新世紀エヴァンゾイド
第壱拾弐話Bパート
「 Present from blue sky 」
作者.アラン・スミシー
暗闇。
音も、光も、時間さえも存在しないのではないかと錯覚するほどに、何もなかった。もし生身の人間を放り込めば間違いなくその人物は発狂しかねないくらいの闇。その全ての存在を拒絶している空間に変化が起こった。一つ、二つ、そして連鎖的に光がともる。闇と言うキャンパスを光と言う色で塗りつぶし11枚の石版が浮かび上がる。
「揃ったようだな」
01と書かれたモノリスがかすかに振動し、周囲に自分の存在をアピールするかのように重々しい声を響かせる。それに呼応するかのようにその他のモノリスもかすかに振動する。
「では、会議を始める。
今回の議題は衛星軌道上に現れた使徒と、第三新東京市を離れた碇の娘についてだ」
その感情のこもらない声にいくつものモノリスが反応する。
「キール議長、あの使徒は大きすぎる。いかにネルフといえどあの使徒を屠るなど不可能ではないか?ここは、国連を動かしてN2兵器を使用して使徒を倒すべきだ」
「さよう。死海文書の記述にはできうる限り従うべきとはいえ、それにこだわっていては我々の悲願が達成できない。ここは影からネルフの援助するべきだ。多少のことなら修正は効く」
「その通りだ。ネルフが壊滅すればあの使徒とアダムは融合し、サードインパクトが起こる。我々の計画も潰える」
「いや、N2兵器が効くとは限らない。不安材料が多すぎるがガンに迎撃させるべきだ」
しばらく喧々囂々と自分の意見を言っていたが、言いたいことをほぼ言い尽くしたのかやがて室内が静かになる。そして、それを待っていたかのようにゆっくりと01が喋りだした。他のモノリスの感情をむき出しにした発言をどこかせせら笑っているかのように。いや実際に笑っているのだろう、ことさらゆっくりと自分の意見を述べる。その喋りは自分に比べればまだまだ経験が浅い若者を諭すような口調だった。
「皆の意見はわかった。
しかし・・・・・・使徒にはそのままネルフ本部に落ちてもらう。更に我が方のゾイドも出撃させる。
碇の帰る家を無くさせるのだ」
「キール議長!それではサードインパクトが!」
「落ち着きたまえ。サードインパクトは起きない」
その小馬鹿にしたような口調と、衝撃的な発言に再び周囲のモノリスが声をあげ始めるが、逆に落ち着いた返答をされ水を注がれたように黙り込む。1分ほどの沈黙の後、おずおずと言った感じで12と書かれたモノリスがたずねた。
「どういうことです?」
「アダムはネルフ本部にはない」
「まさか・・・奪われたアダムのオリジナルは碇の娘の元に運ばれたことが確認されている。何を言っているのです議長?」
「碇はアダムを本部に置いたまま南極に行ってはいない」
その発言にようやく理解したといった口調で他のモノリスも口を開いた。
「・・・なるほど。アダムは碇の娘の元にあると」
「そのとおりだ。ネルフにあるのはリリスのみ。ジオフロントが壊滅してもサードインパクトは起きない」
「そして我々は南極にわずかな手勢でいる碇の娘とアダムを」
「いや、放っておこう。確かに数こそ少ないが、護衛にはサラマンダーが居るらしい。急襲しても碇とアダムを乗せてすぐさま逃げ出すことだろう。それに奴らは槍の輸送中だ。死海文書の記述に従うならそれを邪魔する必要はない。第一ネルフの役割を我々が引き継ぐには時期尚早だ。奴らにはもうしばらく使徒と遊んでもらう」
「しかし、ネルフにアダム、リリス、槍の三つが揃ってしまう」
「ジオフロントが消滅した後、すぐにリリスを回収すればよい。それにそうなれば槍の保管場所も無くなる。
ジオフロントがなければアダム共々我らの手にすることも容易だ」
「・・・さすがはキール議長」
「異論はないようだな?
