放課後、綾波が僕の傍にきて

レイ  :お兄ちゃん、今日つきあって。

と無表情に言った。

僕と綾波は、学校を後にした。

外は雨が止んでいた。


僕    :何処へ行くの?

レイ  :私の家

家路へ向う間、僕達は何も話さなかった。

何時もは機関銃の様に話しまくる綾波も、黙っていた。


綾波の家は一戸建の3階住宅。

Nerf退職時に父さんの遺産を受け取った。


僕はリビングに通された。

綾波は紅茶とクッキーをテーブルに置き、ソファーに座った。


綾波は恐い顔をして

レイ  :お兄ちゃん。

        私が何言いたいか解るでしょ。

僕    :・・・

僕は紅茶を飲むと、綾波に電子メールの事を話した。

レイ  :当り前じゃない。

        怒って当然よ。

初めて見る激怒した綾波の顔

レイ  :お兄ちゃん!

        いい!一度しか言わないから、本音で答えなさいよ。

        返答によっては、兄弟の縁を切るから!


        お兄ちゃんは、アスカさんをどう思っているの?


綾波がアスカの事をアスカさんと言い、

アスカが綾波の事をレイと呼ぶようになったのは、戦後からだ。


僕は俯き加減で

僕    :あ、アスカは好きだよ。

レイ  :じゃ、どうして交際するな、と言わなかったの!

僕    :アスカが何考えているか解らないんだ。

レイ  :お兄ちゃん、アスカさんに気持を伝えたことあるの?

と優しく言った。

僕    :そんな・・・雰囲気じゃないよ。

        何時も、罵声と暴力・・

綾波は呆れたように

レイ  :ねえ、少しは努力している?


        アスカさんの気持解ろうと努力している?


        アスカさんの気持が安らぐ様に、場を持って行く様に努力している?


        どうしてアスカさんがお兄ちゃんに対し、そんな態度に出るか、考えている?


        言葉だけで何もしてないんじゃないの?


        そんなんじゃ、誰もお兄ちゃんの事、好きにならないわよ。


        私、お兄ちゃんより、アスカさんの方が大切だから・・・

綾波は泣いていた。


触れようとすると

レイ  :触って欲しくない。

僕    :・・・・・

僕は触れようとした手を、太股の上に置き、庭を見た。


突然、綾波が

レイ  :お兄ちゃん!

        こういう時、お兄ちゃんどうして何もしないのよ。

        私が嫌と言ったら、何もしない。


        ねえ、何時も私の気持ち考えている?


        女の子の気持ち考えている?


        本当に相手の事を想っているのなら、ぶつかって行きなさいよ。


        そうやって何もしないと、皆、離れて行くわよ!

        ・・・・

        もう、黙ってないで、私を宥(なだ)めてよ。

僕は綾波を抱き寄せた。


綾波は僕の胸に顔を埋めたまま

レイ  :お兄ちゃん、女心を理解しないと駄目だよ。


        この私でさえ勉強してんだから。

        18歳でしょ。

        子供じゃないんだから、大人に体半分以上浸かってるんだから。


        ・・・・

        あのね、そもそもお兄ちゃんの事、アスカさんが本当に嫌いなら、

        第5使徒殲滅後は、同居する必要ないから、

        出て行く事だって出来たのに。


        嫌いな人の作ったお弁当なんか食べたくないし、


        そもそも人に、一緒に居る所なんか見られたくないし、


        いくら義務でも嫌だよ。


        それに、自分の洗濯物なんか触らせたくないし、


        嫌な奴の入る風呂なんか気持ち悪いし、


        トイレだって気持ち悪いし、

僕    :もう良いよ。

        ありがとう。

        解ったから。


綾波は微笑みながら僕の手を取って

レイ  :今度、3人で遊びに行こうね。

僕    :ありがとう。


僕は綾波の家を後にした。


何時も綾波に励ましてもらってる。

妹と言うより、母といった感じ。

綾波は何時も、頼りない弟、と僕を評する。


途中、夕食と、朝食、お弁当の食材を買う為にスーパーに寄った。

そもそも食材は4人家族用のものが多いから、量も多くなってしまう。


マンションに着き、
僕は11−A−2号室の自動ドアの前に立ち、カードキーを挿し込んだ。

ドアが開いた。

僕    :ただいまー

・・・・・

何の反応もない。

まだ帰っていないのかな?


夕食の準備をして、居間でアスカの帰りを待った。

23時を過ぎても帰って来ない。


冷蔵庫の唸る音だけが響く。

どうしたんだろう・・・


綾波に電話したが居なかった。

洞木さん宅も居ない。


この日、アスカは帰って来なかった。


慣れていた筈の静寂が、とてつもなく恐かった。


アスカが居ないのが、とてつもなく恐かった。


次の日、学校に行くと、アスカは始業時間ぎりぎりまで姿を見せなかった。

/* 悔恨の情 It's no use crying over spilt milk. */

次回、意地っ張り

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