方丈
Hojo Hall of Chishaku-In Temple

長谷川等伯の障壁画は初めて拝見した。絵があった建物は現存していないため、方丈前の宝物館に収蔵されている。今秋東京国立博物館で等伯の代表作である「松林図屏風」が公開中だが、彼が一流画家としての地位を確立したのは智積院の前身、祥雲禅寺の障壁画によってである。絵は大きく四面に並べられ、やや抑制された照明に物憂く光る金箔地に松や桜、楓や秋草が雄渾な筆致で描かれている。木や草花の命を切りとって画面に移し替えているかのようだ。様式美に流れていないため、作為を感じさせず美しく隙がない。時間を忘れて魅入った。長谷川等伯は最近の本では五木寛之さんの「百寺巡礼」(講談社)第二巻北陸の「妙成寺」に登場する。等伯の故郷能登の風土と画家としての精神の遍歴が語られている。