では、今回はここまで」
「議長、ゾイドを送るという事は・・・あやつを外に出すのですか?」
「いや、手術が終了した4人目を出す。完成したダミープラグをな」
最後に不吉な言葉を残し、全てのモノリスが消えた。今度は闇という色で塗りつぶされたかのように。
「少し前に突然現れました」
日向が興奮した声で報告する。それも無理ないだろう。彼の座る目の前の端末には直接の映像こそ無いもののゆらゆらと蠢く波、すなわち波形パターン青を表す図形が映し出されているのだから。
『第6サーチ、衛星軌道上へ』
遙か上空、衛星軌道では偵察衛星が映像を捕らえるために目標地点めがけて爆進している。音速を遙かに超えるスピードのため、たちまちの内に目標地点まで到達する。
『接触まであと2分』
「目標を映像で捕捉!」
アナウンスに答えるように青葉が主モニターに映像を映し出す。その光景を目の当たりにした職員の口から、恐怖ではなく驚きの声が漏れた。その姿は一言で言うなら・・・・・・・・・一言で言えない。無い知恵絞って言うならば、使徒は串団子のような形状をしていた。オレンジ色をした円形の体から、左右対称に細長い腕が伸びている。そして腕の先は中心より少し小さい球状をしており、そこから指のような突起が3本ずつ伸びている。また、何より特徴的なことはそれぞれの球に目のような模様がでかでかとついていることだった。
「・・・こりゃあ凄い」
「常識を疑うわね」
あんまりと言えば、あんまりなその形状にさすがのミサトも日向と一緒に呆れた声を出す。
「目標と接触します」
一瞬ホケッとしていた青葉だったが素早く立ち直り、偵察衛星が使徒のすぐ側まで接近したことを報告する。その声に思わずあっちの世界に行きかけていたミサトとリツコが真顔に戻り、モニターを真剣な目をして睨み付ける。
ミサトがモニターを睨み付けた頃、2つの衛星が使徒を挟み込むように接近する。その距離がある程度縮まったこと確認してアナウンスが続けられる。
『サーチスタート』
『データ送信、開始します』
『受信確認』
衛星がもてる全能力を使って使徒の解析を始めた瞬間、その銀色の機体にヒビが入り、握りつぶしたかのようにぐしゃぐしゃになる。それと時を同じくして、発令所のモニターにもノイズが走り、次いで砂嵐となった。
「ATフィールド!?」
「新しい使い方ね」
ミサトや日向達が驚きの声をあげる一方で、1人リツコだけが落ち着いた様子で呟いた。
使徒の一部が餅をちぎるように離れ、地表めがけて落下した。
それは大気との摩擦で赤く発光しながらも勢いを弱めることも、質量を減らすこともなくインド洋に落ち、近隣地域に深刻な被害をもたらした。
「たいした破壊力ね。さすがATフィールド」
スクリーンに映る、とてつもなく巨大なクレーターを見てミサトが呟いた。その声には余裕が感じられず、さすがの彼女もとまどっていることが感じられた。そう、彼女も不安になっていたのだ。新たな使徒の持つ凄まじいばかりの破壊の力に。彼女の内心の葛藤に追い打ちをかけることにも気づかず、マヤがとりあえず得られたデータを報告する。
「落下のエネルギーをも利用しています。使徒そのものが爆弾みたいなものですね」
「とりあえず、初弾は大平洋に大はずれ」
リツコが初弾という所にわずかに力を込めながらミサトに話しかける。
彼女の言葉を追いかけるようにスクリーンに次々と使徒の欠片の落下跡の映像が映し出される。
そのクレーターはどこかを目指すように直線で結ばれていた。クレーターを一つ一つ示しながらリツコが淡々とその事から予想される使徒の情報を報告する。
「で、2時間後の第2射がそこ。後は確実に誤差修正しているわ」
「学習してるってことか」
ミサトが呻く。額を押さえる指の隙間から見える瞳には苦渋の色があった。
スクリーンに映る映像がクレーターから、使徒の周囲に光の玉が無数に炸裂する映像に切り替わった。国連軍が使徒に対してN2航空爆雷による攻撃を行ったときの映像である。
「N2航空爆雷も効果有りません」
だが、映像を見る限りに置いては人類最強の兵器であるN2爆雷も、日向の言葉が示すとおり使徒に効いているとはとうてい思えなかった。それを裏付けるかのように青葉が言葉を続ける。
「以後、使徒の消息は不明です」
ミサトとリツコが一瞬だけ見つめ合う。
「・・・来るわね、多分」
「次はここに、本体ごとね」
「その時は、第3芦ノ湖の誕生かしら」
「富士五湖が一つになって、大平洋とつながるわ。本部ごとね」
2人の冗談めかしたしゃべり方に、オペレーター達の胸が締め付けられたかの様に痛くなる。もっともミサトもリツコも別に彼らをいじめようと思ってそう言ったわけではない。冗談めかした言い方にでもしないと、彼女たちも耐えられそうにないくらい緊張していたのだ。喉の奥からせり上がってくるような絶望感を無理矢理のみ干すようにミサトが口を開く。
「碇指令は?」
「使徒の放つ強力なジャミングのため連絡不能です」
「MAGIの判断は?」
「全会一致で撤退を推奨しています」
ミサトの質問に青葉とマヤが返事をし、その八方塞がりな報告を聞いてミサトが考え込む。
黙り込む彼女とは対照的に落ち着いた顔でリツコが促す。
「どうするの?今の責任者は信じられないことにあなたよ」
