日録(抄)(アップツーデートな更新にこころがけておりますが、素人の悲しさで、そのぶん推敲不足で勘違いや、

変な文章、不適切な表現があるかもしれません。お気づきの節はそっとお教えください。よろしくお願いします)


2001年10月28日(日) <ハンマーフリューゲルのモーツァルト

日本モーツァルト愛好会10月例会は、<ハンマーフリューゲルのモーツァルト>と題して、

宮坂純子さんのフォルテ・ピアノのリサイタルでした。                                                                

宮坂さんは、フォルテ・ピアノ演奏家としてわが国の第一人者のお一人ですが、

日本モーツァルト愛好会の会員でもあります。

司会者から、当会には、4回目の登場(訂正しました)となるが、これまではジョイント・コンサート

だったのでソロでの登場は初めて、

長崎在住のため、今朝の航空機で到着、夜7時40分のフライトで帰郷という強行日程で

の登場との紹介がありました。聴くほうも気合が入ります。

正直いって、モーツァルトとはいえこの時期の作品6曲を続けて聴くのは、ちょっと退屈するのではと、

いささか心配しましたが、後半になるにつれ盛り上がり、その心配には及びませんでした。

まさに、当会ならではの企画と納得。

宮坂さんの演奏の魅力は、何と言っても音色の美しさと思います。

(当日の楽器はチェンバロ製作で著名な 堀 栄蔵氏によるシュタイン・タイプの復刻とのこと)

個人的には、第5番K283の第2楽章アンダンテでの膝ペダル使用による絶妙の弱音の効果に魅了されました。                       

CDには入りきらないものです。思わず、そのあとは視線を膝元に集中した次第(失礼!!)。

 全曲の演奏が終了してから、クラヴィコードにより3番K281 の一部の演奏を聴かせて頂きました。

ここ数年、クラヴィコードの生演奏を何回かお聴きする機会に恵まれましたが、本当にこの楽器は聴くよりも

演奏して楽しむ楽器という気がします。(鍵盤楽器なのにヴィブラートが可能とうかがったことがある)

宮坂さんに演奏家の立場からのクラヴィコードの魅力をうかがいたかったと思います。

 冒頭,宮坂さんから今日の選曲のコンセプトはケッヒェル6版番号での 189a〜hを並べてみたとの解説がありましたが、今やあまり

顧みられなくなった(風前のともし火となった)ケッヒェル6版へのオマージュといったところでしょうか。

それにしても、私がモーツァルトを聴き始めたころ海老澤先生を中心にケッヒェル6版番号使用を提唱されておられたのが、(1973年

刊、海老澤 敏著『モーツァルト研究ノート』p.252)、世の移り変わりにつれ、いつのまにか初版番号へ回帰の風潮に変わってきたのに

はとまどうばかりです。

N・ザスロウによるノイエ・ケッヒェル編纂(ケッヒェル番号改訂)に備えてのことと思いますが、そういえばノイエ・ケッヒェルはいつ頃公

刊されるのでしょう。当初は20世紀末までにということでしたが、既に21世紀の1年目もまもなく年末になろうとしております。

宮坂さんは何か新情報をお持ちだったのでしょうか。伺い忘れてしまいました。

 

