前回までのあらすじ
帝国宰相六分儀ゲンドウの王位簒奪・皇太子暗殺未遂
その敗北と死によって帝国の支配階級には大きな変化が起きゲンドウに近かった独立強襲兵シンジは
一変して反逆者となり帝国から追われる立場となり謎の少女・レイの用意した要塞ゾイド・ホエールキングによって逃走する。
幾度と無く追いすがるアスカ達を含む共和国、帝国連合軍を空戦ゾイド・ストームソーダ―で追い払い
あるいはレイがサラマンダー改で出て行っては基地を無力化し
罠に懸かりつつもなんとか脱出を果たした彼等は、目的地マウントブルーに到着
人知れぬその山の隠れコロニーに身を寄せた。
そして、シンジも、レイも次第に子供らしい精神的な余裕を取り戻し出したのだった。
そして一月半
一ヶ月前から繰り返している襲撃を、今日も観光したシンジの前に
これまた毎度立ちふさがるアスカ等の愉快な仲間達と帝国・共和国連合軍
より強化し特に起動力をアップしたジェノザウラーで相手を圧倒するシンジ
しかし、未だ十二、三の歳でしかない身に長期の操縦による負荷も大きく
これからがよいところ、と、いった場面でシンジはマナの呼び出しを受け、この日もまた退くのだった。
ZOIDS STORY IF
第12話
戦闘とビジネス
その2
シンジは追いすがる連合軍の空戦ゾイドを荷電粒子砲とアームに取り付けられたことで射界が一挙に増えたパルスレーザー砲で牽制し
打ち落とし
そして光学迷彩を使いつつ、電波シールドで問題の電波を防ぎつつ
レアヘルツバレーの一角その洞窟へと入っていく
この辺りは、ゾイドが狂ってしまうこともあって地質調査がまるで進んでおらず、未だ分かってない部分が多い
地下水路まで抜けるそこを通り、そしてそのままマウントブルーの麓
そこにある、ホエールキングも着水した湖に出る。
そして、その深い底からさらに横穴に入り
ジェノブレイカーは現在の根拠地たる、その秘密の基地に戻るのだった。
しゅっ
スタン!
「御疲れ様〜」
格納庫にジェノブレイカーを収め、シンジはコクピットから飛び降りる
すると、そこには青い髪と額に紅く丸い刺青を入れたレイが待っていた。
何時ものように彼女のエヴァ・スペキュラーも一緒である。
からかうネタが出来てひどく嬉しい
そんな様子のレイに少しうんざりするシンジ
「相変わらず、いいところでドクターストップが出たみたいだね〜」
「………まぁな」
「ま、しょうがないね。前見事に君が罠にかかって長時間アクロバットな戦闘をしたとき、きみ大変だったんだから」
「………ふん!」
「あれ?もしかして悔しいの。僕にこんなこと言われて。でも事実だかね」
「…………」
すたすたすた
………すたすたすた
「ちょっと、無視しないで待ちなよ。もうあんまりいじめないからさ」
ギロ!
「ああ怖い」
まったく悪びれた様子も無く自分をからかい続けるレイに、シンジはうんざりして歩き去ろうとするが追いすがられ
立ち止まって睨みつけてもどこ吹く風で、おおよそ効果が上がらない
たしかに、シンジはあの時大変な状態であった。
コクピットから零れ落ち、意識を失い慌てて出てきたシャドーに助けられ
危険な状態であったことから集中治療室に運ばれ的確な治療を受け
その処置が早かったにもかかわらず、彼は全身の疲労と不整脈、内臓損傷などで二日間ICUから出られず
さらに一週間もの間、入院を余儀なくされたのだ。
以来、戦闘には必ず制限がつき
綿密な計画のもとでしか戦闘できない。
いくらシンジでも自分とシャドーだけでいつまでもジェノブレイカーを維持できるとは思わず
だからこそ苛立ちつつも提示された作戦にしたがっていた。
苛立ちは募るばかりであろうが、しかし以前のシンジなら、そもそもそんな他人の意見
戦闘では決して利かなかっただろう
レイへの対応の微妙な変化といい
彼はたしかに変わりつつあった。
「ご苦労様、今回も効率よく戦ったようね」
格納庫
ジェノザウラーの周りで早速様々なチャックを始める整備員、研究者達に指示を下していたマナに
シンジと、そして結局そのまま着いてきているレイと二人のエヴァは来ていた。
モニターに出てくる戦闘の様子と、そして選られた膨大なデーターを見つめつつ
マナは的確に状況を分析して行く
「シャドーに懸かる負荷も大分減っているわ。これなら三十分はジェノザウラーと連続融合できるわね」
ぐぉ!
(当然、私の主人は天才ですから)
シャドーが、シンジとレイにしかわからないのに律儀に答えて見せる。
しかしその態度、様子からなんとなく言っている内容を察したのか
マナは苦笑しつつ頭を掻く
「ま、そうなんだけどね。でももう少しいろんなデータ―が欲しいな、最近余りバリエーションに富んだ情報が得られない」
「その文句なら相手に言え。あいつ等の対処方法が明らかにパターン化してきている」
「そうみたいね。つまらないわね。もっとデータ―が欲しいのに」
ホントウにつまらなそうに情報の流れを見るマナ
「ワタシがいこうか?もうほぼ出来あがってるんでしょ?後はスペキュラーに任せれば」
「それは許可できないわ」
「なんで?」
「ゾイドの進化、特化はエヴァに非常に大きな負担を強いるの。幾らスペキュラーが慣れてるからってそんな負荷は避けるべきね」
「そうかな?スペキュラー?」
(まぁ、出来ればしないですむほうが私は嬉しいわ)
「むぅ!」
スペキュラーのつれない返事にレイがむくれる
「ともあれ、私としてはもっと多様な情報が欲しいわ。無人機m色々と貸してあげるから。様々な戦術を展開してみてね」
いかにも研究者といった様子で
しかしそれだけでなく、商売人を思わせる目つきと口調で、マナは言ってのけた。
そう、彼女は商売をしているのだ
「ようは、軍縮を止めたいのよ。私達は」
「何故?」
以前、シンジが何の理由で自分達に協力し、場所を提供してくれているんかとマナに聞いたとき
マナは比較的真剣にこう答えた。
「軍縮が始まれば大量の軍人が食にあぶれ、しかもゾイドが流出しかねない」
「ほう、世のためと?」
「そうね。でもそれ以上に私達のため、それは治安の急激な悪化を生むわ。それが不利益に繋がるの」
「この下界には知られていないコロニーが?」
「別に実際孤立してるわけではないわ。外の世界に私達は結構多くの権利を持ってるわ」
「だから、一定以上の混乱は好ましくない、と?」
「そのとおり!!」
ぱん!
「レイちゃんも結構分かるの早かったけど、アナタも理解が早くて助かるわ」
我が意を得たとばかりマナが手を叩き
そして学者というより教師なようすで話を続ける。
「そして何より、私達は軍需産業に結構食い込んでいるの。会社の業績を悪化させないためには適度な小競り合いがあったほうが好ましいの」
「しかし、デスザウラーの復活などのトラブルで、逆に帝国と共和国の中はすこぶる良好、まったく戦闘の気配すらない、かな?」
「そのとおりよ!そこでアナタ達の出番、というわけ、アナタ達がこの近辺で暴れたらこの近辺に軍が集まり余計に御金を落としてくれるわ」
「そして研究も資金とサンプルを得て順調に進む、ということ?」
「そう、そして世界は復興しつつもバランスを保つ、まさに一石二鳥なことよ」
マナはそう言って高笑いしていた。
(つづく)