「日本政府各庁に通達。ネルフ権限における特別宣言D−17。
半径50キロ以内の全市民は直ちに避難。松代には、MAGIのバックアップを頼んで」
「ここを放棄するんですか?」
ミサトのD−17という言葉に日向が驚きの声をあげる。そんな彼の慌てぶりとは対照的に、ミサトは先ほどまでの逡巡もどこかへやってしまったのか、自信に満ちた顔をで言葉を返した。
「いいえ。ただ、みんなで危ない橋を渡ることはないわ」
『政府による特別宣言D−17が発令されました。市民の皆様は速やかに指定の場所へ避難して下さい』
避難警報を戦自のヘリが、それだけではなくVTOLまでもかり出されて街中にばらまいている。
主要道路は全線下りに変更されたが、それでも避難する市民の車でびっしりと覆い尽くされておりナメクジの歩みよりゆっくりとしか進まない大渋滞となっていた。
混雑をおこす道路の横ではビルが次々と沈んでいく。要塞都市へと変形を行っているのである。
ついには避難する市民の喧噪で満ちあふれていた街にも静寂が訪れる。
『市内における避難は全て完了』
同じく地下のネルフ本部からも直接ネルフに関わる職員以外の清掃員、委託業者達が姿を消す。
『部内警報Cによる、非戦闘員及びD級勤務者の待避完了しました』
避難完了を報告するアナウンスが聞こえる中、発令所近くの女子トイレでミサトとリツコの2人が話していた。リツコは何かを堪えるかのように淡々とした目でミサトを睨む。その目は先ほどまで発令所でミサトに向けていた物とは違い、厳しい詰問をする
「やるの・・・本気で?」
「ええ、そうよ」
「あなたの勝手な判断で全てのゾイドを捨てる気?勝算は0.0001%
万に一つよ」
「ゼロではないわ。ゾイドに、あの子達に賭けるだけよ」
「葛城三佐!」
「現責任者は私です!!」
リツコが名前ではなく、役職名でミサトに荒い声をかけるが、ミサトはミサトでそれよりももっと強い口調で怒鳴り返す。有無を言わせない、強い意志を感じさせる声だった。一瞬だけ睨み合う2人だったが、じきにミサトがどこか寂しげにポツリと言葉を漏らす。
「やることはやっときたいの。使徒殲滅は私の仕事です」
「仕事?笑わせるわね。自分のためでしょ?あなたの使徒への復讐は」
少しだけ気弱な姿を見せるミサトに、とまどいの目を向けながらもわざわざ向き直って吐き出すように自分の思いを口にするリツコ。その言葉を聞いているのかいないのか、ミサトはどこか遠くを見るような目をして呟いた。
「そう・・・かもね。でもそれだけじゃないと思うわ」
「何言ってるのよ、あなた?」
「使徒に対する復讐だけじゃないのよ。確かめたいの。
私の思い違いでなかったら、きっと奇跡は起こるわ」
「ミサト・・・?」
「あれが夢じゃなかったら・・・」
結局リツコの言葉に応えることもなく、ミサトはトイレを出た。後には釈然としない顔をしたリツコが残されていた。
「えええぇぇーーーーっ!!!?手で受け止めるぅ!!!?」
チルドレン代表としてアスカがこれ以上ないくらいの大声を上げた。彼女が大声を上げる理由も宜なるかな。チルドレンに集合をかけたミサトは開口一番に、
『今回の作戦を報告するわ。落下する使徒を手で受け止めてね。以上』
と言った。
こんな言い方されたらアスカじゃなくてもぶっちぎれそうになる気もするが、他の連中はへぇ〜と思うだけで特に文句を言わなかった。よく分かっていなかったのだ。まあ、ろくに慣性の法則も質量保存の法則も理解していない(はず)の中学生なのだから無理ないかも知れない。少なくともボケ〜とした顔のシンジとトウジとムサシとケイタは確実だ。意外なことにケンスケの顔は引きつっていたから、彼は理解しているのかも知れない。そう言うわけで作戦内容をバッチリ理解しているアスカが声をあげたのだった。
しかしミサトはアスカの大声もどこ吹く風で説明を続ける。ハッキリ言ってなめられているアスカ。
「そう。落下予測地点に各大型ゾイドを配置。ATフィールド最大であなたたちが直接、使徒を手で受け止めるのよ」
シンジが横でふくれっ面のアスカに内心ビビリながら疑問を口にする。
「使徒がコースを大きく外れたら?」
「その時はアウト」
何故かにこやかに答えるミサト。その笑顔がシンジに向けられた瞬間、氷のように冷たい目をして答えがわかりきった質問をするアスカ。
「機体が衝撃に耐えられなかったら?」
「その時もアウトね」
やっぱり張り付いたような笑顔で言うミサトに、どうしようもなく不安になったケンスケが質問をする。
「あの、ミサトさん・・・・・・作戦の成功確率は?」
「神のみぞ知る、と言ったところかしら」
ミサトの
『神のみぞ知る』
という言葉に、ようやく事の深刻さを理解したレイコが思わず危険な愚痴をこぼす。それはすぐ横で聞いていたケンスケの髪が白髪に、まともに目の前で某作戦部長の表情の変化を見てしまったケイタとムサシが恐怖で奥歯がガタガタになりそうになるくらいに恐ろしい言葉だった。以下抜粋。
「うううっ、世知辛い世の中だよ〜。まったく神も仏もありゃしないってこのことね。こんな無茶を言う三十代突入のイカレ女が私達の上司だなんて」
・
・
・
・
・
・
「・・・・・・ったくこのガキャ、誰がイカレ女だっつーのよ?
