Last Up Date 2003.04.01          

日記を物語る 2003年03月INDEXホームに戻る             


03月29日(土曜日)

快晴。渋谷で『うつほ物語』の会を勇退の室伏先生を囲む会。遠く北海道、岡山、奈良からみなさんが駆けつけてにぎやかな会となりました。『伊勢物語拾穂抄』を読む会が六年、『うつほ物語』を読む会が二十年だそうです。僕は十三年でした。会はまだまだ続きます。室伏先生、御苦労様でした。

03月30日(日曜日)

快晴。先日買ってきた蘭が咲きました。大泉学園の桜並木も四分咲きというところ。そろそろ頭を切り替えないと。

03月31日(月曜日)

出版予定の本の打ち合わせ。分担執筆の場合はとくに綿密に意思統一をとらないと内容がまとまりません。内容の濃い本にしたいものです。


03月01日(土曜日)

所沢の松井公民館で古典に親しむ会。雨で道が大渋滞。一年にいっぺんの茶話会では琴を披露しました。

03月02日(日曜日)

大塚の日本文学協会事務所で『枕草子』の会。「草の花は」の段。連想の回路を読むのはやはりむつかしいもの。

03月03日(月曜日) Special Thanks 120,000 Hits

二月はまるひとつき休館だった青山学院の図書館であれこれと調べもの。明治のリバティー、早稲田と三大学の図書館を利用していますが、我が家のパソコンはもちろんこの三つのOPECがフル稼働です。三月は締め切りもないのでのんびり勉強ですね。次の原稿は、必携シリーズで知られる某社の事典的項目を書くことになっています。

03月04日(火曜日)

おそらくはじめての大正大学で『小右記』長元四年八月条。影印を睨みながらひたすら当時の読みを復元する。関白・頼通はすべての許認可事項を握っている男。記憶力も抜群だったんでしょう。

03月05日(水曜日)

大正大学で『小右記』長元四年八月条、二日目。「如履薄氷」の記述が気になって漢和辞典に当たったところ、『論語』「泰伯」篇が典拠であったことを知る。今更ながら自分の漢文知識のなさを思い至り、実資の素養に感服しました。

03月06日(木曜日)

曇天から雨に変わる寒い一日。とくに書き残すこともなし。強いて言えば、来年度の指定図書の一覧を書き込んだことぐらいですね。

03月07日(金曜日)

雨の一日。大学一年生の時の、中国哲学講読のテキスト『論孟精選』(明治書院、1980年、初版は1933年)を取り出し、筆は故・青山杉雨先生御用達の「杉影」で、手すさびの稽古。青山先生の最後の著作『文字生霊』(二玄社、1991年)の「文人趣味」を読み返したりすると、もっと講演会に積極的にでかければ良かったと今更ながらの後悔の念がわき上がる。遺墨集『青山杉雨作品』(二玄社、1994年)で、謙慎流の書風を学んでみますが、ブランクは如何ともしがたい距離を感じます。琴は『梅花三弄』。今の季節にふさわしい音色です。

03月08日(土曜日)

快晴。サンシャインシティ文化会館にある古代オリエント博物館で「シルクロードの響き ペルシア・敦煌・正倉院」展へ。その昔、弟と「秦始皇帝と兵馬俑」展に来て以来だから15年ぶり。お目当てはもちろん正倉院の復元楽器でした。「紫檀螺鈿五絃琵琶」や「金銀平文琴」は天平楽府の劉宏軍氏の手になるもの。これらは、以前、中古文学会が椙山女学園で行われた時、熱田神宮で東京国立博物館蔵の複製楽器を見たことがあったのですが、こちらはさらに現代風で、七絃琴の漆塗りも新しく、平文もあでやかでした。パソコンで音の復元も聞けたのですが、これは先年、NHKーBSで放送されたドラマ「聖徳太子」の、天平楽府によるサウンド・トラックを中心に再構成されたものであったようです。なにはともあれ、シルクロードの音楽を堪能出来た一日でした。

03月09日(日曜日)

