文房具業界におけるイノベーション〜アスクルのビジネスモデル〜

小野寺 裕子

 

「アスクル」という企業をご存知でしょうか。個人、家庭には知名度が低いかもしれませんが、オフィス用品の通信販売をしている会社です。私のアルバイト先の会社では、いつもアスクルを利用しています。欲しい商品が、頼んだ翌日には必ず届くので、非常に便利です。いつもは事務用品を注文していますが、先日は、アスクルでオフィス用のイスを数脚購入しました。

 今回は、文房具業界という古い体質の業界のなかで、新しい流通の仕組みを作った、アスクルのビジネスモデルについて考えてみたいと思います。

ASKUL ←アスクルのロゴマーク

 

 

アスクル誕生の背景

 従来、文房具の流通の中核を占めてきたのは、全国約23,000店の文具店と卸売業者で、メーカー⇒卸売業者⇒文具店⇒消費者という多段階流通経路と日本固有の取引慣習の中で、長い間均衡を保ってきました。

 また、販売額の約75%を占める法人向け文具市場は、外商による直接販売と、店舗販売とに分かれていました。大企業に対しては、大手文具店の営業マンが日々注文を取るとともに、割引も含め十分なサービスを提供していたのに対し、市場の大部分を占める中小企業では、従業員が文具店の店頭で商品を購入するしかありませんでした。ここに、市場の巨大な「真空マーケット」があることに気づいたのが、アスクルの出発点となりました。

1990年、文具・事務用品メーカーのプラス株式会社内で、「今後の文具流通はどうあるべきか」を話し合うブルースカイ委員会が発足し、従来の流通経路の問題点や、どのように最終消費者のニーズを把握し、対応していくかが議論されました。

 その結果、新たな流通チャネルとして、通信販売システムを採用することが決定しました。この新しい事業は、サービスの迅速性を強調するものとし、‘アスクル(今日注文すると明日来る、から)’と名付けられスタートしました。

 

アスクルのビジネスモデル

 普通、通信販売というと直取引ですが、アスクルの場合は間に全国約1500社の主に有力文具小売店がエージェント(代理店)となっているという、他では類を見ない特徴があります。コンセプトは「文房具店との共存共栄」で、アスクルとエージェントが互いの長所と短所をカバーし、有効な機能だけを結び合わせる流通システムとなっています。

 このシステムは、エージェント(文房具店)が地域に根付いた信用や外商営業力を活用し、新規の顧客獲得のためチラシ配布や訪問などの営業活動と、代金回収・債権管理を担当します。そして、それ以外の機能である製品カタログと製品の受注、発送、問い合わせ等をアスクルで行うというものです。このように、集中することでコスト削減につながる機能はアスクルが、地域密着・顧客密着のほうが良い機能はエージェントが、というように、徹底した役割分担を行うことにより、従来生じていた流通段階のロスを排除することに成功しました。

 また、スタート当初は取扱商品の90%が親会社であるプラスの製品でしたが、顧客のニーズに応えるため、他社のオフィス向け製品も扱うようになりました。例えば、コーヒー、紙コップ、トイレットペーパーからIC部品、ファクシミリなどです。さらに、製品価格の大幅な値下げも実践しました。

←アスクルのカタログ最新号

 

 

アスクルの戦略

 アスクルは1993年の事業開始以来、順調に成長を遂げています。

 

 

アスクルの平成14年度(第40期:平成14年5月21日から平成15年5月20日まで)の売上高は、1,085億5000万円でした。

 アスクルが成功した最も大きな理由として、「顧客本位」を実践している点が挙げられると思います。アスクルの基本コンセプトはInnovate for Customer’(お客様のために進化するアスクル)です。企業は皆、経営理念として顧客本位・顧客中心と言いますが、アスクルの場合、ただ言うだけでなく、それを本当に実現しているところが評価できると思います。例えばクレームに対して積極的に対応したり、利用客の声をホームページで吸い上げたりして、顧客のデータベースを蓄積し、緻密な戦略を立てています。実際、顧客のニーズに応えるため、取扱商品数は年々増え、カタログも分厚くなっています。また、当初はFAXのみの受注でしたが、97年からはインターネットで24時間注文を受け付けるようになりました。