あんま馬鹿な事言ってると月に代わってお仕置きするわよ。
ちょっと、シンジ君、アスカに鈴原君・・・・・・にリツコ、日向君?どうして離れてるのよ」
ミサトが心底から心外だと声をあげるが、シンジ達はやっぱり彼女から身を引いたまま。彼らの視線はミサトの足下に横たわるレイコに集中していたが、それが原因かどうかは謎だ。ただ言葉を付け加えるならば、レイコの頭からはなぜか暖かい湯気が立ち上っており、その体も時折ぴくぴくっと痙攣していたことも関係あるのかも知れない。更にもしかしたら、ミサトが手に握っていた、柄がクネクネになった(冬月の)ゴルフクラブに関係があるのかも知れない。
「ゴメン、ゴメンよ綾波さん。ミサトさんを止められなくて。僕は臆病で、弱虫で、暴力が苦手で、昼寝が趣味で、射撃とあやとりだけが取り柄で、時々カヲル君やシンジ君を見て胸がときめく最低野郎なんだ」
うつむき、涙を堪えるようにとってもイヤ〜〜ンな事を言うケイタにムサシが冷や汗を流しながら律儀に突っ込みを入れる。やぶ蛇とも言うが。
「け、ケイタおまえやっぱり・・・って、委員長?」
「耽美だわーーーー!!!ムサシ君に浅利君、素敵よーーーーー!!!!
でも、鈴原だけは薔薇の世界に誘わないでーーーーーーーー!!!!!!
あれ、鈴原は薔薇って言うより健さんみたいな兄貴系かしら?それともマッチョ系?いやんいやん。
薔薇って言えば、やっぱり碇君と渚君の組み合わせよね。本当に2人とも並んで立ってると絵になるし・・・はっ、もしかしたら2人はもうそんな関係に!?そう言えば碇君、鈴原とも仲がいいし・・・。
いやああああああああああっ!!!
不潔!不潔よ!!2人とも!!
私の鈴原を耽美な世界に引き込まないでぇっ!!!
」
で、やぶ蛇の結果ヒカリが妄想と言う暴走開始。たちまちケイタ以上にやばいことを叫び始める。実はシンジ以上に精神汚染能力が高かったりするヒカリ・ザ・委員長。床を地獄車以上の勢いで転げ回る狂乱ぶりにその他のチルドレンはもちろん、先ほどまでジェイソンのような大活躍をしていたミサトも、薔薇が嫌いなリツコも、薔薇より百合が好きなマヤも額に無数の線を入れて引く。
「いやああああっ!
鈴原、女の子より男の子の方が良いの〜〜〜〜〜!!!!?」
とりあえず、めまいを起こしながらもマナが精神を再構築する。精神汚染の度合いは結構酷かったが気力と根性で何とか正気を取り戻した。さすがは元戦自の中学生工作員。拷問(?)に対する訓練も積んでいたと見える。
「ちょっと、ちょっと、洞木さん!!
アスカさん、早く止めて〜〜〜!また暴走を始めちゃったわ!!!」
「あ、うん・・・ヒカリ、落ち着いてっ!ほら、ジャージも手伝いなさいよ!!」
「はっ・・・・?
なんやイインチョ、また発作か!?・・・せやけどなんでいつもワシを手伝わせるんや?」
「うっわ〜〜〜、鈴原君ってホント、筋金入りの鈍感ね」
トウジの言葉にマナが呆れ返って呟いたが、トウジが鈍感なのはお約束なのだからしょうがあるまい。呆れた顔のマナに、マユミが少し離れたところから話しかける。
「しょうがないですよマナさん。所詮は鈴原君ですから」
「そうよね。それにしても洞木さん、どうしてこんな茨の道を歩くのかしら?」
「好きだからじゃないですか?(鈴原君を・・・きゃっ、洞木さん大胆!)」
「ま、まあ人それぞれだし・・・(茨の道を歩くことが?もしかして、M?)」
2人の考えは盛大にすれ違っていた。後日マナがヒカリに問題発言をしてまた暴走をおこすという事件があるのだが、それは本編には関係ないのでここでとりあえず終わる。
「や〜っと大人しくなったわね(私本当にヒカリと親友で大丈夫なのかしら?)」
「ム〜ッ、ム〜ッ、ムウウゥ〜〜〜〜〜ッ!!!(いやあああああ、アスカ縛るなんて不潔よぉっ!!!!)」
「変なこと考えてない、ヒカリ?