頂戴していた論文をじっくりと読ませていただく。増田修先生「『常陸風土記』の探究A 『西野宣明の閲歴』研究の現状と課題」「常総の歴史」(27/2002.06.崙書房)、松浦あゆみさん「『有明の別れ』における出生の秘密」(「論究日本文学」77/2002.12)、津島昭宏さん「近江の君と内大臣家」(「野州国文学」70/2002.10)、園山千里さん「枕草子の一考察」(「立教大学日本文学」89/2002.12)、森野正弘さん「源氏物語の薫物合せにおける季節と時間」(「山口国文」26/2003.03)、「組織化される夕霧の浮遊生」『源氏物語の鑑賞と基礎知識・少女』(至文堂/2002.03)。ありがとうこざいました。

03月10日(月曜日)

快晴。高城弘一先生とともに「大東文化」に寄稿した「後光厳院筆『竹取物語切』−極上の逸品を発掘」が届きました。後光厳院宸翰とされる一連のツレの一葉です。これで十葉目、物語全体の7lの本文が発見されたことになります。また、こうした機会を与えてくださった畏友・高城さんに感謝。

03月11日(火曜日)

古代言語蔵開の会の、前回分レポートを書きました。十日締め切りだったので一日遅れましたが、よろしくです。

03月12日(水曜日)

岡部隆志さん初の論文集成『古代文学の表象と論理』(武蔵野書院、2003年03月)を頂戴しました。岡部さんはすでに何冊も書き下ろしがありますが、論文を集成したのは初めてとのこと。とりわけ、最終章「文学研究のまなざし」は書評や学界時評を盛り込んで、ご本人も「書評の書き手として私は人に負けない自信がある」と書いておられるように入魂の批評が並んでいます。僕はまず「ハードとしての物語論」「ロゴスはエロス?エロスはロゴス?」(ともに三谷邦明『物語文学の方法TU』の書評)から読み始めました。岡部さん萬謝です。

03月13日(木曜日)

清泉女子大学で『小右記』長元四年七月条。ちょうど卒業式の予行演習に遭遇しました。基礎演習の『源氏物語』から四年、月日の過ぎゆくのはやいものです。研究会は黒板先生が図書館長でいらっしゃったこともあり、図書館の演習室で、黒板、三橋先生に僕の三人で。先生から霊宝館の館長を務めておいでの関係で「研究紀要/19」(醍醐寺文化財研究所、2002年)を頂戴しました。

03月14日(金曜日)

快晴。車を飛ばして、梅林へ行って来ました。そして、梅の木ではなく、「蘭」を買ってきました。「蘭」は志の花。先月書いた『白居易研究年報』の「藤袴」論にちなみます。

03月15日(土曜日)

駒沢大学で物語研究会。「通説」「定説」が不用意に使われているように思われたので、二度にわたって指摘する。それと質問者がいつも決まった人なのが気になります。はずすことなどは気にせずにどんと行きましょう。

03月16日(日曜日)

小学館文庫『うつほ草紙』の第三巻が届きました。この物語は、原作に登場しない、俊華牙の乳母子(めのとご)春音と貿易商人・憑若芳が、物語の理路を繋ぐ視点人物の役割を果たしています。それらの物語要素と原作のドラマ性とが巧みに再編成された、青春小説となっているのです。

03月17日(月曜日)

母とともに歌舞伎座で三月大歌舞伎。北条秀司作『源氏物語 浮舟』、幸四郎親子の『勧進帳』。五時間近くが瞬く間に経過しました。今年はもう一、二回行きたいですね。

03月18日(火曜日) Special Thanks 121,000 Hits

一時限目に合わせて練馬区内の都立高校。受験指導・小論文・質疑応答と生徒を希望別に分け、僕は質疑応答・相談を担当。ふだん、脇の道を通っていて、金髪・ビアスの高校生が目立つ印象でしたが、実際に教室でひとりひとりと話してみると、あと十日で三年生になる不安と自覚があり、あっと言う間に好感度がアップしました。都立高校は、試験後も学校を続けることになったため、行事などで日程を消化するのに四苦八苦しているようです。

03月19日(水曜日)

