姫島
Hime-shima Island

姫島は古事記では、国生み神話のところに「次に女島(ひめしま)を生みたまひき。またの名は天一根(あめのひとつね)といふ」とある。日本書紀では巻第六に、任那の都怒我阿羅斯等という男が黄牛の代償として得た白い石が美しい乙女になって対馬海峡を渡り、難波と豊の国の国崎郡に来てそれぞれ「比売語曾の社(ひめごそのやしろ)の神」となったと書かれている。
難波の社は今の大阪市東成区東小橋南之町に座し、「国崎郡」の社はこの姫島にある。姫島の名前はこの白い石から生まれた比売からつけたものといわれている。
「妹が名は千代に流れむ 姫島の 子松が末に 苔むすまでに」
「難波潟 潮干なありそね 沈みにし 妹が姿を 見まくし苦しも」(万葉集巻二 228,229)は難波の淀川の河口にあった姫島の松原の美人の屍を詠んだ歌で、巻三にも四首の歌がある。書紀の姫島と同じではないかと思うが、どうだろうか。
また、書紀はこの姫島と大阪の姫島とは「それぞれ」神になったとあるが、比売は姉妹だったのか、あるいは同一人物がこの姫島に寄港し、次いで瀬戸内海を通り難波に到ったのか、疑問は尽きない。