清泉女子大学受講生のページへ  (光源氏について)      99001015 江守明子

(光源氏について)      99001015 江守明子

母御息所も、影だにおぼえたまはぬを、「いとよう似たまへり」と典侍の聞こえ

本文:けるを、若き御心地にいとあはれと思ひきこえたまひて、常に参らまほしく、な

づさひ見たてまつらばやとおぼえたまふ。

訳:源氏の君が母を失った時はまだ三歳であったので、その顔立ちなどはっきり覚えて

いないが、「藤壺さまは、本当にお母様によく似ていらっしゃいますよ」と典侍が

申し上げるので、幼心に藤壺の宮に関心を抱き、できることならいつもお側にいて

お姿を眺めていたい、と願うようになってくる。

 この文章にあるように、源氏の藤壺に対する気持ちは「母への愛」から始まったようで

ある。そして幼くして母を失ったために母の実像を知らない。そのためいつも母の面影を

追い続け、藤壺が母に似ていると聞くと、よりいっそう藤壺を慕い、恋するようになったのである。要するに藤壺への愛はマザコンからによるものであろう。

 

「うちつけに、深からぬ心のほどと見たまふらむ、ことわりなれど、年ごろ思ひ

本文: わたる心の中も聞こえ知らせむとてなむ。かかるをりを待ち出でたるも、さらに

浅くはあらじとおもひなしたまへ」

訳:「突然のことで、気まぐれに忍びこんできたとお思いでしょうが、以前からあなた のことをお慕いしていたのです。そのことをわかっていただきたくて、この機会を 待ちこがれていたのですから、軽はずみな行動だと思わないで下さい。」

この出来事は義父の左大臣の家来である紀伊守の邸へ訪問した際のことである。伊予介の妻(空蝉)は夫の伊予介が任地に行っているため一人で床で休んでいた。これがチャンスと思い源氏は忍び込み、このようにして空蝉を口説いた。そして女性を抱き上げると自分の部屋へと戻り出す。途中で中将らしき女房に出くわすが、「夜が明けたら、迎えにきなさい」とものともしない。

 このように、何の根拠もなく、ただの好奇心で口から出まかせに喋っている。相手に対して優しくて、そして時には大胆に強引に迫っているが、この時はまだ十七歳であった源氏にしては、たいへん大人びた行動であったと思う。現代の十七歳と比べると、とんでもなく思い切ったことをしていると感じる。

 

 

 

 

「何か、かく疎ましとは思いたる。いとよくもて隠して、人に咎めらるべくもあ

らぬ心のほどぞよ。さりげなくてをもて隠したまへ。浅くも思ひ聞こえさせぬ心

本文:ざしに、また添ふべければ、世にたぐひあるまじき心地なんするを。このおとづ

れきこゆる人々には、思しおとすべくやはある。いとかう深き心ある人は世にあ

りがたかるべきわざなれば、うしろめたくのみこそ」

訳:「どうしてこうも、避けようとなさるのですか。私は人前を上手に隠して誰からも 見咎められないように、用心しているのですから、あなたも何気ないふりをして、 目立たぬようにしていて下さればいいのです。これまでも浅からず思っていたのに さらにいまは想いがつのり切ないばかりです。私がこんな気持ちになるのは、そう そうあることではありません。あの手紙をよこす若い男たちなど問題ではありませ ん。これほどあなたのことが気がかりで、大切に思っている者は、他にはいないは ずですから。」

またもや源氏は強引に口説いてる。しかし相手の女性(玉鬘)はかつて源氏が愛した夕顔の遺児である。玉鬘は源氏の好意にこたえることが出来ず、一定の距離を保ち続ける。源氏もかなり大胆に口説きながらも、かんじんな所では弱気になっている。きっと、自分はこの人の母親と関係があったという、男としての引け目や照れなどがあって、我慢をしていたのだろう。そしてこの時、さすがの源氏も自分が若くないということを悟ったのではないか。

 

まづ、居丈の高く、を背長に見えたまふに、去れ場よと、胸つぶれぬ。うちつぎ

本文:て、あなかたはと見ゆるものは鼻なりけり。ふと目ぞとまる。普賢菩薩の乗物と

おぼゆ。あさましう高うのびらかに、先の方すこし垂りて色づきたること、こと

のほかにうたてあり。

訳:まず目につくのは、背丈の高さで、しかも背は軽く猫背で、目をふさぎたいほどで   ある。くわえて異様なのは鼻で、普賢菩薩の乗物かと思われるほどの奇怪さで、あ   きれるばかりに高く長く、しかもその先端は下に垂れて赤く色づき、とても見られ   たものではない。

 彼女は欠点を隠し続けたため、源氏は相手を想像し、関係を持ってしまう。しかし末摘花が美人ではないことに気づいた後も、源氏は使者を遣わせ衣装を贈り,荒れた庭などを修理させ、援助までしてあげる。つまり末摘花が哀れであったため、助けてあげたくなるのだろう。それに源氏は男らしく責任感が強く少しでも関係があった女性にはできるだけのことはしてあげよう、という気持ちがどこかにあったのではないか。こういうことからも源氏の優しさや誠意を感じることができると思う。

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