2021年9月10日(Fri) 快晴/微風 僕はアスカが昨日用意してくれた、朝食を並べていた。 ソファの上のアタックザックには、アスカが作ってくれた折り詰めの御弁当、 綾波のくれたMDと数枚のディスク、アスカのくれたビデオカメラ、 加持さん達がくれたシャトルの搭乗券が入っていた。 その他の荷物は一切無い。 生活用具一式は既に加持さんが手配してくれていて、 フランスのホームステイ先に届けてあるとの事だ。 アスカが風呂場から出てきた。 何時もの様に赤いバスタオルを体に巻いて、冷蔵庫を開けて、 牛乳パックを取出し、腰に右手を当て直接飲み始めた。 アスカは僕の方を振り向いて アスカ:どうしたの? 僕 :もう、しばらく、アスカのその格好も見れないなと思って。 アスカは一瞬考えて アスカ:・・しっかり、目に焼付けなさいよ。 ねえ、いつもみたいに言わないの? 昔は嫌だと思っていたけど・・・ 僕 :・・アスカ、牛乳を直接飲んじゃ駄目だよ。 アスカが涙目になった。 アスカ:ふふっ。 だって、シンジを困らせたいもの。 僕 :もう・・アスカ、バスタオルでウロウロしないでよ。 アスカの声が震えてきた。 アスカ:どうして? 何時もシンジに見ていて欲しいもの。 アスカは僕にしがみついて号泣した。 僕はアスカをしっかりと抱しめた。 アスカの気持が痛い程、僕に伝わった。 僕もアスカを抱しめながら泣いた。 嬉しい。 壊れてしまいそうな程、華奢な体。 もうアスカとの、日々のやり取りは暫くの間、お預けだ。 *************************************** 午前8時、迎えが来た。 僕とアスカは、加持さんが用意した1BOXに乗った。 シャトルの発着場まで、リニア列車で行けば、1時間だが、 車だと高速道路でも4時間かかかる。 でも、少しでも皆と一緒に居たい。 1BOXには、運転席に加持さんとミサトさん。 中央列に僕とアスカ。 後部席に洞木さん、トウジ、綾波が居た。 車が発進した。 トウジの開口一番 トウジ:シンジ、どないしたんや? 目が赤いで。 おまけに目の周りに隈が出来とるがな。 僕 :泣き過ぎたんだ。 トウジ:ほんまか? トウジはアスカを見て トウジ:なんや、惣流も目が赤いで、 そやけど・・惣流の方は艶艶しとるで・・・ お前ら何発やったんや。 僕 :と、トウジ!何てこと言うんだよ。 アスカ:12回。 僕 :ぶっ!あ、アスカ!何てこと言うんだよ。 ミサト:へえー!シンちゃん頑張るじゃない。 お姉さんも聞きたい。 アスカ詳しく話して! 僕 :み、み、ミサトさん!!アスカ!言うな! アスカは僕にベーっと舌を出して それからミサトさん、洞木さん、綾波、アスカで猥談が始った。 僕はトウジを睨んだ。 トウジは涼しい顔をしていた。 3時間して、暫く僕達の会話も途切れていた。 僕は窓の景色を眺めていたが、 アスカは僕の膝に顔を乗せた。 僕はアスカの頬を優しく撫でた。 アスカの肌は、木目が細かく、スベスベして触り心地がいいのだ。 それを見たミサトさん ミサト:アスカ、いつからそんなに甘えん坊さんになったの? アスカは僕の膝に顔を乗せたまま、僕を見つめていた。 ミサト:アスカって、とても可愛くなったわね。 アスカ:何よ、いかにも私が嫌な女みたいじゃないのよ。 トウジ:違うんかい? アスカ:むう!アタシはいつも素直で、良い子なの! トウジ:何言うてんねん!そりゃあ、シンジの前だけやろ。 相変わらず、俺には暴力を振るうで。 洞木 :それは、あんたがアスカに失礼な事を言うからよ。 トウジ:・・ほんまの事を言ったまでなのに・・ アスカは堰(せき)を切って泣き始めてしまった。 トウジは一瞬、自分のせいで泣いたのかと焦った。 アスカは慟哭(どうこく)した。 僕はアスカを包み込むように抱しめた。 皆、僕とアスカを優しく見守った。 30程、アスカは泣き続けた。 僕はアスカの柔らかくて小さな手を、僕の手で包み込んでいた。 感慨無量、これ以外にどう表現すればいいのか。 ミサト:シンちゃん、男冥利に尽きるわね。 アンタ達の事、自分の事の様に誇りに思うわよ。 シンちゃん、アスカのどんな所に惚れたの? 僕 :アスカは僕の膚に合うんです。 トウジ:肌やて、シンジもやらしいな。 洞木さんはトウジをボコっと殴って 洞木 :気質、気性の事よ! トウジ:知ってまんがな。 せやけど、シンジも殊勝なやっちゃな。 僕 :うん、元来、僕は気が弱いから、何事にも直に諦めてしまうんだ。 でも、アスカはいつも僕に、発破を掛けてくれる。 アスカは、いつも前向きで、僕に勇気を与えてくれる。 アスカは厳しいけど、でもとても優しいんだ。 僕にとって、アスカは元気の源。 僕がこの世に存在する理由。 僕はEVAに乗らなくなって、自分を失いかけてた。 無気力で何もやる気が起らなくて、 でも、アスカと再び生活を始めて、僕自身、アスカの影響を受けて、 物の考え方がドンドン変化している。 それは、良い方へ向っている。 お陰で僕は、厭世観(えんせいかん)から楽天観へと変った。 僕にとって、アスカはなくてはならない存在なんだ。 ミサト:ヒュー!シンちゃんも言うようになったわね。 トウジ:冷房入れてくれ〜。 何や熱うて溶けるわ。 ミサト:アスカ、シンちゃんのどんな所に惚れたの? アスカ:・・すべて。 ミサト:それだけ? アスカ:だって、全部好きだもの。 トウジ:どわー!ええかげんにさらせー!よーもまーそんだけ惚気ばっか、 こっちの身にもなってみ! 洞木 :悔しかったら、やってみなさいよ。 トウジ:わいわ・・硬派や! 僕 :硬派な人は、アスカの体見て、涎(よだれ)出したりしないよ。 洞木さんはトウジの頬を捻った。 トウジ:シンジ!てめえ覚えてろよ。 僕 :もうすぐいなくなるもんね。 車の中が和やかな雰囲気に包まれた。 /* 出発当日 das auto */次回、出発