はあっ・・・

ここは・・また知らない天井だ。


うくっ・・

僕は起上がった。

僕は病室で寝ていたのか・・

部屋を見渡したが、誰もいない。


あ・・

なんか催(もよほ)して来た。

僕はベットから起きた。

か、体の節々が痛い。

足が妙に重いが、病室を出てトイレに行った。

あ・・かなかなぜみ(ひぐらし)の声がする。

用を足してトイレを出ると、看護婦が形相を変えて走っていた。


そう言えば、未だにこの街では、後遺症で苦しむ人が多いみたい。


使徒殲滅時の爆風による負傷。


劣化ウラン弾の破片が原因で被爆し、放射線障害で苦しむ人。


アンビリカルケーブル断線による感電。

電源ビルから伸びるアンビリカルケーブルには、

1TV(1兆ボルト)の電圧がかかっていた。


シェルターに非難しないのが悪いと言えばそうなのだが、

僕たちパイロットが未熟な為に、多くの人を苦しめたのは、紛れもない事実。


僕たちのミスが揉消されたのも事実。



病室の前に戻って来ると、看護婦さんが5人いた。


1人の看護婦さんが僕に気づいて

看護婦:何処にいたの?

と発すると同時に、病室からミサトさんと綾波が、血相を変えて飛び出て来た。

レイ  :お、お兄ちゃん!何処に行ってたのよ。

        いなくなったから、大騒ぎしてたのよ!

僕    :トイレだけど


ミサトさんが僕を見て、驚いたように

ミサト:シ、シンちゃんが立っている。

僕    :へ?

ミサトさんはヘナヘナと座り込んでしまった。

***************************************

僕はMRI(核磁気共鳴映像法)装置のドームに横たわっていた。


院長はブラウン管に表示されている骨の状態を見て、頭を掻き毟り(かきむしり)ながら

院長  :凄いな、こんなの初めてだよ。

        もう完治してますね。

        君は、人間なの?

僕    :退院できるんですか?

院長はMRA血管撮影、PET(陽電子放出断層撮影)の分析データを見ながら

院長  :脳の代謝は正常。

        骨も前より太くなってる様だし、

        何処も悪い所が無いみたいですね。

僕はニコニコしながら、ミサトさんに言った。

僕    :ミサトさん、帰っていいそうですよ。

***************************************

僕達は病室に戻った。

ミサトさんが僕の着替えを手伝ってくれている間、何故か僕は目を瞑らされていた。

着替えが終りミサトさんを見ると、目に涙を溜めていた。

僕    :ミサトさん、どうしたんですか?

ミサト:シンちゃん、元気になってよかったね。

        一時は大変だったんだから。

僕    :そうなんですか?

ミサト:覚えてないの?

僕    :・・なんで病院にいるんですか?

レイ  :お兄ちゃん、今日いつだかわかる?

僕    :・・映画館にいたのは覚えていたけど、9月10日じゃないの?

レイ  :今日は、10月15日

僕    :えーっ!1ヶ月も僕どうしてたの?

ミサト:3週間ほど危篤状態だったの。

        今日まで、シンちゃん全く反応がなかったの。

僕    :僕どうしたんですか?

レイ  :お兄ちゃんは知らない方がいいもの。

        それより、帰りましょ。

僕    :えー、なんでだよ。

ミサト:ゴキブリ並の生命力があるのが解ったわ。

僕    :僕、ミサトさんみたく自堕落じゃないですよ。

レイ  :新たな使徒、発生ね。

***************************************

僕達は病院を出て、タクシーに乗った。

僕は前の席、ミサトさんと綾波は後ろの席に座っている。

僕    :あのー、アスカは?

ミサト:気になるうっー?

と意地悪く言う。

僕は窓の外を見ながら

僕    :まだ、謝ってないから・・・

ミサトさんと綾波は、お互い顔を見合せ微笑んだ。

ミサト:シーンちゃん。

        アスカの事、どう思っているのかなあー。

僕    :いきなりなんですか?

ミサト:シンちゃんはどう思ってるのかなーて、

        あのねえ、シンちゃんが入院してる間、

        ずっとアスカがシンちゃんの面倒を見てたんだよ。

とミサトさんは嬉しそうに言う。

僕    :そうなんですか?

ミサト:レイがシンちゃんの世話をしようとしても、絶対させなかったしね。

        着替えから、下(しも)の世話まで、全部アスカがやってたわよ。

        アスカ、シンちゃんにラブラブよ。

        ・・・・

        シンちゃん赤くなってる、可愛い。


アスカが僕の看病をしてくれたの?


