映画館の外

トウジ:シンジが入って1時間たちよる・・・


トウジの周りには、レイ、ヒカリ、ミサトがいた。

ミサトはトウジからの電話で飛んできた。

レイとヒカリは、手を繋いでいた。


トウジ:何やっとんのや。

        こんな時にEVAがあれば、こんな火事ぐらい簡単なのに・・・

トウジは拳を握り締めたが、体は震えていた。


あーーーー

女子高生の誰かが叫んだ。

ミサト、トウジ、ヒカリ、レイは、一斉に声の方を振り向いた。

すると、消防隊員に抱かれたアスカが出て来るところだった。

4人は一斉に走り出した。


ミサト:シンちゃんは!

アスカは煤だらけの顔、目の周りは涙でパンダの様な顔になっていた。


アスカの前には、黒いシートに覆われたタンカが救急車に入るところだった。

アスカの後ろから、消防隊員が黒いビニール袋を持って来た。

そのビニール袋から血が滴り落ちていた。

皆、愕然として声が出なかった。


アスカが救急車に乗った。

ミサト:私、この子達の保護者です。

レイ  :わ、私、い、妹

2人が乗込むと救急車は発進した。


黒いビニール袋はクーラーボックスに入れられ、氷が詰め込まれた。

ミサト、アスカ、レイは、何も喋れず救急隊員の動作を見守っていた。


黒いシートがシンジの腰まで捲くられた。

その瞬間、3人は目を閉じた。

レイとアスカは、ミサトにしがみ付き震えていた。

ミサトも震えていた。


それまで鳴っていた心拍計の音が、フラットになった。

3人は耳を塞いだ。

救急隊員はシンジに心臓マッサージを行った。

隊員A :電圧200

シンジの体が撥ねた。


隊員B :彼の血液型を知っていますか?

ミサトが歯をガタガタと震わせて、かろうじて聞える声で

ミサト:え、え、A型です。

        わ、私たち3人ともA型です。

        ゆ、輸血・・・


その時、救急車が緊急病院へ到着した。

病院に入ると3人は直に採血を行った。


3人は廊下で震えていた。

アスカは咽(むせ)び泣いた。

レイとアスカは互いに抱き合っていた。

そうしないと恐くて仕方なかった。

ミサトも、レイとアスカを抱きしめた。


今まで何度もシンジが入院した事はあっても、

Nerfの技術がある限り安心していた。

でも、もう頼れるものは存在しない。


            1時間経過

加持がヒカリとトウジを連れて来た。

ミサトは加持に泣き縋(すが)った。

            3時間経過

            6時間経過

            9時間経過

加持がヒカリとトウジを連れて帰った。

          12時間経過

レイとアスカは疲労困憊(ぱい)して倒れた。


しばらくして手術中のランプが消え、院長が出て来た。

院長  :彼の親族の方ですか?

ミサト:はい。

院長  :ここでは話せないので、院長室まで来て頂けますか

ミサト:はい・・・・


院長室に入るとミサトが

ミサト:だ、大丈夫なんでしょうか?

院長  :・・解りません。

        今日辺りが山です。

        生きているのが奇跡なんです。


        心停止が3回、

        脾臓破裂、

        右足切断、

        左足は神経繊維、筋肉繊維が原形を留めていません。

        脊椎も原形を留めていません。


        もし、生きる事が出来ても、彼が今後、歩けるかどうか解りません。

        ・・・

        ですが・・・

ミサト:何です?

院長  :血液のクロスマッチテストした時なんですが、

        あの2人の女性の血液以外は、彼の血液に触れた途端に凝固するのです。

        念の為にDNAの検査をしたところ、

        DNAが人間の物では無いのです。

        彼は何者ですか?

ミサト:それは言えませんが、彼は歴(れっき)とした人間です。

/* 涙 a tragic affair */

次回、ただいま

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