秋月の加速度センサで作る

g−gダイヤグラム表示装置


ドットマトリクスLEDを使ったg−gダイヤグラム表示器

車は加速・減速時には、加速度(G)を生じますが、コーナリングでも横Gが生します。これらのGはタイヤが支えているのですが、タイヤにかかるGは縦・横合計して幾らという仕事しかできません。つまり、横G(コーナリング中)が掛かる時は縦G(加減速)は控えめに、でも無駄なく使うことが早く走れるということになります。そこで、自分の車と、自分の腕では、どのていどのGが出せるのか調べられるg−gダイヤグラム表示装置を作ってみることにしました。このg−gダイヤグラムは、F1などのレース用車両をセッティングするときでも使われるそうで、車の特性や、ドライバーのクセなどを総合的に評価できるそうです。ちなみに、F1の車両でトップドライバーが乗ると、4Gくらいの加速度がかかるそうです。

最終更新日 : 2000.6.26


モバイルギアを使った、g−gダイヤグラム表示装置

この装置の、核となるのは、加速度センサです。幸いにも、秋月電子通商から売られている、Windows用2軸Gセンサモジュールキット(5500円)を使えば、その軸の向きを前後左右(平面)にすることで、g−gダイヤグラムを測定することができます。ただし、センサの仕様上、測定できる最大Gは±2Gですからハイパフォーマンスな車両の測定はできないかもしれません。また、Gが激しく掛かる車にHDD搭載パソコンを乗せる気にはなれませんので、HDDが必要無いモバイルギアを使い、ソフトを自作して表示させることにしました。でも、比較的、簡単に作れるのがウリです。

秋月の「マイコン2軸Gセンサ・モジュール・キット」

秋月の「マイコン2軸Gセンサ・モジュール・キット」
マイコン2軸Gセンサ・モジュール・キット

シリアル・インターフェースを持つ、大変小型なGセンサモジュールです。これをパソコンに繋ぐだけで、加速度が測定できます。キットにはWindowsで動くソフトも付属しているのですが、テスト用の表示プログラムで使いにくいのと、今回必要なグラフを描かせることもできません。ですから、プログラムを自作するひつようがあります。また、電源もシリアル・インターフェースから取ることができるのですが、モバギのシリアルは供給できる電圧が低く、安定して動作しません。仕方がないので、電源には9V積層乾電池を別に用意しました。

Gセンサは、なるべく車の中心に設置します。中心に設置することで、全方向に対して均等な加速度が測定できます。例えば、車の前の方にGセンサを付けると、旋回(横G)には大きく反応しますが、加減速では変化ありません。MR2の場合は、センタートンネルの後方(小物入れの前あたり)に、しっかり固定すればOKです。本来はフレームにネジ止めで固定するのが正確ですが、センサ自体が小型軽量なので、しっかり張り付けておけば大丈夫でしょう。でも、分厚いクッション材が付いている両面テープなんかは不向きです。

今回使用したコンピュータ、モバイルギア for ドコモ(通称青モバ)

モバイルギア for ドコモ
モバイルギア for ドコモ

昔、格安(14800円)で購入したNECのモバイルギアです。ドコモ用に携帯用通信インターフェースを備えたドコモ特別仕立てで、独自の青色をしていることから、通称、青モバと呼ばれます。DOSが走るので、色々使えるのではないかと思って買っておいたものです。DOSといっても、IBM−PCに似ているのですが、グラフィック周りなどは特殊構造になっているので、グラフィックを扱うプログラムはライブラリを自分で作らねばならず、ちょっと手間がかかります。

プログラムの構造は簡単です。Gセンサモジュールから、加速度データをシリアルインターフェースで受信し、それをグラフ上にプロットしてゆくだけです。グラフは±2Gを±100ラインで表現するので、分解能は200×200ですが、これで十分なようです。ただ、プロット(点を打つ)だけでなく、点同士をラインで繋がないとわかりにくいグラフになってしまいます。しかし、ラインは、グラフィックライブラリが使えないので、自分で線を引っ張るプログラムを作らねばなりません、ここが少々面倒でした。幸いにも、昔、仕事で作ったライン用プログラムが有ったので、これを手直しして使いました。シリアル受信も、昔作ったシリアル用プログラムを流用しています。