 

アスクルの今後について

2001年、文具最大手コクヨの子会社である「カウネット」がアスクルと同じオフィス用品通販事業を開始しました。競合企業が登場したわけですが、アスクルにはやはり先行企業としての強みがあると思います。ただ、今後長期的に見て、新しい戦略を立てていく必要はあるでしょう。

例えば今いる顧客ベースを基盤にして、取扱商品の種類をさらに拡大していくということも考えられるでしょう。また、例えば企業だけでなく、学校などにも進出し、顧客を拡大することも可能だと思います。

事務用品というと、製品のアイデアだけが重視されがちですが、アスクルは、その中で利便性を提供するサービスを思いつき、実践したという点で、とてもイノベーティブな企業だと思います。今後の動向に注目したいと思います。

 

    村山由佳の作品について

 

                     法学部2年23組滝沢有紀

 

皆さんは村山由佳という作家をご存知でしょうか。今年の717日に「星々の舟」という作品で、第129回直木賞を受賞した女流作家です。

なぜ今回彼女についてレポートを書こうと思ったのか。簡単に言えば、私が彼女の作品を好きだからです。彼女は私のみならず女性に大人気の作家で、特に乙女の心を魅了してきた集英社専属のプリンセスと言われていますが、こう言われると馬鹿にされているみたいでなんとなくむかつきますね。私は乙女?(若い女性)だろうがおじさんだろうが、おばさんだろうが、求めてくれる人がいるのなら立派な文学作品であると思っています。だいたい本の好みなんて人それぞれだと思いますし、どこの誰が読んでいるからすごいとか、ベストセラーだから良いっていうわけでもないので。でもまあ先程も言ったように求めてくれる人がいっぱいいるわけですから売れるに越した事はないですけど!ちなみに私の好きな作家及び作品は、他に村上春樹さんの「ノルウェイの森」、吉本ばななの「キッチン」「ムーンライトシャドウ」などがあります。「青の炎」「天使の牙」なんかも最近では、面白いと思いました。読書は本当にすごいものだと思います。一度その中に入ったら、何十人、何百人もの人に出会えるから。ベタなこと言っているのかもしれないけれど、今まで私は本に何度も元気付けられたり、慰められたり、考えさせられたりしています。そして一生読書を続けていきたいと思っています。

 ちょっと話がそれてしまいましたので、そろそろ村山由佳さんのことについて触れたいと思います。彼女の経歴は、昭和39(1964)年7月10日、東京に生まれる。小学校、立教女子学院に入学。エスカレーター式で立教大学文学部日本文学科に入学。アーチェリーの選手として活躍する。1987年、不動産会社に就職するも約一年で退社。その後塾講師などを経て、童話、小説の執筆活動を始める。1990年「花の万国博」記念の「環境童話コンクール」で『いのちのうた』が大賞を受賞。1991年集英社少年ジャンプ主催「第1回小説ノンフィクション大賞」で『もう一度デジャ・ヴ』が佳作入選。1993年に「春妃〜デッサン」(『天使の卵(エンジェルス・エッグ)』に改題)で第6回小説すばる新人賞を受賞。といった感じです。

 で、今回の直木賞の作品は、ここにきて、なぜかポンと文藝春秋から単行本を出し、さらに初候補といった具合です。すごいの一言に尽きますけどね。とんとん拍子で進んでいっているように見えます、傍目からは。現在童話、エッセイ、小説含めて27作品(多分)あります。恥ずかしながら、私も全部読んだとは言えないのですが、大体小説は読んでいますので、ここからは私の好きな本の紹介に移ります。    

