志ん朝箱から

このページの建設中に、古今亭志ん朝師匠の急逝という悲しいニュースが流れました。                       

まさに 巨星 墜つ! という感がぬぐえません。 合掌。

志ん朝師匠の思い出についてのメールをお待ちしてます。 

(メールをこちらへ→ wamjapan@cat.email.ne.jp


INDEX     更新 2001.11.15

志ん朝師若き日のLPから

 私のCD・LP箱から

 志ん朝師のCDカタログ

志ん朝師急逝を伝える新聞から

『志ん朝の部屋』ご案内


◎志ん朝師若き日のLPから(火炎太鼓)

マクラの速記録から

マクラ (その1)

えー、近頃は、又若い人の間でもって骨董品という様な物が大変にこの盛んになりましてね。

えー古い蓄音機ですとかね、なんだかわけのわかんない時計みたいな物を大変に  この、えー高いお金を出して買ってきて、

自分の部屋に飾る、なんてえなことが流行っておりますが、

えーそれこそ、昔は道具屋さんというものが、方々にありまして、この道具屋さんにもピンからキリまであるようですな、

えー上の方へ参りますと、書画・骨董品・古美術品なんていうような看板をあげて、門口も大層広い、表なんざ掃き清めてあって、打ち水なんてしてありましてね、中においてある品物も大変ですな。誰それの書いた書であるとか、あるいは絵画であるとかね、あっちの方へ刀剣類が置いてあるかと思うてえと、こっちの方に誰それのこしらえた家財道具、名のある人のね、えー名人なんて言われたような人のなんか、えーこしらえた箪笥ですとか、そういうような物ばかり並べてありますな、

ですから、我々がのぞいて、まあ面白いというのは、だいぶ下のほうへ行ったほうが面白いですな、何だか訳のわからないものを売っている安手のうちの方が道具屋というのは観て楽しいですね、えー土瓶の漏る奴が置いてあったり、シルクハットのまわりの取れたのが置いてあったあり、何だか訳のわからないものを並べている、それで結構商売になるんですな、そういう所へ来るお客様は変わったものを探しに来る。

 「ねえ、おやじさん、何か変わったものはねえかい」

「そうですね、あなた、来る度にね、みんな変わった物持ってっちゃいますんでね、えー今これといって変わった物もないんですが、あーちょいとお待ちなさい、えー手紙がありますがどうですな」

「手紙、おおいいね、手紙なんてえのはなかなか変わったのがあるんだよ、ね、ことによると価値が出るって奴だ、どんな手紙だい」

「ええ、えー小野の小町が清水次郎長の所へ出した手紙なんてえな、どうです」

「ああ、いいなあ、そら変わってな、えー小野の小町が清水次郎長……オイチョイト待てよ、オイ、エー、小野の小町と清水次郎長とじゃまるっきり時代が違うじゃねえか、そんなものある訳ねえじゃねえだろ」

「えーある訳ないものがあるから珍しいんで」

なんてんで、何だか馬鹿にされているようですけどね。


 マクラ (その2)

えーそうかと思うってえと

「ね、おやじさん、この間 あの俺 もらってったね、振子の取れちゃってる柱時計ね、あれ静かでいいと思って柱にかけといたんだけど、あれやっぱり振子がねえってえっと針が動かねえんだよ。なあ、いきいきあの柱時計見ちゃね、人の家に時間を聞きに行くんだよ。

面倒でしょうがねえんだから、ちょいと他のものに代えて貰いてえと思って今日持ってきたんだけどな」

「ああ、そうですか、じゃ ちょうど良かったですよ、今 振子だけ入りました」なんてんでね

品物ばらばらにして売ったりなんかしてのんきなもんですな」 


マクラ (その3)

「えーことによるってえと、こういうところに掘り出し物がありゃあしないかてえんで、店の中をくまなく探して歩いておりましてね、  奥の薄暗いところに何か、こう額がかかっていて、何かこう書が書いてある、ことによるってえと、小野の道風の書いた書かなんかだろうなんてんで、こいつを安く値切りましてね、家へ帰って来て明るいところで、よーく見たら、今川焼きと書いてあったりなんかするという」、まあ欲張るってえとそういうことになるんですな。

