東京成徳大学大学受講生のページへ 1999年度の記録

学習指導案          鈴木 圭

 

 とき 2000 6.1 ところ 東京成徳大学 204教室 

 対象学年 国語科教育法受講者 

本時 『名を呼ぶ』 一時間目(全六時間 一時間は二十分とする)

本時の目標 文章を細かく分析しながら読む

      指示語を確認しながら読む

      文章の構造を立体的に把握しながら読む


授業展開表 

  時間    発問 展開 


        (あいさつ) 起立 礼 




         それでは,教科書115ページを開いて下さい.

         今回は,川田順造氏の『名を呼ぶ』という評論文を読むわけですが,

         読み進めて行くにあたって,指示語はどの部分に対応しているのか,

         筆者は自分の主張をどの様に繰り返し述べているのかを,解きあかし

         ながら読み進めていきたいと思います.

         それでは,一段落目はこちらで読みますので,目で追って見て下さい.

        (115ページ1行目から5行目まで)

         この段落では,名を呼ぶことについて述べられているわけですが,こ

         こでは,名を呼ぶことはどの様な意味を持っているのでしょうか.

名を呼ぶと言うことについてはこちらでまとめてみます・(黒板に

         書きながら)1行目の「いとしい者の名を,一人で声を出して呼んで

         みる,あるいは呼びかける」というところと3行目「死の床にある

         者の名を呼ぶ行為」というのが,名を呼ぶ行為です.

それでは,名を呼ぶ行為にはどの様な意味が含まれているのでしょ

         うか(正解が出るまで4名程度指名).そうですね,さっきまとめ

         たすぐ直後が意味を示しています.ここでは,呼びかけた対象をいつ

くしんだり,蘇生させようとする目的で行われていると言うことが

         わかるとおもいます.

         それでは2段落めに入りたいとおもいます.今度は○○さん読んで

         下さい(115ページ5行目から116ページ1行目まで).はい,

         ありがとうございます.

         この段落ではどの様なことが述べられているのでしょうか.すこし,

         細かく見ていきたいと思います.まず,文頭の「だが反面」という

         言葉に注目してみて下さい.否定の接続詞が来ていると言うことは,

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                       

         先ほどとは逆の意味の文章がつづくと言うことです.

         (黒板に書きながら)さっきの段落とは違い,この段落では,名を

         呼ぶことは,その名を持つ者を犯し,辱めることという意味,つまり

         さっきとは逆の意味で使われています.そしてここの部分がその後

         の文章「そこから名乗りのヒエラルキーが生じる」という部分にか

         かります.名乗りのヒエラルキーとは,名乗ってしまうことにより,

         名乗った者よりも名乗られた相手の方が偉くなってしまうという意味

         で解釈します.

         直後の文章は,名乗りのヒエラルキーが生じてしまう事の具体例です.

         「一般に」という話題転換の言葉が来ていることからも分かると思

         います.

         (黒板に書いたところを示しながら)ここの部分とここの部分は

         「犯す,辱める,卑しめる」と同じ様な意味の言葉が用いられている

          事が分かると思います.こういった言葉の対応関係を見抜くのも,

          文章を読解する上で大事なことです.

          それでは3段落目に入りたいと思います.○○さん読んで下さい

         (116ページ2行目から9行目まで).はい,ありがとうござ

          います.

          文頭にある「名を呼ぶことが持つこの両極性」と述べられてい

          ますが,「この両極性」とはどういったことを示しているので

          しょうか.この文章のすぐ直後に「だがおそらく一つのことの二

          つの側面なのであろう」とあります.この二つの文章の対応関係

          を見てみましょう.

         (黒板に書いてから)ここでは,「一つのこと」とは何を示してい

          ますか(正解出るまで3人程度指名).そうですね.「一つのこと」

          とは「名を呼ぶこと」です.つまり,「名を呼ぶこと」が持って

          いる「二つの側面」が「この両極性」なのです.(黒板に書いた

          ところに印を付けながら)「両」と「二」と言う言葉は,意味が

          共通していますね.

          つまり,「この両極性」とは「名を呼ぶこと」から発生するわけ

          ですから,以前にそのような話題が出ていなかったかどうか見て

          みると,(黒板に書いてある部分を示して)さっきの段落,2段落

          では「みだりに人の名を呼ぶことはその名を持つ物を犯し,辱め

          る.そこから名乗りのヒエラルキーが生じる」とあります.つま

          り2段落では,名を呼ぶことから名乗りのヒエラルキーが生じる

          と述べていたわけですから,「この両極性」とはここの部分を

          示しているわけです.文章でまとめてみるとこの様になります

          (黒板にまとめる).まとめる時は,具体的に述べた方が好ましい

          ので,より具体的に示されている箇所の文章を利用してまとめ

          ます.

           では先に進みたいと思います.「本来,言葉も声も奪われたと

          ころにしかありえない,正真の個」という部分の解釈なのです

    が,少しここは難しいと思います.しかし,文の構造を見抜く

          ことによって,意味を理解することが出来ます.この文章の続

          きには,「言葉で名付け,声で呼ぶことによって,他者との関係

          にさらされる」とあります.この部分を先ほどの部分に対して

          還元してあげればよいのです.そうしたことから考えてみると

          ひそやかな正真の個とは,言葉によって名付けされていない所    

          から存在し得る個というような意味になります. 

          4行目の「言葉で名付け〜」と5行目の「名を知り〜」は同じ

          内容の繰り返しです.それで,そのあとの部分がこのことの具

          体例になります.

           それでは終わりの時間になりましたので,今日はここまでにし

          ます.起立,礼(時間によって前の部分を詳しく解説する).




指導内容確認

 ・指導予定の内容をどの程度理解させられたか  優・良・可・不可

 ・板書は正確で見やすかったか         優・良・可・不可

 ・時間配分は適正であったか          優・良・可・不可

 ・発問と回答はかみあっていたか        優・良・可・不可

 ・説明は聞き取りやすかったか         優・良・可・不可

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