Neon Genesis Evangelion SS.
ナナシカムイ 〜 last episode 〜 |
write by 雪乃丞 |
カムイが使徒に敗北し、シンジが重傷を負った。
その知らせをゲンドウが聞いたとき、ネルフは最悪の幕開けとなった戦いを強要されることになっていた。
「ダメです! 保安部隊では足止めすら出来ていません!」
「住人の避難はまだ!?」
「避難率、おおよそ15%! 完全な収容まで最低でも30分は必要になります!」
「遅すぎる・・・それでは、本部まで到達してしまうぞ」
「副指令。 武装部隊、配置につきました。 戦闘開始の許可を要請しています」
「ダメよ。 まだ市民の避難が完了していないわ」
「だが、葛城君。 保安部隊だけではどうにもならんぞ?」
「本格的な戦闘になれば、市民が巻き込まれて、ますます避難に時間がかかるだけです。 そうなれば、大規模な作戦は展開できません」
そんなところに、席を外していたゲンドウが戻ってきた。
「避難の50%程度が完了した区域から戦闘を開始しろ」
「司令!?」
「今は、ヤツを止めることが先決だ。 それよりも国連軍に協力は要請したか?」
「はい。 ですが、なにぶん緊急の出動ということもあって、第一陣が到着するまでには最低でも30分は必要になるとのことです」
「無理を言って人員をまわしてもらうんだ。 それくらいの時間は手持ちの兵力だけでなんとかするしかないだろうな」
そんな緊迫感の溢れる発令所に唯一の朗報となったのは、一時は死ぬかと思われたシンジが何とか命をとりとめることが出来そうだという知らせだった。
そんな幸運の影にカムイの必死の応急処置の成果があったことは言うまでもないだろう。 だが、命をとりとめることが出来そうだとはいえ、未だ意識は回復しておらず、今現在も体中に負った裂傷の治療中であるということが、この戦いに初号機が使えないということを意味していた。
「士気に関わる問題だな」
「生きているだけでもマシだとでも考えておけ」
カムイがいなければ確実に死んでいた。
そう言外に口にするゲンドウは、苦々しげに言葉を続けていた。
「問題は、名無君のほうだ」
「彼女がどうかしたのかね?」
「戦意を完全に喪失している。 ・・・目の前でシンジが死にそうになったのがよほど堪えたようだな」
「ふむ・・・となると、あやつがシンジ君を即死させなかったのは故意というわけか」
「そこまで知恵がまわっているかはわからんが、少なくともシンジをあの状態にすればカムイがそばから離れられなくなると踏んでいたのだろうな」
そうでなくては、一人で軍隊をも楽に相手するような怪物の一撃をうけて生きていられるはずがない。
そう呟くと、ひどく忌々しそうに、ゲンドウはスクリーン上で激しい攻撃に晒されながら平然と歩き続けている人の姿をした怪物を睨みつけていた。
「・・・なぜ、カムイは平気だったのだろうな」
「生かされたのだろう」
「生かされた?」
「まだ学ぶべき所がある。 そう言っていたそうだ」
「・・・つまり、あの怪物は、まだカムイほどの力は使えないということか」
「それでもATフィールドがある限りは、どうにもできんのだがな」
「レイ君は? 彼女なら、エヴァを動かすことが出来るのではないか?」
「零号機では、あの怪物のATフィールドは破れまい」
「・・・手詰まりか」
「今はとにかく時間を稼ぐしかない。 時間さえあれば、どうとでもなる」
「どうするつもりだね?」
「シンジを使う」
「・・・使えるのかね? 言いたくはないが、おそらく勝ち目はないぞ?」
「それでも、可能性がある限りやらせてみるしかないだろう」
どんな方法を使ってでも勝ってみせる。
これまでの犠牲を無駄にしないためにも。
これ以上の犠牲を出さないためにも。
「我々に負けは許されない」
それが、これまでに犠牲になっていった者達への誓いなのだから。
僕はずっと夢をみていたような気がする。
