両親の葬儀を終えた夜

 いつものように肌を重ねるシンジ達

 もう、ずっと、ずっと、そうしてきた。

 ただ、一線を超えたのはこの日が最初だった。

 

 つながったところがひどく熱くて

 熱に潤んだ互いの瞳を見つめていた。

 

 長い間、お手伝いの人達以外だれもいなかったこの家

 記憶の中で、両親がいたためしはほとんど無い。

 つくりもしっかりしていて、掃除も行き届いていて

 とても手入れの行き届いてはいるもの

 本来かなり古いこの大きな屋敷で、ただ二人きりというのはとてもさびしくて

 物心ついたころから、シンジ達兄妹は、お互いにぬくもりを与え合っていた。

 

 そして

 

 互いの意識が白く染まっていったとき

 むかし馴染みの少女の姿を見た気がした。

 

 

 


ふたり

第1話

新たな街、新たな家、新たな学校

 


 

 

「ここが、これからワタシ達が通う高校・・・・・・・・・・・」

「そうだね」

 

 降りしきる雨の中

 一組の男女がこれといって特徴の無い校舎を見上げる。

 ちらほらと、傘を差した生徒が通りすぎる中

 二人は静かに立っていた。

 周りの生徒たちも二人も、そこに木石でもあるかのごとく互いを気にも止めずにすれ違っていく。

 

 

 

 

 

「ふふ、昨日見つけたこれを、こんなに早くつかえるなんて・・・・・・」

 

 その少女は悦に入っていた。 

 

 この日の朝、六月の空模様にふさわしく、昨日に引き続き今日も雨だった。

 かなり背の高い女子が、何故か番傘をさして自校・大門高校の校門前まで来ていた。

 淡い桜色をベースに、赤の線が所々入ったオーソドックスなセイラー

 膝上5センチくらいの赤のスカート

 この学校の女子の標準的な夏服だ。

 

 御剣涼子

 

 すらりとした175・6の長身にメリハリのある体系

 涼しい顔立ちとポニーテールが魅力の、可愛いというよりは美人

 美人というよりはハンサムの凛々しい少女

 番傘と、なにより下げている木刀入りの袋(あくまで和風に紐で口を縛るようになっている)を持った

 この新世紀にサムライを目指す奇特な美少女剣士だ。

 

 大門高校でも名物の一人ともいってよい彼女が校門にたどり着いたとき

 ふと入り口付近で立ち止まっている二人連れが目に付いた。

 それは一組の男女 

 濃紺のレインコートを羽織り、でもフードはかぶらず、雨にぬれている。

 

「なにしてるの? 濡れるわよ」

 

 ちょっと常人なら声をかけずらい

 でも無視もできない雰囲気を漂わしているのはずだが

 生徒たちは、二人がまったく彼等が目に入っていないかのように通りすぎていく。

 その様子を怪訝に思うものの

 そこは実は世話好きで、思ったことは大抵やる(格好つけている割にこらえ性がない)涼子である。

 ほんの少し躊躇した後、颯爽と歩み寄り声をかけた。

 二人が振り向く

 

 

――――――――――――――――――――綺麗――――――――――――――――――――

 

 涼子は、最初、そんな単純な言葉しか浮かんでこなかった。

 二人の容姿はとても良く似ていた。

 小さな、逆卵形の顔に高い鼻、少し釣り目の大きな目に長い睫、小さな口

 男子のほうは身長190半ばくらい、女子のほうは170半ばで涼子と同じくらいか

 大き目のレインコートのせいでわかりにくいが

 顔や手首、足の細さを見るに、基本的に二人ともほっそりしている。

 そして、なにより二人を印象付けているのがその色合いだった。

 

 蒼銀色の髪は、少し癖のあるそれを女子の後ろはシャギーを入れて首辺りでそろえて

 前髪両サイドの上あたりから胸にかかるまでのばし赤いリボンをつけて纏めている。 

 男のほうは、後ろと両側をきちっと刈り込んで

 前髪は額を覆うほどだが、かなり透いている。

 肌はかすかに青みがかかって見えるほど白く

 なにより、その大きく澄んだ瞳は真紅であった。

 

 現実離れした容姿に絶句した涼子を怪訝そうに見つめる二人

 涼子は慌てて言葉をつないだ。

 

