Last Up Date 2002.05.01          

日記を物語る 2002年04月INDEXホームに戻る             


04月29日(月曜日)

神田龍身さん『源氏物語 性の迷宮へ』と志賀あずささんの『源氏物語の研究ー薫と浮舟、その生』を読む。僕も宇治十帖の論文は、『解釈と鑑賞』に書いた浮舟の出家作法に関するものだけ。勉強しないと。

04月30日(火曜日)

気がついたらもう今月も終わり。勉強は仕込みで終わりました。というより、夏休みまで長時間原稿に向かうことはないでしょう。


04月01日(月曜日)

原稿は一応完成。添付ファィルで送信しました。気がついたら三日で歌語《浮き木》の変遷について45枚。ほんとかいな。。集中してこうした仕事が出来るのは来週まで、また忙しくなりますね。

翰林通信に『源氏研究』に寄せた僕の論文などのラインナップも掲載されていました。乞うご期待。

04月02日(火曜日)

関西学院の高木和子さんから『源氏物語の思考』(風間書房.2002年)を頂戴しました。十数余本の既発表の論文に、書き下ろしを加えて、まさに大著と言える一冊に仕上がっています。同世代の、またいくつかの教壇もすれ違いながらご一緒した研究者の《知》の結集に拍手を送りたいと思います。萬謝。

04月03日(水曜日)

そろそろ新学期の準備をしないと。論文演習のテキストは斎藤孝さんのベストセラー『声に出して読みたい日本語』(草思社.2001年)に変更したので、とりあえず、黙読して過ごす。近々、各大学のページを新年度版にしましょう。

04月04日(木曜日)

新典社の『論叢 源氏物語』の編集担当の方に特にお願いしていた、本文対照表のゲラがファックスで届く。とりえずの仕事をおいて影印九種とにらめっこ。聞けば版下まで担当者が作っておられるとのこと。これならコストも少なくてすむし、校正も第三者が入らずスピーデーであることは確かですね。

僕もみずほ銀行の銀行引き落としの被害に。先日からインターネットバンキングの残高が動かず、しびれを切らして電話してみましたが、電話も殺到しているらしく、引き落とし未了の延滞金は請求されないようにしてくれるとは言うけれど、ほんと困ったもんだ。

04月05日(金曜日)

頂戴した本を読んで過ごす。お礼状も今の内に書いておかないと。そして、明日のために琴の稽古。原稿に集中していて、しばらく手をふれなかったのですが、気候の変わり目なのですね、絃がすっかりゆるんでいました。

04月06日(土曜日)

所沢の松井公民館で、古典に親しむ会『源氏物語』「玉鬘」巻。長谷寺に向かう辺り。年度始めのお茶会で琴を披露。『関山月』『鳳求凰』『陽関三畳』の三曲。帰りがけにまだ蕾が残る桃の鉢植えを購入した。仙桃の実を口に含むと三千年の齢を保つと言うのだが。

04月07日(日曜日)

頂戴した本を読んで過ごすのんびりした春休み最後の日曜日。そして、春の澄み渡った風に琴の音を響かせる。音が広がる感じがするのは季節が春だからだろうか。

04月08日(月曜日)

これを見てから仕事と思って、加藤紘一の参考人質疑を見ていたら、自民党議員の質疑の後、よもやの辞職表明。日本的美意識からすれば、この後の質問は死者にむち打つようなもの。どんな政治評論家の批評もかなわぬ、したたかな計算があったように思われます。まあ、外来王になれるかどうかは神のみぞ知るばかり。

04月09日(火曜日)

講義・演習の年間予定を組み立てる。すっかり忘れかけた『源氏物語』宇治十帖の復習など。

04月10日(水曜日)

伊井春樹先生より、『大阪大学国際日本文学研究集会・講演とシンポジゥム 国際化の中の日本文学研究ーその課題と方法への模索』(大阪大学国語国文学会.2002年03月)を頂戴しました。現在の西日本の国文学界をリードする、人材と知力を兼ね備えているのもさもありなんと思われる充実した内容です。その昔、某出版社の編集担当の方から海外の日本文学研究者の動向を聞かれて難渋した苦い思い出がありますが、そんなこともあって世界各国からの研究者の提言を丁寧に拝読しました。萬謝。

04月11日(木曜日)