・・・・・・・とにかくっ!!!!これでうまくいったら、まさに奇跡ね!!」
ようやくヒカリを梱包し終わり(ム〜ッ、ム〜ッと呻いているが気にしない)、白目をむいたレイコをシンジとケイタが介抱してやる中、アスカが吐き捨てるように作戦内容を批評した。ちょっと、自分の親友に対する思いと、某同僚が某嬢の介抱をしているのが気に入らないのかも知れない。その物言いはなかなか辛辣だ。
ミサトは大人の余裕でその激高を受け流す。
「奇跡ってのは起こしてこそ、初めて価値が出るものよ」
「つまり、なんとかして見せろってこと?」
「すまないけど他に方法がないの。この作戦は」
「作戦と言えるの?これが!そんなだからミサトは三十になっても結婚できないのよ!!!」
「ホント、そのとおり・・・アスカ、あんた死にたいの?」
途中で、シリアスな顔から般若のような顔に変貌するミサト。すでに腰の銃に手をかけていつでも行けます引っ越しの○!状態になっている。
「しまった、つい本音が!」
「よけい悪いわ!それにその言葉はダウトよ!!私は今年度中に結婚できるんだからね!!!そう言う事言うなら、来年になっても再来年になっても相手が居ないリツコに言いなさいよ!!!!」
「・・・・・・・ミサト、後で私の部屋に来なさい。まだ早いけどたっぷりとお祝いあげるわ」
リツコの感情のこもらない声で、心臓を鷲掴みにされたようにミサトの顔色が悪くなる。一言で言うなら土気色・・・を通り越してカラス貝よりも真っ黒。生きているのが不思議な顔色だ。
「あ、あははははは・・・リツコ、許して、言い過ぎたことは謝るから・・・」
「良いから話を進めなさい。いつまでブリーフィングに時間かけてるのよ」
「そ、そうね・・・ごほん!
言えないわね。だからイヤなら辞退できるわ」
リツコのイライラした声に押されてミサトが言葉を続ける。だが、彼女の努力をあざ笑うかのようにシンジがお間抜けな言葉を吐いた。さすがは天然。超鈍感男の称号は伊達じゃない。
「良いんですか?」
バキッ!
「だめ」
「「「「「「「「「「……………………………………」」」」」」」」」」
「みんな、良いのね?」
「はい!任せといて下さい!!(あそこで倒れとるのは幻や!うん、そうに気まっとる!)」
「こ、こ、ここここ、この相田ケンスケ!何があっても引きません!!(こ、こわ〜。シンジもギャグを言うところじゃないって気づかないのか?って、あれはギャグじゃなくて本気だったな)」
「も、もちろんよ、私を誰だと思ってるの!?(シンジ、ゴメン・・・)」
「ム〜ッ、ム〜ッ!!(鈴原がそう言うんなら・・・。でもそろそろアスカ解いてぇ)」
「わ、私精一杯頑張らせていただきます!(うううっ、シンジ君私を許して下さい。あなたの敵はきっと取りますから)」
「私も頑張ります!(あのタイミングであんな事言うなんて・・・もしかしてシンジってバカ?)」
「騎士道大原則ひとぉつ!!!敵に後ろを見せるなぁ!(でも、三十女には背中を向けても良い!という事にしておこう。騎士といえど命は惜しい)」
「ぼ、ぼくも・・・(僕は何も見てない聞いてない)」
何故か急に張り切った声を出して大きく頷くチルドレン。少しどもりながら首を水飲み鳥みたいにがくがくさせる。少し不自然だが決してミサトの足下に誰か倒れているからではない。シンジに似てる気がするが幻覚だ。彼らは自分の意志で頷いているのであって、決してその幻覚のせいではない。
そんな彼らの返事を満足げに聞くと、ミサトは足下に倒れ伏している幻覚に話しかけた。
「ほら、シンジ君。みんな戦うと言ってるわ。それなのにあなただけ逃げるの?」
「それじゃ特攻隊に無理矢理志願させる鬼軍曹ですよミサトさん・・・」
言い得て妙、な返事をする幻覚・・・もといシンジ。
「酷い!そんな酷い言い方しなくても良いじゃない。シンちゃんの意地悪♪」
「意地悪♪じゃないですよ。
拒否権なんて無いなら初めからそんな事言わないで下さい」
「あはは、あれ言っとかないと後々問題になるのよ。いや(拒否権)無いワケじゃないんだけど、本当に逃げられたら人類は使徒に対抗する手段が無くなっちゃうでしょ?そうなったらここで逃げたところで、遠からず人類は滅亡しちゃうから・・・。一応、規則だと遺書を書くことになってるけど、どうする?」
シンジの突っ込みを聞かない振りをしてミサトは書類を取り出した。
「別にいいわ。そんなつもりないもん」
「僕もいいです」
「いらんですわ。ワシはこんな所で死ぬわけにはいかんのです!」
「俺もいいですよ。明日はモデルガンの発売日だから絶対ゲットしないといけませんしね」
「ム〜ッ、ぷはっ!私も要りません」
「どうせ読んでくれる人が居るわけでもないですし、それにまだ読んでない本もあるから・・・」
「それじゃ戦自と一緒ですよ・・・。
そんなの書いて後ろ向きになりたくないからいいです」
「俺も」
「僕も。めんどくさいし」
「・・・・・・・・・・・・・・・・も、もう、必要ない・・・から。シンちゃんヘルプミィ・・・」
