鏡池と大仏殿
Daibutsu-den Hall and Kagami Pond ; Todai-ji Temple

不思議なことに万葉集には六大寺をはじめとする平城の大寺を詠んだ歌が殆どない。わずかに元興寺を読んだ御製があるだけではないだろうか。この東大寺にして、僧を饗応した時の家持の歌が一首あるだけだ。(巻十八)  詠まれた歌はあったのだが、選者(大伴家持)の意図がはたらいたのかもしれないが、あるいは誰も平城京の伽藍など詠まなかったのか。たしかに唇の朱も鮮やかな黄金がまばゆいばかりの蘆遮那仏を詠んでも、とても歌にはならなかったと思う方が事実に近いような気がする。