2021年1月14日(Thu) 雪

午前の授業も終り昼食になった。

トウジは重箱のチキン南蛮を食べながら

トウジ:なあ

僕    :何?

トウジ:元気ないけどどないしたんや?

僕    :明日、クラスの皆で飲み会やるのが憂鬱なんだ。

トウジ:高校生は酒飲んだら いかんちゅうんか!?

僕    :それもあるけど、去年からずっと飲んでばかりだよ。

        12/4はアスカの誕生日

        12/8はミサトさんの誕生日

        クリスマスイブとクリスマス

        12/26はトウジの誕生日

        大晦日と新年の宴会

        来月は日向さんと洞木さんの誕生日だよ。

        明日は行かないと駄目かな?

トウジ:人付合いは大切やで。

僕    :うん・・・・

トウジ:しゃあないな、幹事はわいやしな。

        特別に許したるわ。

僕    :ありがとう・・・

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2021年1月15日(Fri) PM22:00

トウジは焼酎のお湯割を飲みながら

トウジ:皆、聞いてくれ。

        これから梯子に出かけるさかい、ついてくるんやで、ええな。

アスカを除いた皆は一斉に「いいれーす」と呂律(ろれつ)の回らない言葉を発した。


アスカはフラフラと立ち上り

アスカ:あひゃひ、帰る。

トウジ:なんでやねん!?

アスカはフラフラしながら

アスカ:あひゃひが帰らないと、ひンひがはみひがるから

        (私が帰らないと、シンジが寂しがるから)

ヒューヒューと男子が囃(はや)し立てた。

トウジ:シンジなんかほっときゃええやんか!

アスカ:アホはヒカリのひんふいれもひていなへい。

       (アホはヒカリの心配でもしていなさい)

アスカはボテッと座込み、携帯を取出して電話した。

アスカ:もひもひ、バカひンひ、あひゃひ、え〜?ろんれるわほ

       (もしもし、シンジ、あたし、え?のんでるわよ。)

トウジ:何ゆうてんねん?

アスカ:10ふんで迎えにこひ!ばひょはしってっろん!

       (10分で迎えに来なさい。場所は知ってるでしょ。)

トウジ:相変わらず、無茶苦茶なやっちゃな!

10分後、シンジが現れた。

息を切らして、ハアハアと肩を上下に動かしていた。

アスカ:おそーいー!30秒のひこく!ひっく

トウジ:シンジ!一辺どついたれ!!

シンジ:みんな、ゴメン。

        アスカ、帰るよ。

アスカは立ち上り

アスカ:にゃ、ひょうゆうことれ。

       (じゃ、そうゆうことで)

        アホトウび、はらませたら らめらよお〜ん!

        (鈴原、はらませたら駄目だよ。)

トウジ:あほ!


シンジは出口に向って歩き始めた。

振向くと、アスカはシンジを見たままじっとしていた。

シンジはアスカに近寄り

シンジ:アスカ、どうしたの?

アスカ:手。

アスカは手を差し出した。

シンジ:みんなが見てるよ。

アスカは蒼い瞳でシンジを見詰めたまま

アスカ:おてて。

シンジは困ったように

シンジ:だから、我侭言わないで帰るよ。

アスカ:おててしてくれないと帰らにゃい。

トウジ:お!惣流が壊れとる。

        シャッターチャンスや撮ったれい!

アスカはヨタヨタしながら

アスカ:あひゃひの言う事が聞けないの?

        ひンびは妻の言う事が聞けないの?

        ひっく・・

        浮気ひちゃおうかな・・・

シンジ:もう、解ったよ。

シンジはアスカの手を繋いだ。

アスカはニコニコしていた。

トウジ:おおー!シンジの顔が真赤や、どっかで一杯引っかけたんかいな。

シンジは恥かしくて、グイグイとアスカの手を引張った。

アスカ:痛いよ・・・うえ〜ん!ひンびが苛める。

トウジ:今度は泣き落しか!

シンジ:はいはい、解ったよ。

シンジはみんなにからかわれて爪の先まで真赤になりながら店を出た。

アスカは嬉しそうにスキップしていた。

アスカ:ひンび、Give me an ice cream cone!(アイスが食べたい。)

シンジ:な・・夜中に食べたら、太るよ。

アスカ:やだ、食べたい。ひっく。

        食べたい、食べたい、食べたい、食べたい、食べたい!!!

シンジ:はいはい。じゃ買ってくるから。

アスカ:うん、手作りね。

シンジは近くのコンビニまで走り、手作りアイスを一つだけ買って、

急いでアスカの元に戻った。

アスカは手作りアイスを受取ると

アスカ:あれ?ひンびのは?

シンジ:寝る前には食べない様にしてるもの。

アスカ:うん、良い心がけだね。

シンジ:アスカ、よたよたしてるよ。

アスカ:ひンび。

シンジ:何?

アスカ:ひ〜ンび。

シンジ:何?

アスカ:ひ〜ン〜び。

シンジ:だから何?

アスカ:発声練習。

        シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ、シンジ!!!