各人とも、様々な反応を返すがその答えは全員が一緒だった。先ほどまでのバカ騒ぎのせいで彼らの心からは恐怖感というモノが消えていた。怪我の功名とは言え、レイコとシンジの体を張ったボケと、ミサトの情け容赦ない突っ込みは無駄ではなかったのだ。あとヒカリも。彼らにはゾイドの操縦以外にその方面の才能もあるのかも。
ミサトは決心の固い子供達の言葉に、わずかに目頭を熱くさせながらもそれを表に出すことなく、あくまで明るくお気楽に応えた。
「すまないわね。終わったら、みんなにステーキお奢るから♪」
「ホンマ
「本当!?」
」
ミサトの奢るという言葉にトウジが真っ先に反応するが、彼の言葉を更にどでかい声で隠してレイコが再起動。彼女の心はすでにミサトの奢るであろうステーキに向かって驀進していた。そのあまりの大声とその体から迸る食欲に、アスカやシンジ達は開きかけた口がとまる。
「や、約束する(どうしたのよこの子?)」
「わあ〜い♪♪♪」
「わあ〜い♪って、そんなに嬉しいの?」
「もちろん!本当はケーキバイキングとかの方が一杯食べられるから良いけど、ステーキなんて久しぶりだから♪」
「そ、そうなの。そんな食生活でよくふとんないわね。それはともかく期待してて♪」
「じゃあ、第三新東京市名物、一枚2万円のステーキね♪えへへ、スッゴク楽しみ〜♪♪
今回はお姉ちゃんもカヲルも居ないから肉食べれないなんて言う人居ないし〜〜〜〜〜♪♪♪」
ミサトが去った後、舌なめずりしながらわざわざ第三新東京市一高いレストランをチェックするレイコだった。
ちなみに給料日まで後X日。作戦が成功するにしろしないにしろ、ミサトの(財布の)ピンチは変わらないようだ。
そんなミサトお姉さんに幸せの幸あれ♪
発令所に着替えを終えたシンジ達が集合していた。その顔はキリリと引き締まり、戦いへの不安と緊張で少し青くなっていた。何しろ今回現れた使徒の全長は軽く2kmを越え、作戦の成功確率は1万分の1パーセントしかない。つまり、絶望的な戦いということである。だが彼らは逃げることはない。彼らそれぞれに戦う理由があるからだ。ある者は大切な人を守るため、ある者は愛する人の敵をとるため、そしてなにより自分のためために。
「みんな良い顔してるわね」
「ちゃかさないでよ。それより使徒はどうなったの?」
目をシパシパさせながらミサトが一同にそう言った。心の底からそう思っているミサトの言葉に、照れてしまったのかアスカが質問をしかえした。自分ではそれで誤魔化したつもりだったが、顔を紅くして頭をポリポリ掻いてばればれだった。
「くすっ、使徒による電波攪乱のため、目標は消失」
マヤがその様子をおかしそうに笑いながら報告をする。
「な、何よマヤ。・・・笑わなくたって良いでしょ」
「ふふ・・・あなた達らしいわ。こんな無謀な作戦前だっていうのに笑えるんだから。そうね、あなた達なら大丈夫よ。きっと勝てるわ。
正確な位置の測定ができないけど、ロスト直前までのデータからMAGIが算出した落下予想地点がこれよ」
ミサトの言葉と共に、背後のモニターに街の地図が現れ、そのほとんどが青色の円で覆い尽くされた。信じられないことだが、この塗りつぶされた範囲全てが落下予想地点である。当然のように、メインで使徒を受け止める係のシンジとアスカが抗議の声をあげた。
「こんなに範囲が広いの!?」
「はしっこまで随分ありますよ・・・」
「目標のATフィールドをもってすれば、そのどこに落ちても本部を根こそぎ抉ることができるわ」
2人の抗議にリツコが冷静に科学者としての返答をする。それに応えるようにミサトが言葉を続けた。
「ですから、ゾイド各機をこれらの場所に配置します」
地図上の各点に幾つかの光点がランダムに配置される。街中心付近に二つの大きな光点があり、その周囲を囲むように幾つかの光点が写っていた。そして、強羅絶対防衛線付近に幾つかの光点が固まっていた。街中心付近のひときわ明るい光点がシンジのゴジュラスと、アスカのアイアンコング。その周囲を囲むのがトウジのディバイソン、ケンスケのシールドライガー、マユミのサーベルタイガー、レイコのサラマンダーF2。そして防衛線付近の光点がヒカリのゴルヘックス、マナのアロザウラー、ケイタの新型亀型ゾイド、カノントータス、トウジからムサシへとパイロット交換したばかりのベアファイター改である。
一見しなくてもてんでバラバラな配置にマユミが疑問を口にする。いや、その少ししわが寄った額を見る限りにおいては、シンジとアスカがペアを組んでいることに対する抗議だったのかも知れない。もっともこの2人にそんな控えめな抗議をしても分かってくれるわけないが。
「この配置の根拠はなんですか?」
「勘よ」
「カン・・・ですか?」
ミサトの自信満々で言う科白ではないはずの言葉を聞いて、マユミが我知らず間抜けな返答をしてしまう。彼女と同じく怪訝な顔をするチルドレンにかまわず、ミサトはだめ押しのように言葉を続けた。まったく良い度胸だ。
「そっ、女の勘」
「なんたるアバウト、ますます奇跡ってのが遠くなっていくイメージね・・・」
「ミサトさんのクジって当たったことないんだよね」
ミサトの言葉になんだかやる気をそがれ、顔を見合わせてシンジとアスカがため息をついた。
「あら、そんな顔するもんじゃないわよ!
