2021年11月10日(Wed) 晴れ

シンジが帰宅すると、アスカからのDVMが届いていた。


シンジは着替えてDVMを再生した。


画面は滄海(そうかい)が映し出された。


アスカはクルーザに乗っている。

撮影はレイが行っている様で、時々、レイの声が入る。

デッキにはUNの女性兵士が機銃を持って2人立っていた。


アスカは3mm厚のウエットスーツを着て、

体にはBCとウエイトが付けてあった。


アスカは圧縮空気が入ったボンベを点検して背中に担いだ。


アスカはビデオに向って

アスカ:シンジ、元気ですか?

        今日はレイとPalau(パラオ)に来ています。

        今から海に潜るから、シンジも海の世界を堪能してね。

アスカはゴーグルをして、レギュレターからエアが出るのを確認した後、

アスカ:back roll entry!(バックロールエントリー!)

アスカはレギュレータを咥えて、背中から海に落ちていった。


そこで一端、画像が切れて、

次に現れた画像は水中の中だった。

画面の下部には現在の水深、温度、潜ってからの時間、

空気残量、非飽和潜水時間が表示されていた。

レイの空気タンクからぶら下っているコンピュータとビデオカメラが接続されていた。

ビデオカメラは耐水、耐圧用のケースに入れられていた。


画像には辺り一面、飲込まれる程蒼い世界があった。

深度15m、真下は永遠の闇。神秘な世界が映し出された。

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画面は夜の砂浜を映していた。

月明りのみの撮影だったが鮮明にアスカが映っていた。

アスカ:シンジ、今何をしているの?

アスカの服装は、シンジのLLのTシャツにジーンズだった。

髪には、シンジがプレゼントした赤いカチューシャが挿してあった。

アスカ:シンジ、今日は私の事に付いて話すわね。


        アタシね、昔入院したでしょ。

        色々考えてみたんだ。

        私がEVAのpilotになったのは、私が優秀だからと思ってたの。

        レイは優等生。

        でもシンジは戦果は上げるけど、決して天才とかじゃない。

        ましてやバカトウジは、本当の馬鹿。

        だから、私が何故、選ばれたのか解らなくなったの。

        理由が分ったのは最後の戦い。

        シンジが何時もentry plug(エントリープラグ)は落着くと言ってたけど、

        私にも感じた。

        そう、EVAの核は、私達の大切な人が眠っているから、

        だから、私達じゃないとEVAは動かないの、

        だから、落着くの。

        A10神経に皆が拘るのも、この神経が愛情を司るから。

        だから、私が選ばれたのが、天才じゃなくて、

        核の為に必要だからと知った時、目の前が真暗になった。

        私でなくても、動かせる事が自信を無くさせた。

        私には何も出来ないのに、シンジに出来るのが私を喪失させた。


        シンジを責めてるわけじゃないの。

        今、研究所に勤めて、私の優秀さを認められ私が必要だと感じる。

        優越感にも浸れる。

        でもEVAは、私を苦しめるだけだった。

        本当に辛かった。



        ねえ、一つ聞いてもいい?

        シンジ、病院でどうしてあんな事したの?

        私、退院して監視ビデオを盗み見て初めて知ったんだけどね。

        初め物凄く衝撃だった。

        シンジがあんな事するなんて思わなかったもの。

        あんな事して、シンジは満たされた?



        アメリカに帰って、日本での出来事を忘れようと、

        勉学、仕事に没頭した。


        色々な男性が私を大切にしてくれた。

        でも満たされなかった。

        何故だろうね。


        何時もシンジの顔が目に浮ぶんだ。

        entry plugで苦しむシンジが目に浮ぶんだ。

        私を泣きながら守ってくれるシンジが目に浮ぶんだ。

        何時も謝ってばかりいるシンジが目に浮ぶんだ。 

        どうしてシンジの顔ばかり目に浮ぶんだろうね。

        あれだけシンジなんか眼中に無いと思ってたのに。

        でもね、シンジの事を考えると、不思議と心が安らぐの。

        何故かな?

        その内、辛い事が在ると、

        何時もシンジの事ばかり考える様になってたの。

        そうするとね、どんな難局でも対処できたの。

        不思議ね。


        私、気付いたの。

        私はシンジを必要としている。

        私は自分では否定していたけど、シンジの事を想ってるとね。

        そうするとね、全ての悩みが吹っ切れたの。

        でも反対に、何時もシンジに逢いたいと考える様になってしまってた。

        到頭(とうとう)、自分を押える事が出来ずに日本へ来たの。


        私がシンジに復讐だなんて言ったのも、

        シンジが私の事、嫌ってるかもしれないから、

        尋常手段では一緒に生活できないと思ったから、

        シンジを復讐と言う名目で拘束すれば、一緒に居られる。

        でも、心までは拘束できない。


        自分にもどかしくてイライラしていたのを、シンジに八つ当りしていた。

        だからシンジが告白してくれた時、

        とても嬉しかった。

        でも反面、自分がシンジに対し行ってきた行為に我慢できずに、

        直にシンジには返事が出来ず、無言のまま部屋に戻ってしまったの。

        あの夜、悩みに悩んでシンジの部屋に行き、シンジにkissしたの。


        でも、もう今は、そんな必要ないもの。

        ありのままの私で居られる。

        虚栄のない素直な私。

        シンジを愛する私。


        愛縁奇縁(あいえんきえん)

        互いに愛し合う様になるのも時の巡り合わせによる縁。



        私、結婚してからずっとシンジに甘えてる。

        我侭や意地悪を言って、シンジが困ってる顔を見る自分が好き。

        シンジに体を預けて甘える自分が好き。

        シンジを真剣に怒っている自分も好き。

        今は自分が好き。

        シンジの事だけを考えている自分が好き。

        今は、人に自分の優秀さを認められて優越感に浸れるより、

        シンジの胸で甘えている自分が好き。


        愛出ずる者は愛返り、福往く者は福来たる

        (あいいずるものはあいかえり、ふくいくものはふくきたる)

        人を愛すれば人もまた自分を愛し、

        人を幸福にするような善事を行えば、自分もまた幸福になる。



        こんな弱虫な私にしたシンジ、責任重大だぞ。

        最後まで責任とってよね。

        途中で放棄したら承知しないからね。


        ふふっ。お休み。おばかさん。with all my love 

ビデオの再生が終った。


シンジはベットに上がり、布団に潜った。

枕に顔を押付けて、声を殺して泣いた。


月明りがベットに挿し込んでいた。

/* 思いを馳せる For Sinji & Video letter2 & TOUGH LOVE */

次回、日本ちゃちゃちゃ!

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