リリーン!

シンジ:ん

シンジは目覚ましの音で目が覚めた。


部屋は薄暗く良く見えない。

シンジ:あ・・・あれ?

        体が痺れて起きれない。

        どうしたんだろう・・・

        アスカ、起きてる?

アスカ:何?

シンジの耳元から声がした。

シンジ:もう起きる時間だよ。

アスカ:ご飯は出来てるの?

シンジ:ごめん、体が痺れて動けないんだ。

アスカ:失礼ね、私が重いって言うの?

シンジ:へ?

アスカ:アンタの上で寝ていたの。

シンジ:何時からだよ。

アスカ:シンジが寝てからずっと。

シンジ:・・・・重い・・・・

アスカ:何か言った?

シンジ:言ってません・・・・僕はこれでも夫なんだけど・・・

アスカは眠たそうに

アスカ:そう?

        シンジは私のオモチャなんだから、ウダウダ言わないの。

        大体ね、18にして既にこんな美人の女性を妻に持てる男なんか、

        世界広しと言え、そうざらには居ないの。

        小町、名花、マドンナ、大和撫子なんて形容は私の為に在るの。

        アンタはlucky duckなんだから、

        私を満足させる為に、日々奉仕する必要があるの。解ってる?

シンジ:それとこれとはどう関係が在るのさ。

        勝手だな。


アスカはシンジの胸に顔を乗せたまま

アスカ:こうゆう私だと知って結婚したんでしょ。

        私の事好きな癖に。

        もう私無しじゃ、1日たりとも生きていけない癖に。

シンジ:凄い自信だね。

アスカは声を上擦らせて

アスカ:事実じゃないの。

        アンタに私を捨てて生きていけるだけの、勇気なんか微塵も無いくせに。


シンジ:・・・・

シンジは時計を見て考えた。

アスカ:一寸(ちょっと)、何か言いなさいよ。


シンジはアスカを押し退けて部屋を出た。

アスカはシンジの余りの力の強さに驚いた。


アスカはバスタオルを持って部屋を出ると、シンジが家を出るところだった。

アスカ:し、シンジ、待ってよ。まだ御風呂にも入ってないのよ。

シンジは返事もせずに家を出ていった。

アスカ:なっ・・・・

アスカはシンジの行動が何が何だか解らず、

風呂にも入らず急いで制服を着て家を飛び出した。


アスカは廊下を走リエレベータへ急いだ。

エレベータのドアが開いた瞬間、出て来た人と衝突して地面に尻餅を付いた。

アスカとぶつかったのはヒカリだった。


ヒカリはアスカの様子がおかしい事に気付き

ヒカリ:アスカ、どうしたの?

アスカは泣きそうな顔をして

アスカ:シンジを見なかった?

トウジ:なんや、また夫婦喧嘩かいな。

ヒカリはもう一台のエレベータのランプが下に降りて行くのを見て

ヒカリ:アスカあれ見て、碇君かもしれない。

アスカはエレベータに乗り、1階に着くと走ってシンジを追いかけた。

しかし、シンジに遭うこと無く学校に着いてしまった。

教室に入ると、シンジは余所のクラスの女の子と楽しそうに話していた。


普段、シンジのそんな姿を見る事なんかまず無い為、アスカは怒りより不安を覚えた。


アスカはシンジに声を掛けようと近づくと、

それに気付いたシンジは、アスカを避ける様に教室を出ていった。

アスカはシンジの後を追いかけた。

アスカ:シンジ!待ちなさいよ。

        どうして逃げるのよ。

シンジはアスカから逃れる様にトイレに逃込んだ。

アスカはシンジが出てくるまで廊下に居たが、

始業チャイムが鳴るまで出て来なかった。


授業中、アスカはシンジの事が気になって、先生の話を全く聞けなかった。

アスカはずっとシンジの後姿を見ていた。


1時限目終了後、シンジは逃げる様に教室を出て、

始業チャイムが鳴るまで戻って来なかった。


2時限目はシンジの苦手な英語の時間。

案の定、シンジは当てられてしまった。

シンジは設問に答えられずオドオドしていた。

アスカは助け船を出した。

シンジの端末にポップアップ画面が開いた。

アスカから設問の答が書いてあったが、

シンジはその通りには答えず、全く違う答を言った。

アスカ:・・・

アスカは怒る気にもなれず、不安が募るばかりだった。


お昼ご飯になった。


シンジはアスカを無視して無言で教室を出て行った。


アスカは俯いていた。

ヒカリ:アスカ・・元気ないけど大丈夫なの?