問題といえば、モバギ本体を固定する方法です。蓋を閉じると、電源が切れてしまうので、蓋を開けたまま助手席とセンタートンネルの間に差し込んで使いました。ジムカーナなど、Gが激しく変化する運転をする場合、ちゃんと固定しないと、どっかに飛んでいってしまいます(^^;) また、モバギを車に乗せたままにしておくのは気が引けるので、将来的には専用表示器を製作したいと思っています。

g−gダイヤグラムの例 (準備中)

ホントは、このプログラムを使って、ジムカーナ場でサンプリングしたデータを掲載したかったのですが、手違いで画面を壊して撮影できなくなりました。残念ながら、一般道では、タイヤの限界を超えた運転はできないので、おもしろそうなデータは表示できません。今度、ジムカーナをしてきた時にでも撮影しようと思います。ちなみに、私の車でg−gダイヤグラムを取ると、横に寝かしたヒョウタン状の図形になります。横Gは1.3G、縦Gは1Gほどですが、前進真っ直ぐの状態のGは0.3Gほどしかありません。つまり、エンジンパワーが無いので、加速のGは少な目ですが、ドリフトなど急ハンドルを多用したので、横Gは大きめになった感じです。また、1G程度というのは、タイヤの限界なのだと思います。タイヤの限界を超えて、ドリフトするような状態での走行ですから、最大G=タイヤの限界性能と読みとることができそうです。


LEDドットマトリクス式表示器を使った、g−gダイヤグラム表示器


アルミ板を曲げただけのケース

PIC版の基板全景

これは、32x16ドット・2色のLEDディスプレイを使ったタイプです。モバイルギアを使ったタイプとは違い、ずっと車に固定しておき使うことができます。32x16ドットとLEDとしては高解像度な部類に入ると思いますが、それでもパソコンなどと比べると著しく見劣りしてしまいます。しかし、2色LEDであることを生かして見やすい表示画面を心がけたつもりです。

ハードウエアの構成は、モバギと同様に秋月のGセンサに加え、秋葉原の鈴商で売っている32x16 2色LEDディスプレイをPIC16F873でコントロールしています。将来的にディスプレイには速度やエンジン回転数なども表示する予定なので、画面の左半分しか使いません。もっとも、縦横同じドット数にするので最大でも16×16ですし、中心軸を真ん中に表示する為には15x15ドットを選ぶしかありません。1軸あたり15ドットということは、中心を除けば1方向で7ドットしか表現できません。この中に1.5Gほどの表示がされるので、詳細な加速度は計ることはできません。まあ、g−gダイヤグラムは、その形と大きさに意味があるので、こんなもんで良いでしょう・・・ そして、もう1つの問題は、制御にPICを使っていると言うことです。Gを詳細に扱うなら、小数点計算は必須で、乗数や平方根の計算も必要です。しかし、これをPICでやるのは根性がいりますし、入出力のパフォーマンスから考えて、車速や回転数まで扱うのは困難そうです。将来的にはPICをあきらめ、H8に変更しようと考えています。

ドットマトリクスLEDを使ったg−gダイヤグラム表示器
6/25のズムカーナの走行時の表示例

2000.6.25 ジムカーナ体験会での使用例

上の写真は、ジムカーナをしたときのg−gダイヤグラムです。右横の数値は最大Gを数値化したもので、この場合1.29Gを意味します。左のグラフは最大で1.5Gくらいまで表示できます。これから見ると、横方向のGは大きいものの、縦方向のGは少な目です。特に後方(ブレーキ)のGは少なく見えます。これは、車がNAなので前方向のGが少な目なのと、そのわりにはハイパフォーマンスなタイヤを履いているので、横Gは強いということでしょう・・・ 後ろのGが少ないのは、あまりブレーキを有効に使っていないということかもしれません。この日のタイヤは新品で、慣らしも終わっていないせいか、すぐロックしてしまって、あまりブレーキが踏めなかったのも原因かもしれません。