完全な闇に包まれた部屋の中に複数のモノリスが浮かんでいる。
 それがただの飾りでないのは明白で、機械を通したと思われる無機的な声を出し、お互いに会話していた。

 「ネルフが、いや碇の娘が国連にまた口を出してきた」
 「金を出す代わりに、国連に対する発言力を増す・・・か。我々を締めだす気だ。あの女の考えそうなことだな」
 「大丈夫なのか?国連内部でのあの女の政治手腕に対する評価、尋常ではないぞ」
 「案ずることはない。国連は古の昔から我々の支配下だ。多少あの女が口を挟んだ所でどうにもならん」
 「さよう。それより、君の国は大丈夫か?」
 「心配ない。例の遺跡から遺物は引き上げてある。だいぶ餓死者を出したようだが、問題ない。
 どうせ、例の計画がなった暁には消える定めの者達だ・・・」
 「そうか。これであの裏切り者、碇とその娘もお終いだな」
 そこまで言って、モノリスが笑っているかのように震えた。
 「その通り。多少の狂いはあるが全てはゼーレのシナリオどおりだ」
 「だが、やりすぎは禁物だ。ネルフには全ての使徒を滅ぼしてもらわねばならん。死海文書の記述どおりに・・・」
 「そのためにはできる限りイレギュラーを排除せねばならん。
 ・・・何故、勝手にゴジュラスを3体も持ち出した?報告を聞こう」

 最後に01と書かれたモノリスが問いを発した瞬間、モノリスに囲まれた中央にライトがともった。
 その光の中に1人の人物が、直立している。
 彼(彼女?)は周囲のモノリスから出る、押し潰されんばかりの威圧感をまるで感じていないのか、どこか挑みかかるような目で睨めまわした。
 かすかにあざけるような笑いを浮かべた唇が、鈴のような声を紡ぎ出す。

 「ネルフに12人のチルドレンが揃ったと報告がありました。
 確かに無断で出撃しましたが、ちょっとした顔合わせと、ネルフの実力をこの目で確かめるためです」
 そのどこか小馬鹿にしたような物言いに、モノリスの一つが声を荒げる。
 「だから虎の子のゴジュラスを持ち出したというのか?」
 「しかも未完成の生体部品を使用したダミープラグで起動させたとか・・・。貴様はゴジュラスをはじめから使い捨てにするつもりだったな?」
 「さよう。限界以上に力を引き出すが、あのプラグではゴジュラスを10分程度しか活動させることはできん」
 「貴様にはそれがわかっていたはずだ」
 「これはゼーレに対する背信行為ではないのか?」
 「それだけではない。対人殺傷用の小型ゾイドまで持ち出したな?
 迂闊にチルドレン候補の人間を殺したらどうするのだ!?我々にチルドレンはおまえしかおらんのだぞ!」
 「わかっています」
 「本当にわかっているのか?我々の計画を完遂させるためには12人のチルドレンが必要なのだぞ!」
 「・・・申し訳ありません。人的被害を出し、ネルフの風評を悪くしようと考えたのですが・・・浅はかな考えでした」
 うなだれる謎の人物を弁護するかのように、01と書かれたモノリスが喋る。
 「まあよい。どちらにしろアレの培養も進んでいる。時間はかかるが、最終的にはこちらも12人揃うはずだ」
 「うむ」
 「確かに」
 「ご苦労だったな。さがってよい。だが以後慎め」
 「わかりました。
 全てはゼーレのシナリオどおりに」
 ライトが消え、謎の人物の姿もかき消える。


 「あそこまで好きにやらせてよいのか?カヲルと同じく我々を裏切るかもしれんぞ?」
 「それは大丈夫だ。アレには完璧な洗脳を施してある。ゼーレを裏切ることはない。
 もっともその副作用の為に、残忍で少しばかり反抗的だが」
 「なんにしろしばらくあやつを外に出すのは禁ずるべきだ。前の戦いも下手したらネルフを全滅させていたかもしれん。もしかしたらあやつは我々の計画をつぶす気なのではないか?」
 「私を疑うのか?あれには完璧な洗脳を・・・」
 「確かカヲルの時もそう言っていたな」
 言い合いになりそうになったモノリスを、一喝する01。全てのモノリスが沈黙した。
 「もうよい!我々が争ってどうする。とにかく例の遺物が再生するまで、使徒に全てを任すことにしよう。
 それとなくネルフに浅間山の情報を流してくれ。
 では、今回の会議はここまでとする」
 その言葉と共に次々とモノリスを照らす明かりが消えていき、最後に01と書かれたモノリスだけが残った。