暫くして、シンジがパンを持って教室に入って来た。


ヒカリはシンジに向い、微笑みながら

ヒカリ:碇君、今日は御弁当は?

シンジは無言で席に就いてパンを食べ始めた。

シンジの様子がおかしいと感じたトウジが

トウジ:シンジ・・お前、大丈夫か?

        思う仲の小(こ)いさかい、つうて仲良過ぎて喧嘩するの解るがな、

        シンジが惣流にやられるのは毎度やけど、

        今日は変やで?


シンジは無言でパンを食べ、食べ終わるとそそくさと立上がり、

パン2本と牛乳をアスカの机に置いて、アスカの顔を見ずに教室を出て行った。


アスカは寂しくて泣いてしまった。

トウジ:鬼の目にも涙。惣流がシンジにやられて泣くの、初めて見たで・・・・


それから下校時間まで、ひたすらシンジは、アスカを無視し続けた。

アスカはますます不安になるばかり。


放課後、アスカはシンジに近寄り

アスカ:シンジ、一緒に帰ろうよ。

とアスカは最高の笑みをシンジに向けた。

しかしシンジは無表情のまま

シンジ:どうして?

アスカ:え・・だ、だって、何時も一緒に帰ってるじゃない。

シンジ:悪いけど、今日は独りで帰ってくれる?

シンジの言葉に驚いたアスカ、驚きで声が震える。

アスカ:え?ど、どうして?

シンジ:どうして一々言わなけりゃいけないのさ。

シンジはアスカを無視して教室を出た。


何時ものアスカならシンジを懲らしめているが、今日のシンジは何時ものシンジでない。

只、アスカは呆然としていた。


何故、シンジが冷たくなったのか、問いただす勇気さえアスカから無くなり始めていた。


アスカは無性に情けなくなり、涙が頬を次々に伝わった。

アスカは泣きながら家路に向った。


シンジは下駄箱でレイと遭った。

レイは初めからシンジを待伏せしていた。


レイはシンジに向って

レイ  :ねえ、一体何を考えてるの?

シンジ:・・・

シンジは靴を履いて、レイから離れ様とした。

レイはシンジの腕を引張り、シンジの頬を叩いた。

レイ  :ちょっと、いくら兄弟だからって失礼にも程が在るわよ。

シンジはレイに時計を見せた。

レイ  :なに?