1人目のカムイさん。
サキエルって名前のつけられた天使と一緒にいなくなった人。
あの人は、僕にカムイという人間のあり方のようなものを見せてくれたと思う。
2人目のカムイさん。
僕は、あの頃、1人目のカムイさんを救えなかったことで、随分と落ち込んでいたような気がする。
そんな僕を叱るでもなく励ますでもなく、ただ側にいた。
それだけしかしなかった。 でも・・・それが嬉しかったんだと思う。
その当時の僕じゃあ、何を言われても嫌みにしか聞こえなかったと思うから。
そんな僕の愚痴を、あの人はずっと聞いていてくれたんだ。
そういえば、出撃前に言われたような気がする。
苦しめることになるのは分かっているけど、それでも覚えていて欲しい。
私たちがどんな風に戦って、どんな風にいなくなったのか。
それを覚えていて欲しい。
・・・それだけを頼まれたような気がする。
そして、三人目。
彼女とは、最初の頃、ほとんど話しをしていなかったと思う。
たぶん、僕はどうにもならない苛立ちに、ものすごい自己嫌悪に襲われていたと思うんだ。
なによりも、彼女達のことを覚えていない周囲の人たちに、とにかく腹を立てていたんだと思う。
そんな僕に、あの人は仕方ないとだけ言っていた。
それが私たちのやっていることだし、やらなくちゃいけないことなんだからって。
そんな彼女にも腹がたって、随分と言い合いをしたよ。
多分、カムイって人に対して、あそこまで真正面から向かい合って話をしたのは初めてだったんじゃないかって気がする。
それまでは、ずっとどこか遠い人って感じていたと思うから。
そんなあの人は・・・僕を守るために光の中に消えていった。
僕が完全に負けた初めての戦いだった。
・・・必死だったね。
みんな、必死になってあの凄い砲撃をできる使徒に勝とうとしたよ。
だけど、結局は、新しく派遣されたカムイさんに頼るしかなくて・・・。
勝てたよ?
なんとかだけど、勝ったんだ。
だけど、やっぱりカムイさんは消えていったんだ。
そんなカムイさん達の姿を神様とかいうヤツも哀れに思えてきたのかな?
きっと、その頃からだったと思う。
ネルフの人たちを中心にして・・・少しずつ、本当に少しずつだけど、カムイさん達のことを完全に忘れないで、おぼろげに覚えている人が増え始めたんだ。
初めてあったはずなのに、初めてじゃない気がする。
そう、何人かが言ってたよ。
記憶でなくて、魂が覚えていたのかもしれないなんて馬鹿なことを考えたこともあったけど・・・。
いまでも、それは案外、本当のことだったんじゃないかって気がしてる。
カムイさんたちの生き様って、本当に・・・本当に壮絶だと思うから。
あんなこと、なんで出来たんだろうって未だに思うことがあるんだ。
それを何よりも強く感じたのは、とてつもなく強い使徒が現れたときのことだった。
僕は、あの怪物の攻撃から逃げるだけで精一杯だった。
どれだけ頑張っても、あの怪物のATフィールドを中和することが出来なかったんだ。
そんな僕が必死になって稼いだ時間の果てに、カムイさんが挑んでいった。
封じようとして、その姿が揺らいで・・・。
・・・あのときの絶望感は、未だに忘れられない。
カムイさんは消えて、使徒は残った。
どうにもならない現実だけがつきつけられたんだ。
カムイさんだって、必ず勝てる訳じゃないんだって。
こうして、負けてしまうことだってあるんだって。
それを、見せつけられたんだ。
これまでの使徒は、ほとんど死にかけるほどに弱わらせてから任せていた。
失敗するはずがない状態を用意できていたから、そんなことまで考えたことがなかったんだ。
とにかく、敵は強かった。
それこそ、必死になって戦ってきた。
僕も無敵じゃなかった。 カムイさんも負けることがあった。
そんな戦いの中で、僕はどれだけのことが出来たんだろう?
今までの戦いの中で、僕は、彼女達にどれだけのものを返すことが出来たんだろう?