「ほ、ほら、さっさと学校入ろ! こんな所で何時までも雨にあたったら風邪ひくわよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「――――そうだね。ありがとう」

 

 少女のほうは、まったく表情を変えずに無言で涼子を見詰めていたが

 男子のほうが微かに笑みを浮かべて答え

 傍らの少女を促して涼子と共に校門へと急いだ。

 涼子は多少二人の最初の反応に面食らっていたが

 大きな眼を糸のように細めて柔らかく笑う男の子の人当たりの良さに

 気を取り直して笑った。

 

 

 周りの生徒は、今見慣れぬ二人組みに気付いたようにびっくりしていた。

 

 

 番傘の雫を払い下駄箱で涼子は靴を入れ

 レインコートの水を拭い片した二人は、靴どこに置いたものかと戸惑う。

 この奇妙な取り合わせに、妙なことの多いことで慣れている

 いや慣れているからこそ大門高校生も注目している。

 

「見たこと無いと想ったけど、もしかして転校生? 」

「うん、そうなんだ。それで、悪いんだけど職員室に案内してもらうと助かるんだけど・・・・・・・・・・」

「いいわよ、ついてらっしゃい」

「ありがとう、ほらレイも」

「――――アリガトウ・・・・・・・」

 

 しかし、3人はまるで感知せずに上履きに履き替えると、廊下を歩き出し職員室に向かった。

 

「ところで、名前はなんて言うの? 私は二年B組の御剣涼子、剣道部に所属してるわ」

 

 相変わらず無表情な少女と、男子のほうは細めた目と口元に嫌味にならぬ程度の笑みを浮かべているものの

 そろって二人してどこか近寄りがたい雰囲気を漂わせているが

 しかし我が路を(押し)進む涼子は、さっそく聞きたいことを聞きにかかる。

 

「ああ、ごめん。自己紹介がまだだったね。ボクは碇シンジ、二年だよ。クラスはまだしらない」

「――――碇レイ・・・・二年よ・・・・・」

 

 絶えず眼を細めて微笑んでいる愛想の良い男子改めシンジと

 チラッとこちらを向いて必要最低限な事を言うだけの無表情な少女改めレイが好対照で

 なまじそっくりな顔立ちをしているのでその対応の差が違いをハッキリさせていて

 涼子はまた少し面食らったが、気にせず話を続ける。

 

「ふ〜ん、それで、二人とも良く似てるし、年も変わらないんでしょう? 双子なの? 」

「そうだよ、だけど一卵性ではなくて二卵性双生児」

「・・・・・・・・性別、違うもの・・・・・・・・・・」

「あ、あぁぁ、そうね」

 

 レイに突っ込まれるたびにちょっとあせる涼子

 基本的に物静かな相手が苦手なのだろうか?

 

「でも、どうしてあんな雨の中、ボウっとしてたの? 体に悪いわよ? 」

「そうだね、でもなんとなく見てたんだ。これから通う校舎を」

「ふぅ〜ん、でも髪拭かなくて大丈夫、他はともかく、頭はかなり濡れたんじゃないの? 」

「そうだね、ま、たいした事は無いよ、でもレイはちょっと髪の手入れもあるし・・・・・・・」

「・・・・別にワタシは・・・・・・・・」

(どうして? もうそんなにおかしくなったかしら? )

 

 シンジに言われて、レイは否定しながらも自分の髪が気になり始め

 しっとりと濡れた前髪をつまんで目を寄せてみたり

 窓に映った自分の姿

 特に髪型をさりげなく確かめる。

 

「そうね、ちょっと直しましょ、剣道部の部室のロッカールーム、使えばいいわ」

「それは助かります。僕はともかく、レイにはシャワーを浴びさせたいですから」

「―――――シンジ・・・・・・? 」

「そうね、じゃぁこっち来て! 案内するわ」

「お願いします。ほら、レイどうしたの?」

「・・・・・・・・・・付いて来てくれる・・・・・・・・・? 」

「もちろん、手前までついていくよ、女子のロッカールームには入らないけど」

「――――――とうぜん・・・・・・・・・・・・」

 

