エヴァでゾイド
前回までのあらすじ
帝都ガイガロスからの追撃を無事撃退したシンジとレイ
彼らは要塞ゾイド・ホエール・キングに乗りこみ、逃亡
目的地に向かって旅立つ。
途中幾度も帝国軍のレドラ―からなる追撃舞台に襲われる。
が、そのたびにシンジはストーム・ソーダで蹴散らしていった。
そんなある日
ホエール・キングの照らすでシンジは夜空を眺めていた。
いつまでも変わらぬ光に瞬く星々
微かに覚えている母との思い出をなぞりつつ、シンジは呟いた。
「僕はゾイドが嫌いだ・・・・・」
と
失われた記憶の向こうにある彼の過去
シンジのそんな呟きを聞いていたのは、パートナーのエヴァ・シャドーと
もう一つのテラスでやはり星を見ていたレイであった。
「ZOIDSSTORY IF」
第四話
レイ
レイのエヴァ・スペキュラーによって形態変化した飛行ゾイド・サラマンダー
その巨体をに似合わないスピードでレーダー基地に急接近し、攻撃を仕掛ける。
レーダーに現れにくく、光学迷彩まで搭載した機体のため発見が遅れ大抵迎撃が間に合わない。
一挙に強襲してか頭部口内にと装備された火炎放射器や搭載してきた爆弾で通信設備やレーダーを破壊する。
そして迎撃してくる敵ゾイドを交わし任務を終えると、そのまま追撃を振り切って逃走する。
そして敵の増援が来たときには陰も形もないのが常だった。
帝国のホエール・キングがヘリック共和国の領域に入ってから、レイは度々出撃して
敵のレーダー網の破壊に勤めている。
「これから行く場所を特定されたらたまらないからね」
レイが言う通り、未だシンジも知らない目的地であるが、そこにしばらく腰を落ち着ける以上
共和国にも帝国にも知られるわけにはいかない。
結果、ホエール・キングの進路がわからぬよう、は毎日出撃しては破壊工作に勤めていた。
一方のシンジはといえばどうやってこちらを見つけるのか?
度々群がる、今度は共和国軍のプテラスや時折やってくる新型のストーム・ソーダ
さらに出てくるとしつこいレイノスの迎撃に勤めており、ホエールキングを離れるわけにも行かなかった。
故に戦力的にはいまいちどころか決定的に乏しい。
大きな基地ともなるとレーダ設備のみ破壊することも難しかった。
だからこそ、レイが行っているのでもあったが
―――――――ハァ〜〜〜〜〜〜
「やれやれ、今日はここの破壊か・・・・・・ちょっと最近超過勤務じゃないかなぁ〜」
グルルルゥ
(レイ・・・・・ちょっと親父くさい)
「・・・・・・・・・五月蝿よ、スペキュラー」
時は草木も眠る丑密時
肩をぐるぐる回しながら、いかにも疲れていますといったため息を吐くレイ
そしてそんな様子にすかさず突っ込むレイのエヴァ。スペキュラー
この一人と一匹のペアは今日も破壊活動に勤しむため、谷あいの大きな基地の近くに来ていた。
充分なレーダー対策を施されたサラマンダーで谷の上に着陸し、そこから夜の基地を眺めていた。
「さて、ぼやいてないで御仕事しないとお家に帰れない」
何時もの首周りが大きく開いて肩の覗く服の懐に手を突っ込んでごそごそする。
そして手を基地に向けた差し出した。
「行け、我が僕立ち」
小さな青い光が群れないなって基地のほうへ飛んでいく。
クワガタの姿をした小さな昆虫ゾイドが次々とダクト等を通って基地に入りこんだ。
「さてとっ!後は・・・・・・・」
レイはがけのふちにこしかけると、脚をブラブラさせながら夜空を眺めていた。
「おい、なんか音がしないか?」
哨戒中の基地内共和国軍兵士の一人が同僚に尋ねる。
「音?」
「そう・・・なんかぶー――ンて感じで」
「どっかから虫でも入ったんじゃないのか?」
「そうか?」
「たぶんな」
