自殺企図――Suicide
死にたいという気持ちがありますか? (完成率50%)

――死の問題と対決せよ by マルティン・ハイデッガー 哲学者

はじめに
 三次救急(救命救急センター)に運ばれる患者さんの10%は自殺企図によるものとされています。幸い救命し得たとしても、直後から再自殺の危険がつきまとうため、慎重な対応が必要となります。

自殺の病態
統計
 近年、自殺者の数は急増し、1998年には3万人を超えています。自殺は死因順位の第6位(若年者では1位)となり、交通事故による死亡者の2.4倍にもなります。
 
手段
 既遂者では縊首が最も多く、未遂者では毒薬物内服によるものが多くなっています。

自殺の要因と起こり方
 自殺は、まず自殺の傾向(準備状態)が作られ、そこに直接の動機が加わって起こります。
準備状態
 生物学的要因: うつ病、アルコール症、精神分裂病、痴呆の初期など
 心理学的要因: 性格の偏り(パーソナリティ障害)、人間関係の歪みなど
 社会的要因: 経済変動、家庭的変動、季節変動など
直接動機
 子供: 環境の変化、親の喪失、叱責
 青年: 異性問題、前途不安、受験や就職の失敗
 壮年男性: 主に仕事上の問題(失職、転職、定年、事業失敗など)
 壮年女性: 主に家庭の問題(夫との不和、嫁姑のトラブル、子供の非行など)
 老年: 壮年期の傾向に加え身体疾患
 自殺者の80%以上に、なんらかの精神障害が関与していると言われます。最も多いのはうつ病(生きているのが辛くなる)で、続いてアルコール症です。精神分裂病では幻覚や妄想に巻き込まれて、突発的で激しい自傷(焼身など)によって自殺するものもあります。このような患者さんは治療によって自殺念慮を消失させることが可能です。
 第三者から見て、それ相当の動機があると思われても、背後にうつ病などが存在していることは少なくありません。そして、本人も死にたいという気持ちを抱きながら、自分でうつ病だということに気づいていないことも多いのです。死にたいという気持ちは治療によってなくなります。
自殺の危険因子
 自殺未遂の既往歴
 精神障害の既往歴・現病歴: 躁うつ病、精神分裂病、パーソナリティ障害、アルコールや薬物依存
 社会的孤立: 親族からの孤立、社会からの孤立
 重症身体疾患: 重篤な慢性疾患、悪性腫瘍、ターミナル状態、強い呼吸困難、強い疼痛、身体的欠損など
 喪失体験: 経済的損失、社会的地位の失墜、近親者の死亡など
 自殺の家族歴
 事故傾向: 繰り返し事故を起こす、事故を予防しようとしない、身体的疾患に対する医学的助言を無視するなど
 人工動態的な特徴: 男性、高齢者、失業中、低所得階層

自殺未遂について
 未遂者は既遂者の数倍から数十倍いるといわれています。中には「眠ってしまいたかった」、「死ねるとは思っていなかった」などと述べるような自殺の意図さえ不明確なパラ自殺(類似自殺)もあります。
 自殺未遂者が後に既遂に至る頻度は非常に高いです。特に自殺未遂後の1〜2年は危険で、この間に1〜2%が自殺し、最終的に3〜20%が自殺によって死亡するといわれています。自殺未遂者がその後、自殺によって死亡する危険率は、自殺未遂の既往歴のない人の50〜140倍に達します。
 したがって軽い自殺未遂も軽視できません。原則として精神科的治療を受けるよう、本人や家族に指導する必要があります。
対応
 
希死念慮――死にたいという気持ち
 
自殺と法医学


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