午前4時。
「先生、17号室の六分儀さん、急変です!!」
その日当直だった伏木医師は叩き起こされる。病室に走りながら、看護婦に症状を確認する。
既に衰弱の為、昨日から六分儀老人は起き上がる事も出来ない状態になっていた。
そして今日、夕方から昏睡状態に陥り、最早、時間の問題だったのだ。
病室には死に立ち会うものは誰も来ていなかった。孤独な死を迎えようとしていた。
「ボスミン!!。カウンターショックも用意しておけ!!」
無駄とは知りながら、伏木は処置に取り掛かった。
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ここはどこだ?。
何も見えない。
ボクはどうしたんだ。
「バカシンジ。」
「ア、アスカ!。」
「遅かったじゃない。結構待たせたわね。」
「ア、アスカ、そっ、その格好」
シンジの前にいるアスカは始めて会ったときのまま、14歳のアスカだった。
「んっもー、久しぶりに会うんだから、シンジもアタシに合わせなさいよ!。」
気が付くとシンジも14歳のシンジの姿になっている。
「ここはどこ?。」
「ここは私達が来たところ。そして私たちが還ってゆくところ。」
見えるものはアスカとシンジだけ。そして真っ暗な背景。
「シンジ?。」
「なに?。」
「シンジ、強くなったね。」
「そうかな・・・・。そんなこともないよ。普通の生活。こつこつ働いて平凡に過ごしただけ。」
「でも、充実してたでしょう?。」
「ああ。・・・・・・・・ただアスカが居なかった。・・・」
「・・・・・・・あたしも会いたかった・・・。・・・・ずっと。」
「・・・・知ってるよ。・・・・アスカはいつも待たせる方がいいんだね。」
「何よ、それぇ。
・・・・・・・ねぇ、でも、
今はもうアタシ達ひとつになれるのよ!!。
ひとつになっていいのよ!!。」
「ああ・・・そうだね!。」
暗い空間の一隅に明かりが見え始める。
「シンジ。」
「アスカ。」
「さあ、行こう。あの光の中へ。」