前回までのあらすじ
シンジ達と様々な研究資料とゾイドを載せて旅立ったホエール・キング
帝国軍の追撃を振り切り(殲滅し)ヘリック共和国の領域に入った彼ら。
途中、今度は共和国軍の飛行ゾイドに幾度も襲撃されつつ
行き先を出来る限り特定されないよう共和国軍基地、特にレーダー関連の基地を叩く
漆黒に染まったストーム・ソーダを駆るシンジ
そして、たった一機のサラマンダーとレイという一人の少女の為に共和国軍は少なからぬ損害を受けていた。
「ZOIDS STORY IF」
第五話
網にかかった黒鳥
「くうぅぅっ!!」
どうしようもないほどの意地の塊
他人のもそうだか、それ以上に自分の無様な様子が嫌いな彼の口から思わず悲鳴が漏れる。
急激な加速
無理な方向転換
モニターの中で世界は幾度も右に左に、下に上にと回りつづける。
つい先ほどまで漆黒の翼竜のいた空簡にミサイルの群れが白い軌跡を描き突き抜ける。
シンジは操縦桿を握り締め、常に全包囲に意識を向けつつ
空戦ゾイド最高の傑作、ストーム・ソーダの進化した黒い機体に限界以上のアクロバットな動きを要求し
機体は空中分解しそうなほどの過負荷を受けていた。
「チィっ!!」
黒翼を傾け、ストームソーダが一回回って横に流れる。
そこを今度は機関砲の弾丸が幾筋もの線になって四方から横切る。
レーダーを見れば四方八方敵だらけ
シンジは敵の重囲の中にいた。
「今回の標的はシンジただ一人だ」
臨時の帝国、共和国合同の指揮官を務めている冬月大佐は開口一番そう言った。
共和国軍での屈指の空戦ゾイドの基地
その司令室には共和国軍の仕官だけ出なく、赤城中佐等帝国の仕官もいる。
中央の長く巨大な机の表面
そこにホログラムが移り、立体的な戦力配置図が現れる。
「まず、青葉とマヤの二名二機のストーム・ソーダで彼を挑発、奴をこの地点まで誘い込む」
球状のホログラフの、ほぼ中央を指す。
共和国軍の仕官ミサト、日向他トウジやアスカ等、集まったメンバーが一斉に注目する。
「奴を誘い込んだ時点で、あらかじめ地上に伏せておいた帝国軍のシンカーの大部隊を出し、一斉にミサイル攻撃をかける」
「シンカーは作戦空域の外側ギリギリから囲むように布陣し、地上部隊と供に攻撃を仕掛けるんじゃ」
ホログラフの地表からシンカーを示す赤い色が上昇し、球形空域の下半分の外郭を覆う。
そして空域の地表面は地対空装備を備えた陸戦ゾイドの青い色が覆っていた。
見れば併せて百は下らない大部隊である。
「オイじいさん、幾ら伏せておいても空から見ればバレバやないか?」
コレだけの部隊をどうやって伏せておくのか?
