前回までのあらすじ
帝国宰相ゲンドウによる王位簒奪未遂とデスザウラーによる王都破壊
首謀者の宰相ゲンドウの死によって帝国の支配層に劇的な変化が起こり、これまでと一変して反乱分子となった独立教強襲兵シンジ
傷ついたジェノザウラーと謎の蒼の少女・レイが用意した要塞ゾイドホエールキングで逃亡する。
迫り来る追っ手を黒のストームソーダーで追い散らし蹴散ららし進むシンジ
シンジの跳梁に、帝国・共和国の両軍は一策を案じ、シンジを罠に誘い込む
空戦ゾイドの大部隊に囲まれ苦戦を強いられるストームソーダーだが、間一髪のところでレイたちの助けが入り逃げ延びることが出来た。
そして一向は良いよ目的地につこうとしていた。
ZOIDS STORY IF
第七話
ようやくの………
「レア・ヘルツ・バレーを超えるのか」
「そういうこと、ここを低空で跳んで行けば大抵のゾイドはおってこれないからね」
ようやく目的地の近づいたホエールキング
二日間、医療ルームのベットから置きあがれなかったシンジがテラスに来ると
そこには白衣姿で恐らく二十歳前後の、茶色い髪と翡翠色の瞳を持つ美女と
そして少年めいた美貌の十二前後の少女・エヴァ・スペキュラーを連れたレイがいた。
シンジのぶっきらぼうな問いにレイが答える。
シンジの斜め後ろにも何時ものようにエヴァ・シャドーが控えており
それほど仲が悪いわけでもないのに、顔はすこぶる良いもののやたら無愛想で不器用なシンジと
そして反骨精神旺盛で、口が悪いレイとの間に、互いのエヴァも捲きこんで緊張が走る。
「まぁ、まぁ、二人ともその辺にしない?ようやく目的地も見えたことだし」
白衣の美女がのんびりした口調で静止の声をかける。
しかし
「誰だ?お前」
シンジのほうはといえば、胡散臭そうに睨みつけた
シンジの記憶の中
このホエールキングに、彼女の姿は無かったはずだ。
「誰って……そういえば、自己紹介していなかったわね。ワタシはマナ。一応これでもれっきとした科学者よ」
「ほう……」
シンジは無遠慮に彼女・マナを靴の先から頭の天辺まで見て回る。
ただ、そこに粘つくような感覚は無く、むしろ淡々と観察するものである。
「あ、あのね。ちょっと困るかな?って、そう見つめられると」
それでも、そう余りすることでもされることでもない
マナは一応不快感は見せなかったが
しかし、どこかモジモジし始め、顔は紅かった。
「彼女は、君がマヌケに罠にかかって苦戦を強いられていたそのとき、僕達が襲った基地で合流したんだよ」
それを見て、何故か少しムッとしたレイが口を挟む
「彼女はもともと、向かう先のコロニーの出身でね。今回のことで色々と協力してもらったのさ」
「ほう?」
「だから、君が警戒しようが気に食わないだろうが、関係無いの。ちなみに君のジェノザウラーを治したのも彼女だからね」
「そうか」
「そうかって・……君、それだけかい?」
「他に、なにかあるのか?」
とことん人間関係には疎いシンジ
後ろではパートナーたるシャドーが汗をタラリと流している。
不思議そうに首をかしげるシンジ
そうすると、どこかあどけなさと凶悪な可愛らしさがあるシンジに魅入りつつ
(なんか、ホント常識の無い奴)
(レイもヒトのこと言えない)
(うるさいよ)
レイとスペキュラーが心の中でボケとツッコミを演じつつ
三人と2匹は流れる雲と景色を眺めていた。