私のさくら道
千田虎峰

2003年、第10回のさくら道は殊のほか、思い出と感激が深かった。初日の夏日の暑さと放射冷却のための夜中の寒さ、二日目の台風を思わせる強風と雨、ゴールは横殴りの風雨の中のぎりぎりのフィニッシュ。過去にはない深い感動を残してくれたのであった。
定年となって勤務を気にすることもなく、ゆっくり時間内ゴールを目標としての参加であったがスタート地点に集まった顔見知りのウルトラ仲間や応援の仲間、旧知のスタッフと歓談していると果たして完走できるかと不安がよぎる。一宮裁判所前(27.3K,9:20)
毎度の事ながら名古屋市内と郊外は地元なるがゆえの観光案内に徹して北上、初参加のスポーツクラブ仲間の広瀬君と笠松まで行くが水分補給中に離れる。岐阜市内は富山の関さんと並走し、フル百仲間の福井さんリードの関エイドは暑さで水を飲み、被るランナーでおお賑わいだ。ソーメン、お握り、アンニン豆腐などご馳走が一杯でつい休憩を取りすぎてしまう。(59.5,14:30)
暑い時間帯で美濃のエイドで冷水を浴びる。美並の道の駅でトイレ休憩とうどんを夕食として取る。前回の失敗で腹いっぱいの大食いは止め、日が落ちて涼しくなるのを待って出る。(76.3K,17:30)例年マッサージをして頂いてる金沢のカイロプラテックの青年に世話になる。(同姓の千田さん)ここから先行の中江さん、仙台の出口さんと暗い夜道を同行する。歩道が左右に移動してトラックやバスも多く注意して走る。中江さんは女子の最高齢者でウルトラの大ベテラン、その粘りにはいつも敬服する。出口さんは初参加、守師匠に誘われてヴィデオでイメージトレイニングしてきたという頑張り屋さん。郡上のエイドで腹ごしらえし、美味しい牛乳で喉を潤す。広瀬氏の仕事仲間の応援が来てくれる。(96K,21:50)
大和では本田おばあさんのお出迎えで自家製の山菜おじやと漬物を頂く。深夜までいつもながらあり難い事だ。白鳥に入り坂を登り佐藤良二さんの顕彰碑に参るが今年は桜の花がなく寂しいことだ。(116.2K,1:06)
向小駄良の休憩所で小休止、おでんを頂く。寝ている人もいるがまだ目が冴えているので長袖シャツと防寒具をつけ眠くなるまで前進する。北濃駅で待合室が空いていたので仮眠する。15分程で寒さに目が覚めて起きるが、歯が合わないぐらいで震えが止まらない。二回バス停で仮眠し、蛭が野分水嶺でちょうど夜が明ける。名物手抜きうどんを成瀬ボスから頂く。暖かくてだしがきき美味しい。大日岳の残雪が朝日に照ってきれいだ。空に雲なく今日も暑くなりそうだ。観光客で混み合う荘川桜エイドにて山口夫人にお迎えられる。桜は早すぎたのか未だ蕾固しだ。カレー、スープを頂き二回目のマッサージをお願いする。足を骨折して参加しない柴本さんが車で応援してくれている。(154.7K,9:02,30分休憩)
先行の若原さんと一緒になりスタートするが、その早さについて行けない。風の強い御母衣ダムを過ぎ、平瀬で足を痛めた若原さんはリタイアするという。無理をしないことだ。田口建設ではおかゆを頂く。顔ふきタオルがあり難い。(168.2K,11:47)
帰雲城跡を過ぎ眠くなった出口さんに後で追いつくことを願って一人旅となる。萩町手前で富山の桜井さん達のエイドで接待を受ける。石原、弥富は1時間前、渡部夫婦は30分前に通過し、石原グル‐プは歩いてもゴール間違いなしという。白川郷分岐で荘川桜でリタイアした広瀬氏が迎えてくれ、コムズの渡辺君が応援にくる。(179.5K,14:00)
白川村で岩田氏とあい暫く同行し写真を撮る。若い大勢の観光客でまるで銀座通りだ。長いトンネルを3本通り、飛越七橋を深い新緑の木々を眺めながら渡る。上平の道の駅ささら館につくが5時を回り店じまいか閑散としている。エイドでお茶を頂く。(197.3K,17:10)
民謡歩道で一人民謡を聞く。夕方の山村に哀調をおびた音色がよく響きわたっている。渡辺夫婦が仲睦ましく走っていた。3年前にご一緒して頂きリードして時間外だが初ゴールしたのだった。下梨エイドではもみちゃん、美ッちゃんのきれいどころにに迎えられる。この頃から強風が吹き荒れペットボトルが吹き飛ばされ、机を押さえるのが精一杯。おじやを頂き五箇山への登りを急ぐ。(209.2K,19:32)
五箇山トンネル入り口まで1:30かかり、3000Mのトンネルは30分で通り抜ける。浅井さん夫婦、越田さんの名古屋トリオが迎えてくれる。ここも強風で寒いが3回目のマッサージを受ける。熱いソーメン、ホットポテトを頂く。出口さん達が追いつく。(214.7K,21:00)
城端の灯を目指して長い坂を下るが展望はいつも夜中で楽しめない。蛙の合掌が喧しく夜空に響く。城端から福光への通りでユノさんと月峰さん達に会い暫く同行し、坂上松華堂で小休止する。役場横で足を引き摺っている金魚ちゃんに声をかける辛そうだ。歩けないので保護を求めると月峰さんは言う。(231.1K,0:25)
蔵原から県境を超え森本迄での14k程は眠さがピークに達し、風雨が台風並に吹き荒れ下着までびしょぬれで避難もできず皆さんに置いていかれる。兼六園への国道は川のような流れと水溜りを避けながらの苦行だ。新聞配達が動き始めたが薄暗い。兼六園の酒井さんには寒いからと挨拶だけで通過、香林坊から武蔵ケ辻の中心街を一目散に走る。二口のエイドは風雨の為か引払った後だ。時計を見る余裕もなく唯ルネスを目指し走る。頭の中は熱いお湯の中に浸かって体を温めたいとそれだけで一杯だ。感激のゴールは難行苦行があっただけに弥増さるのであった。一人旅のはずがゴールのとき横に飛びこんできたのは富山の関さんだった。(265.5K,6:56)