落語エッセイ


宗助(惣介)さん、WHO? 

厳冬の噺にも、いろいろあるが、私の好きなのは、『二番煎じ』である。
登場人物のなかでも、宗助さん(惣介さん)。
バイプレーヤーの中でも飛び切りの存在と思う。
安藤鶴夫は名著『落語国紳士録』で、何故とりあげなかったのであろう。
解せない話である。
さて、この宗助さんには、いくつかの謎がある。
(宗介、惣介、庄助等諸説あるがここでは、宗助ということで進める)

1)月番に雑用を言いつけられ、いやな顔もせず、それをこなしている。
2)大店の旦那衆は、「伊勢屋さん等」等、名前でなく屋号で呼ばれているのに
   なぜか皆から「宗助さん」と名前で呼ばれる「軽い」存在。
3)小店でも、たとえば小間物屋等の主人であれば、
  「小間物屋の宗助さん」、と呼ばれるはず。
  番頭なら、やはり OO屋の番頭さん、と呼ばれるのでは…。
4)月番から、役人に都合の悪いことがらについて、
 「それは、その宗助さんが…」と罪をなすりつけられる損な役回り。
5)しかし、それに対しては、
 「およしよ、俺の名前を呼ぶのは!」と対等の口で反論することから
 ただの使用人ではないことが、うかがえる。

昔、生前の馬生(先代 金原亭馬生師)がNHKTV出演の際、
「お店(たな)の主人だが、婿養子さんではないか」
と語っていたのを覚えている。
それを敷衍すると、
大店ではなく中くらいの店の養子、それも番頭上がり、
先代は隠居ながらも、かくしゃくとしていて、まだ肩身は狭い。
お店は呉服屋・材木屋等の当時の花形業種でなく
小店、たとえば小間物屋か絵草子屋等ではないかと
考えるのだが、如何なものであろう。


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