そーゆー女

written on 1997/4/28


 

 /青葉シゲル(SHIGERU AOBA)

 /ネルフ本部中央作戦司令室付オペレータ

 /階級:二尉

 /担当:通信・情報分析

 /趣味:ギター

 /現在独身。特定の彼女なし。

 

 

 それは忘年会での一コマ。

『冬の一人旅』なんて演歌を熱唱してる葛城一尉をボーっと眺めながら、俺

はロックをちびちび飲んでいた。

 

「ねぇ、青葉さん」

 

 さっきまで隣でうつらうつらしていたマヤちゃんが、声を潜めて身を寄せ

てきた。

 

「ん?」

 

「恋人がいるのって、やっぱり楽しいですか?」

 

 マヤちゃんはそう言って、ぼんやりとウーロン茶の入ったグラスをからか

らと回した。

 どうやら、さっきまで居酒屋でやってた話の続きをしたいらしい。

 初めて聞いたときには本当に驚いたが、マヤちゃんはまだ男と付き合った

ことがないそうだ。

 確かに潔癖すぎるきらいはあったが、これだけ可愛ければ引く手あまただ

ろーに。

 それでも付き合ったことが無いというのは事実らしい。

 大学の研究室の先輩である赤木博士もそう言っていた。

 

 だがさすがに最近はそれが悩みでもあるようで。

 こういう場ではよく俺が話し相手になることがある。

 経験豊富、だと思われてるのが原因のようだが、それは嬉しくもあり、ち

ょっと悲しくもあり、ってとこか。

 

「あたしって顔も可愛くないし、胸ちっちゃいし、田舎で育ったからセンス

もないし………」

 

 両手できゅっと胸を抑える仕草に、俺は百戦錬磨のテクニックを見る思い

だったが、実は全くそうではないのが彼女の魅力。

 

「青葉さんはどんな人が好きですか?」

 

 酒に酔ってるためか、うっすらと赤みのさしたマヤちゃんの首筋に、俺は

危うく妙な気持ちになるところだった。

 

「う、あ、そ、ま、そうだな、好きになった人が好きなタイプかな」

 

 いつもの逃げ手を打ったが、期待していた笑いは起こらず、マヤちゃんは

真剣な顔をして頷いている。

 

「ふ〜ん。そーゆーのって、ちょっとかっこいいですよね」

 

 あ、いや、そーでなくて。

 

「それって、つまり、青葉さんがあたしを好きになったら、あたしのような

女でも誰かに好かれるタイプだってコトですよね」

 

 訳が分かったようなわからんよーな言葉を返して、マヤちゃんは俺を眠そ

うな目で見つめる。

 とろんとした目尻が、妙に庇護感をそそるのはいつものことだ。

 

 それにしても今の言葉。

 意味深に聞こえるけれども、都合良く受け取るときっと痛い目に合うんだ

ろうな、と理性を抑えつつ、それでも真意を探ろうと表情を伺っている自分

が情けない。

 

 ―――やっぱ、可愛いわ。

 

 ここんとこフリーな状態が続いていることが恨めしかった。

 

 

 がばっ

 

 

 その時突然後ろから誰かが抱きついてきた。

 

「シゲルぅぅぅぅ、俺の話は聞けなくても、マヤちゃんならいいのかよぉぉ

 いつも一緒に夜明けにコーヒーを飲む中じゃないか………うぅ………」

 

「ちょっと待て、バカ。勘違いされそうなこと言うな!」

 

 夜明けのコーヒーとは、もちろん夜勤明けの、という意味だ。

 そこは勘違いされたくないので、俺は声を大にして叫んだ。

 ただでさえマヤちゃんと赤木博士、俺とマコトという組み合わせは、妖し

い噂を呼んでるらしいんだから。

 

 

 ぎゅうううっ

 

 

 だから、そんなに強く抱きつくなっての!

 まったくマコトの絡みグセには困ったもんだ。

 

 俺は無理矢理マコトを引き剥がすと、初めて周囲の視線に気づいた。

 

 

 う………

 

 

 マ、マヤちゃん?

 

 赤木博士??

 

 おーい、副司令までそんな顔しないでくださいよ〜

 

 アスカちゃん! だから俺はそんな趣味無いって!!

 

 ぐ………シンジ君までそんな顔するのかい………

 

 

 こうなりゃやけだ!!!

 

 

 おい、マコトっ! ちょっと来い!!

 

 愛の歌をデュエットするぞっ!

 

 

 

 とにかく、こうやってマコトが乱入したお陰で、俺とマヤちゃんの会話は

そこで打ち切りになった。

 今日のところは難を乗り切れたようだ。

 

 

 だが、

 

 いつまでそれが続くかは、

 

 俺も自信がない。

 

 

                           <おわり>

 


 お粗末様でした。

 このマヤシゲシリーズ。青葉系小説とうたっておきながら、実はマヤさんの
ファンを増やしているらしいとゆー噂も(笑)

 シゲ×マヤの組み合わせって、やっぱり好みだなーっと思う今日この頃。
実は三部作の第三話は全く考えてないので、「夏の夜の花火ネタ」でも拝借し
ようかなと妄想してたりします。

次回はマコトと一緒の「働くお兄さん編」にしようかな。リツコさんも出したいし・・・


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