 極めて無口であるらしいレイがほとんど口を挟むことなく

 最後に、ちょっと否定の意を表そうとしていたにもかかわらず話しが進んでしまったため

 ちょっと不安になってシンジを上目遣いで見上げる。

 シンジはその糸のように細めた瞳を見開き、やさしくレイに微笑みかけたが

 しかしすでに前を歩き始めた涼子が見ることは無かった。

 

「ほら、早く! いくら時間があるといってもシャワー浴びるんだから」

「あ、はい! すぐ行きます」

 

 ついてきていないことを感じた涼子が立ち止まり振り向いたときには

 すでに、シンジは再び目を糸のように細め小さく微笑みを浮かべたいつもの表情に戻っていた。

 シンジはそのままレイとともに涼子と並ぶ。

 

 シンジと涼子は、レイをともなって剣道部部室へ向かった。

 

 そして、三人は目的地を改めて

 体育館近くにある剣道部部室に向かった。

 そこは運動部の部室が連なる体育館横の建物と違い

 その向かい

 柔道、空手、相撲部、合気道などの部室も並ぶ格技堂の一角だ。

 

 廊下を向かって左からシンジ、レイ、涼子の順で並んで歩く。

 外を何気なく眺めたレイの顔が暗くかげる。

 レイの歩調が遅れたことに気付いたシンジが

 静かに目を開き

 薄い微笑みを面からはがし

 さりげなくレイと手をつないだことを、前を歩く涼子は気付くこと無かった。

 

 廊下の窓の向こう

 シンジとレイは、中庭の池のほとりに咲いた紫陽花を見ていた。

 

 

 

 

 開け放たれた縁側の窓から、雨音が響いてくる。

 昼間、紫陽花が雨にぬれてとても綺麗だった。

 庭木や、石畳、池に落ちる雨音が、響き合い微妙なハーモニーを奏でる。

 今日でお手伝いさんにも暇を出した。

 三日前、あれだけの人がいたこの場所も

 今はシンジとレイだけしかいない。

 シンプルな黒の詰襟のシンジ

 古風とも言える濃紺のセーラー服のレイ

 シンジ達は、夜中だというのに電気も着けないで、床の間の控えである8畳の部屋に座り込んでいた。

 雨が落ちる音を聞きながら、暗闇に微かに見える紫陽花を眺めながら

 二人よりそって、座っていた。

 

 

『梅雨時期、この紫陽花を家族みんなで見ましょうね』

 

 碇ユイ、ゲンドウ

 名の知られた研究者で、やたらと忙しかった父母と、そんな約束をしながら植えた紫陽花

 あんなに見事に咲き誇っている。

 結局、一度も家族みんなで見ることなんて無かった。

 いつもレイと二人だけで見ていた。

 そして、もう二度と約束が果たされることも無い。

 

 やたらと広いこの屋敷

 隣は12畳の床の間で、今は祭壇と遺影が飾られてある。

 家具はすべて向こうでそろえたし、大して無い荷物はほとんどまとめたけど、アレだけは明日かたしてしまうつもりだ。

 遺影と遺骨など、わずかなもの意外、すべて業者から借りたものだから、残ったものはたいして無い。

 遺影と遺骨は、その手で持っていきたい。

 そう、両親は死んだのだ。

 

 研究所での爆発事故

 遺伝子関連の研究施設だったはずが、なにを間違ったのか爆発事故だった。

 でも、心当たりもありすぎる。

 あまり、ここにとどまるのもよくないだろう。

 明日、この家を立つ

 葬式など、もろもろなことがすんですぐに出るというのも、かなり問題だが

 

 両親は自分達の死を予見していたのか、すでに長い時間をかけて財産のすべてを僕達に譲与していた。

 両親の大学の恩師で、最近はなにかと忙しい両親に代わって保護者代わりでもあった顧問弁護士の冬月さんが

 すべてを取り仕切ってくれた。

 親族のほうは、見たことないのが随分と集まっていた。

 母方の祖母・碇ユウ以外、夫婦そろって近い親類はいないはずだが

 かなり離れた血筋の明らかに遺産目当てであったろう集まった彼らにとって、ほとんど取り分が無いのは面白くなかったらしい。

 今後も何かとわずらわしく干渉してきそうである。

 まぁ、すでに大半の財産の譲渡がすんでいた以上、どうしようもないだろう。

 気のイイおばぁさんといった様子で実際は裏で何しているかわからない

 なにやら随分と怪しげな祖母ではあるが

 両親とはずっと険悪な様子でいたが、とりあえずシンジ達には誠実で、親切だ。

 彼女が保護者となってくれたことで、えらく離れた親族達の干渉もそれなりに防げるだろう。

 

