モーツァルト・エッセイ 


フライシュッテトラーの生年について    2003.12.28 (2004.1.14修正)  


フライシュッテトラー(Freystadtler, Franz Jacob)といえば、
従来ジュスマイヤ−のみ有名だったモーツァルトの レクイエムの補筆に、
アイブラーと共に関わっていたことで 近年、脚光を浴びている人物だが

その生年に諸説あるということで、先日
日本モーツァルト愛好会会員のK氏からお問い合わせがあった。

それによると、没年の1841年に異同がないのに対し
生年には、1768年と1761年の2説があるという。
それぞれの典拠を調べたところ、

1768年説には、
・アインシュタイン 「モーツァルト」巻末人名索引 p43    
・東京書籍版「モーツァルト事典」 巻末関連人名事典 p659 

一方の1761年説は
・海老澤 敏氏の諸著書、代表的なものは 
 白水社版 「モーツァルト書簡全集」Y 343頁
 小学館 「超越の響き」 662頁

と、なっている。さて正しくはどちら?

さっそく我が家のアルヒーフにて、その他の資料に当たったが、
レクイエム研究書として定評のある C・WOLFの 『Mozart Requiem』に
生没年表示はありませんでした。
同じくR・C・ランドンの「モーツァルト最後の年」にも表示なし。
東京書籍版と並ぶ代表的な事典である平凡社版「モーツァルト大事典」の
関係人名録にはフライシュッテトラーの項目すらない。
さらに、上野に出かけた時に、東京文化会館音楽資料室で
困った時の……の「ニューグローブ世界音楽大事典」にも当たったが項目なし
という結果でありました。

 〜というところで第一ラウンドを終了。
 Kさんには、しばらく時間を頂きたいとご連絡をいたしました。

さて、年末を控え、
ノドにひっかかった小骨のように気になるので、年内に片付けようと、
K音楽大学付属図書館へ行き、少々調べたところ下記2つの情報に接しました。
どちらにも、

Freystadtler, Franz Jacob, 1768-1841. とあります。

1) Wolfgang Amadeus Mozart : a guide to research / Baird Hastings
    New York : Garland, 1989     p 246

2) Sechs Lieder der besten deutschen Dichter [印刷楽譜] 
  (Wien 1795)  Franz Jacob Freystadtler
       ; vorgelegt von Heinz Wolfgang Hamann.
     Bad Reichenhall : Comes, 1992

1)は、実物で確認しました。 英語圏向けガイドブックという趣で
アンガミューラー編の文献目録ほどの権威ある書物ではないようですが
ざっと通読したところでは信頼できるもののように思いました。
(えらそうに、すみません!)
2)は、図書館内PC検索で観ました。
 (下記のWeb内でも見ることができます。)
 
一方の1761年説の典拠は不明で
まったくの推測ですが、「超越の響き」文章の初出の小学館版「モーツァルト大全集」解説の連載時(同全集 第15巻 60頁、1993年)での誤植?等がそのまま後日引用されたのかもしれません。
(K氏から先生に問い合わせ中とのことなのでなにか判明したらまたご報告します。)

これで、当面の結論としたいと思います。

http://www.lib.kunitachi.ac.jp/webopac/webopac.htm


<ブラウザの「戻る」ボタンをクリックして下さい>