シンジ:解ったから、大人しく食べてよ。

アスカ:もう要らない、ひンび食べて。

シンジ:もう、残すなら食べるなんて言わなきゃ良いのに・・・

アスカ:ひンびを困らせるのが楽しんだもん。

        にゃはあはああっ

アスカはふらつきながら電信柱に抱き付いた。

シンジは困り果ててアスカの食べ残しのアイスを食べた。

アスカ:ひンび。

シンジ:今度は何?

アスカ:そんなに怒らないでよ。

シンジ:怒ってないよ。言ってご覧。

アスカ:Pick me up!

シンジ:え?

アスカ:おんぶ・・・

シンジ:歩かないと駄目だよ。

アスカ:イヤダ!!おんぶ、おんぶ、おんぶ、おんぶ、おんぶ、おんぶ!!!!

アスカはイヤイヤと地団駄(じだんだ)を踏んだ。

シンジ:もう、アスカって酔っぱらうと子供になっちゃうね。

アスカ:そうらにょ〜ん。

        ひっく、こんなに甘えるのはひンびにだけだも〜ん。

        早くおんぶ!

シンジは「もう」と言いながらもアスカを背負った。

アスカはシンジの背中に顔をくっつけて

アスカ:やっぱりここが一番安心できる。

シンジ:アスカ、背中で吐いたら駄目だよ。

アスカ:あ〜ひンびが苛めるから気持ち悪くなってきた。吐いちゃおう。

シンジ:ぬわー、止めてよ。

アスカ:ぬわーんちゃって。

        ・・・・

        ひンびの背中、おっきいね。ひっく。

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家に戻ると、アスカをアスカの部屋に寝かせて、僕は自分の部屋で宿題をした。

時計は0時を回っていた。


ばたんっ・・・と襖が揺れた。

襖を開けると、アスカが襖に寄り掛って寝ていた。

僕    :アスカ、こんな所で寝ちゃ駄目だよ。

アスカは僕の顔を触りながら

アスカ:何時もシンジの部屋で寝てるのに、どうして一緒に寝させてくれないのよ。

アスカの酔いも大分冷めていた。

僕    :アスカ お酒が入ると寝相が悪いじゃないか。

アスカ:それくらい我慢しなさいよ。

        枕が替ったら眠れないんだもの。

        シンジが悪いんだからね。

        何時もシンジの腕枕で寝るから、普通の枕じゃ寝れなくなったんだぞ。

        責任とってよね。

僕は、「はいはい」と言ってアスカを僕の布団に寝かせた。

アスカは布団からヒョイと顔と手を出して

アスカ:シンジはまだ寝ないの?

僕    :今、宿題やってるんだ。邪魔しないでよね。

アスカ:はーい。

5分後

アスカ:シンジ、全然 指が動いてないけど・・・寝てる?

僕    :難しくて・・・

アスカ:じゃ、明日教えてあげるから、もう寝ようよ。

僕    :・・・・

アスカは布団の中で足をバタバタさせながら

アスカ:シンジ、早く!シンジ、早く!!シンジ、早く!!!

僕    :はいはい、もう・・一度言だしたら五月蝿いんだから・・・

僕は布団に潜った。

アスカ:う、れ、しいいな〜!!

        シンジと一緒、シンジと一緒。

僕    :はいはい、もう寝ましょうね。

アスカの手を布団の中に入れた。

アスカの髪を撫でながら

僕    :良い子にしてなさい。

アスカ:シンジ、パパみたいだね。

僕    :アスカ、壊れちゃうといつも甘えん坊になるね。

アスカ:可愛くて良いでしょ。

僕    :・・・・

アスカは充血した蒼い瞳で僕をじっと見詰めて

アスカ:可愛くないの?

僕    :可愛いよ。

アスカ:うっふ、嬉しいな。

        そうだ、シンジ、今日は気持ち悪いからHは明日しようね。

僕    :そうゆう事だけはよく覚えているね。

アスカ:酔っちゃうと理性が無くなるから、好きな事が出きるもん。

        シンジ、腕。

僕はアスカの首に腕を回した。


初めてアスカが僕の腕の中で寝た時、

次の日、肩から指先に掛けて麻痺して半日 体が痛くて苦しんだ。

今は馴れて、アスカも僕の腕が痺れない位置を覚えている。


アスカ:やっぱりシンジの腕枕が一番いい。

        こればかりは他の奴では駄目だな。

        下僕はシンジが一番。おもちゃもシンジが一番。

        ひっく、うふっふ。パパおやすみ。


アスカは僕の腕の中ですやすやと寝てしまった。

その寝顔は安心しきった安らかな寝顔。

この安らかな寝顔を見る度に僕は生きていて良かったと思う。


昔、アスカが入院していた時、アスカの寝顔を見る度に僕の心は悲鳴を上げていた。


僕だけに見せる本当のアスカ。

僕だけが知っている本当のアスカ。


いい夢を見るんだよ。

僕はずっと傍に居るからね。

/* あまちゃん Asuka's sleeping posture. */

次回、万愚節

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