 「確かに何を考えている?
 私の真の目的に気づいているのか?」








 暑い日差しが照りつける中、元気な声が町中に響いている。
 「ラッキ〜♪加持さんにショッピングつき合って貰えるなんてぇ〜♪」
 アスカがご機嫌な笑顔を浮かべながら加持の腕にしがみついていた。加持もまんざらではないのか、その表情はにやけている。とても、某作戦部長には見せられないくらいに。やはり、彼はロリなのだろうか?
 だが、彼があるところに連れてこられた時、その表情は硬直した。
 「なんだぁ、ここ水着コーナーじゃないか・・・」
 アスカに引っ張られて加持は水着売場に来たのだが、周りは当然のように女性ばかりでさしもの加持もちょっと居心地悪そうにしている。
 (こりゃ参ったな。俺は中身に興味があるんであって、外側には興味ないんだぞ〜)
 「ねぇねぇ、これなんかどお?」
 そう言うアスカが持っているのは、赤と白の横縞が入った大胆なセパレート。加持ですら、それを着たアスカを想像して困った顔をするような水着だった。
 「いやはや・・・。中学生にはちと早すぎるんじゃないかな?」
 「加持さん、おっくれてる〜。今時これくらい当たり前よ〜♪」


 それからまもなく、2人はパーラーに場所を変えていた。
 アスカはクリームソーダ、加持は真っ昼間だというのにビールを飲んでいる。やはり彼はミサトの彼氏だ。
 「そう言えば修学旅行は何処行くんだ?」
 嬉しそうにしているアスカを見ながら加持が聞いた。その質問を待っていたのだろう、嬉しそうにアスカが答える。
 「お・き・な・わ♪メニューにはね、スクーバダイビングも入ってんの」
 そう言って、アスカはキャハッと笑った。
 「スクーバね・・・。もう三年は潜ってないな」
 「ねえ、加持さんは修学旅行、どこ行ったの?」
 「ああ、俺達そんなの無かったんだ」
 「どうして?」
 「・・・・・・セカンド・インパクトがあったからな」
 どこか遠くを眺めながら加持は言った。


 「・・・ゴメン加持さん」
 「いや、かまわないさ。
 ・・・あれ、シンジ君達じゃないのか?」
 加持はしおらしく謝るアスカに優しい声をかけていたが、突然あさっての方を見て声をあげた。
 「えっ?どこどこ?」
 いきなり立ち上がるときょろきょろするアスカ。
 そんな彼女を見て加持は少し嬉しいような悲しいような顔をする。
 「(ほ、本当に変わったなアスカ・・・)ほらあそこだ。鈴原君達と一緒にいる・・・」
 「あいつは〜!馬鹿鈴原達の約束のために私の誘いを断ったのね!
 ゲッ!
 カヲルまで居る!あいつには何があっても近づくなって言ったのに!
 ゴメン、加持さん!私ちょっと行ってくる!!」
 「ああ、しっかりな」
 「こら〜〜、シンジぃ、私の誘いを断って何やってんのよ〜〜〜!!!」
 加持の返事も聞かないで、シンジの方に走っていくアスカ。
 その後ろ姿を見送りながら、加持は感慨深げに思考の迷宮に入り込んでいた。
 (よかったよかった。アスカも年齢相応に可愛くなったな。
 これで俺につきまとう量も減ると良いんだが・・・。頼むぞ、シンジ君。しっかりアスカを捕まえてくれよ。
 なにしろあんまりアスカにつきまとわれていると、ろくにナンパもできないからな・・・。
 しかし、アスカも後4年したら俺の守備範囲にはいるわけだし、このままシンジ君にくれてやるのは惜しかったかな」

 「ほぉ〜〜。それがあんたの本音ってワケね」
 「ああ、だからこそシンジ君には俺の技術を伝授してやったん・・・葛城ぃ!!?どうしてここに!?それより、聞いていたのか!?」
 途中から考えを口に出していた加持の背後に、三十路真っ盛りの葛城ミサト一尉が立っていた。その顔はハッキリ言って般若の方がましである。
 暑いのか汗をだらだら垂れ流す加持。その量は凄まじく、今にも脱水症状で倒れそうだ。
 「ど、どこから聞いていたんだ?」
 「 『頼むぞシンジ君』の辺りからよ・・・」
 「はっ、はははっ・・・ジョークだよ葛城。俺が愛してるのはおまえだけさ」
 加持の精一杯の笑顔と言葉にミサトは寂しそうに笑う。
 「信じると思う?
 実を言うとね、いつまでもあんたの部屋にやっかいになってばかりじゃ悪いと思って、部屋の掃除をしてあげてたんだけど、いろんな所から、住所と電話番号を書いたメモや、写真が出てきたのよ・・・。
 アケミとか、サヨコとか、アスマとか、・・・・ヒトミって誰!?」
 「あ、あれを見つけたのか!?本当は掃除なんかじゃなかったんだろう!?どうやったら、あんな所に隠してあるアドレスを見つけられるんだ!?」
 ミサトの発した言葉の中の名前については謎だが、必死に言い訳する加持。前回シンジを助けたときより必死だった。もっともミサトはききゃしなかったが。
 「うっさい!!この浮気もんがぁ〜〜〜〜!!!!!!しかもシンちゃんになんて事教えてんのよ!!!!」
 「ま、待て、落ち着け葛城ぃ!!!!8年前に言えなかったことを言うから・・・ぎゃああああっ!!!!」







