1997年6月 飛火野から新薬師寺へ
From Tobihi-no to Shin-Yakushi-ji

奈良のなかでも特に好きな場所だ。緩やかな斜面を下る。どこを歩いても良い。下ったところにある立札にはここが世阿弥の曲「野守」の舞台であることを記している。物語はこうだ。羽黒山の山伏が野守の翁に出会い、野守の鏡を見せてほしいと頼むと、翁は塚の中に入っていく。しばらくすると鬼神が塚から出現し、鏡に世界と天界、地獄を写して見せ、大地を踏み破って地下に消えていく。傍らを流れる小川は春日山に発して右の方の鷺池に注ぎ、かつては興福寺の境内だった奈良ホテルや菊水楼を写す荒池に至る。向うには高畑の家並みが見える。   次へ        「ときおりの奈良」に戻る