金堂の列柱
The line pillar of Kondo Hall
月は東から出る、とすれば「月影」は向こうの満開の桜を照らしてこちらに射してくる。できれば一度、月の明るい夜に訪ねてみたい。
会津八一の歌、「おほてらのまろきはしらの月かげをつちにふみつつものをこそおもへ」の「月かげ」は、月の光ではなく、月の光をさえぎる柱の影のことで、柱とはこの金堂の列柱のことだ。
三好達治の詩、「甃(いし)のうへ」はこの寺を歌ったものではないとは思うが、春の唐招提寺にも似合う。
甃のうへ
あはれ花びらながれ
をみなごに花びらながれ
おみなごしめやかに語らひあゆみ
うららかの跫音空にながれ
をりふしに瞳をあげて
翳りなきみ寺の春をすぎゆくなり
み寺の甍みどりにうるほひ
廂々に
風鐸のすがたしづかなれば
ひとりなる
わが身の影をあゆまする甃のうへ
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