新世紀エヴァンゾイド

第壱拾話Aパート
「 マグマダイバー 」



作者.アラン・スミシー



 「「え〜〜〜〜!!!修学旅行に行っちゃダメぇ〜〜〜!!!?」」

 夕食がすみ、皆が落ち着きだした碇家にアスカとレイコの声がこだました。
 シンジはかすかに眉をしかめながらもお茶を飲み、レイはもっと露骨に眉をしかめながらお茶を飲んでいた。ユイとキョウコは未だお仕事が終わらず帰ってきていない。
 何故レイ達がいるのかと言えば、シンジが家事をするようになってからご飯はいつも碇家で食べているからだ。
 余談だがアスカはそれを餌付けと呼んでたりする。

 「そっ」
 テーブルに身を乗り出すレイコとアスカにを軽くいなしながらミサトが答えた。
 しばらくずっと加持の家にいたのだが、今日は何故か碇家に戻ってきていた。結局あの後何があったのかわからないが、加持は生死不明。ミサトは流し込むようにビールを飲み、目も据わっていた。
 「「どうして!?」」
 「戦闘待機だもの」
 「「そんなの聞いてない(わよ、よぉ)!」」
 「今、言ったわ」
 「「誰が決めたのよ!?」」
 「作戦部長の私が決めたの」

じろっ

 「くっ・・・」
 相変わらずビールを飲みながら飄々と言うミサトの言葉にアスカは何も言えなくなる。ただその言葉で沈黙したと言うより、ミサトの剣呑な視線で黙らされたのだが。
 何故か本気でむかついているらしいミサトの視線を受けて、アスカが助けを求めるように周りを見渡す。
 当たり前のようにシンジに視線を向けると、当然のように彼に話を振った。
 「シンジ、あんたも何か言いなさいよ!!」
 「いや、僕はこうなるんじゃないかと思って・・・」
 アスカの言葉に残念そうだがどこか覇気の無い声で答えるシンジ。すっかり諦めているようだ。
 むろん彼女たちがそれで治まるわけがない。
 「あんたそれで良いの!?私と一緒に沖縄いきたくないの!?」
 「さりげなくアスカ何言ってるの!?それより、シンちゃん私の水着姿見たくない!?シンちゃんだったら、その下も・・・」
 「あんたみたいな寸胴スタイルが何言ってるのよ!!そう言う科白は私みたいな体をしている奴が言うのよ!」
 「なによ、なによ!ちょっと胸が大きいからって・・・。大きけりゃ良いってものじゃないわよ!!」
 「負け犬の遠吠えね。悔しかったら大きくしてみなさいよ!お〜ほっほっほっほ」
 「キィ〜〜〜〜〜!!悔しいぃ!!!!」
 「へっへ〜〜〜んだ♪」
 2人とも盛大に話がずれて言い合いを始める。
 確かにレイコはアスカに比べればまだまだだが、それはアスカの方が年齢に比べてナイスボディなせいであって、レイコが貧弱ぅな体をしているわけではない。むしろ彼女も平均より少しばかり・・・。
 「2人とも脱線してるよ・・・。どっちにしろ仕方ないよ。命令なんだし」
 「もう!シンジがそんなだから、嫁き・・・ミサトが調子に乗るのよ!!!」
 「アスカの言うとおり!もう、お姉ちゃんもお茶なんか飲んでないでなんとか言ってよ!!」
 レイは2人ががなり立てるのを面白くもなさそうに聞いていたが、レイコに詰め寄られてやれやれとばかりに口を開いた。


 「なんとか」


 「「「「えっ?」」」」
 その時のことを4人はこう述懐している。


 S.I氏の証言(14)
 「ええ、まさか綾波があんな事を・・・。僕は何を信じればいいのかわからなくなりました」
 以下、ぶつぶつ「逃げちゃ駄目だ」と言い続けるためコメントなし

 S.A.L嬢(14)の証言
 「あのレイが、あの能面女が・・・いやぁーーー!!私の心を汚さないでぇ!!」
 以下錯乱の為コメントなし

 R.A嬢(14)の証言
 「その事は忘れたいんです。もう聞かないで下さい。・・・あんまりしつこいと極楽に逝かせるわよ!」
 そのまま走り去ったため以下コメントなし

 M.Kさん(3・・・へぐっ!・・・M.K嬢(?)の証言
 「一瞬自分が誰かわからなくなったわ。あんな事になるのなら、癇癪起こさないで、あのぶわぁかの所に居れば良かったって後悔したっけ」
 以下酒を飲むばかりでコメントなし


