで、
どうしようもないぐらい悲しい気持ちで帰宅したのを覚えている。

次の朝、僕らは3人そろって担任の女性教師に会いに職員室に行き、
扉ごしに先生を呼んだ。

彼女はすぐに廊下に出てきた。
既に前日の件を知っていたにも関わらず、彼女は意外にも笑顔だった。

彼女が何と言ったかはあまり正確には覚えていないが、
「だめよぉ。」ぐらいのことを、あくまでにこやかに言ったと思う。
そして頭をなでられた。

そのときは、ホッとしたと同時に、
何故彼女がこんなにも平穏でいるのか分からなかった。

僕らはとても大きな罪を犯してしまったのに... 

composed by mjn, 1998.08

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