 翌日。

 少ない荷物とともに屋敷を後にした。

 シンジ達はここに戻ることは二度と無いだろう。

 

 紫陽花が雨に濡れていた。

 

 

 

 

 

 

 涼子自身が登校の際、かなり早めに来ていたので、時間の余裕はまだあった。

 もっとも、シンジとレイは先に職員室によらなければ行けないことから、多少差し引かれることにはなるのだが

 それでも、40分近い余裕があったので、(なんでこんなに早く来ているのだが)レイと涼子はシャワーまで浴びていた。

 ちなみにシンジは、軽くタオルで頭をふくと

 格技堂を珍しそうに見て回っている。

 

 そして、シャワールームの湯煙の向こう

 二人の魅力的な肢体がゆれていた。

 

「わぁ、ほんと白くて綺麗ねぇ・・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・(ポ)・・・あなたも・・・・・しなやかで力強く・・・・キレイ・・・・・・・・」

「わ、わぁ! すごい誉め言葉。あ、ありがと! 」

(わ、私はそんな趣味無いんだからね!!!)

 

 レイの艶姿に思わずクラっときてしまった涼子はあせり

 あわてて注意をそらそうと言葉をつむぐ。

 

「と、ところでねぇ、いつこっちに引っ越してきたの?」

 

 レイは、最初このまったく遠慮無く話し掛ける開けっぴろげな涼子に戸惑っていたが

 どこか懐かしい感じのする彼女を気に入り始めていて

 はじめの固さが取れていく。

 そうなると、レイの本来持つ魅力が如何無くとは言えないまでも発揮されて

 微かに浮気した上に、涼子に養子を誉められ頬を染めて恥らうレイの可憐さに

 涼子は一瞬アッチの世界へ足を踏み入れけるが

 顔を激しく左右にふり、己の煩悩(笑)を立ち切って

 なんとかノーマルな世界に踏みとどまって話題を作ったのだ。

 

「・・・・・・・昨日の昼間・・・・・・」

「へ、へぇ〜。で、どの辺りにすんでるの、この近く? 」

「ええ、この学校の少し東のマンション」

「そうなんだ、今度遊びに行っていい?」

「・・・・ええ・・・」

 

 自分に必死に言い聞かせながら、紅潮した顔でドモりながら話す涼子はひたすら怪しくて

 レイはどうしたのかと、多少心配しながら返事を続ける。

 少し前かがみになったレイが涼子を上目づかいで見る形となり

 凄まじいまでの愛らしさに涼子の心は激しく揺さぶられ

 そうなるとよりいっそう顔が紅潮し、口調は乱れて

 レイのきょとんとした顔と魅力的な肢体に釘付けになりそうな視線をさ迷わせて

 心配になったレイがさらに涼子の顔を覗き込む。

 

 涼子は完全に悪循環にはまり込み

 理性の堤防は決壊まで秒読み段階まで来てしまう。

 軽く首をかしげて自分を見つめるレイを

 思わず抱きしめそうになるのを時折小刻みに震えながら絶えている。

 

(私は、私はノーマルなんだからぁ!! )

 

 浴びていたお湯を一瞬冷水に変えて身を引き締め

 アブナイ衝動をやり過ごす。

 必死にここまで思い、対処しなければならないのが

 すで重症かもしれない。

 

 

 

 結局、このままでは自分(の理性と人生)がもたないと判断した涼子は

 早々にシャワーを切り上げ、簡単に服をきるなり

 更衣室にあえてシンジを入れ、レイの髪の手入れをシンジに任したのだった。

 

 シンジに髪を梳かれて幸せそうなレイを見て

 ほんの少し(かなり)胸が痛んだのはオフレコである。

 

(ああ〜〜! それ、それ!! やりたい、レイちゃんの髪触りたいぃ〜〜〜〜〜〜!!!!!)

