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三和・東海銀が合併を正式発表

 来年4月に経営統合する計画を進めていた三和銀行、東海銀行、あさひ銀行の3行は15日、統合計画からあさひ銀行が離脱することを発表した。統合見送りを受けて三和、東海の両行は同日、2002年4月をめどに持ち株会社のもとで合併する方針を発表。三和と親密な東洋信託銀行も加わり、持ち株会社のもとでの3行合併を目指すことになった。あさひ銀行は、首都圏に基盤を置く地方銀行最大手の横浜銀行や千葉銀行を対象に持ち株による経営統合の検討を始める。

 三和、東海、あさひの3行は今年3月、持ち株会社のもとで経営統合する計画を発表していた。だが、統合形態をめぐって、合併を主張する三和、東海と経営の独自性を保つことにこだわったあさひが対立し、あさひが離脱することになった。

 あさひ銀行は今後、横浜、千葉などの有力地銀を対象に経営統合を含めた提携策を早急に詰める。あさひの伊藤龍郎頭取は、具体的な行名は挙げなかったが、「有力な地域金融機関と広範な話し合いをしている。手ごたえは十分に感じている」と意気込みを示した。

 あさひの離脱を受けて同日会見した三和の室町鐘緒頭取、東海の小笠原日出男頭取は、両行で設立した持ち株会社の傘下で合併する方針を正式に発表した。室町頭取は「東洋信託銀行は親しい関係にあり、強化していきたい」と述べ、今後、3行の合併へ向けて協議を始める意向を示した。あさひが抜けたものの、新銀行の総資産を合計すると82兆円を超える。来年4月に誕生するみずほフィナンシャルグループ、三井住友銀行、三菱東京フィナンシャルグループに次いで4大銀行の一角を占める規模になる。

 三和・東海などの新銀行は、近畿や首都圏に強い三和、東海地区に強い東海と、地域的な営業基盤を互いに補完し、企業向けの大口取引や国際業務、信託業務を一本化することで合理化効果を狙う。室町頭取は「両方にとってやりやすく有効な方向になった」と3行統合の入れ替わり劇を評した。(08:50)

恵良 泰彦

銀行の統合・合併が相次いでいる。しかも最近の傾向として、そのほとんどが大手都市銀行同士の大型統合・合併である。これにより、世界でも有数の総資金額を誇るメガ・バンクが誕生している。

こういった状況はここ数年で急速に起こったことであり、かつてはとても想像もできなかったであろう。かつての銀行合併といえば、ほんのわずかしかなかったし、あるとすれば中小銀行同士の経営合理化が目的で、行き詰まった経営状態を打開する策として合併がなされていた。現在のさくら銀行が、かつて太陽銀行と神戸銀行が合併し、その太陽神戸銀行を三井銀行が吸収に近い状態で合併して現在に至っているのがその好例である。かつて都市銀行は、吸収以外の統合・合併はほとんどなかった。それは、大手都市銀行の経営は、全く安泰だったからである。この安泰は、政府・大蔵省の「護送船団方式」によって支えられた、絶対的なものであった。そして、銀行は倒産しないという「銀行神話」が生まれたのである。

しかし情勢は変化した。安泰だった銀行は、バブル経済の破綻で生じた、巨額の不良債権によって、大打撃をこうむることになった。こうしたなかで、銀行神話も崩壊の時を迎えたのである。バブル期に無計画に融資を行った地方金融機関は次々と倒産した。ついには大手の北海道拓殖銀行、日本長期信用銀行も巨額の不良債権を抱えて破綻した。

そして、巨額の不良債権を抱えながらも、なんとか生き残った大手銀行も、苦しい経営状態を余儀なくされた。そんな状況の中で、ビックバン(金融再編)が声高に叫ばれるようになった。そしてその再編の一環として、大手都市銀行同士の統合・合併が次々と始まった。しかし、現在の大手都市銀行のほとんどは、戦前の旧財閥の流れを汲んでいるので、旧財閥の垣根を越えた大胆な合併は困難ではないかという見方が主流であった。だが、巨額の不良債権によって経営状態が相当深刻に悪化していたことや、東京・三菱銀行の合併によって独り勝ちされるのではないかという危惧が、旧財閥のしがらみを壊したといえるであろう。

そうした急速な対処が求められているなかで、今回発表されたあさひ銀行の統合離脱は、統合を急ぐあまりに、細かい条件面の合意を怠った結果といえるだろう。あさひ銀行は、中堅銀行であった共和・埼玉銀行が合併して都市銀行になったのであり、そういった面でいえば、都市銀行の中でも基礎体力の乏しい銀行である。大手都市銀行が次々と提携相手を見つけるなか、統合交渉に出遅れたあさひ銀行には、すでに三和銀行ぐらいしか有力銀行が残っていなかったともいえる。そうした面を考慮すると、統合形態をめぐる対立は仕方のないものであったといえよう。

かくして、メガ・バンクが出揃った今、注目されるのはあさひ銀行の今後の動向である。取り沙汰されたのは、有力地方銀行である横浜銀行、千葉銀行との提携であった。しかし最近の報道では、提携交渉は難しい情勢にあるようだ。最近の傾向として、大手都市銀行がメガ・バンク形成へと動く一方、地方銀行はそれぞれの地域に根差した、地元の住民、中小企業を対象とした経営へと動き出している。この動きは、資本力の違いが圧倒的な現状では、妥当な選択であり、その方向が地方銀行の本来の道ではないかと思う。

果たしてあさひ銀行は、まだ統合による経営強化を目指すか、それとも強力地方銀行としての道を進むのか、とにかく、一度、日本の有力銀行グループになるチャンスを、自ら絶ってしまったのだから、早急に決断を下さなければ、どんどん置いていかれるだけである。

ところで、これらの銀行の提携は、われわれの日常生活に直接的に影響を与えるものではない。とはいうものの、われわれにとって大事なのは預金の安全であり、その点でいえば、提携は少なからず破綻を予防するもので、また利便性の向上も期待でき、プラスの方向になるものであるといえる。

ただ、ひとつ杞憂を記しておくと、現代の業務提携・合併にはリストラによる人員削減がつきものである。それに伴って、現在は、戦後最悪の失業率を記録するほどの状況にある。この失業者の多さが、景気のなかなか回復軌道にのらない原因の一つであることは否定できない。銀行をはじめとする企業は、世の中の流れということで、リストラを連発するのではなく、企業生き残りの最終手段としてのみ、リストラは行われるべきであるということを付言しておきたい。

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