僕に、本当に出来ることはなかったのかな?
・・・わからない。
僕は、どうすればよかったの?
死なせたくない。
犠牲になってほしくない。
それは、なぜ?
僕は本当に、そんなことを望んでいたのかな?
結局は、最後には、彼女が犠牲になるしかない。
そのことを父さんから聞いていた。
そうしなきゃいけない理由も聞いていた。
納得はしてないけど、理解はしてたような気がする。
・・・本当は、僕は、彼女達が死んだことを納得してしまっていないか?
・・・彼女達が、ああやって死ぬことを肯定しているんじゃないか?
・・・・・・僕は、本当に・・・・・・。
『ごめんなさい』
・・・声が、聞こえた。
すごく悲しそうな声だった。
どこかで聞いたことがある声だった。
何処で聞いたんだろう?
『ほんとうに・・・ごめんなさい』
謝らないで。
僕は、たぶん、喜んでいる。
君が生きている。
それだけで十分なんだよ。
だから、泣かないで。
『守りたいって・・・死んで欲しくないって思ったのに』
ああ・・・そうか、そうだったんだ。
この声は、僕の声。
昔、彼女達が居なくなるたびに、そういって泣いてたような気がする。
たった一年くらいの間のことなのに、なんで、こんなに昔に感じるんだろう?
不思議だね。
『ほんとに・・・本当に、ごめんなさい』
僕は、たぶん、辛かったんだ。
彼女達にだけ押しつけているような気がしたんだと思う。
全てを・・・この訳の分からない戦いの後始末の全部を。
僕は、少しでも力になりたかった。
一生懸命、やってきたような気がする。
でも・・・今なら分かるよ。
僕には、まだ出来ることがあったんだって。
「泣かないで、カムイ。 僕は生きているよ」
不思議だった。
目が覚めたとき、そこにはカムイが居たんだ。
僕は・・・痛みを感じていなかった。
なにか遠いところにいるような気がする。
どこかなんて言われても困るけど・・・。
そう、感じたんだ。
「行こう。 カムイ。 僕も一緒に行くよ」
何処に行けばいいのか。
それを僕はなぜか分かっていた。
幾百、幾千の銃弾も、その少年を止めることは出来なかった。
そして、少年は無造作に力を振るい、あらゆる敵をなぎ倒した。
かつて襲来した強大な力を振るった使徒の作り出した巨大なクレータを前に、躊躇いもなく飛び降りる。
幾つもの真新しい隔壁が道を阻むが、それも触れた瞬間に破壊されてゆく。
目指すは地下数千メートル。
そこに目的とする存在がいる。
それを本能で理解しながら、少年は目的地を目指していた。
「おや? また会ったね」
そんな少年が戦いの開幕を宣言してから初めて足を止めた。
そこには、ネルフ本部を背後に、一人の人間が立ち塞がっていた。
「たしか、ナナシカムイだったかな。 ・・・そう、たしかに、そんな名前だった」
『・・・』
「そこをどいて欲しいね。 カムイ。 僕は、君を殺したくはないんだ」
『・・・』
そんな少年の言葉を聞いてもないというのか。
カムイはただ、その場に立ち尽くし、その手に掴んだ独特の形状をした杖を空へと向けていた。
「どく気はない、そういう意味かな?」
ゆらりと髪が揺れる。
その身をとりまく心の壁、ATフィールドを展開したのだ。
それは、戦いの始まりを告げる狼煙だった。
「邪魔をするというのなら、容赦はしないよ」
左の腕を振り上げ、振り下ろす。
その腕から放たれた真紅の力の刃は、無造作に大地を引き裂き、大気すらも切り裂いた。
直線状にあった湖の上に、巨大な切れ込みを見せながら。
それはまるで、モーセの生み出した奇跡のように湖の水が割れていく。
だが、その巨大な力は、カムイへは届いていなかった。
その姿が揺らぎ、受け流したのだ。
カヲルからみれば、難なく受け流されたと感じただろう。
「へぇ、驚いたね。 君は、大気をも裂く力を無効化できるのかい?」