シンジ:わからなければいい・・・

シンジはレイから離れて家路に向った。

シンジの背中にレイの罵声が掛った。


アスカは一人で家に居た。

時計は既に22時を回っていた。

アスカのお腹が鳴った。

アスカ:シンジ・・・


アスカは思った。

以前、シンジに辛く当っていた時期があった。

今、そのシンジの辛さが身に染みて良く解る。


玄関のドアが開く音がした。

アスカは微笑みながら玄関に向った。

アスカ:シンジ、おかえり。

        お腹空いたよ。

シンジは靴を脱ぎながら

シンジ:もう食べて来た。

        寝るから・・・

アスカ:・・・

シンジはアスカの顔を見ずにそそくさと部屋へ消えた。


アスカは居間で猫の縫ぐるみを抱締めて泣いた。

アスカ:どうしてなの・・・シンジ・・・


テレビには何時も見ているドラマが放送されていた。

アスカはTVを見る事が出来ず、泣き萎(しお)れた。


泣き疲れて不図、ビデオデッキを見た。

カレンダーの日付が変更になった。

2021年4月2日金曜日になった。


アスカ:もしかして・・万愚節(April fool)・・・だったらいいけど・・


アスカは意を決し、シンジの部屋に入った。

シンジは既に熟睡していた。

アスカはシンジの布団に潜り込み、シンジの上に乗った。

シンジ:ん?・・・

アスカ:シンジ、起しちゃったね。

とアスカの甘えた声。

シンジ:寝てるんだから起さないでよ。

アスカ:・・・シンジ・・・

とアスカの悲しそうな声。

アスカは空元気を出して

アスカ:シンジ、シンジの体は私を求めてるみたいよ・・・

シンジ:気のせいだよ。


アスカのお腹が鳴った。

アスカはお腹を押えながら

アスカ:お腹空いたな・・


シンジはアスカを押し退けて起上がり、無言で部屋を出ていった。

アスカは慌ててシンジの後を追った。


シンジは冷蔵庫から、もやし、コーン等を出しラーメンを作り始めた。

アスカはポツリと

アスカ:シンジ・・

シンジ:ご飯ぐらい自分で作れよな。

言葉はまだ冷たい。

でもアスカは嬉しくてニコニコしていた。


アスカはシンジを下僕と言ってるが、

木乃伊(みいら)取りが、木乃伊になると同じで、

既にアスカはシンジに夢中で、シンジなしでは生きていけない体になっていた。


アスカはシンジの背中に顔をくっつけて

アスカ:だって、シンジの作るご飯は美味しんだもん。

        アタシだって料理くらい出来るけど、

        シンジの美味しいご飯が食べたいもの。


シンジ:どうして僕を構うのさ。

アスカ:だって、愛してるんだもの。


        シンジと付き合う前、シンジを辛い目に遭わせた事は謝るわ。

        御免ね、シンジ。


        でも私達、夫婦よね。

        シンジに冷たくされるの耐えられないよ。

        シンジ・・・


シンジはテーブルにラーメンを2丁並べながら

シンジ:アスカ早く食べないと、寝る時間無くなるよ。

シンジはラーメンを食べ始めた。

それを見たアスカ

アスカ:シンジ、食べて来たんじゃないの?

シンジ:食べてない・・・

アスカは驚いた様に

アスカ:え?何処に行ってたの?

シンジ:今日は家政婦してた。

アスカは頬を膨らませて

アスカ:どうして話してくれなかったのよ。

シンジは答えなかった。

アスカはラーメンを食べながら

アスカ:ねえ、どうして昨日はあんなに冷たかったの?

        April foolだから?

シンジ:いつも苛められてるから、

        1年に一度くらい復讐してもいいかなって・・

アスカは呆れた様に

アスカ:・・・バカ・・

        物には限度ってものがあるのよ。

        いくら私がシンジを苛めていても、愛が篭ってるもの。

        シンジは心が見えなかったよ。

        本当に私が不用になったのかと不安だったのよ。

アスカの足はシンジの脚を触っていた。


シンジ:復讐しても面白くなかった。

        ごめんね。

アスカは三白眼で睨みながら

アスカ:ずうえったい、許さない。

シンジ:・・・

アスカはシンジが困った顔をしているのを見て

アスカ:でもね、一生、私のおもちゃになるなら許してあげる。

とアスカは声を上擦らせて言った。

シンジ:・・それだけは嫌だ。

アスカは頬を膨らませて

アスカ:何故よ・・・・・・でも駄目。決めたの。

        アンタはどう反抗しようと私のオモチャ。

        アンタには抗論、抗議、反駁(はんばく)、反論する権利はないの。

        甲論乙駁(おつばく)なんて以ての外(もってのほか)。

        アンタは私を幸せにする為に、徹底的に奉仕するの。

        アンタは私を気持ち良くする為に、毎日Hするの。

シンジ:イヤダ。

アスカ:・・・いいもん。襲ってやるから。

        24時間24本!

        the fight to the death Hを敢行するもの。

シンジ:なにそれ・・

アスカ:死闘。死力を尽くしてのH。

シンジ:それって、デスマッチの事?

アスカ:ですまっち等と言う英語はない。

シンジ:デスマッチHはイヤダ。

アスカ:そんな英語はない。

        駄目ったら駄目!!


アスカはシンジを引きずってシンジの部屋に入った。

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次回、毎月の御呪い

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