今朝の「朝日新聞」の一面の右下の広告欄に、風間書房が登場、『平安文学論究 第十六輯』の掲載順ラインナップが判明しました。いつぞやも両親が喜んでくれたので早速電話する。新興の出版社が始めてここに広告を出すときには、○百万のお金がかかると聞きました。国文系老舗の出版社に関わらせてくださった、世話人の伊井春樹先生に連日の感謝を。

04月12日(金曜日)

明治大学今期初登場。雨の一時限目、しかも選択必修である「論文演習」と言うこともあり、履修者は少ないものと思ってAV館に出かけましたが、どうしてどうして、収容人員20名の視聴覚教室は定員超過であわててイスを補充していただきました。今年からクラス指定を撤廃して、完全自由選択性に移行したとのことで、昨年の「国語」履修者が半数を占めていました。今後の方針と展開を説明して滞りなく第一日目を終える。帰りがけ、泣く子も黙る噂の履修マニュアル「履修王」(明大タイムス.2002年)を購入。サークルメンバーに一瞬引かれ、ついで吃驚されましたが、僕は査定委員でも人事評価委員でもないから安心だ。でも、やっぱり僕の覧は「楽勝」度・05 (喜んでよいのか、泣くべきか)。夕方は慶応で小右記の会、日記的思考に頭を戻すにはしばらくリハビリが必要のようです。

04月13日(土曜日)

終日自宅で仕事。次回から即活用の明治大学の「論文演習」は昨年度の最終レポート「和泉の二年間で得たもの」をアップしました。なぜか、サザンオールスターズの「YAYA〜あの時を忘れない」を思い起こしたのは、何人もの女子学生が彼氏とのことを書いていたからでしょうか。たしか、僕が教養課程も終わりの頃のヒット曲だったから、僕の記憶はもう19年も前のこと。今の一年生は、この頃生まれた人たちなのですね。自分がこれだけの齢を重ねたことが信じられない「わたくし」です。先日、ミュンヘンオリンピック金メダルのバレーボールの名セッター、猫田勝敏さんが、幼い子供たちを遺して癌に倒れたのは、今の僕と同じ年と知り、かなりのショックを受けたのもまたつい最近のことでした。

04月14日(日曜日) Thanks 89000 Hits

本日も終日自宅で仕事。明治大学青山学院女子短期大学ともに本年度のバージョンに衣替え。徐々に作り替えてゆきます。今年は、昨年より特に金曜日の総勤務日数がやたらに多いのですね。かなり積極的に作文技術を学びたいと言う要望があったので、ともにがんばりましょう。

本日は、豪華客船タイタニックが海の藻屑と消えた日(1912年)でもありました。

04月15日(月曜日)

明治大学本格始動。「論文演習」はリニューアルしたばかりのAV−7教室。最新鋭の機器に戸惑いつつも、履修者予定のみなさんも満足してくれた模様。「国語」は、恒例の全員自己紹介。僕とほぼ同世代の社会人入試の方がいて、多士済々を迎えての船出となりました。

04月16日(火曜日)

地上波で一昨年放映された『陰陽師』が、今度はNHKーBSで放映されていますね。考証はここがおかしいなどと無粋なことは言わないで素直にエンターテイメントとして楽しみましょう。ちなみに、昨日話題の琵琶「玄象」は『二中歴』にも見える名器です。

04月17日(水曜日)

池袋に立ち寄ったところ、大学、大学院時代の友人に出くわす。既に五、六年のご無沙汰だったため、あまりの変貌ぶりに驚かれる。彼は《退院》後、図書館勤務を経て、今は、手打ち蕎麦の店「双柿庵」を日の出町で経営しているとのこと。本日は、定休日で習い事に来たのでそうで、昔話に花が咲きました。

04月18日(木曜日)

なんとなく、肌寒い一日。神田龍身さんの選書メチィエで明日の予習。一年休んだ文学史は全員統一した作品を扱うので念入りに予習しないと。

04月19日(金曜日)

明治大学本格始動。教室は、各自にパソコンが装備された最新鋭の教室に変更、いざ出陣、と思ったところ、パソコンに始めて触る人が続出、モバイルアカウント取得のためのパスワード入力に異様に時間を費やしそうだったので、結局、一台一台、僕が入力して回ることに。駆けつけてくださった情報システム科にお礼に伺うと、高校の現場では今年から情報科目が必修となるため、導入済みと後発の学校間の格差が激しく、向こう二年はこの状態が続くとのこと(特に公立の進学校出身者ほど重症でした)。携帯はあんなに自在に操れるのに、パソコンが使えないのはなぜなんでしょう?