これまで無敵の力を誇った攻撃をかわされたというのに、その表情には焦りはない。
ただ、この戦いを楽しんでいるだけだった。
「良い機会だ。 君の本当の力を見せてくれないか? 僕は、君のもつ力に興味があるんだよ」
さあ、やってみるといい。
そういわんばかりに、カヲルは両手を広げて立ち尽くしていた。
そんなカヲルに、カムイはようやく顔を向けた。
その頬には、とめどもなく涙が流れていた。
『私はカムイ。 神を封じるための巫女として生まれ、そのために生きてきました』
「そうなのかい? だから、こんな面白い力を使えるかな?」
『私達にとって、神を封じるという事は、使命であり役目であり、存在意義の全てでした』
「そんなものが、君にとってのレゾンデートルだったというのかい? ・・・悲しいね、君は。 同情に値するよ」
『でも、私は・・・それが怖かったんです』
「リリンは死を恐れるからね」
『怖くて怖くてどうしようもなくて・・・この街にくる前まで、何度も泣いていました』
「・・・」
噛みあっているようで噛みあっていない会話。
そのやりとりにどこか不思議なものを感じただろうか?
カヲルは興味深げに、カムイを見つめていた。
その頬に浮かぶのは微妙。
微笑に返されるのは涙だった。
『・・・大事な人と出会ったんです。
その人は、私に勇気をくれました。
死なないで欲しいのに、君を犠牲にするしかないんだって泣いていたんです。
・・・そんな人、初めてだった。
これまでは、みんな、私に使命をまっとうすることしか期待してなかったのに。
でも、その人は、私のために泣いてくれた。 苦しんでくれた。
私の前に、あの人と一緒に戦っていたカムイも、きっと・・・。
あの人のために死んだんだって。 あの人のやさしさに触れたから死ねたんだろうって。
そう感じることが出来たんです。 それなのに・・・守りたいって思ったのに』
涙と共に、ゆっくりと杖は振りかぶられる。
『私は・・・アナタが、憎い。 私の全部を使って・・・封じてみせます』
「やってみるといい。 失敗すれば、君のもつ音はすべて僕のものだ」
君達の、その力を使うためには、全ての音を組み合わせる必要があるからね。
その世界を操る力。 すべてを貰い受けよう。
声にならない声で、カヲルは無数の音を紡ぎだす。
操れる全ての音でもって、カムイの音の調和を乱してゆく。
『・・・くっ』
「どうしたんだい? 出だしはよかったのに、今では、随分とお粗末な三流以下の組曲に成り下がってしまっているよ? そんなことで、本当に僕を封じることができると思っているのかい?」
それだけで十分だった。
恐ろしく複雑で、それだけに美しい組み合わせもった無数の音の旋律。
それは、ほんの少しでもバランスを崩されたとき、凄まじい不協和音をもって崩壊した。
それをこれまでの体験上、知ってるからこその自信だったのだろう。
「本気を出しなよ。 その程度の力では、僕には通じないよ?」
焦りを浮かべて、乱された音を編みなおそうする。
そこに容赦なく別の音が組み合わされ、力を失ってゆく。
それはまるで、積み木を必死に積み上げようとしている者と、それを横から面白半分に崩そうとしている者の構図に似ていた。
「遅すぎる。 その程度の腕で僕に勝てるとでも? ・・・甘いね。 まるでお話にならないよ」
『・・・そんな・・・』
「ほら、もうボロボロじゃないか。 そんな力じゃあ、僕の髪の毛一本だって消せやしないだろうね」
『・・・っ、この・・・』
「おやおや、頑張るねぇ。 その調子だ、もっと早く、もっと手際よく。 ・・・そうそう、その調子だよ」
その様子はまるで猫が鼠を面白半分にいたぶるように。
「だけど、もう手遅れかもしれないね」
だが、鼠を侮る猫の愚を、その猫は犯さなかった。