まあとにかく昔はこんな店が軒を並べて商売をしていたんだそうでね、

まあ、だいたいこういう所のおやじなんてえな大変にのんきなおやじで、……

  <本 編に入る>


(解説)

偉大な父、志ん生師の十八番 『火焔太鼓』を若き日の志ん朝師が演じた珍しいLP。

 『火焔太鼓』が『火太鼓』となっているのもご愛嬌。

何と言っても、『火焔太鼓』は志ん生という個性強い噺家の一代の傑作なだけに他の演者はてがけたがらない

噺。 志ん朝師は、最晩年 一昨年2月の朝日名人会で板にかけた(演じた)という。

いずれ、本LPおよび志ん生師口演と比較分析してみたい。

 マクラ1で、志ん生師が『小野の小町が鎮西八郎為朝の所へ出した手紙』としたところを、                    『小野の小町が清水次郎長の所へ出した手紙』と代えているのが興味深い。                                         

また、マクラ2の 柱時計のエピソードは志ん朝師独自の工夫と思うが、                                            本編が江戸時代を舞台とした話だけに違和感があるのは否めない。

これを演じた頃の志ん朝師は二十台と思うが、収録記録がまったく記載されていないので詳細不明。

どなたかこのLPについての情報をご存知の方は当方までご一報ください。

   <2001.10.30>

 
                                                                                                                                                    

◎ 私のCD・LP箱から

私の志ん朝 コレクション
CD 愛宕山・宿屋の富 ソニー 落語名人会  3
  居残り佐平次・雛鍔 ソニー 落語名人会  2
  文七元結 ソニー 落語名人会  4
  お直し ソニー 落語名人会  6
  柳田格之進・干物箱 ソニー 落語名人会  
  付き馬・三年目 ソニー 落語名人会 23
  二番煎じ、お直し ソニー 落語名人会 26
     
     
     
VIDEO 愛宕山 (NHK映像=イイノホール東京落語会の映像)
  愛宕山 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  井戸の茶碗 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  居残り佐平次 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  鰻の幇間 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  大山参り (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  五人廻し (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  酢豆腐 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  唐茄子屋政談 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  抜け雀 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  引越しの夢 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  文七元結 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  宿屋の富 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  夢金 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
  四段目 (TBS落語特選会=国立劇場の落語研究会の映像)
     
LP 火炎太鼓・錦の袈裟 ローオンレコード RAー6  速記付き(火炎はミスプリ!?)
  酢豆腐 テイチクレコード NTー504  速記付き、鈴本ライブ
  愛宕山 ソニー 22AG 497  志ん朝 2
  居残り佐平次 ソニー 22AG 639  志ん朝 3
  佃祭 ソニー 22AG 737  志ん朝 7
     
     
     

 

 

◎ 志ん朝師のCDカタログ

 (CD・ショップ TOM さんのHPから )