クルーガ―と時田以外ここに集まったもの全員の疑問をトウジが口にする。
「その心配はいらん!ちゃんとわしが良い物を用意しておる」
「時田じいさん・・・・で、なによ、良い物って?」
「被るだけで光学迷彩をかけられるシートじゃアスカ、さすがに今回参加するシンカー他百機分用意するのは大変じゃッたぞ」
「へぇ〜、時田じいさん、やるゥ!!」
「やるときはやるのね、見なおしたわ」
「当たり前じゃ! もっとわしを尊敬せい!」
「ゴホン! 注意しておくのはミサイルにはあらかじめ敵味方識別機能を搭載しておくことだ。万が一見方をミサイルが追いかけたり、命中して爆発しないようにな」
アスカとヒカリが誉めて時田が調子に乗る。
話しがそれかけるのを、大佐が咳払いをして止める。
「帝国軍より参加した空海両用ゾイド、シンカーはミサイルの積載量は多いが、ドッグファイトには向かん」
「故にシンカーは遠巻きにシンジを包囲し、ミサイルによる間断ない攻撃をかけ、牽制することが役目だ」
「そして、上空はレドラー、プテラス、レイノスの大部隊で包囲線を引く。しかし決してシンジのストーム・ソーダとドッグファイト等してはならん、到底付いて行けんからな」
遥か上空に待機していたプテラスを主力とした部隊、緑であらわされたものが球面の上半分を覆う。
こちらも合計百機は下らない。
「その間、さらにトウジ、ミサト、お前達もストームソーダでシンジとの戦いに参加」
「おう、腕がなるのう」
「赤城中佐もお願いできるかの?」
「微力を尽くします」
リツコは静かに敬礼をして答える。
「しばらくはシンジがこの包囲から抜け出さぬよう、シンカーや上空のプテラス等に向かわないようにすればいい」
「そんな、時田博士、それは迂遠ではありませんか?」
「まぁ、ミサちゃん、そういきりたつな。まずはシンジの疲労を誘うんじゃ」
「疲労?」
「赤城中佐、シンジは幾つじゃ?」
「だいたい、十二、三歳かと・・・・・あ!」
「しつこいんだよ、お前達は!!」
後ろを取ったストーム・ソーダに叫びながら素早く照準を併せる。
しかし発射直前に相手は急上昇し、変わりに向こうからミサイルが数個接近してくる。
大多数のミサイルを切っ先三寸で交し、正面から来たミサイルを交わす事無くパルスレーザーで打ち落とし
一挙に包囲の一角、シンカーの部隊に襲いかかろうとする。
しかし
(シンジ!!)
「・・・・・・・・ちっ!」
ストーム・ソーダーに融合したエヴァ・シャドーの声が響く
同時にシンジはシンカーの部隊に向かっていた黒いストーム・ソーダの姿勢を傾け一挙に左に逃げる。
その直後、先程までの予定進路上を上空からのレドラー、レイノス、プテラス等の機銃掃射が襲う。
間断無く襲ってくるミサイル、機銃から発射された弾丸の軌跡
そしてシンジをこの空域に留めようとするミサト、トウジ、青葉、マヤ、リツコの操る敵ストーム・ソーダの攻撃
余裕を持って交わすことも出来ず、機動を変えるたびにGによって骨は軋み鼓動が乱れる。
血圧が下がり意識がブラックアウトしそうになる。
その小さな体は荒い呼吸で上下にゆれ
シンジの額にはびっしりと汗の玉が浮かんでいた。
「そうじゃ、幾らシンジが天才だろうと体力は一朝一夕では身につかん。ストームソーダの高速機動でかかる体の負荷はそうとうなものじゃからの」
「戦闘には長く耐えれへんか・・・・・・・・でもな、ならなんで今までアイツは戦ってこれたんや?」
時田の説明に納得しつつも、トウジは沸いてきた疑問を口にした。
それは作戦を建てた冬月大佐以外一同の疑問でもあり、みな注目する。
「簡単なことじゃよ、時間がかからなかったんじゃ。性能も違うしの」
「しかし、正規の訓練を受けたパイロット達がそれだけで簡単に・・・・・」
「そうかの?こrまでは基本的に正面きって闘おうとしておった。それに戦闘を重ねるほどシンジは操縦の腕を上げ、我々の部隊は損害を出しパイロットには恐怖が染み渡る・・・・恐怖で実力通りの力が出せなくなるんじゃよ」
「では、通信で我々と耐えず交信してるのも?」
