と き 平成十一年十一月二十五日
ところ 東京成徳大学二〇四教室
対象者 国語科教育法受講三年生
本時の目標 ・漢文に慣れさせる。
・詩を味わう。
本時の展開例
使用テキスト 『国語U』より
「飲酒」 陶淵明 (計一時間)一時間目
指導展開例
―挨拶―
起立 礼 着席 お願いします。
―授業―
はい、今日から、漢文に入ります。漢文は、難しいというイメージを持っていると思いますが、今日は、教科書二八○ページ、陶淵明の「飲酒」という詩から学んでいきましょう。
では、始めに、教科書の陶淵明と「飲酒」という作品について書いてある部分を、○○さん読んでください。(音読)ありがとうございます。
それでは、本文の読みに入ります。まず、一回読むので、よく聞いていて下さい。読みのわからないところには、ちゃんと読み仮名を振ってくださいね。(音読)じゃあ、読んでもらいましょう、○○さん、ゆっくりでいいので、読んでみてください。(音読)ありがとうございます。
内容に入る前に、いくつか確認しておきましょう。黒板を見てください。今、黒板に本文を書いた紙がはってありますが、教科書の状態とは少し違います。このような文を、なんというのでしたか、○○さん。(解答)はい、そうです。
次に、もう一枚用意してあるのですが、このように、本文を読みのままに、日本語の状態で書いた文をなんと言うのでしたか、○○さん。(解答)はい、そうですね。覚えておいてください。
はい、では、本文の内容に入っていきましょう。まずは、語釈をしていきます。黒板を見てください。
▼ 「廬」・・・いおり。
▽ 「車馬」・・・当時の官吏専用の乗り物。
▽ 「車馬喧」・・・乗り物の騒がしさ。
▼ 「爾」=然・・・そのとおり。
▽ 「東籬」・・・家の東のまがき。
▽ 「南山」・・・作者がそのふもとに住んでいた廬山。
▽ 「山気」・・・山のたたずまい。
▽ 「日夕」・・・夕暮れ。
▽ 「欲弁」・・・明らかにしようとする。
次に、☆を見てください。「問君」はだれに問うのか。と、ありますが、○○さん、感でいいので、だれに問うのだと思いますか。
(解答)はい、そうですね、このかたちは、詩によく用いられる自問自答のいい方で、作者自身のことを、かりに君といっているのです。その答えはどこかというと、「心遠」という部分なのです。ここは、心が世俗の人とは無縁のところにあるから。世俗の人とは違って、心がゆったりとしているから。という意味であり、まさに、この問いの答えとなる部分だといえます。
もうひとつの☆を見てください。「此中」はどこを指すのか。
と、ありますが、○○さん、どこだと思いますか。(解答)はい、そうです。本文四行目の下の部分ですね。
次は、★を見てください。句法として「何・・・」とありますが、これは、「なんゾ・・・。」と読み、教科書にもあるように、疑問の句法で、「どうして・・・なのか。」となります。そして、本文のように、「何能爾」となると、「どうしてこういうことがあり得るのか。」という意味になります。
これで、大体の意味はとれたのではないかと思います。一回、これらをつなげて訳してみましょう。
人の住んでいる所にいおりをかまえている。
しかし、乗り物の騒がしさはない。
どうして、そうなのかというと、
心が世俗の人とは、無縁だからへんぴな場所になる。
家の東のまがきのほとりで、菊を採っているとき、
ゆったりとした(作者がそのふもとに住んでいた)廬山を見る。
山のたたずまいは、夕方の空に美しく、
鳥達は連なり、(寝床へ)飛んでかえる。
このようすに、この世における真実を、
明らかにしたいけれど、
心にはわかっていながら、うまく表現できない。
となります。これでは、まだよく作者が言いたいことがよくわかりませんね。なので、これから、もう少し意訳したものを読みますので、よく聞いていて下さい。
私がいおりを構えているのは、人里の中。しかし、うるさい役人達の車馬が通るということもなく、閑静である。どうしてそのようにあり得るのかというと、世俗の人とは違って、心がゆったりとしているから、へんぴな場所になる。
家の東のまがきのほとりで、菊を採っていると、ゆったりとした南山が目に入った。
山のたたずまいは、夕方の空に美しく、鳥達は連なり、寝床へ飛んでかえる。ここにこそ、人間の真実が読み取れる。が、心にはわかっていながら、うまく言い表すための、言葉が思いうかばない。
どうでしょうか。鳥が寝床に連なって帰る姿に、人間の真実を見る。というのは、よくわかりませんが、南山の風景など、なかなか味わいのある詩ではないでしょうか。だから、あまり難しいことを考えずに、味わってもらえれば、と思います。
次回からは、やはり、陶淵明の「桃花源記」にはいります。文も長く、難しくなるので、各自予習してきてください。では、終わります。
―挨拶―
起立 礼 着席 ありがとうございました。
指導内容確認