 「シンジぃ、い、今の空耳よね?」
 「あ、綾波・・・」
 「お姉ちゃん寒すぎ」
 「はずしたわね。これ以上ないほど・・・」
 「クワァ〜〜〜〜〜」
 「・・・何を言うのよ」
 好き放題言われているにもかかわらず、顔を真っ赤にしてレイは俯いた。



 しばらくして精神の構築をすませたミサトが口を開いた。でも目が虚ろ。
 「まあ、気持ちは解るけどこればっかりは仕方無いわ。あなた達が修学旅行へ行っている間に使徒の攻撃が有るかもしれないでしょう?」
 その言葉にアスカの癇癪が爆発した。先ほどのことを忘れようとするかのように、とにかく怒鳴りまくる。
 「いつも、いつも、待機、待機!!
 いつ来るかわかんない敵を相手に守る事ばっかし!!たまには敵の居場所を突き止めて攻めに行ったらどうなの!!!」
 「それが出来ればやってるわよ・・・。まあ、4人ともこれを良い機会だと思わなきゃ。
 クラスのみんなが修学旅行に行っている間、少しは勉強が出来るでしょ?あたしが知らないとでも思っているの?」
 ニヤリとミサトは笑い、4人の成績を記したディスクを取り出す。
 それを見て嫌そうな顔をするレイ以外の三人を見て、ますますミサトはニヤリと笑う。
 「見せなきゃバレないと思ったら大間違いよ?あなた達が学校のテストで何点取ったかなんて筒抜けなんだから」
 「ばっかみたい。学校の成績がなによ。旧態然とした減点式のテストなんか何の興味も無いわ。
 ママもおばさまもそう言ってるわ」
 大げさに肩をすくめるアスカとうんうん頷くレイコ。2人に少しだけきつい目を向けながら、ミサトはディスクを振って、言い返した。
 「あっちはあっち、こっちはこっち。郷にいれば郷に従え。一年以上ここに居るんだから、いいかげん日本の学校にも慣れて頂戴」
 「い〜〜〜〜〜〜だっ!!!」





 チルドレンが見守る中、壱中2−Aの生徒を乗せた飛行機が、一路沖縄目指して飛び立っていく。
 それを見送ると言うか何と言うか・・・。

 「なんでわしらが修学旅行に行かれへんのやぁっ!!!!不公平やっ!!パチキかましたるぞ!!」
 そう叫ぶ似非関西人。とても見送りに来た人物のセリフとは思えない。
 「青い空も、白い雲もいやぁ〜〜んな感じぃ!!!」
 「せっかく鈴原と・・・いやんいやん!私不潔よ〜〜!!」
 「ほ、洞木さん・・・。
 修学旅行いけなかったのは残念だけど、シンジが一緒だからまあいいかな?」
 「マナさん何を言ってるんですか!?シンジくんと一緒なのは私です!却下です!」
 「やっぱりこうなるのかぁ〜〜〜!!誰のおかげで修学旅行に行けると思ってるんだーーーー!!!」
 「む、ムサシ落ち着いてよぉ。それにしてもカヲルさんとシンジ君達はどこだろう?」

 ケイタが最後にぽつりと漏らした声にマナとマユミが反応した。
 「えっ?そういえば・・・いつの間に」
 「そんな、アスカさん達ずるいです!またシンジくんを独り占めにするなんて!」
 「泣くのは後!行くわよ、マユミ!これ以上引き離されてたまるもんですか!!」
 「わかりましたマナさん!このまま泣き寝入りする私じゃありません!そんな私、私じゃありませんもの!」
 いつの間にかお互いを名前で呼び合うようになったマナとマユミ。トウジ達をほったらかすと急いで空港から飛び出していく。
 頑張ってくれ、作者も応援してるぞ!





