十三重石宝塔からの楼門
The Romon-gate from Thirteen storied pagoda

重衡は死後、室町時代に幽玄の世界に現われる。世阿弥の子・観世元雅の作と伝えられている能曲「重衡」の主人公として。曲中、彼は自分の生涯を語り、父・清盛の命令と神仏への信仰の間で苦悶する。この曲は永い間忘れられ、500年以上演じられることはなかった。「重衡」が復曲したのは昭和58年、観世流の浅見真州(まさくに)師による。
興福寺がこれを上演するという話を聞いたのは、99年の日比谷での多川俊映貫主の講演のおりだった。その言葉どおり、その秋の興福寺境内での「塔影能」で真州師が「重衡」を演じた。興福寺は仏敵であった重衡をゆるしたことになる。南都焼討から819年目のことだ。