前回までのあらすじ
帝国宰相六分儀ゲンドウの王位簒奪・皇太子暗殺未遂
そしてその敗北と死によって帝国の支配階級には大きな変化が起きた。
ゲンドウに近かった独立強襲兵シンジは一変して反逆者となり帝国から追われる立場となる。
謎の少女・レイの用意した要塞ゾイド・ホエールキングによって闘争を続けるシンジ達
幾度と無く追いすがるアスカ達を含む共和国、帝国連合軍を空戦ゾイド・ストームソーダ―で追い払い
罠に懸かりつつもなんとか脱出を果たした彼等は、目的地マウントブルーに到着
地下に建造された基地に入り、人知れぬその山の隠れコロニーに身を寄せた。
そして、シンジも、レイも
次第に子供らしい精神的な余裕を取り戻し出したのだった。
ZOIDS STORY IF
第11話
戦闘とビジネス
「相変わらず、懲りないといおうか……………」
「うるさいわよ!とっとと勝負なさい、勝負」
「アスカさん…………」
マウントブルーに到着してより一ヶ月半
シンジが再び復活したジェノザウラーに乗って戦いに出始めてからはや一ヶ月
以来必ずといっていいほど現れるアスカのブレイドライが―
色もアスカらしく紅く変化し、それなりにカスタムアップされているのだろう
毎度楽しませてくれる。
しかし
「いい加減うんざりする」
他にもトウジのコマンドウルフカスタム、共和国大尉ミサトのシールドライガーDCS-J
そして少尉たるマコトが共に率いるガンスナイパーの部隊なども一緒だ。
広報には帝国軍中佐の赤城リツコが率いる第一装甲師団が控えている。
距離があるため、届くのはこちらの荷電粒子砲と、射的態勢をとったガンスナイパーのピンポイントショットのみ
余り連射の利かない、超長距離用精密射撃を部隊を四つに分けることで間断なく売ってくる。
「工夫が足りないね」
その早く精密だが弾幕にはなり得ない攻撃を縫うようにかわしつつ、確実に間合いを詰め
ジェノザウラー背中から取り外し体の左右に出たアームに新たに取り付けた二連想大型パルスレーザー砲二門で
確実に相手の戦闘力を奪って行く
「相変わらず可愛げのない攻撃!」
「そう簡単にはいかせんでぇ!!」
通信を通して叫ぶミサトとトウジ
同時にシールドライガーDS-Jとコマンドウルフカスタムの共に黒い機体がキャノン砲や大型レールガンを連射しつ突っ込んでくる。
以前のジェノザウラーなら交わしがたい、なかなか息の合った、他の支援部隊とも連動した見事な攻撃
しかし
「前と一緒にされても困るのだが…………いい加減気付いて欲しいな」
姿勢制御用の脚部、ボディー側面、前面、後方
そして長距離ジャンプと滞空を可能にした背中のスラスターによって機動力が大幅に増強したジェノザウラーは以前とは違う。
いとも簡単に交わしワイヤーアームを飛ばしその鋭い爪でコマンドウルフを掴んで投げ飛ばし
警戒してシールドを展開しつつ突っ込んでくるミサトのシールドライガーに大量の地対地ミサイルを御見舞いして脚を止める。
「ふん!ちょっとは早くなったみたいね。でもアタシのブレイドライガーにはついて来れるかしら?」
ここで、このごろの戦闘で見せた血の気の多さから必ず後方に下がらされているアスカの
その真紅のブレイドライガ―が踊り出る。
すかさずパルスレーザー等を打ちこむが、運動性能において遥かに優れたブレイドライガ―は交わしてしまい
キャノン砲をしばらく牽制するように打った後シールドを展開し、ブレードを開いて突っ込んでくる。
「バカの一つ覚え」
「何ですって!?」
それをシンジはスラスターを急噴射させ一挙にジャンプし、空中で滑空する。
すかさず砲撃を仕掛けてくる後方支援の帝国第一装甲師団の攻撃をかわしつつ
さらに周囲にか展開し間断なく攻撃を仕掛けてくる空戦ゾイド、プテラスとレイノス、そしてレドラーの攻撃を器用に交わし
あるいは硬い装甲で受け止める。
そして、チャージしておいた荷電粒子砲を地上に向けて発射
「ゴドス部隊、シールド展開」
さすがに慣れてきたのか、後方支援部隊はシールド専用にゴドスの小隊を用意しており
前面に展開していた共和国ゾイドも慌ててシールドを展開して攻撃に耐える。
「なるほど、大分準備してきたんだ。でもそれだけではね」
放出する荷電粒子砲の出力をさらに挙げ、中型ゾイドはそのまま吹き飛ばし大型ゾイド達を釘付けにする。
「さて、行け!」
シンジは伏せておいた無人制御のヘルキャット
スリーパーゾイドのシステムを応用したそれに四方から連合軍を襲いかからせ
地上からの攻撃が収まったところで、姿勢を変えつつ無造作に空戦ゾイドの群れをなぎ払う
地上の部隊を見れば、未だ健在のゾイドが大半だが明らかにエネルギー不足を起しかけている
耐えているのはアスカの真紅のブレードライガーぐらいだろう
「さすが、エヴァの力で進化したゾイドだ。そうじゃないとつまらない」
そしてよいよ、止めを刺さんと地上に降り
「さぁ、終わりにしよう」
「そうはさせない」
今度こそとスロットをいれようとした
そのとき
「シンジクン、そろそろ機体もシャドーも限界よ。一度戻りなさい」
「ちっ!もう限界なのか」
今やジェノザウラーの全てを観察し、整備を取り仕切り、開発している学者・マナから暗号化通信が入り、己の機体とエヴァの限界
「何言ってるの?なによりアナタの身体に無理が懸かりすぎてるわ」
「バカな!ボクはまだっ」
「アナタはちょっと痛みと苦しみに鈍感、というより耐える力があるぎね」
通信機の向うでマナが呆れる。
「そんな高起動でゾイドを動かしてたら十三程度の身体なんてすぐに持たなくなるわよ」
「アスカはどうなんだ!アイツもずっと戦っている!!」
「あの子は味方がいるし動きっぱなしでは無いでしょう?あなたみたいに一人で戦っているから不可が多いのよ、せめて無人制御の……」
「わかったわかった!撤退する」
(これ以上説教を聴かされてたまるか)
抗議しようとしたら何度きもの場所もわきまえない説教が始まりそうな気配なので
慌てて返事をし、通信を切るシンジ
「やれやれ、というわけでまた会おう。アスカ、そしてその愉快な仲間達」
「な、なんですってぇ〜〜〜!!逃げる気!?」
「まともに戦えるゾイドが大幅に減った状態で威張るな」
そう、すでに上空からの荷電粒子砲のシャワーをシールドで受けたことでエネルギー枯渇し始め
さらに無人制御のヘルキャットの、そのすぐれた穏行機能・光学迷彩を利用した攻撃で少なからぬ損害を受けていたのだ。
「まったく、どうにも最後の止めまでいかないな」
グぉ!!
(身体を鍛えるしかないですね)
再びスラスターをふかせて高く飛びあがり、撤退しつつ
ぼやくシンジにシャドーは静かに突っ込んだ。