銃を脇に構えて、一応警戒しながら辺りを見まわす二人
しかし、夜になって静まり返った基地内には、動くものすらなく静かだ。
「いや、ホント俺の気のせいみたいだな、すまない」
「いや、いいってことよ」
そして、二人は哨戒任務を続ける。
彼らのすぐ真上のダクトから、小さな昆虫型ゾイドが顔を覗かせていたことに、気づくことは無かった。
そして、レイの僕の虫たちは次々と基地内に入りこみ、重要なシステムを
そしてゾイド達をハッキングしていく
眠っている兵士達にも取りついた。
「さて、これで準備は整った。そろそろ始めようか」
レイが呟くと同時に、基地内で一斉にサイレンが鳴る。
「敵襲?」
「全員起床!!」
「ドッグに急げぇ」
「誰だよ、こんな奥地の基地に仕掛けてくるの?」
「帝国?」
飛び起きた兵士達は一斉に持ち場に向かう。
そして次々とゾイドが起動していく。
時を同じくして各所に爆発が起る。
「いったいどうなってんだ?」
コマンドウルフに乗りこんだ共和国軍兵士はモニターで回りの状況を確認する。
すると、あろうことか爆発の向こうに帝国軍のサーベル・タイガーがいるではないかっ!?
そして相手はこちらを確認するなり砲撃してきた。
「帝国の奇襲!? 講和条約ってのはうそかよっ」
コマンドウルフは二門のキャノン砲でサーベルタイガーに応戦した。
一方、ゴドスで出撃した兵士達の前には、一体のアイアンコングが現れ、こちらに向かってくる。
ゴドスの部隊は一斉に持てる火器を叩きこんだが、しかし厚い装甲に阻まれる。
そしてシールドライガーに乗りこんだ兵士はレブラプタ―の部隊に襲われ
シールドを展開しつつ迎撃した。
各所で次々と戦闘が始まっていた。
「おい!司令部。どういうことだ?なんで帝国軍がこんなところにいて、急に襲ってくる?」
「数がわからない!敵の正確な位置と数を教えてくれ!?」
「援軍を、援軍を!?」
基地の司令部では通信回線より沢山の悲鳴が聞こえる。
しかし、基地のモニターでは一体の敵ゾイドはいない。
それどころか、見方同士が打ち合っているのだ。
コマンドウルフと争っているのは、同じコマンドウルフ
ゴドスの部隊と争っているのは同じシールドライガー
肉眼で確認しても、敵ゾイドは一体もいない。
乗っているパイロットも全てここの兵士で、互いに敵の状況を確認しようと司令部に通信を入れてくる。
が、海路の故障か?なにも応答することが出来ない。
緊急事態のための今日か扉は下りたままで、もはやとびだすこともかなわない。
「一体なにが起っているんだ」
オペレーターが必死にコントロールを取り戻そうとする中
基地司令官は苦々しげに呟いた。
やがて、ゾイド達がよいよ基地設備に火器を向け破壊し始めた。
各所に取りついたでレイの下僕たつちいさな虫型ゾイド達
まるで笑うかのよう歯をかみ合わせ、カチカチ音を立てていた。
「ハハハハッ! 見ろよアレ、バッカみたい」
グルルゥォ
(レイ!アブナイ)
「大丈夫だよ、スペキュラー、ボクはそんなドジじゃ無いさっ、ククク、ハハハッハハハハ!」
レイは崖淵で足をバタバタさせて笑い転げ
スペキュラーは落ちはしないかとしきりに諌めるが、一向にやめる気配は無い。
そして、基地のゾイド達は一晩中互いに争い、基地を破壊し続けた。
「ああ〜、面白かった! じゃ、そろそろ行こうか」
グルルゥ
(早く帰って寝るの)
「そうだね、夜更かししちゃったし、しっかり睡眠とらないと美容にも悪いね」
ようやく破壊が収まった頃
胴言うわけかほとんど無事だった兵士達が、ゾイドから降り立ち
あるいは基地から出てきて、ボロボロになった基地を眺めていた。
そして、サラマンダーはそんな様子を睥睨しながら
静かに青空に飛び立つのだった。