マケイヌ
第零話
「みんなが私を見るのは、私のことが好きだからじゃないわ。
私が必要な人間だからよ」
「そんなの、何の意味もないわ。気づいちゃったのよ、私。
必要な人間なのが羨ましい?
あんただってすぐなれるわよ、私くらい努力すれば」
「よくぬけぬけとそんなこと言えたもんね。
あんたはその私の努力を才能の一言で踏みにじった。
シンクロ率40%。私がこの数字を出す為にどれだけの努力を
したか知ってる?」
「ママの為にエヴァのパイロットになりたかった。
エヴァのパイロットになれば、ママは振り向いてくれると思ってた。
強くなりたかった。一人で生きていけるように。
誰も私を愛してくれなかったから。
孤独だった、寂しかった、それを特別な人間と思うことでごまかしてきた。
でも、もうだめ。だめなの」
「特別な人間でなくなったら、私なんかいらないの!」
「誰も私を見てくれない!
みんなが私を見てくれるのは、私が人より美しいから?
頭がいいから?エヴァのパイロットだから?
そんなのいや!
私を見て。
私を好きだって言って!
エヴァのパイロットでもない、才能もない、ただの私を好きだって言って!」
「私って何?ただの私ってなに?そんなわたしに存在価値なんてあるの?」
「わかんない」
「なに、あんた、私の何を知ってるって言うの?笑わせないで」
「なんの苦労もなく、人から大事にされてきたあんたが?
みんなから好かれてたあんたが、私の気持ちをわかるっていうの?」
「誰も私を助けてくれないかった!
私が精神汚染されていくの、みんなただ黙ってみてた!」
「聞いたわよ、あんた、トウジの時はすごかったんだって?
ここを壊すって脅迫までしたって言うじゃない」
「レイもね。知ってるんだから。あんたを助ける為に自爆したんですってね」
「ミサトなんかあんたにべったりだったじゃないの。
あんたがサルベージされたとき、人前で馬鹿みたいに泣いちゃって。
恥ずかしいったら」
「加持さん?ああ、あんたにだけは、ミサトにも教えてなかった秘密の場所を
教えてたんでしょ?その時どんな話をしたの?」
「お父さん?なんだかんだ言ったって、あんたのママの事が大好きだったんで
しょ?いいじゃない。あんたが二人の愛の結晶とやらであることは、間違いな
いんだから」
「見て、見て、誰か私をみて!
私がいないと死んじゃうって言ってよ!
だれか私を愛してよ!守ってよ!」
「あんたが、そうだっていうの?
そうなれるっていうの?」
「バカいわないで。まだわかんないの?」
「なれっこないでしょ、あんたなんかに」