快晴。池袋のジュンク堂で、自由価格本となっていた、黒岩涙香『小野小町論』(現代教養文庫、1994年)を購入しました。最近、よくドラマのロケ先になっていますね。日が長くなって、沈む夕日の美しい一日でした。

03月20日(木曜日)

木更津のホテルで進学相談会。今日が近郊の高校では終業式と重なったこともあり、参加者は多くなく、いくつかの大学・短大で相談者がなかった模様。毎年企画していても当たる年とそうでない年があるのですね。昨年は既に二回この土地の高校を訪れており、基本的に、通える大学が千葉県内に限定されていることは頭にインプットされています。

アメリカ・ブッシュ大統領によるイラク先制攻撃で、地下鉄サリン事件八周年の記事も吹き飛ぶ。バグダットと言えば、『うつほ草紙』では、遣唐使の船から捨てられた清原俊華牙と乳母子・春音が、助けられて青春を過ごした土地として設定されています。二人はその文明の豊かさに学びつつ、今も変わらぬ政情不安に翻弄されるのですが、今はただ、バグダットの人々の平安を祈るばかりです。

03月21日(金曜日)

小嶋菜温子さんより、服藤早苗・小嶋菜温子編『生育儀礼の歴史と文化』(森話社、2003.03)を頂戴しました。恩師・中村義雄先生の『王朝の風俗と文学』(塙書房、1962)を基本文献としてきたこの方面の研究を革新せんとする試みのようです。『うつほ物語』関係の論文もあったので、『うつほ物語』のページを更新しました。小嶋さんに感謝です。ありがとうこざいました。なお、中村先生が小学館の日本古典文学全集の月報に連載されていた「化粧の歴史」等の遺稿も、近々出版の予定と側聞しています。

03月22日(土曜日)

古代言語蔵開の会のため、明治大学リバテータワーへ。大学進学相談会が開かれており、エレベーターに乗り合わせた高校生がひたすら驚嘆の声を挙げていました。報告は神泉苑と御霊会に関するもので、祖霊信仰からの展開やトポスとしての史的変遷などまで総覧できる充実した一日となりました。

03月23日(日曜日)

母校で『元輔集』の注釈作業。文献批判の実際は、妥協を許さぬ執念と俊敏なフットワークが必要。真理探究に誠実か、怠け者かは、書き残した為事で判断するほかありません。読者のみなさん、あなたはどちら? 論文の孫引きで「事足れり」と済ませていませんか?

03月24日(月曜日)

戦乱のバグダッドが舞台の『うつほ草紙』第一巻をまた読み返す。国情不安に拍車をかける波斯国の狂乱の王・カリフの姿が時の為政者の姿に重なってしまいます。

「大東文化」に寄稿した「後光厳院筆『竹取物語切』−極上の逸品を発掘」がウェブ上でも公開されました。ご覧下さい。

03月25日(火曜日)

雨。青山学院は大学の方の卒業式だったようで、せっかくの晴れ着姿がちょっと気の毒でした。新編日本古典文学全集・88回最終配本の『日本漢詩集』を受け取ってきました。近世漢詩担当の徳田武先生は、明治の主任としてうだつのあがらぬ僕のためにあれこれとご厚配を賜っています。

03月26日(水曜日)

赤坂で伍芳さんの古箏ライブ。絶妙精確な奏法を間近でチェック。四月のニューアルバム『心声』が楽しみです。

03月27日(木曜日)

角川書店の土屋さんから、潁原退蔵・尾形仂・校注『新版 奥の細道/現代語訳/曽良随行日記付き』(角川文庫ソフィア、2003.03.25/\667)を頂戴しました。芭蕉自筆本を取り込んで再編成したもので、広く読まれる本となるでしょう。土屋さんに萬謝です。

03月28日(金曜日)

銀行から「配達記録」が必要な郵便物が届いたので何かと思ったら、インターネットバンキングの第二暗証番号でした。こんなのメモしてあるに決まっているではありませんか。こんなことにお金使うなら不良債権なんとかしてください。これを待つ間、江戸文人の漢詩を読み、琴を爪弾いておりました。。


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