2021年9月4日(Sat) AM3:00

僕の腕の中で眠っているアスカを見詰めていた。

部屋には僅かに月明りが入りアスカの柔らかい顔が見える。

アスカは少し口を開けて幸せそうに寝ている。


結婚して幾つかの決りごとが出来た。

1.家事

    月曜日から金曜日はシンジが担当。それ以外はアスカが担当。

土日は寝たいからこれでよし。


2.挨拶

    毎日、必ずキスをして愛していると囁(ささや)く。

初め、これには少し抵抗した

アスカに「アメリカ人を妻に持ったのだからつべこべ言うな」と怒られた。

でも今は、案外楽しんでいたりする。


3.隠し事はしない。

僕は清廉潔白を心情としている。

アスカは「そうゆう奴に限って怪しい」と僕を睨んだ。


4.シンジはアスカの下僕&おもちゃ

これも反論したが却下された。

でも、せめて人前では「下僕」だの「おもちゃ」だのと言わないで欲しい。


5.家長はアスカ

これは猛反対したが、「収入がない癖に権利だけ主張するな」と怒られた。

さらに、「男が家長だという日本の風潮は女性差別も甚だしい。アメリカじゃ即、裁判よ!」

と殴られてしまった。


6.「逃げちゃ駄目だ。」「僕なんて要らない人間だ」を言ったらビンタ。

アスカに「アンタバカ」も止めて欲しいというと、

「バカじゃなくなったら言わない」と、取合ってもらえなかった。


7.シンジから離婚を申し出た場合、アスカの年収の10倍を支払う。

    アスカから離婚を申し出た場合、シンジの財産を没収する。

「無茶苦茶だ!!」と反論したけど相手にしてくれない。

「アスカの年収の10倍と言えば、軽く2億円は超えるじゃないか!」

「おまけに僕は財産没収とはなんなんだ!」

するとアスカは僕の鼻をピンッと弾きながら、

「私に対し凌辱(りょうじょく)の限りを尽したのは誰?」

「姦淫罪(かんいんざい)で訴えようか?」

これを言われてしまうと、何も言えない。

一時の快楽の為、僕の逃げの為、僕は永遠に消えない汚点を残してしまった。


8.アスカの浮気は黙認、シンジの浮気は死刑。

ぬぬぬ・・・僕は浮気しないからいいけど・・・・僕には人権がないのか?

アスカは「アンタは下僕。私の所有物だから何するのも勝手なの」とあっさり言われた。



アスカ:ん?

        シンジ、まだ寝てないの?

        何やってんのよ。

僕はアスカの頬を摩りながら

僕    :アスカの寝顔が可愛いなと思ってね。

アスカ:何解りきった事言ってんのよ。

アスカは僕の上に乗っかり頬を僕の胸にくっ付けて、目を閉じた。

僕    :アスカ、涎垂らしたら駄目だよ。

アスカ:むにゃむにゃ・・・


僕とアスカが激しく愛し合うのは、お互い愛する事に飢えているから。


僕は父と母を知っている。

父は苦手ではあったが、14歳まで接していた。

母は僕が小さい時、EVAに取込まれた。

いろいろあったが、それでも少しは親の愛を知っている。


でもアスカは・・・


アスカの母は自殺し、父は・・・見た事もないと言う。

アスカの父は、精子BANKに登録されていたある科学者の物と言う。


アスカは親の愛を降り注がれた事がない。

幼い頃からEVAのパイロットとして人々に認めてもらえる事のみが幸せだと信じていた。

だからEVAに乗らなくなってアスカは生きる望みを失い、・・・・・


だから僕達はストレートに愛を貪(むさぼ)るのかもしれない。

僕達が高校生で結婚したのも、愛に飢え愛が欲しいからだった。


知らない人はアスカの事をタカビーだの、激情家だと言う。

でも本当はガラスの様に繊細なんだ。

アスカに言わせると僕も繊細だそうだ。

だからこそ、一見釣合わない様に見える僕達だけど、僕はアスカの繊細さを知っているから、

庇ってあげる事が出来る。

アスカも僕にだけ本音で接してくれる。


知らない人が僕達を見ると、いつも僕はアスカの尻に引かれてるし、アスカは恐妻家だと言う。

そんな事はないんだ。

僕はアスカに尽してあげられる事が嬉しいんだ。

アスカは態(わざ)と意地悪をするが、それはお互いに全てを承知の上での事。


夫婦喧嘩は毎月している。

時々、僕は我慢が出来なくて、本当に怒ってしまうと、アスカは本当にしょんぼりしてしまう。


アスカ:シンジ・・・

アスカの頬を摩りながら

僕    :どうしたの?

アスカ:夢を見てたの・・

        あのね、私がシンジ以外の男と結婚してるの。

        でもね、そいつ格好はいいけど、下僕になってくれないの。

        私、どんなに格好良くて、強くて、逞しくても下僕になってくれない人は嫌だ。

        ・・・・

        そいつね、女垂らしで碌(ろく)でもない奴なの。

        シンジが私に告白してくれなかったら、私は幸せに成れたのかな?

僕はアスカを抱しめた。

アスカ:シンジ、そんなに密着すると、また体が反応するよ。

        ・・・・・

        ほら、言わんこっちゃない・・・・また元気に成ってるよ。

僕    :ぼ、煩悩退散・・・

アスカ:無駄ね、昔から「煩悩の犬は打てども去らず」と言ってね、

        煩悩は払っても払っても、後から湧いて来て、

        人に付き纏(まと)う犬の様に心から離れないものなのよ。

        ・・・

        ほら、本能の赴くままに行動すべし。

僕    :はい。

僕とアスカの愛の形。

他人には理解できないかもしれない。

同じような境遇で生きて、共に苦しみ、共に闘って来たから、僕とアスカは解りあえる。

僕とアスカが求め合うのも、今は互いに傷を舐め合っているのかもしれない。

けどこの傷の舐め合いが出来るのは、僕とアスカ以外には存在しない。

/* 愛の形 a token of love */

次回、出発前夜

目次に戻る