 『浅間山の観測データは可及的に速やかにバルタザールからメルキオールへコピーして下さい』
 普段の喧噪が嘘のようにだらけきったネルフ本部発令所。先の戦いの復旧もすみ、使徒も攻めてこない以上、忙しいのは研究班ぐらい。それもかなり暇そうにしている。
 その中でも発令所に待機しているいつものメンバーに目を向けてみると・・・。
 マヤは乙女チックっで甘ったるい物語で有名な文庫本を読みながら身をよじり、日向は雑誌を読んでクックッと笑い、青葉は趣味のギターを弾く真似をしている。一応まだ就業時間なのだが、注意するものは誰もいない。
 リツコもまたのんびりと書類を見ながらが呟いた。
 「修学旅行?こんなご時世にのんきな物ね」
 その呟きに、これまたどこかだら〜んとしながらもミサトが真面目な顔で答える。
 「こんなご時世だからこそ、遊べる時に遊びたいのよ。あの子達・・・」
 「そう思うならどうして行かせてあげなかったの?全員は無理だけど、半分なら行けたはずよ」
 だが、リツコのつっこみに急にあさっての方を向いて、言葉を濁し始めるミサト。怪しい。
 「あ〜〜〜、ほら、そうは言うけどさ、何が起こるか分かんないじゃない・・・」
 「まさか、加持君の浮気に対する八つ当たりじゃないでしょうね?」
 「そ、そ、そ、そんなこと無いわよ!リツコったら、面白いこと言うんだから〜〜。おほほほほほほほ」
 「どもってるわよ」
 思いっきりどもりまくるミサトに冷たい声でリツコがつっこむ。長いつきあいから、彼女はミサトの嘘と本当が分かるのだろう。その目はミサトを完全に信用していなかった。
 「あはは・・・ごめんなさい。その通りです。だって加持が〜〜!
 リツコ、そんな呆れた顔しないでよ〜。後、このことはどうかシンちゃん達には内密にぃ」
 「はあ〜〜〜。あなた今年31になるのよ!?そんな子供みたいなコトしてどうするの?」
 「わかってるってば〜。年のことは言わないでよ。
 ・・・でも、あの馬鹿が悪いのよ。あの浮気者が。だから私は悪くないわ!!それにシンちゃんが修学旅行に行ったら誰が私達のお弁当をつくるのよ!」
 「それは確かに問題だけど・・・もう良いわ。その意見に親ばかの司令も納得してくれると良いわね」
 リツコがクイッと真横の暗がりに目を向けた。つられてミサトもそこに目を向けるが、たちまちの内に凍り付く。
 「えっ?い、い、い、いいい碇司令!?いつの間にここに!?」
 「今さっき♪それより葛城一尉、いえミサトちゃん。ちょっとそこで詳しい話を聞かせてくれないかしら?大丈夫、すぐすむわ♪
 それからリッちゃん。親ばかって今度言ったら・・・覚悟してね♪」
 いつの間にかミサトの背後に立っていたユイが、彼女を問答無用で暗がりへと引っ張っていく。
 それを横目で見送りながら、リツコは恐怖で膝から下をがくがく震わせていた。
 ( 『ちゃん』?ミサトと私に『ちゃん』!?やはり司令は侮れないわ。それはともかくミサトったら・・・無様ね)




バッシャーーーン!

 プールに水音が響いた。
 真っ白なワンピースタイプの水着を着たレイがすいすいと泳いでいる。
 その動きにはまるで無駄が無く、人魚のように優雅な泳ぎにシンジも思わず目を奪われる。少し呆けた目をしてそれを見ていたが、突然頭をこつんと叩かれて現世に帰還する。
 「こら!いやらしい目して何見てんの!私達が今することはこっちでしょ」
 これまた水着を着たアスカに怒られて慌てて目の前のノートパソコンに向き直るシンジ。滅多に見ることのできない、レイの水着観賞を邪魔されてちょっと恨めしそうにアスカを見あげる。
 「あ、ゴメン。でもなんで泳がないのさ?」
 何故か自分のそばから離れないで勉強を教えてくれるアスカにシンジが尋ねた。彼女はとっくに自分の分の勉強を終わらせていたのだ。シンジに付き合って、泳がないでいる理由はない。普通なら分かるのだが、あいにく彼は碇シンジだ。つまりまったく分かっていない。
 アスカは自分の方を不思議そうに見るシンジをちらっと見ると、聞こえるか聞こえないかという声で呟いた。
 「鈍感・・・。あんたと泳ぎたいからに決まってるじゃない・・・
 「えっ・・・アスカ?今なんて・・・」
 「なによ・・・馬鹿。・・・変なこと聞くんじゃないわよ・・・」
 「あ、うん、ゴメン」
 全体の1割くらいしか把握できなかったが、それでもアスカの言葉からわずかながら彼女の気持ちを感じ取って顔を赤くするシンジ。なぜか恥ずかしくなったシンジはアスカの姿をちらっと見た。たまたまその時アスカと目があう。アスカは今更ながら自分がどんな格好でシンジの前に立っているかを思い出し、シンジはアスカの顔と、大胆なその格好から、これまた負けじと赤くなる。
 お互いに見つめ合っていや〜んな感じ!!
 「あ、アスカ・・・」
 「な、なにシンジ・・・」
 「そ、その・・・ここ、分からないから教えてくれないかな・・・」
 「い、いいわよ。で、でもこれが終わったら一緒に、お、泳ぎなさいよ・・・。わ、私はイヤだけど、あんたもそんな格好なんだし、泳がないままってのはイヤでしょ?」
 意地っ張りアスカちゃん。
 下手な精神汚染よりきついラブラブフィールドが形成されていく。
 「だぁ〜〜〜〜!!!やめっ!やめっ!2人とも何やってるのよ!!!」
 だが、それが完全に形成される前に2人の間に怒りで顔を赤くしたレイコが飛び込んできた。もう少しで絶対不可侵になるはずだったフィールドが消え、そそくさと手元の端末に向き直るシンジ。その一方ムッとするアスカ。シンジに向けるそれとは点対称な目つきで白のセパレートを着たレイコを睨み付ける。
 「ちっ・・・なによレイコ。いたの?」
 「いて悪い?」
 「悪いわよ。あんた勉強を教えるほど頭良くないでしょ。邪魔よ、ハッキリ言って。
 それにしてもあんたそんな格好して恥ずかしくないの〜?」
 アスカが胸を張りながら言う。まるで自分より小さいレイコにあてこするように。結構意地悪かも知れない。
 レイコはそんな彼女を射殺さんばかりに険悪な目で見ていたが、ふっと視線を飛び込み台にいる謎の人物に向ける。下には下がいると言わんばかりに。
 「あれに比べれば恥ずかしくないわ・・・」
 「・・・そうね。ゴメン、レイコ。私が悪かったわ」
 勝敗にとにかくこだわるアスカですら、その人物を見たとたんにレイコと張り合ったことが馬鹿らしくなった。
 それくらいその人物は常軌を逸していた。
 ご丁寧にかぶった青い水泳帽。
 きっちり装着された競泳用の水中眼鏡。
 薔薇のマークで凄まじいばかりに自己主張する黒の競泳パンツ。わきの食い込みも毒々しい。
 さらにはシミ一つ無い、青白く輝かんばかりにスレンダーな体。
 ぱっと見、女の子にしか見えない細い腰。
 だが『私は男』と全身全霊で訴えるとある一点。 
 彼の名は、いわんでもわかるだろうからカット。