タクシーがマンションの前に着いた。

僕とミサトさんは、タクシーから降りた。

僕    :レイは?

レイ  :洞木さんにお礼を言って来るから。        

綾波を乗せたタクシーが走って行くのを見届けて、

僕がミサトさんの部屋に行こうとすると

ミサト:あ、今月は家政婦しなくていいから、

        ゆっくりしていて。

僕はミサトさんに礼を言うと、エレベータに乗った。


今は10月だそうだけど、まだ外は暑くて10月という実感がなかった。


僕は11−A−2号室の自動ドアの前に立ち、カードキーを挿し込んだ。

ドアが開いた。


僕    :ただいまー

何の反応もない。


居間に向うと、誰もいなかった。

アスカは居なかった。

居なくて当然だよな・・・


台所の蛇口から滴が落ちる音が聞えた。


僕   :おなかすいたな・・

冷蔵庫を覗いたが、何も入ってなかった。

仕方ない、買物してこよう。


まだ体中が痛かったけど、近くのスーパーへ行き食材を買った。

歩くのにまだ馴れなくて、往復に3時間かかった。


11−A−2号室の前に着いた時には、日が沈んでいた。


僕は11−A−2号室の自動ドアの前に立ち、カードキーを挿し込んだ。

ドアが開いた。


どかどかと走って来る音がした。

アスカ:遅いー!

        今まで何処ほっつき歩いてたのよ。

        ミサトとは3時間前に別れたでしょうが!

アスカの目が吊り上っていた。

僕    :れ、冷蔵庫が空だからスーパーへ行ってたんだ。

        直(すぐ)、晩御飯にするから、

アスカ:もういいわよ。

僕    :え?

アスカ:何そこに突っ立ってるのよ。

        何時までも鳩が豆鉄砲食らった様な顔していないで

        さっさとdining kitchenに来なさいよ。

僕    :うん。

僕は台所に行って驚いた。

テーブルには既に夕食が用意されてた。

僕    :どうしたの?これ?

アスカは腰に手を当て

アスカ:失礼ね。

        私が作ったのよ。

僕    :ア、アスカ、料理作れるの?

アスカが僕を睨んで

アスカ:もういい、アンタは食べなくて

僕    :そんなー

僕が椅子に座らず立っていると

アスカ:何ぼけぼけっとしてるのよ。

        さっさと食べないと冷めるでしょ。

僕    :うん。

        いただきます。

あ、おいしい・・


アスカは僕が買ってきた食材を覗きながら

アスカ:アンタ、私に喧嘩売る気!

        あれだけ納豆は嫌いだっ!つうてるのにまた買ってきて!

と納豆をごみ箱へ捨てた。

どうして納豆が嫌いなんだよ。


でもアスカに反論できない・・情けない。


僕    :アスカが居なかったから・・

アスカ:アンタ、私が居なかったら好き勝手やるのね!

        下僕の癖に、生意気な奴!


僕    :アスカ、その・・看病ありがとう。

アスカ:誤解しないでよね!

        下僕が居なくなると、私が困るから、それだけよ。

僕はニコニコしていた。

それを見たアスカは

アスカ:やっぱりアンタは、下僕になる為に生れたって感じよね。

        これだけ私に言われて喜んでるなんて、

        アンタ、やっぱりおかしいわ。


食事が終って僕は台所の片付けを始めた。

アスカは居間で寝転がって何時ものドラマを見ていた。


僕    :アスカ、お風呂入れて来るから。

アスカはテレビを見たまま

アスカ:私、もう入った。

        アンタも入りなさい。

僕    :えっ・・あ、ありがとう。

なんか調子狂うな。


何時も僕がやっているから、

アスカがやってくれると、嬉しいというより、なんか変。

普段、扱使われているから、馴れない事されると戸惑ってしまう。


風呂場で裸になって自分の体を見て驚いた。

お腹に大きな縫い後。

両足にも大きな縫い後。

背中にも大きな縫い後。

胸にも大きな縫い後。

一体、僕に何があったんだろうか?


お風呂に入った。

お風呂には温浴材が入っていて、良い香がした。


アスカ:バカシンジ!

僕    :な、何?

アスカ:なんでもない。

        生きてるか聞いただけ。

僕    :あ、ありがとう。


僕が風呂場から出ると、アスカが歯を磨いていた。

アスカ:何 モジモジしてんのよ。

僕はバスタオルを腰に巻いたまま

僕    :いや、あの、その・・

アスカ:誰もアンタの裸なんか興味ないわよ。

        さっさと寝間着に着替えなさいよ。

とアスカは居間へ向った。

/* ただいま Hello, dear.(おかえり)*/

次回、言う

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