前回までのあらすじ
帝国宰相ゲンドウによる王位簒奪未遂とデスザウラーによる王都破壊
さらにはゲンドウの戦死によって帝国の支配層に劇的な変化が起こった。
これまでと一変して反乱分子となった独立教強襲兵シンジ
傷ついたジェノザウラーを謎の蒼の少女・レイが用意した要塞ゾイドホエールキングで逃亡する。
迫り来る追っ手を黒のストームソーダーで追い散らし蹴散ららし進むシンジ
シンジの跳梁に、帝国・共和国の両軍は一策を案じ、シンジをわなに誘い込む
空戦ゾイドの大部隊に囲まれ苦戦を強いられるストームソーダー
そのとき、一条の荷電粒子砲が包囲網の一角をなぎ払った。
すでに一時間弱もこのアクロバットな戦闘を続けていて、シンジの体はすでに限界が近づいていた。
いや、本来ならとうの昔に意識を手放し、あの世への片道切符を死神から貰っていただろう。
追いついてき敵のストーム・ソーダ五機が再び攻撃を仕掛けてくる。
シンジは相手の動きをある程度読んでなんとかよけるべく体に叱咤して操縦桿を操る。
そのとき!!
ブゥン!
ドカドカドカドカドカーン!!
「「「「「「「「「な、なに?」」」」」」」」
「な?荷電粒子砲!?」
どこからとも無く飛んできた一条の光の帯がレイノスやプテラスの部隊を薙ぎ払う。
トウジ達は目を見張り、そしてシンジは飛んできた方向を把握して目をやる。
点にしか見えない影
拡大すると
「・・・・・・ホエールキング、ジェノザウラー・・・・・・」
そこには巨大要塞ゾイド・ホエールキング
そして口部搬出口が開き、そこに砲撃体制を取ったジェノザウラーがいた。
『ZOIDS STORY IF』
第六話
脱出、そして
「荷電粒子砲でなぎ払ったの!?」
包囲網の上部、上空部分に展開していたプテラスやレイノスの群れ
その一群の中にいたアスカが下で起こった出来事に眼を見張る。
「あそこからシンジが逃げようとしたら・・……これまでのことが無駄になる!!」
「あ、アスカさん!?行けません!危険です」
「そんなこと言ってる場合じゃないのよ」
「アスカ!待ちなさい!!」
マユミ、ヒカリの静止も聞かずアズカは自分達の乗ったプテラスの高度を一挙に下げ、シンジの脱出を妨げようとする。
しかし
ブン!!
ドドドドドドドドドドドドドドン!!
「うわっ!?」
さらなる一撃が己の向かおうとした鼻先を掠め、アスカは慌てて再びプテラスを急上昇させた。
すでに球状に展開していた包囲部隊の側面一角が完全に崩れてしまっている。
「今だ!!」
グォッ!
(シンジ、あそこから逃げよ!)
シンジは悲鳴を上げる身体を無理やり従えて、パルスレーザーで確実に混乱した敵側面部隊を叩きつつ
黒いストームソーダーで抜け出そうとする。
一方、ミサト達の操るストーム・ソーダーが必死に攻勢をかけ、逃がさぬように追いすがるが
しかしもともとの機体性能と皮肉だがこの戦闘でさらにあげた腕によって捕らえることが出来ない。
ホエールキングは決して一定以上近づいてこない
しかも並の空戦ゾイドでは近づいていく間に、今だ連射される荷電粒子砲を必死に避け
そして荷電粒子砲台の射界以外は、膨大な対空砲火で打ち落とされてしまう。
「くっ!今回も逃げられるっていうの!アイツに」
「アスカ、いい加減やめなさい!!死にたいの!?」
「アスカさん、落ち着いてください!」
アスカはその砲撃の雨をかわしつつ、何度もプテラスを突進させるが上手く近づけない
何機ものプテラス、レイノス、レドラーが同じようにホエールキングに接近を試みていた。
「やったわ。これなら行ける!!」
そしてアスカを含めた数機がそれでも荷電粒子砲を掻い潜り
さらにミサイルと速射砲、パルスレーザーの弾幕を抜ける。
すでにシンジに攻撃を繰り返し、相手のミサイルを落とすことで全ての機体がミサイルなどの兵器は失っており
バルカンやカノン砲を乱射しつつホエールキングに一挙に向かう
しかし
「甘いねぇ、そう簡単に抜かせるわけには行かないんだなぁ」