「君から学んだ、全ての音だ。 さっきの組曲もだいたいの譜面は掴めた事だし、お礼に、最初の一曲は君にあげるとしよう。 ・・・もう、君から学ぶことはなさそうだしね」
突如として自分の組み上げようとしていた音の流れを邪魔していた無数の音が消えたかと思うと、次の瞬間には、カヲルの周囲で音が組み上げられていく。
それは、凄まじい速度で自分のやろうとしていることを模倣してみせていた。
未完成な音の組み合わせを嘲笑うかのようにして、見る間に完成形を形作っていく。
早い・・・。
このままだと競り負ける。
焦りの感情の命じるままに、振りかぶられた杖が、いま、まさに振り下ろされようとしていた。
未完成の音だけで封じることが出来るような甘い相手ではない。
それが自分に出来るとは思わなかったが、それでも今のままだと何もしないままに負けると分かってしまっていたのだろう。
未完成でもやるしかなかったのだ。
だが、その瞬間のことだった。
だめだよ。 それじゃ、ダメなんだ。
声が聞こえた。
カムイ。 僕は君に、そんなことを望んではいないよ。
『・・・え?』
落ち着いて。
心を静かに、焦らないで。
君になら出来るよ。 焦る必要なんてないんだ。
『でも、このままじゃ・・・』
大丈夫。
その間、君の事は僕が守ってみせる。
『・・・はい』
頬を伝う涙。
その涙は、それまでの悲しみの涙ではなかった。
「君の負けだ」
直後に襲い掛かる、暴力的なまでに巨大な意思。
世界を歪め、あらゆる存在を飲み込み、忘却の彼方へ葬り去る力。
その力が、ただ目を閉じて涙を流し微笑んでいたカムイへと殺到する。
「・・・」
果たして、どのような奇跡が起きてるというのだろう?
そこには、ゆっくりと両手を広げ、舞うカムイの姿だけが残されていた。
放たれた無数の音が、見る間に別の音の組曲に巻き込まれ、編みこまれ、全く新しい巨大な組曲となって組み上げられていく。
その早業は、カヲルですらも認識できないほどの速度に達していた。
「なにが・・・起きているというんだい?」
ゆらぐ空間の向こうで踊るカムイ。
その前には、半透明の人間が立ちふさがっていた。
死なせはしない。
絶対に守り抜いてみせる。
その意思の力のままに。
「これが・・・リリンの本当の力だというのか?」
がんばって、カムイ。
まけないで。
アナタを、死なせない。
みんなが君を守ってくれる。
だから、頑張って。
一人、また一人と増えてゆく。
その無数の影は、揺らぐ世界の境界線の向こう側で、ただ一人の少女を守ろうと壁になっていた。
少女は、その壁の中で舞い続ける。
ただ、自分の力を信じて。
ただ、全ての音を完全な形で組み合わそうとして。
そこにあるのは、憎みではなかった。
そこにあったのは、どのような負の感情でもなかった。
「・・・どうやら、僕は、とんでもないリリンに喧嘩をうってしまったようだ」
目の前で紡がれた無数の組曲を前に、少年は、まるで全てを悟ったかのように苦笑を浮かべていた。
すでに身を守る壁も光を放つことはない。
あまりに強い絆の存在に触れ、自らの敗北を感じ取ったとき、そこにはもう抗う意思がなくなってしまったのだろう。
『108の始まりの音、その全てを使ってアナタを封じます。
永遠の眠りを共に受け入れてください。 私の名前は神威。
アナタと一緒に・・・忘却の彼方へと一緒にゆくモノです』
その死の宣告そのものな言葉を口にするカムイの顔には、微笑みだけが浮かんでいた。
そして、ひどく満足そうに、カヲルも笑みを浮かべて手を差し出していた。
「・・・僕の負けだよ」
そんなカヲルの手を取り、カムイは手にしたままだった杖を地面へと突き立てていた。
『封殺』
そして、全ては音に飲み込まれ、世界から記憶は消滅した。
to be continue next part.
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