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ラファエロ・サンツィオ1483−1520イタリア

<凌駕不可能なる美>

raphael0011ラ・ベラータ:ピッティ美術館raphael002部分   raphael003ラ・フォルナリーナ



- なんと美しい女性でしょうか!こんなに美しい女性像は見たことがありません。そう思いませんか所長。

* 同じこと何回もいってないか・・まいい。ラファエロ、その名を口にするだけでもなんとも言えない甘美たる思いがするねえ。彼は美しくも母性的な聖母子像をたくさん描いている。この左右の肖像画は通俗的にはラファエロの恋人のシニョリーナ、フォルナリーナといわれている。特に左の絵は繊細でふんわりしていてスフマート的だ。右図はちょっとかたいので弟子が描いたのかもしれないな。

- スフマートってなんでしたっけ?

* イタリア語のsfumato(ぼやけた)からきた技法で、輪郭や色がなめらかに移行して行く描き方だ。レオナルド・ダ・ビンチが創始者にして完成者と言われている。まあ、若いラファエロもフィレンツェでレオナルドに会ったりしてるんだけど、作品を見せてもらったりしてびっくりしちゃっただろうね。で、すっかりレオナルドの影響を受けた。

- ラファエロは最初ペルジーノに師事してたんですよね。

* そう。ラファエロも最初はペルジーノそっくりのかっちりしたちょっと中世的な絵を描いていたんだけれども、フィレンツェへ来て画風が変わった。その後の彼の絵はふんわりして、特に聖母子像はすばらしくやさしさに満ちている。構図も色彩もレオナルドの影響とみるのが妥当だろう。

- うーん、でも私はレオナルドの描く聖母とかモナリザとかよりも、ラファエロの描く女性像のほうが好きですねえ・・。

* ははっ、私もそうだな。それはやはりレオナルドの女性像は神聖的すぎるからかもな。近づきがたい印象がある。それに対して、すくなくとも私にはラファエロの女性像は生身の、そこらへんにいる普通の女性を感じさせるんだ。だから親近感が沸く。そうじゃないかね。

- なるほど、そうかもしれません。

* さらに言えば、美術史家ヴァザーリによると、ラファエロは非常な女性好きということになってる。若くあまいマスクで完璧な身のこなしの宮廷画家だった彼は、宮廷の貴婦人やコルテジャーナ達に大人気だったらしい。でも本命は上図のフォルナリーナというわけだ。好きなものはより良く描けるものだ。でも彼のすごいところは、女性だけでなく、老人とかも非常にうまく、完璧に美しく描いたということだね。

- 結局全部うまいんじゃないですか!

* そゆこと。

- でラファエロはその彼女と結婚はしていないんですか?

* してないんだ。死んじゃったんだよねえ、ラファエロは、37才で。原因は正確には伝えられていない。熱があったということなので風邪をこじらせたか。彼は女性癖は悪かったかもしれないが、それは返して言えば明るく魅力的な性格ということだった。友人や弟子を大切にした。それこそ、男女、身分問わずみんなに好かれたんだ。その死に際しては彼を知るもので涙を流さぬものはいなかったと伝えられている。ヴァザーリは言っている、絵画芸術は彼とともに死んだと。そして後世の者はもはや彼を凌駕しようなどとはゆめゆめ考えるべきではないと。

- ぐひっ、ぐぎょひっっく・・

* 泣いてるのかね!うむ、君も彼の心の友人として認めてあげるよ・・。

- いえ、あの、花粉症がひどくてですね・・ぐひょ・・

* ・・・・・彼を凌駕できない人の筆頭として認めてあげるよ・・・。


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