 「はっはっは。みんな、特にシンジ君!見ていてくれ!僕の華麗な飛び込みを!!はっ!!」

 高笑いをあげ、空中でくるりくるりと回転しながら宣言どおり華麗に着水する。
 「馬鹿じゃないの、あいつ」
 「黙って立ってればいい男なのに・・・」
 「何でカヲル君ここに居るんだろう?学校に行かなくて良いのかな」
 その濃すぎるパフォーマンスにアスカとレイコが率直な感想を漏らす。シンジは一つ上の学年のはずなのにここにいるカヲルに対して疑問の声を漏らすが、答える者など居るはずもない。
 彼女たちの感想を気にもしていないのか、カヲルはにこやかに笑いながらワケの分からないことを言っていたが、彼にとって破滅の天使はすぐ近くまで来ていた。
 「飛び込みは良いね!飛び込みはリリンの生んだウォータースポーツの極みだよ!」

ガスッ!

 「はぁああああーーーーーー!!!!!?」

 「あなた邪魔。泳がないなら向こうに行って」
 泳いでいる進路上にいつまでも居座るカヲルにレイが実力行使。水中だというのにまるで勢いが弱まらない膝蹴りをどっかに命中させる。ゴリッと柔らかい物が潰れるような音と共に、たまらずもんどりうつカヲル。それでも笑顔を絶やさないのは立派と言うべきか。

 「そこだけは、そこだけはぁっ!」
 「うあっ・・・大丈夫カヲル君?」
 男としてその苦痛がわかるシンジが心配そうに声をかける。でもいつまでも見ていられないらしく、脂汗と共にすぐ目を逸らす。
 それでもシンジに声をかけられたことがよっぽど嬉しいのか、気力と根性で痛みを56億7千万光年の彼方へと吹き飛ばすカヲル。でもやっぱり痛いのか脂汗をだらだら流しているが。そして引きつった笑い顔のままシンジに意味不明のことを言い始める。
 「し、シンジ君、君は優しいね。く、くぅ〜〜〜〜〜!
 ハア、ハア、こ、好意に値するよ。さあ僕の胸に飛び込んでおいで、ほぉうっ、そ、そして2人だけの愛の世界を築こう!」
 「な、なにを・・・。カヲル君、君が何を言っているのかわからないよ!」
 「告白だよ。さあ飛び込んで来るんだ。そうしなければ君は赤毛の野獣か、残酷な青い天使、もしくは鋼鉄の魔獣、眼鏡のストーカーに捕まってしまう。
 滅びの時を免れ、君を手に入れられる者は1人しか選ばれないんだ。
 そして、それは僕だ!君を手に入れるのは僕・・・ぐっはぁ!!!
 プールの端についてターンしてきたレイが再びカヲルのとある一点に攻撃を加える。今度は水袋を強打したときのような音がシンジ達の耳に入り、これ以上ないくらい彼らの顔色を悪化させた。
 「目標殲滅」
 「れ、レイって怖い子ね。目的のためには手段を選ばないと言うか、敵には容赦をしないと言うか」
 「お、お姉ちゃん・・・。さっきといい、今度といいよっぽど頭に来たのね。怖いよ〜」
 「あいたたたたたた!み、見なきゃ良かった(あ、綾波ってアスカより怖いかも・・・)」
 「し、シンジ君・・・ゆ、遺言だよ。あ、ありがとう。君に逢えて嬉しかったよ・・・へぐうっ!
 「ホモはしつこい、ホモは用済み。あなたいらないわ」
 三度攻撃を加え、レイが完全にカヲルを殲滅したときどこかでチャイムが鳴った。とたんにアスカが大声を上げる。
 「あっれ〜〜〜?もうこんな時間なのぉ!?結局泳げなかったじゃない!もう、シンジもちゃきちゃき問題解きなさいよ!!」
 「だって、結構難しいんだよ!」
 「見せてみなさいよ。・・・熱膨張〜?幼稚な問題ねぇ〜」
 どこか小馬鹿にしたように言うアスカ。シンジが少しムッとした目をしているが気づいていないようだ。
 「そ、そうなの?」
 「とどのつまり、物ってのは暖めれば膨らんで大きくなるし、冷やせば縮んで小さくなるって事でしょ♪」
 これ以上ないくらいに簡単に説明をして、えっへんと胸を張る。実は教えたがりな性格だったらしい。感心しているシンジを横目で見てますます嬉しそうだ。
 「へえ〜、アスカって頭いいんだ」
 「これくらいなんて事無いわ。だてに大学出てるわけじゃないしね」
 「そ、そうなの?凄いね・・・」
 「もう、そこで暗くならないでよ!それより、さっさと行くわよ。
 これから4人で買い物行くんだから早くしてよ!」
 何故4人かと言えば、マナとマユミが出たとき2人をぶつけて自分(とシンジ)はさっさと逃げるつもりだからである。もっとも3人ともそう考えているからうまくいくかどうかはわからないが。
 「わかってるわ。碇君、行きましょう」
 「あっ、お姉ちゃん、アスカずるい〜!」
 自覚症状のないシンジの、
 「ちょ、ちょっとアスカ、綾波、離してよ!歩きにくいんだからさ〜」
 と言う声を中心に三人娘の嬌声が遠ざかっていく。


