6.光へ

 

午前4時。

「先生、17号室の六分儀さん、急変です!!」

その日当直だった伏木医師は叩き起こされる。病室に走りながら、看護婦に症状を確認する。

既に衰弱の為、昨日から六分儀老人は起き上がる事も出来ない状態になっていた。

そして今日、夕方から昏睡状態に陥り、最早、時間の問題だったのだ。

 

病室には死に立ち会うものは誰も来ていなかった。孤独な死を迎えようとしていた。

「ボスミン!!。カウンターショックも用意しておけ!!」

無駄とは知りながら、伏木は処置に取り掛かった。

 

******

 

ここはどこだ?。

 

何も見えない。

 

ボクはどうしたんだ。

 

「バカシンジ。」

 

「ア、アスカ!。」

 

「遅かったじゃない。結構待たせたわね。」

 

「ア、アスカ、そっ、その格好」

 

シンジの前にいるアスカは始めて会ったときのまま、14歳のアスカだった。

 

「んっもー、久しぶりに会うんだから、シンジもアタシに合わせなさいよ!。」

 

気が付くとシンジも14歳のシンジの姿になっている。

 

「ここはどこ?。」

 

「ここは私達が来たところ。そして私たちが還ってゆくところ。」

 

見えるものはアスカとシンジだけ。そして真っ暗な背景。

 

「シンジ?。」

 

「なに?。」

 

「シンジ、強くなったね。」

 

「そうかな・・・・。そんなこともないよ。普通の生活。こつこつ働いて平凡に過ごしただけ。」

 

「でも、充実してたでしょう?。」

 

「ああ。・・・・・・・・ただアスカが居なかった。・・・」

 

「・・・・・・・あたしも会いたかった・・・。・・・・ずっと。」

 

「・・・・知ってるよ。・・・・アスカはいつも待たせる方がいいんだね。」

 

「何よ、それぇ。

・・・・・・・ねぇ、でも、

今はもうアタシ達ひとつになれるのよ!!。

ひとつになっていいのよ!!。」

 

「ああ・・・そうだね!。」

 

暗い空間の一隅に明かりが見え始める。

 

「シンジ。」

「アスカ。」

「さあ、行こう。あの光の中へ。」

 

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