突然巨大な影が目の前に現れたかと思うと、アスカとマユミの乗ったプテラスは跳ね飛ばされた。
そして同じように突進していたプテラスやレイノスが次々と打ち落とされて行く
そしてアアスカのプテラスにもカノン砲の攻撃が近づく
アスカもまたコントロールを失った機体を慌てて立てなおし、謎の影からの攻撃をなんとか避けた。
「おや?生き残っちゃったのね。アスカにマユミ、殺してあげるつもりだったのにィ」
レイのなんとも緊張感のない声が依然同様全開になった通信回線から流れる。
「さて、よいよシンジも包囲から抜けたみたいだね。後はこっちも逃げるだけ」
見ればシンジの黒いストーム・ソーダーはホエールキングまで戻り、そして着艦してしまった。
「逃がすとおもうのっ!」
今だ続く荷電粒子砲の掃射を避けつつ、ミサト達は部隊をまとめ、包囲しに懸かかっている。
その時、突然ホエールキングから膨大な煙が噴出した。
「煙幕!?」
「逃げる気だ、追え!!」
慌てて追撃にかかる連合の空戦ゾイド達
それも
「そうはいかないのね!」
レイがサラマンダーで一挙に突っ込む
E・シールドを張った、強化サラマンダーは攻撃をものともせずに突っ込み、逆にカノン砲とミサイル、火炎放射を御見舞いする。
攻撃が利かず、慌てて逃げるレイノス、プテラス、レドラー
そしてシンカーの大群は先ほどのジェノザウラーの荷電粒子砲とホエールキングからの弾幕に見事にやられ大半が落ちている。
そしてその間にホエールキングは完全に見えなくなってしまった。
「光学迷彩!?逃がしたの?」
そして自分達の部隊を付きぬけて行ったはずのサラマンダーもまた見えなくなっている。
アスカは歯噛みした。
プシューー!
「ぐっ!」
グォ!
(危ない!)
どさ!
ストームソーダーがホエールキングに着艦すると、すぐコクピットが開き、シンジが零れ落ちそうに鳴る。
慌てて融合を解除したエヴァ・シャドーが受け止める
「おい!担架回せ」
「修理、チェック、始めるぞ」
すぐに整備スタッフが集まり、さらに医療班がハッチに到着し、シャドーはそっと担架にシンジを乗せた。
顔色が真っ青で脂汗を流していたシンジ
そんなマスターをシャドーは心配そうに見送った。
酸素マスクを取り付けられ、普段からは想像も出来ないほど、ほっそりと弱々しげなその姿を
「上手くいったわね」
「そうだね、ホエールキングのエンジンに繋げて、さらに荷電粒子コンバーターを改造したジェノザウラーの荷電粒子砲の連続掃射」
「耐久性に疑問があったけど、なんとかなったみたいだし」
「実験成功ってところね」
「あら?シンジ君の救出ではないの?」
「それはそれ、ボクはシンジが帰ってくるのを信じていたからね」
「へぇ、随分と信頼してるのね」
「彼の腕をね」
「好きなの?」
「さぁ?」
ホエールキングの展望室
様々なゾイドの略図、データが表示されたホログラム、モニターが浮かぶ中
そこでレイは白衣の女性と話していた。
二十打以前半ぐらい、茶色の少し癖のある神はショートではねており、少したれた目はエメレルドグリーンだ
整った容姿だが、レイやシンジよりむしろ可愛い感じがする。
「それで、これからどうするの、光学迷彩と雲の海のおかげで逃げ切れたけど、そろそろ物資もまずいわよ」
「あれ?マナを乗せたとき積まなかったけ?物資」
「あなたがみんなを急かして飛び出したから、襲った基地に残したままよ」
「あらら!?」
「ホント、随分と慌ててたわよね〜。ほんと好きなんじゃないの」
「しつこいよ、マナ」
マナと呼ばれた女性はどうやら科学者らしい
投射された立体映像には主にシンジのストームソーダーとジェノザウラーの主武装、骨格などのデータが占めている。
「それじゃぁ、とにかく私達の基地に行くわね」
「そうだね。シンジが挑発に乗って罠にかからなきゃ、もう少し遊んでられたのに」
「とにかく行くわよ。レア・ヘルツ・バレーの北、マウント・ブルーに」
マナは端末を操作するのをやめて、そう言った。
ホエールキングは、シンジ、レイはようやく目的地につこうとしていた。