 「ね、熱膨張かい?ふふふ・・・僕の股間も暖めれば大きくなるのかな?そうなったらシンジ君も喜んでくれるだろうね。
 ふぉおおおおおお!!!
 し、シンジ君のことを考えたせいで膨張してしまったよ・・・。い、痛くて動けないね。
 ・・・だ、誰も僕を助けてくれないのかい?ふふ、リリン、いや僕の股間は激痛につづられている・・・」
 結局彼は次の日、見回りの職員が来るまでプールに浮かんでいたという。







 リツコ、マヤ、冬月、青葉の4人が床のスクリーンに映る送られてきた映像を見ていた。
 「これではよく解らんな・・・」
 赤と黒がどろどろに入り混じった模様を見つめて冬月が呟く。
 「しかし、浅間山地震観測所の報告通りこの影は気になります」
 冬月の言葉に彼の直属の部下である青葉が、映像の一点を指し示して注意を促した。
 「もちろん無視はできん」
 「MAGIの判断は?」
 「フィフティ・フィフティです」
 リツコの問いにマヤが答えた。そしてその答えを聞いた冬月が青葉に尋ねる。
 「・・・現地へは?」
 「既に葛城一尉が到着しています」


 ミサトは浅間山地震研究所の無人観測機から送られてくるデータを厳しい顔をして見つめていた。その無言の圧力に発言を控えていた所員が、モニターに映る警告表示を見てついに声を出す。
 「もう限界です!!」
 「いえ、あと500お願いします」
 だがミサトはその悲鳴のような声を冷たく受け流すと更に沈下させるように命令を出す。
 観測機は限界深度を越え更に深く潜って行く。

パキィン!

 ガラスが割れるような軽い音を立てて、観測機の外壁に亀裂が走る。それと共に無機的な音声による警告とブザーが鳴り響く。
 『深度1200、耐圧隔壁に亀裂発生』
 「葛城さん!」
 たまらず叫ぶ所員にさらに過酷な命令を出す。
 「壊れたら、うちで弁償します。あと200」

ピーーーン

 モニターを見つめていた日向が端末からのブザー音に反応して声をあげる。
 「モニターに反応!」
 「解析開始」
 「はい!」

 素早く端末を操作する日向。だがその間にも観測機の外壁にはヒビが入り、更に圧力に負けて紙を丸めるように潰れ始める。

ビィーーーーーーー!!!!!!

 『観測機圧壊、爆発しました』
 ついには圧力で潰れブザー音を断末魔にして全ての通信を絶ってしまう。
 ミサトはそれにかまうことなく日向の背後から結果を尋ねた。前後して日向の顔が厳しくなる。
 「解析は!?」
 「ギリギリで間に合いましたね。パターン青です!」
 「間違いない・・・。使徒だわ」
 モニターに胎児の様な使徒の影が映っている。
 間髪おかずミサトが凛とした声をあげる。
 「これより、当研究所は完全閉鎖!ネルフの管轄下になります。一切の入室を禁じた上、過去6時間以内の事象は全て部外秘とします!」
 そして後を日向に任せると自分は人通りのない廊下の隅で、ネルフ本部へ電話をかける。
 「碇司令あてにA−17を要請して・・・。大至急!」
 『気をつけて下さい。これは通常回線です』
 「わかっているわ。さっさと守秘回線に切り替えて!!」