 

 内心、こんなこと考えてたことも・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 

 

 

 

 そして、ようやく3人は目的地たる職員室に向かった。

 もっぱら話すのは涼子とシンジであったが、レイも最初に比べると随分と砕けた様子で

 時折相槌を入れたり、微かに笑ったりと、楽しそうであった。

 

 

「さ、ここが職員室よ」

「助かりました」

「アリガトウ」

「いいえ、担任は・・・・・まだ知らないんだっけ? 」

「ええ、まあ・・・・」

 

 兄妹を職員室まで案内した涼子は、そのまま担任を紹介しようと職員室を見渡すが

 あいにくシンジもレイも自分のクラスも担任もまだ知らされていなかった。

 

「まぁここの先生みんな特徴的だし、紹介されればすぐわかると思うわ」

「そうですか、それはよかった」

「よかったのかしらねぇ? 」

「はい? 」

「いえ! なんでも無いの・・・・・・・・こっちの話し」

 

 自分の担任を筆頭として、非常に個性的な教諭陣を思い浮かべ微苦笑いする涼子

 

「案内してくれて助かりました」

「どういたしまして。また、休み時間でも会いましょ! 」

 

 先ほどからの涼子の言動に、教諭陣について若干の不安と

 そして涼子自身に少し頭の心配(笑)をしていたシンジだが

 それでも、薄い笑みを絶やすことなく礼を告げ

 涼子はかるく受けると、元気良く去っていった。

 

 ちなみに、よほど番傘が大事なのか

 涼子は玄関の傘立てにも立てずにいまだに持ち歩いていた。

 

 

「なんだか、明るい娘だね」

「―――そうね・・・・・・・」

 

 二人きりになると、シンジは再び薄い微笑をとき、少し懐かしむような口ぶりで話し

 涼子の遠ざかる背中を見ながら、レイも遠くを見るような視線で見送った。

 

 涼子が廊下の角を曲がって見えなくなり

 見合ってそれだけ言葉を交わすと、二人は職員室に入っていった。

 

 

 

 

 

「あ、おはようございます! 涼子さん」

「おはよう大作君」

「おはよう涼子ちゃん、ところでそれ、何? 」

「おはよう、ひとみ。いやぁねぇ、傘じゃない」

「私が聞きたいのは、どうしてそれが番傘なのかということなんだけど・・・・・・・・・」

 

 2年B組の教室に入ると、背の低い可愛らしい顔をした男子生徒、神矢大作(名前は図分と男らしい)と

 丸くて薄い黒ぶちの眼鏡をつけた、可愛らしい感じの女の子

 涼子の親友、結城ひとみが声をかけてきた。

 二人は何かと騒がれ、女子にとても人気があり

 どんなときでも物事をはっきり言わないと気が済まない性質の涼子に

 あまりたじろぐ事無く、また頬を染める事無く話せる数少ない友人達である。

 

 そしてさっそくひとみが、とても目に付く番傘について質問する。

 

「それはもちろん、サムライたるもの、こんなときも雰囲気を大事にしないと」

「相変わらず、サムライにかぶれてるのね・・・・・・・・・もう、手遅れ・・・・・・・・・・」

「・・・?」

 

 真っ当な路から確実に外れていく友人に、かすかにため息をつきながら呟いたひとみの言葉は

 幸いなことに涼子には聞き取れなかった。

 

「ね、ね、それより涼子さん! ニュースですよ! ビックニュース!! 」

「また、身長に二メートルぐらいの大男な教師が転任でもして来たわけ? 誰か挑戦者でも来たの? 」

「もう、涼子さん。来たのは転校生ですよ、転校生! 男女一人ずつ」

「そう?(あら、もしかして)」

 

 そのまま、番傘をロッカーにしまい

 バックから荷物を取り出し木刀入りの袋を机の横に立てかけ(いつでも抜けるため)

 机についた涼子に大作がまくしたてる。

 こういったとれたたての情報など、ねたを話すとき

 その可愛らしい容姿の割に随分と落ち着いたところのある大作は別人のようによくはしゃぐ。

 

「転校生がくるのかぁ〜〜」

(多分、あの二人・・・・・・・)

 

 一方涼子は想いきり思い当たる節があったが黙っておく。

 