私の勘だけじゃなくて、MAGIを利用した超心理学気象予想装置の出力結果も参考にしているのよ!!」
「あんたバカ〜!?超心理学気象予想装置って、ただの占いじゃないの!!」
「アスカ、あなた猫神様の占いを馬鹿にするつもりなの?
いい!?これはただの占いじゃないのよ。水晶玉、カード、亀甲、占星術、ダウジング、エレクトーン、コーヒー、下駄、ありとあらゆる占いをMAGIのシミュレーション空間でおよそ30億回も繰り返した結果なのよ!」
アスカの18番に何故か言われたミサトではなく、白衣を翻したリツコが詰め寄る。その目は最近の徹夜のせいか血走り、とってもデンジャラス。もちろん言ってる内容もなんとかと紙一重。詰め寄られたアスカはもちろんその場にいたリツコ以外の人間全ての顔に無数の縦線と脂汗が浮かぶ。
「占いの結果、使徒はこの丘の頂上付近に落下することが予想されるわ。そして、時を同じくして防衛線付近に突然ゼーレゾイドの襲撃があるとのお告げもあったのよ!!!
猫神様万歳!!!
」
狂乱するリツコから逃げるように、チルドレンはケイジに向かうエレベーターに乗り込んでいた。彼らの背後ではいまだにリツコの狂気じみた叫びが聞こえているが、こういうことに慣れきってしまった彼らはとっくに気にもしていなかった。結構薄情かも、と言うかこういう事に慣れっこになってしまった彼らが哀れなのかも知れない。
「しっかしリツコさん大丈夫かな。最近徹夜仕事する度にああなるからなんだか不安だよな」
心配そうな声をあげるケンスケの言葉どおり、リツコは最近徹夜仕事をする度に危ない言動を吐くようになっていた。原因は分かっている。彼女の手による猫印スタミナドリンクのせいだ。
エレベーター内部の空間がリツコのことを想像して暗く、重くなろうとしたとき、シンジが少し緊張した顔でケンスケに話しかけた。
「ねえ、ケンスケ」
「なんだよ」
「ケンスケは何故、ゾイドに乗ってるの?」
「俺がゾイドに乗る理由?うーーーん・・・分かんないな。今はもう。昔は自分が世界を救うヒーローになれるから、平凡な日常から脱出できるからって単純に思っていたけど、今は・・・」
「そうなんだ・・・トウジは?」
「シンジ!」
話の矛先をトウジに向けるシンジを、何故かケンスケは大声で止める。シンジはケンスケの剣幕に少し驚きながらも不思議そうな顔をする。そのまま誰も声を発することもできず沈黙がその場を覆い尽くした。やがて驚きで硬直するシンジに向かってトウジがゆっくりと、そう、ゆっくりと思い出すように話し始めた。遠く、過去の世界を見つめながら。トウジのその姿は、シンジには自分で自分を傷つけているように見えた。
「ワシか?イインチョと同じ・・・・・・・・・妹のためや・・・」
「妹さん?トウジと洞木さん、妹が居るんだ・・・。
その子がどうかしたの?」
「すまんがそれ以上は聞かんといてくれ・・・。人にあんま話すことやないんや」
「ごめんね碇君。ノゾミのこと、今は話したくないの・・・」
「ご、ゴメン」
「謝る必要ならないで。
・・・そう言えば、ワシもイインチョとケンスケ以外のみんながゾイドに乗る理由を聞いたこともなかったな。
センセはなんで乗るんや?」
「・・・僕はちょっと前までは他人に言われたから。命令されたからだった」
「今は?」
「守りたいから」
「何をや?」
「みんなを・・・」
「そうか・・・。頼りにしとるで」
「みんなを守るため・・・強いんですね、シンジ君」
トウジの後を続けるように、マユミが少しうわずった声で話しかけた。
「そんなこと無いよ。そう言う山岸さんは?話せたらで良いけど・・・」
「お父さんと、・・・・・・お母さん。敵討ちのつもりでした。でも、今は・・・」
そこで少し黙り込み、床をじっと見つめる。そして心の整理がついたのか、吹っ切れたように言葉を続けた。
「今は・・・みんながいるから。私、シンジ君やマナさん、惣流さん、綾波さん、鈴原君、洞木さん、浅利君、ムサシ君、渚さん、相田君、それだけじゃない、ミサトさん、リツコさん、ユイさん、キョウコさん、ナオコさん、オペレーターの人たち。