 ネルフトップの3人だけが入ることができる秘密の部屋。
 「A−17!!こちらから撃って出るの!?」
 「そうらしいわね」
 ナオコの驚愕した問いにユイは厳しい声で答えた。それにキョウコが激しい拒絶の言葉を返す。
 「ダメよ。危険すぎるわ!15年前を忘れたの!?」
 「でもチャンスなのかもしれないわね。これまで防戦一方だった私達が初めて攻勢に出る為の」
 「リスクが大きすぎるわ」
 ナオコがしばらく考えた後、マッドサイエンティストらしい好奇心に満ちた発言をする。それでもキョウコは納得できないのか、反対意見を出す。
 「でも、生きた使徒のサンプル。その重要性は既に承知の事でしょう?」
 「失敗は許されないわよ」
 ナオコは積極的に事を進め、キョウコは慎重に事を進める。そしてユイは2人の意見をまとめる。この形でいつも作戦を立てていたのだが、どうやらユイの意見で結論が出るようだ。
 「失敗ね・・・。その時は人類そのものが消えてしまうわ。・・・2人とも、本当に良いわね?」
 キョウコとナオコがA−17に賛成したと見て、ユイが決を採った。

 「それはともかく、浅間山・・・温泉・・・行くわよ!」
 「「「じゃーんけーん・・・」」」


 パイロットルームへ集められるチルドレン。
 「これが使徒?」
 その胎児のような不気味な姿にシンジが不思議そうな声をあげる。その質問にリツコが毅然とした声で答えた。
 「そうよ。まだ完成体になっていない、サナギの状態みたいな物ね。
 今回の作戦は使徒の捕獲を最優先とします。できうる限り原型をとどめ、生きたまま回収すること」
 「出来なかった時は?」
 リツコの説明に、アスカがもっともな質問をする。
 「即時殲滅。良いわね?」

 「「「「「「「「「「「「はい!!」」」」」」」」」」」」

 「作戦担当者は・・・」
 「はいは〜い!私が潜る!」
 リツコの声を遮り、アスカが元気良く手を挙げて立候補する。
 「だめよ」
 だが冷たい声でリツコがそれを拒絶した。その返答にムッとした顔をしながらアスカが聞き返す。
 「どうして?」
 「危険だからよ。それに潜る人はもう決まってるわ。
 渚カヲル君!」
 「えっ?」
 突然名前を呼ばれ、鼻歌を歌いながら使徒の映像に見入っていたカヲルが間抜けな声をあげた。それを無視してリツコは言葉を続ける。一見真面目だが、彼女の目は腹を抱えて笑っていた。
 「あなたが潜るのよ」
 「ど、どうして僕なんだい?まったくリリンは時としてわからないことを言うね」
 「あなた以外が潜って何かあったら、私が司令に殺されてしまうからよ」
 これ以上ないくらいに簡潔明瞭な答えを聞いてリツコ以外の全ての人間が言葉を失った。カヲルの毛穴という毛穴から、まだ潜ってもいないのに大量の汗が噴き出る。
 「ぼ、僕なら良いのかい?それはとてもとても酷いことだと僕は思うな・・・」
 「まあ、今のは冗談としても耐熱用のD型装備は小型ゾイド、アクアドン用のしかないのよ。で、これを操縦できるのはあなただけだからね」
 「あ、アクアドンであの使徒を捕らえろと言うのかい?まったく嫁き遅れのリリンは言う事が無謀だね」
 カヲルの言葉を聞いてその場にいたチルドレンとミサトの背中が凍り付いた。『こいつ命が惜しくないのか!?』リツコとカヲル以外の全員がそう思った。カヲルは動揺のあまり自分の死刑執行書にサインをしてしまったことに気づいていない。
 こめかみをひくつかせながら、リツコが表面上は優しげに語りかけた。
 「ありがとう、カヲル。文句一つ言わないで潜ってくれるなんて・・・あなたのことは忘れないわ」
 「け、決定なのかい?シンジ君、僕をたす・・・」

ぷすっ

 シンジに助けを求める途中で笑顔のまま床に倒れ伏すカヲル。奇しくも使徒の映像と抱き合っているように見える。
 首筋に猫マーク入りの注射器が刺さっている気がするが幻覚だ。
 シンジ達全員がそう思うことにしたのを確認すると、リツコが高らかに命令を出した。
 「と言うわけで、カヲルが気持ちよく引き受けてくれたから今回のミーティングはここまで!次のミーティングは翌日、浅間山仮設指揮所で行うわ。解散!」

 (私のことを嫁き遅れと言った以上覚悟しなさいね。思いっきり楽しんであげるわ。ふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ)

 カヲルの体を引きずっていきながらリツコは思った。どう料理してやろうかと。
 ハ〜レルヤ♪



Bパートに続く


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