FW記録)'96/05/26)房総 清澄山
シダ野外観察記録
'96/05/26)房総 清澄山
千葉中央博物館の中池先生主催の「千葉県のシダを楽しむ会観察会」に参加した
時の記録です。30名を越える大観察会でした。
道中、白い花では、コゴメウツギ、マルバウツギ、バイカウツギ、ヤブデマリ、
針だらけのアリドオシ(一部ピンクがかったものもありました)、黄色い花で
はジャケツイバラなどが、目につきました。
以下の観察記録には、他の参加者が報告したものも含めています。
【日 時】 1996年5月26日(日) 11時〜16時
【場 所】 千葉県 天津小湊町 清澄山
【天 気】 晴れ
【環 境】 スギ・針葉樹・広葉樹植林の林床(演習林)、渓谷
最大標高約300m
【見られたシダ】
[ヒカゲノカズラ科] ・トウゲシバ
[イワヒバ科] ・カタヒバ ・イワヒバ
[トクサ科] ・スギナ
[ゼンマイ科] ・ゼンマイ
[ウラジロ科] ・コシダ ・ウラジロ(8)
[フサシダ科] ・カニクサ
[コケシノブ科] ・ハイホラゴケ
[コバノイシカグマ科]・イヌシダ ・フモトシダ ・ワラビ ・イワヒメワラビ
[ホングウシダ科] ・ホラシノブ
[シノブ科] ・シノブ
[ホウライシダ科] ・イワガネゼンマイ ・イワガネソウ ・ハコネシダ
[イノモトソウ科] ・オオバノイノモトソウ ・マツザカシダ
・コユルギイノモトソウ(1) ・ナチシダ(9)
[シシガシラ科] ・コモチシダ
[オシダ科] ・ヤブソテツ ・テリハヤブソテツ(2) ・オニヤブソテツ
・ナガバヤブソテツ ・ヤマヤブソテツ ・ツルデンダ
・ジュウモンジシダ ・ヒメカナワラビ ・イノデモドキ
・イノデ ・リョウメンシダ ・オニカナワラビ
・コバノカナワラビ ・ホソバカナワラビ
・ナガサキシダモドキ(3) ・クマワラビ ・オクマワラビ
・アイノコクマワラビ ・ヤマイタチシダ
・オオイタチシダ ・ナンカイイタチシダ(4)
・ベニオオイタチシダ(5) ・ベニシダ ・トウゴクシダ
・オリヅルシダ
[ヒメシダ科] ・ミゾシダ ・アラゲミゾシダ(6) ・ゲジゲジシダ
・ハシゴシダ ・コハシゴシダ ・ホシダ ・ヒメワラビ
[イワデンダ科] ・イヌワラビ ・シケチシダ ・ヘラシダ ・ノコギリシダ
[ウラボシ科] ・ヒトツバ ・ノキシノブ ・マメヅタ ・クリハラン
・ヌカボシクリハラン(7) ・ミツデウラボシ
【コメント】
(1)コユルギイノモトソウ:オオバノイノモトソウの葉軸が、コシダやウラジロ
のように黒くて艶のあるものです。結構固いと感じました。
(2)テリハヤブソテツ:ヤブソテツの艶のあるもの、と理解しましたが、オニヤブ
ソテツとの違いを問われたら、苦しみます。
中池先生の「新日本植物誌 シダ編」に詳しく解説があるということです。
(3)ナガサキシダモドキ:今回の観察会で、もっとも大騒ぎになったものです。
東大の演習林事務所の庭に標本があったのですが、その後、フィールドで
実際に見つかって、皆で大騒ぎになりました。
ナガサキシダの羽片がもう一回中深裂した形です。(フモトシダのように)
オクマワラビとの雑種らしい、ということでした。
ナガサキシダ自体をフィールドで見た事が無かったのですが、イワガネソウの
葉が厚く、五円玉状のゴツゴツしたソーラスが分布している、といった感じの
シダです。
(4)ナンカイイタチシダ:これも図鑑では見ていたものの、フィールドでは初めて。
葉が厚いのと、下向きの最下第一小羽片が、第二羽片に比べてかなり長い、
(普通のヤマイタチなどでは、両者の長さの比がこれほど大きくない)
のと、更に鱗片が茶褐色(ヤマイタチなどは黒い)のが特徴的でした。
羽片の幅も良く見ると、ヤマイタチなどよりは細身(図鑑では羽片の幅の平行
である区間が長い、とも表現されています)に感じました。
(5)ベニオオイタチシダ:オオイタチシダの幼葉で、葉がまだ赤いうちで、包膜の
中心が兎の目玉のように赤いものです。これも今回の人気者でした。
(6)アラゲミゾシダ:ミゾシダには毛がありますが、これは、更にソーラスからも
毛が生えているものです。(実際はソーラスそのものに毛があるのではなくて
ソーラスのあるあたりからも毛が生えている、というものです)
ルーペでいちいち見ないと区別できません。これも今回の人気者でした。
(7)ヌカボシクリハラン:クリハランではソーラスが一列に並んでいますが、
これは葉裏全体に散在しています。大きさもクリハランと同程度なので、
いちいち、ソーラスを見ないと区別できませんでした。
(8)コシダ・ウラジロ:どちらもかなりの群落が見られました。
コシダの葉柄で、昔は水切り用のザルを編んだものだそうです。
ウラジロの葉柄もコシダのように黒くて艶があり、弾力性にも富んでいます。
テンプラ用の箸に使うといい、と聞いて箸の長さに切って持ち帰りました。
ウラジロの葉柄の一節間は一年で伸びる、と聞きました。(40〜50cm
になるものもありました)
(9)ナチシダ:お寺の本殿の裏の斜面で大群落をなしていました。
若い葉茎は、ワラビの太いものに良く似ていて、食べられそうな感じでしたが、
野生の鹿は他のシダは食しても、これは食さない、とのことで、なにか有害な
成分要素があるのかも知れません。
【ヤマヒルのこと】
ヤマヒル対策に、靴下を二枚履き、更にズボンの裾を靴下に差し込んで、その
境界を幅広のバンソウコウで目張りしました。
お蔭で、ヤマヒルには食われずに済みましたが、参加者の中には被害にあった
人もありました。落ち葉のある場所で立ち止まると、茶と黒の縦縞のヤマヒルが
背伸びして、盛んに靴に飛び掛かろうと身構えておりました。
ヤマヒル用の薬剤もあり、これを振り掛けると一発で参っていました。
私は、試験に食酢を持参して、ヤマヒルに振り掛けてみましたら、これにも
参っておりましたが、一旦食い付かれてからではどうなるか試験はしていません。
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