奈良ホテル
Nara Hotel

菊水楼付近から荒池をはさんだ奈良ホテル本館を眺める。明治42年(1909年)に関西の迎賓館としてオープンした。瓦屋根の本館は辰野金吾の設計。桃山風の檜造りで和洋折衷の室内は天井が非常に高く、ゆったりとした気分になる。明治・大正時代に、ここに滞在した人々が眼にしたのと同じ佇まいが今も残っていることに驚きを感じる。「池の向こうの旅館の二階では、乱酔した大勢の男が芸妓を交えてさわいでいる。興福寺の塔の黒い影と弦歌にゆらめく燈の影とが、同じ池の面に映って若葉の間から見えるのも、おもしろくなくはなかった。」(和辻哲郎「古寺巡礼」)「池のむこうの旅館」とはどの宿を指しているのだろうか。 次へ