「いや、あれは本人にすれば余裕の現われじゃろうよ。だが、そのこともパイロットを恐慌に追いこみ、実力を出させないことに一役買ったことは事実じゃ」
「なら、今回の作戦では、アイツの嫌味なセリフを聞かなくてすむってことか」
「そうなるだろう・・・・・・・Dr、時田の言う通り、到底そんな余裕は無いはずだ」
これまで、ただ蹂躙されるしかなかったシンジを仕留められる。
そのことに司令室に集まった面々は興奮を押さえきれなかった。
シンカーが比較的低い位置からミサイル攻撃を繰り返し
休む間を与えないよう、シンカーと連動するように上空からは弾丸の雨が降り注ぎ
共和国の銀色のストーム・ソーダがシンジの焦りを誘うようHIT&AWAYを繰り返す中
「チっ!!・・・・・・・・なんでアタシだけ・・・・」
「アスカさん、今回はガマンガマン」
「マユミ・・・・」
「そうよ、アスカまだゾイドで空戦なんて出来やしないんだから、おとなしくしてなさい」
「ヒカリまで・・・・・・・」
アスカとマユミの乗ったプテラス
そしてヒカリの乗ったレイノスを含めた大部隊
シンジがドッグファイトを演じている空域、シンカーが描く円の頂点部分から覆うように展開し
そこから機関銃やパルスレイザーでの長距離攻撃を繰り返していた。
「アタシは馬鹿シンジにかしを返したいのに・・・・・・・」
「ガマンですよ、アスカさん」
「だいたいあんなスゴイことになってる所に突っ込んでいってどうしよするの?」
納得いかないといった様子でシンジのった勝っている辺りを見つめるアスカ
そんなアスカを心配そうに見つめるマユミ
そしてアスカと同じように下を見つめるヒカリ
そこでは銀色のストーム・ソーダ五機と一機の黒く幾らか大きなストーム・ソーダが延々とドッグファイトを繰り広げいてた。
「っクハァァっ!!!」
一時的に羽を折りたたみ直下降した後
一挙に羽を広げ風を受けて舞い上がる黒い翼の翼竜
その軌跡を追うように幾つものミサイルが追う。
激しい上下運動だけで、呼吸も苦しくなるのを耐えて。前に回りこんできたミサイルを正確に打ちぬき
そして振り切るべく一挙に上昇する。
すると、待っていたように上からプテラス、レイボスの部隊が鉛玉の雨を降らせてくれる。
「来た! 」
グルゥウ!
(シンジ、アブナイっ!!)
「黙っていろ、シャドー!!」
その物騒な雨を待ち構えていたシンジは途中までまっすく上昇し、弾丸を紙一重で交わしつづけ
ミサイルを限界まで引き付け・・・・・・・・・・
「今だ! カハァっ」
そして急に向きを変えて左に転進する。
当然ミサイルは追尾しようとするが、上空からの弾丸の雨に晒され残らず爆発していく。
急な方向転換で体にかかった負荷がシンジの体をさいなむ。
肺に残ったわずかな空気を吐き出す。
シンジは全身から脂汗を流していた。
グルルル・・・・・
(シンジ、コレ以上無理だよ、なんとか包囲を抜け出さないと)
「・・・・・・・ふんっ、そのうち向こうが・・・・・弾切れになる・・・・・・・・・・ツァァっ!!」
シャドーの心配もむなしく、シンジは再び襲いかかってくるストームソーダを交わす。
すでに一時間弱もこのアクロバットな戦闘を続けていて、シンジの体はすでに限界が近づいていた。
いや、本来ならとうの昔に意識を手放し、あの世への片道切符を死神から貰っていただろう。
追いついてき敵のストーム・ソーダ五機が再び攻撃を仕掛けてくる。
シンジは相手の動きをある程度読んでなんとかよけるべく体に叱咤して操縦桿を操る。
そのとき!!
ブゥン!
ドカドカドカドカドカーン!!
「「「「「「「「「な、なに?」」」」」」」」
「な?荷電粒子砲!?」
どこからとも無く飛んできた一条の光の帯がレイノスやプテラスの部隊を薙ぎ払う。
トウジ達は目を見張り、そしてシンジは飛んできた方向を把握して目をやる。
点にしか見えない影
拡大すると
「・・・・・・ホエールキング、ジェノザウラー・・・・・・」
そこには巨大要塞ゾイド・ホエールキング
そして口部搬出口が開き、そこに砲撃体制を取ったジェノザウラーがいた。