堀の内 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会28 古今亭志ん朝20 CD SRCL-3364
化物使い 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会28 古今亭志ん朝20 CD SRCL-3364
崇徳院 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会27 古今亭志ん朝19 CD SRCL-3363
御慶 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会27 古今亭志ん朝19 CD SRCL-3363
お茶汲み 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会26 古今亭志ん朝18 CD SRCL-3362
二番煎じ 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会26 古今亭志ん朝18 CD SRCL-3362
富久 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会25 古今亭志ん朝17 CD SRCL-3361
お化け長屋 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会24 古今亭志ん朝16 CD SRCL-3334
子別れ・下 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会24 古今亭志ん朝16 CD SRCL-3334
三年目 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会23 古今亭志ん朝15 CD SRCL-3333
付き馬 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会23 古今亭志ん朝15 CD SRCL-3333
干物箱 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会22 古今亭志ん朝14 CD SRCL-3332
柳田格之進 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会22 古今亭志ん朝14 CD SRCL-3332
大工調べ 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会21 古今亭志ん朝13 CD SRCL-3331
黄金餅 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会21 古今亭志ん朝13 CD SRCL-3331
蔵前駕篭 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会20 古今亭志ん朝12 CD SRCL-3289
代脈 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会20 古今亭志ん朝12 CD SRCL-3289
搗屋幸兵衛 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会19 古今亭志ん朝11 CD SRCL-3288
佃祭 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会19 古今亭志ん朝11 CD SRCL-3288
三軒長屋 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会18 古今亭志ん朝10 CD SRCL-3287
羽織の遊び 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会18 古今亭志ん朝10 CD SRCL-3287
今戸の狐 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会17 古今亭志ん朝9 CD SRCL-3286
井戸の茶碗 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会17 古今亭志ん朝9 CD SRCL-3286
真田小僧 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会16 古今亭志ん朝8 CD SRCL-3265
駒長 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会16 古今亭志ん朝8 CD SRCL-3265
大山詣り 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会15 古今亭志ん朝7 CD SRCL-3264
粗忽の使者 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会15 古今亭志ん朝7 CD SRCL-3264
芝浜 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会14 古今亭志ん朝6 CD SRCL-3263
百川 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会14 古今亭志ん朝6 CD SRCL-3263
お直し 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会13 古今亭志ん朝5 CD SRCL-3262
文七元結 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会4 古今亭志ん朝4 CD SRCL-2784
愛宕山 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会3 古今亭志ん朝3 CD SRCL-2783
宿屋の富 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会3 古今亭志ん朝3 CD SRCL-2783
居残り佐平次 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会2 古今亭志ん朝2 CD SRCL-2782
雛鍔 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会2 古今亭志ん朝2 CD SRCL-2782
船徳 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会1 古今亭志ん朝1 CD SRCL-2781
明烏 古今亭志ん朝 ソニーレコード 落語名人会1 古今亭志ん朝1 CD SRCL-2781

 


 

                   

◎志ん朝師急逝を伝える新聞から

10月2日 朝日新聞 夕刊 (収録中)

10月3日 朝日新聞 天声人語


■《天声人語》 10月03日

 この夏、東京の浅草で催された「住吉踊り」には、古今亭志ん朝さんは、点滴を受けながら病院から通った。

やつれてはいたが、精いっぱい高座をつとめた。さすがに楽屋では、ぐったりと横になっていたという。

それから1カ月余りで亡くなった。

 天衣無縫、天才ともいわれた五代目志ん生の次男である。勝手し放題の父親だから、幼いころは貧しかった。

8畳と3畳の2間しかない家で、お弟子さんたちが来ると家族は3畳間に追いやられた。

しかし「門前の小僧で話を覚えてしまいました」。

 この父親の重圧につきまとわれた。志ん朝さん自身

「おやじと桂文楽さん、この2人はわれわれとケタがちがいます。

……なにからなにまで、つまり月とスッポンなんだな。一生かかっても追っつけない」。

 40年ほど前の言葉だが、その思いは後々まで変わらなかったのではないか。

若いころの志ん朝さんのすなおさを評論家安藤鶴夫氏が「このすなおさは生まれながらのものじゃない。

反骨の志ん生の血を受けたすなおさだから大変面白い」(週刊文春)と評したが、正確な指摘だったといえよう。

 「草書体」といわれた父の志ん生より「楷書(かいしょ)体」といわれた文楽により近い芸風を築いていった。

といって、父親から逃げるのではなく、志ん生得意のはなしに終始挑戦してきたし、酒豪ぶりも親譲りだった。

 志ん生、文楽らの黄金時代から次世代へと身をもって芸を中継する立場にあった。

CDで彼の小気味よいテンポのはなしを聴きながら「ちょっと早すぎた」とその死を惜しむばかりだ。

 

 

 

◎『志ん朝の部屋』ご案内

志ん朝ファンの「うっかり八兵衛」さんのHP 『志ん朝の部屋』 もご参照ください。

(読売新聞・日刊スポーツ記事のほか生前の志ん朝師のエピソードが満載されています)

 中でも、志ん朝師匠が祝う襲名披露口上の速記集 3席は絶品。是非ご覧あれ


 

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