青山学院女子短期大学は今季初登場。今年は一年生のみのため、全員初対面と言うことで、やや緊張。ところが、教室に意気揚々と登場したものの、みんながシェークスピアのテキストを持っていることに僕自身が気づくまで十数秒(S館とN館を見間違えていたためです。英文の二年生だったため、みんなは僕の勘違いがすぐに分かっていたようで)。。。全員大爆笑のなかを退場すると、三月の懇親会でもお世話になった同郷の教授に暖かいまなざしで握手していただく栄にまで浴す ♯♯(?_?)。気を取り直して「日本古典文学史のはじまりと今」。始業五日目と言うことでたいへん元気。講義形式、内容の概説の後、おもむろに自己紹介を、ワイヤレスマイクを使って壇上にあがってもらう演出までして強行する。緊張しつつも、みんなニコニコ。なぜかご近所に住む芸能人ネタが続き、最後は「お友達になって下さい!!」で締めるパターンができあがり、和やかに終了。ダンスや演劇家志望の人か結構いることに驚く。また編入志望の人も相当数居ましたね。次の『源氏物語』の講読は「宇治十帖論」ながら、しばらく正編の物語を概説することにしています。そこで、高校での『源氏物語』の学習度を尋ねました。古典講読で通年『源氏物語』を読んだ学校は極めて稀れで、「桐壺」「夕顔」「須磨」「葵」あたりを通算七、八週から十週くらいかけている学校が最も多いことを再確認。また、「特別演習」でも藤本・小林両先生の『源氏物語』論があるので、内容が重ならないように構成しなくはなりません。諸先生方が配慮して取り上げる巻巻を散らしているので、角川文庫は二年でほぼ全巻揃うくらいの充実したラインナップです。もちろん、一年次には大軒先生の『枕草子』論もあり、「日本文学史」もあるわけで、僕自身がもう一度学生に戻って勉強してみたいほど、垂涎の講義内容が展開されています。また、「近現代文学の講座も著名なスタッフがずらりと並んでいるから、漱石から芥川賞作家、村上龍に春樹さんまでだいたい全部カバーできますよ」と言ったらみんなの嬉しそうなこと。僕も来週はこれしかないと言う「技」を、さっそく披露することにしました。

帰宅すると、東京女子大学日本文学科より、志賀あずさ氏『源氏物語の研究ー薫と浮舟、その生』(松村緑記念基金刊行賞)を頂戴していました。 A5版で236頁の大作修士論文、その完成度の高さにただ脱帽しました。

04月20日(土曜日)

『源氏研究』も無事刊行。これを片手に白百合女子大学の物語研究会へ。発表も充実、レジュメが足りなくなっているのを見るとかつての活況を思わせる気配。要はともに鍛え会うという自覚と姿勢が必要。ただし、かつての苦い経験はきちんと《精確に》復習することが未来につながるのでしょう。しばらく足が遠ざかっている人たちもそろそろまたいかがでしょう。

04月21日(日曜日)

終日冷たい雨。近刊の書籍に目を通しつつ過ごしていたところ、『論叢源氏物語』の編集担当である久下先生から、校正の確認があり、恐縮。「本文の校勘表は出向いて確認せよ」とまで仰ってくださり、細心の配慮にひたすら感謝するばかり。夕方のジムはやはり寒さのためにいつもよりは空いていました。

04月22日(月曜日)

明治大学。こちらの「論文演習」もまたパソコンに始めて触る人が続出、データの収集、コピー、ペースト等の再加工に至る行程を僕がなんどもやることになってしまいました。次回はもう自分で解決すること。「国語」は、例によって難読漢字と横光利一までの日本文学史。期待した答えはほとんど返ってきませんでしたが、次回からは対応の仕方もなれてくるでしょう。

04月23日(火曜日)