みんなとのこの生活を失いたくないから。初めて私を裏切らなかった人たちを守りたいから。そしてみんなを守れるのはゾイドに乗れる私達だけ。だから、私は戦っているんです」
「そう・・・山岸さんこそ強いよ。でも、悪いこと聞いちゃったね」
「良いんです。シンジ君なら、みんなになら・・・。
あら?惣流さんやマナさんには聞かないんですか?」
「アスカと綾波、マナにはもう聞いたから・・・」
「そう・・・ですか。仲が、良いんですね」
少しすねたようにとぎれとぎれに言うマユミ。その目は勝ち誇ったようにこっちを見つめるアスカとマナを軽く睨んでいた。『負けませんよ!』その目はそう言っているように思えた。彼女に限らず恋する女の子は強い。
『落下予測時間まで、あと120分です』
複雑に視線を絡ませるアスカ、マナ、マユミの三人に嬉しいような困ったような顔をしたシンジが、ムサシ達にも聞こうとしたときアナウンスと共にエレベーターがケイジに到達した。
「あ、行かなきゃ」
「シンちゃん、私に何で聞かないのよ〜!?シンちゃんはお姉ちゃんにしか聞いていないよ〜」
「き、騎士道大原則ひ、ひとぉつ!う、上を向いて歩こう!む、無視されたって、辛くなんかないやい!」
「ムサシ気持ちはわかるけど・・・。
どっちにしろ僕たちがゾイドに乗る理由なんて話せないよ・・・みんなと比べると情けなくて・・・」
「う、う、う、シンちゃんのバカ〜!」
発令所ではミサトがその場に残るオペレーター達に退避勧告を出していた。
「みんなも待避して。ここはわたし一人でいいから」
「いえ、これも仕事ですから」
「子供たちだけ危ない目にあわせられないっスよ」
ミサトの退避勧告に、明るい顔で返事をする青葉と日向。彼らだけでなく誰も席を立つ者はいなかった。全員がまっすぐな目をしてミサトに微笑んでいる。
「あの子たちは大丈夫。もしゾイドが大破しても、ATフィールドがあの子たちを守ってくれるわ。
ゾイドの中が一番安全なのよ。それに私の予想が正しければ・・・」
市内各所に待機するゾイド達。
その内の一台。最強のゾイド、ゴジュラスの中でシンジは、先日のミサトとの会話を思い出していた。
夕日が街を染める時間、シンジとミサトの2人はいつか2人で夕日を見たあの丘に来ていた。シンジに背中を向けたまま、過去を思い出すようにミサトは淡々と言葉を口にする。それは会話していると言うより、言葉という音を出している。そう表現した方が良いような喋り方だった。
「シンジ君、昨日聞いてたわね。私がどうしてネルフに入ったのか・・・。
私の父はね。自分の研究、夢の中に生きる人だったわ。そんな父を許せなかった。憎んでさえいたわ」
「・・・・・・」
「母や私、家族のことなどかまってくれなかった。回りの人たちは繊細な人だと言ってたわ。
でも、ホントは心の弱い、現実から、私たち家族という現実から逃げてばかりいた人だったのよ。子供みたいな人だったわ。母が父と別れたときもすぐに賛成した。母はいつも泣いてばかりいたから。父はショックだったみたいだけど、その時は自業自得だと笑ったわ。
けど、最後は私の身代わりになって死んだの。セカンドインパクトの時にね。
・・・・・・・私には、わからなくなったわ。父を憎んでいたのか、好きだったのか。
ただ一つはっきりしているのは、セカンドインパクトを起こした使徒を倒す。そして、アダムを倒したあの存在も・・・。
そのためにネルフに入ったわ。結局、私はただ父の復讐を果たしたいだけなのかも知れない。
父の呪縛から逃れるために。あなた達を犠牲にしてまでも・・・」
(使徒を、ゼーレを倒しみんなを助け、守りたい。誰にもミサトさんみたいに悲しい思いをさせたくない。
そしてそれができるのは僕たちだけだ。
だから、僕は逃げない)
シンジはモニターを睨み、レバーを握りしめた。
Cパートに続く
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