2020年9月1日(Wed) 晴れ 父さん。お元気ですか? 僕も18歳になり、高校3年生になりました。 今日、始業式を終えてきました。 父さんが亡くなって4年。 色々な事がありました。 今日は父さんに報告する事があります。 僕の将来と近況について話しておきます。 僕は大学には進学せず料理の道に入り、自分の店を持ちたいと考えています。 Nervの退職金で、4年間フランスへ留学します。 お店の方は、綾波が共同経営者として出資してくれる事になっています。 心の傷は少しだけ癒えました。 4年前の最後の戦い、 今でも夢で魘(うな)されます。 最後の戦いで僕たち3人は、現代の医学ではどうにも出来ない程、 体にダメージを受けました。 唯一の希望として、EVAによる体の再構成でした。 僕達3人は初号機のエントリープラグに入れられ、EVAと融合した。 僕が目を覚ました時、何時もと変らない自分が居るものと思っていたけど、 DNA検査の結果、0.11%が人間の物でない事が分ったのです。 そのDNAのパターンは、EVAと同じだって事を知らされて、 随分悩みました・・・・ あれから4年経つけど、ATフィールドが張れるわけもなく、 頭が特に良くなったとか、運動神経が向上したとかはないみたいです。 怪我をした時、治りが異様に早いのは実感したけど、 取敢えずは魑魅魍魎(ちみもうりょう)ではないみたいです。 綾波・・・ リツコさんに綾波の出生に関する事を聞かされた・・ 僕の母さんの遺伝子と、EVAの細胞から産み出されたという事実を聞かされた時、 愕然として大人を怨んだ。 今でも決して許せない事だと思っている。 綾波の遺伝子は僕と類似している。 そう、遺伝子は母さんそのもの。 医学的には僕と綾波は親子。 戸籍の上で綾波は、僕の妹、碇レイとして戦後登録したよ。 戦中、綾波の体は、EVAと同じ様にATフィールドを張る事が出来たみたい。 でも、初号機と融合してから綾波は変ったよ。 白っぽい髪、赤い瞳、EVAと同じDNA。 それが今では、黒い髪、黒い瞳、人間のDNAへと変った。 人の体と人の心。 18歳の女の子。 そして人のDNAを持っている。 父さんが綾波を見たら驚くかもしれませんね。 昔の綾波とは別人だからね。 僕と綾波は別々の所に住んでいる。 2ヶ月間の夏休みは、綾波と同じ家で暮してたけどね。 普段、僕はミサトさんと同じマンションで生活してる。 昔と同じコンフォート17マンションで11−A−2号室。 ここは官舎だけど、僕とミサトさんの家族以外は誰もいない。 ミサトさんは加持さんと結婚して1階で生活している。 子供は2人いるのに、相変わらず自堕落・・・ 週3回、僕が、掃除、洗濯、炊事、子守をしている。 その代りに僕の部屋の家賃を、ミサトさんが払ってくれています。 そしてアスカ・・・ アスカは今、何をしているんだろう? 洞木さんとは毎週ビデオレターを送りあっているみたい。 綾波も時々、電子メールで話をしているみたい。 僕にはこの4年間、なんの音沙汰もない。 嫌われていても致し方ないか・・・ アスカは戦後、リハビリを兼ねてアメリカに渡った。 1年間のリハビリの後、大学院に進学して博士を取得した。 去年、国立遺伝子工学研究所に就職し、主席主任研究員として活躍している と洞木さんが教えてくれた。 この4年間、自分の気持を整理して考えて導き出した結果、 僕はアスカが好きである事を自覚した。 フランスに行く前にアメリカに行き、 アスカに謝罪して、僕の気持を聞いて貰おうと思っている。 その結果、アスカに断られても、 このまま悶々とした日々を過すより、ましだと思う。 アスカの気持を考えたら・・ 僕はアスカの前に現れない方が、いいのかもしれない。 アスカの前に出る事により、アスカをまた、 苦しめるかもしれない。 4年前、アスカが出国する時、 僕以外の人は、皆、アスカの見送りに行った。 けど僕は・・・アスカに来ないでくれと言われ、 一人、部屋にいた。 心が痛い・・心が渇く・・・心が寂しい。 心に穴が空いている感じ・・・ 父さん、母さん、僕はどうしたらいいの? 僕はアスカが好きだ。 それは紛れもない素直な僕の心。 アスカ・・・ /* 序章 an introductory chapter */ (ダミープラグとして生産されたレイは、2005年生まれだった。)次回、襲来