「なんでも、編入試験はオール満点、かなりの美男美女ってうわさですよ」

「へぇ〜」

「それでなんと、このクラスに入るみたいなんですよ」

「それは、その子達災難ね」

「なんでです? 」

「ほとんど朝予定通りこない赤ザルでしょ、突然失踪する型破り極まりない大男の担任教師、ものすごく濃いいクラスだもの」

「そうですか? 結構楽しいと想いますけど」

「少なくとも赤ザルは迷惑なだけだわ・・・・・・・・」

「涼子ちゃん、それはひどいんじゃ・・・・・・」

 

ガラガラガラ

 

「さぁ、みんな席につけ」

 

 ひとみがちょっとその場にいない赤ザルが気の毒になってフォローしようとしたとき

 教室前の戸が開いて、グレーのシャツに革ジャン、アーミーパンツに編み上げのブーツといったひどくラフな格好をした

 身長2メートル以上の大男が入ってきた。

 ひとみはあわ得た様子も無く隣の自分の教室に帰っていく。

 

 教卓にドンと手を置いたその教師は男臭い、でも暖かい笑みを浮かべ

 それなりに整った顔に撫で付けただけの髪で、今日はなんだか少し眠そうである。

 

 大門高校が誇る帰ってきた伝説の番長、幻の挌闘家

 2年B組担任にして英語UAを受け持つ英語教師・南雲慶一郎である。

 

「さてと、今日も草gは欠席か遅刻だな」

 

 教卓に向かいながらちらりと一瞥しただけで判断する。

 まぁ、実際そうだからこの際あまり問題にならない。

 すくなくとも、この二年B組では

 

「ああ〜、今日は、これから新たに転校生を紹介する。入ってきてくれ」

 

 そして、開け放たれたままの戸から、一組の男女の生徒が入ってくる。

 教室全体がかすかにざわめく

 男子のほうは静かに教卓の左少し前に立ち

 女子のほうは黒板に向かう

 

カッ、カッカッカッカ、カッカ、カッカッカ

パンパン

 

 女子のほうが流麗な字体で二人の名前を黒板に書き

 チョークの白い粉がついたてを軽くはたくと、男子の隣に並ぶ。

 

「碇シンジです。京都からひっこしてきました、よろしくお願いします」

「碇レイです・・・・・・」

 

 蒼銀の髪、真っ白な肌、赤い瞳

 よくにた美貌を持つ二人

 あまりにもあっけない自己紹介であったが

 生徒たちは、転校生の容姿に驚いて、声も出なかった。

 ただ、大作ははやくから復活して二人を値踏みしていたが

 

「・・・・・・・やっぱりね・・・・・」

 

 涼子は少しうれしそうに呟いた。 

 

 

 これが、シンジとレイの転校初日の始まり

 

 

(つづく)

 

 

 

 

 

 後書き

 多分始めての方が多いと思いますかとりあえず

 はじめまして

 櫻といいます。

 今回、こりもせずに連載を新たに増やすという暴挙に出た、三流二次創作作家(オリジナルでは別名だし)でございます。

 なんとなく気に入っていた話、富士見ファンタジア文庫、雑賀礼史氏の召喚教師リアルバウトハイスクールの舞台を利用し

 エヴァキャラを動かしてみようという試みで始めました。

 と、なりますと一応挌闘ものでしょうか?

 実は書いてる本人も良くわかっていなかたりします。

 つたないものですが、ほんの少しだけ(1ビリオンぐらい?)期待していてください。

 あ、あとレイの髪型は本編のあのカンジに、前髪両サイドを伸ばしていて、肩まで伸ばしリボンを軽く結んでいます。

 リボンは十四色あり、曜日と時折気分で変えています。

 横、後ろはきれいに首あたりで切りそろえています。 

 シンジ君のほうは、まぁTVよりもう少しきっちり切りそろえて、前髪は眉にかかっているもののかなり間をすかれて

 額の肌がしっかりみえるぐらいです。

 

 ウイルスなどの悪戯、営利目的の宣伝、批難中傷以外なら、

 要請、感想、批判・・・・・どんどんください。

 あ、それから、赤ザルは彼女ではあありませんよ。リアルバウトのほうのキャラクターです。

 (大体、彼女なら“赤毛ザルです”)

 それではまた、次回で

 




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