気になって調べてみると、1998年秋冬頃から国文系の学問業界の不況が深刻化していると言う認識であったようですね。こんな記事を見つけました。「××さんのところは、古典文学関係の研究書を出しているところだが、やはり、本が売れなくなってきているという。私は、不況と言っても産業界の影響を受けない大学での給料が減ったわけでもないのに、どうしたのだろうか、と言った。それに対する××さんの考えは明確だった。研究書を買う世代、20代後半から30代の非常勤で生活をしている人々が、数年後に就職できる見通しを失って、本を買わなくなってきているのではないか、と言うものだった」。若い世代(僕も若いがそれよりもの意)が将来に絶望している風には見えないが、確かに本は買わないし、読書量もかなり少ない。また、将来の展望もないことは確かでしょう。それより何より大切なのは、少部数出版の出版社の場合、購買層がいずれは執筆者層になるという構造を把握しておくこと。ちなみに、この××さんはもう引退なさいましたし、社の方針もエンターティメント路線に変更、予告されていた本ももう出る見込みはないようです。ところで、僕が最近関わった出版社は、編集者のみなさんがたいへん気配り上手で気持ちよく仕事させていただくことができました。要は、気配りと人間関係への配慮がすべての基本と言うことでしょう。ちなみに、僕の著書を出してくれた有精堂の社長が、将来を見越して解散を決めたのは1996年でしたから、認識そのものがかなり甘いような気もしますがね。

04月24日(水曜日)

鄙びた田舎の僕の周辺がにわかに騒がしくなりました。近くにスーパーが出来たためです。マックもあるからたまには良いですね。だから近所のスーパーが廃業したのですね。昨年はクリーニング店にもいきなりやめられシャツを失いました。グローバリゼーションですかね。『論叢源氏物語』の本文校勘表の念校が届き、確認したら五カ所も直しが。。。学会で会わせる顔がありませぬ。

04月25日(木曜日)

小泉総理まで、国語や伝統文化の教育に重点を置くように、河合隼男文化庁長官に指示したと言う。世は「日本語」本ブーム。とするなら、僕の「論文演習」の教室定員超過もこれに関係があるのかもしれない。知っているようで知らない「日本語」を知り、美しい「日本語」を話せるように学びましょう。ちなみに「学ぶ」は「まねぶ」の転化したことばです。

04月26日(金曜日) Thanks 90000 Hits

明治大学。「論文演習」は、自分史を書く。パソコンの立ち上げも、「あと五分で立ち上げること、そしたら次の作業のプレゼンだ!!」と気合いを入れたらほとんどの人が時間内に僕の明治のトップページをひらくことが出来ました。過去の先輩のテキストをコピー、ワードを立ち上げて、ペーストし、再加工。途中、手慣れない女子学生の作業を見かねてやってあげる男子学生も登場(青春はいいなあ!?)、極めてスムーズに展開し、文字修飾、フォント、背景の変更など、小技のプレゼンもみなすぐに自分のところに取り込んでくれたようです。安心。

緑の美しい表参道を抜けて、青山学院女子短期大学。「文学史」は『古事記』の世界。古典に親しむ機会のない、今の高校のカリキュラムのために、シフトを変更し、古代から近世までの主要な古典をセレクションして、文庫本数冊を学科で一括購入し、出来る限り原文を読もうという趣旨の講義。原文はやはりワイヤレスマイクを使って「国産み神話」のところを読み上げていただきました。始めての古代神話の世界に、感嘆の声が挙がる。歴史的背景や、兄妹婚などを概説し、次に進もうとしたら「先生、訳してくれないんですか」との声。古典は訳と品詞分解と言う固定観念が染みついていることを実感して唖然とする。次の『源氏物語』の講読は、正編の「葵」、「須磨」の巻の辺り。琴で「関山月」。須磨の情景は彷彿としたのでしょうか。帰りがけ、この短大のOGでもある教員室担当の方から、昨今の学生気質のあまりの変化に戸惑っていると言うお話を伺う。時代は常に移り変わるもの。。

04月27日(土曜日)

白百合で『浜松中納言物語』を読む。未知の世界である異国・唐様をどのように想像したか。むつかしいところ。

04月28日(日曜日)

余明先生のスタジオでレッスン。リズム・呼吸・運指の精確さなど課題多し。五月は先生が忙しくてお休みの模様、残念。移動して、母校で『元輔集』の注釈。徹底的に歌語を調べ尽くす。《おさかな》を思いっきり食べた感じ《「おさかな天国」より》。


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