彼女の本の中では、本当に好きな本を一つ挙げるのはすごく難しいのでいくつか挙げたいと思います。

『天使の卵(エンジェルス・エッグ)』、『翼−cry for the moon』、『BAD KIDS』『海を抱く−BAD KIDS』あえて挙げるなら、この4つです。一つ一つ説明していきたいと思います。

『天使の卵(エンジェルス・エッグ)』は浪人生の歩太が八つ年上の精神科医春妃に一目惚れをする、という恋愛小説です。悲しい結末で、女性が書いているということもあって主人公の歩太がかなり細かい男ではあるのですけど、この小説の良いところは凡庸さです。あまり聞こえは良くないかもしれませんが、こういったシンプルな、恋愛のみ!といった感じの小説を書けるというのも一つの才能だと思いますし、他の作品に比べても初期の作品は凝ったところがあまりなく、フレッシュな感じでもあります。話のみでの勝負といったところです。

『翼−cry for the moon』は、なんといっても深いです!小説ですから、「え〜!有り得ないだろ!?」っていうのを抜かせば、かなりの超大作だと思います。

話は、真冬というかなり過酷な運命を背負った女性の自立と成長の話です。こういう風に書くとかなりベタに感じますが、この話は二つの話が見事に絡み合うように作られていて相当読み応えはあります。舞台はアメリカです。最初はニューヨークなのですが、途中からアリゾナになります。すっごくきれいに描写されてもいて、私も1度アリゾナに行ったことがあったのでありありと情景が浮かびました。このころになると、キャラクターもかなり独特なのでそんなところも見所ですね!

『BAD KIDS』は、年上の写真家北崎との関係に悩む写真部部長の都と親友の宏樹を好きになってしまうという同性愛に悩むラグビー部の隆之のちょっと危うい青春小説です。主役の二人が痛々しくもあるのですが、二人の優しい暖かい関係がすごく好きです。二人で傷の舐め合いをしているともとれますけど、友情とも愛情ともつかない関係がよく描けていると思います。悩んでいる時にぴったりです。思えば彼女の作品は、そんなものが多いですけどね。人の痛みとか弱さとか汚いところなんかが嫌味無く描かれています。

次の『海を抱く−BAD KIDS』もそんな作品の一つだと言えます。続編というより、同じ学校で微妙に人物が被ったりしている別の話といったものです。これは、主人公の藤沢恵利は校内一の優等生で通っているがまたまたこれも同性愛で(かなり微妙なとこですけど!)、さらに性的には男性を求めているといったかなり複雑な悩みを抱えていて、もう一人の主人公光秀はかなり軽い感じだと思われているサーファーで、この二人があることをきっかけに性的な関係を持つといった相当危うい青春小説です。前作と似たようなという感じもありますが、かなり際どいところまで踏み込んでいて私はすごく好きです。最近読書していて久々に泣きました。最後のほう結構感動します!この作品とか星々の舟は、結構性的描写が鋭かったりするので、最初のほうと比べるとそんなところは随分変化していると言えます。

こんな簡単な感想のような説明で彼女の作品の良さは語り尽くせないですが、まとめに入らせていただくと、彼女の作品はどれもすごくセンスが良いと思います。『おいしいコーヒーのいれ方シリーズ』だけちょっとマンネリ化していますが、だいたいどの作品にも色んな人の痛みや汚い部分を解ろうとする、そしてそれを素直に文章にするという彼女の優しくストレートなメッセージがあります。私はそれが好きでこの村山作品を読んでいます。

悲しい時や辛い時に、誰かにそばにいてもらうような優しさを持っている本は私にとっては彼女の作品です。嫌いなところは、ちょっと変なところだけど結構多くの作品中の主人公がいじいじしていたりするかな、なんて思ったりします。私がさっぱりしたところがあるので、そういう点で主人公と私の意見の相違が見られます。

いわゆる青春小説だし、平凡な文学なのかもしれないですが、それも彼女の味だと思って是非読んでみてください!