 ところで、世界のモーツァルト演奏の趨勢は今や、古楽器(ピリオド楽器、オリジナル楽器)の時代に移りつつありますが、当会での

人気は、今一つのように感じています。

ちょっと脱線しますが、わが国の古楽器によるモーツァルト演奏の受容は、コレギウム・アウレウムやイエルク・デムスのLPによりはじ

まったと思います。私もそうでした。近年、コレギウム・アウレウムの功罪が議論されますが、(多くは批判的論調で)、ことフォルテ・ピ

アノについては当時のデムスの演奏には問題が多かったと思います。

エイズ問題ではありませんが、今日の演奏技術・文献的成果にたって黎明期の開拓者の努力を頭から否定するのはフェアではないか

もしれませんが、それでもフォルテ・ピアノの音色がモダン・ピアノに比して比較にならないほどお粗末なものであるとの誤ったイメージ

を植え付けてしまったのは、功罪の罪の部分です。

しかし、インマゼルや今日の宮坂さんの演奏を聴けば、それは奏者次第だということがわかります。

(実は今日の予習にトウイヤ・ハッキラのCDを聴いてきたのですが、

ちょっと乱暴なと思うほど威勢のいい演奏で、そのぶん音色の美しさが損なわれています)

 今、フォルテ・ピアノの名手は、御大ビルソンからリンダ・ニコルソン、インマゼル、メルヴィン・タン、ルービン、ギボンズそしてロバー

ト・レヴィン、わが国でも宮坂さんをはじめ、渡辺順生さん、武久源造さん、小倉喜久子さんとキラ星のよう。

本当に素晴らしい時代が到来したものと思います。

古楽器ファンの立場からは、今日の回をきっかけに当会に1人でも多くの古楽器ファンが増えればと期待しています。

宮坂さん、是非これからもこのシリーズをお続け下さい。よろしくお願いします!!

<了>

演奏曲目

@ フィッシャーのメヌエットによる12の変奏曲 K.179 (189a)

A クラヴィーア・ソナタ 第1番 ハ長調    K.279 (189d)

B クラヴィーア・ソナタ 第2番 ヘ長調    K.280 (189e)

C クラヴィーア・ソナタ 第3番 変ロ長調   K.281 (189f)

D クラヴィーア・ソナタ 第4番 変ホ長調   K.282 (189e)

E クラヴィーア・ソナタ 第5番 ト長調     K.283 (189h)

*宮坂 純子さん プロフィール:

国立音楽大学卒業。
1968年「NHKピアノのおけいこ」で伊達純氏に指導を受ける。

仏でペルル・ミューテルの指導を受ける。
来日ヘルムート・バルトに認められ1982年独留学。
フライブルク国立音楽大学大学院卒業。
ピアノをH.バルト,室内楽をハインツ・ホリガーの各氏に師事。
ヴェルツブルク国立音楽大学大学院入学。
卒業後同大学非常勤講師を勤める。
チェンバロ,ハンマーフリューゲル,クラヴィコードをグレン・ウィルソン,チェンバロをE..W.D.ウルザマー,ピアノをA.トルガーの各氏に師事。
ヴェルツブルク音楽大学オーケストラとの共演を始め,スロバキア・フィルと共演。
独中心に欧州各地で多数のコンサートを行う。
86年ヴェルツブルクのバッハ週間でチェンバロ協奏曲の夕べ出演。
86年ヴェルツブルク楽友協会室内楽コンクール2位入賞。
87年クリストフ・バインハルトの古楽器の為の協奏曲を初演,絶賛されバイエルン放送協会に収録。
外務省の後援でヴェルツブルクにて日本現代作曲家の夕べ企画参加し出演。
ベルギーの89年ブルージェ国際コンクール入賞(ハンマーブリューゲルのモーツァルト,フランドル音楽祭)G.レオンハルトに高い賞賛を受ける。
92年帰国。日本各地での演奏を開始。NHK「FMリサイタル」をはじめ数多く放送収録。
95年村松賞受賞。現在,活水高等学校音楽コース教諭。

砂川啓子,伊達純,伊達ナナ,土屋美寧子,佐々雅子,成田えみ子,山本万佐子の各氏に師事。
国際芸術連盟会員。ドイツフォノ社よりCD「ハンマーフリューゲルによるモーツァルト」,98年日本コロンビアDENDNより「モーツァルトクラヴィーアのための作品集」を発売。


(http://www.fsinet.or.jp/~hello/h13concert_member.htmより)

 

 <ブラウザの「戻る」ボタンをクリックして下さい>