日録(抄)(アップツーデートな更新にこころがけておりますが、素人の悲しさで、そのぶん推敲不足で勘違いや、

変な文章、不適切な表現があるかもしれません。お気づきの節はそっとお教えください。よろしくお願いします)

2001年10月15日(月) <ふたつの コシ を観て>

13、14の両日 はからずも2つのコシ 競演に遭遇しました。

13日は高橋英郎総監督によるモーツァルト劇場公演(新国立劇場)、
14日は 国立音楽大学大学院生公演(国立音楽大学講堂)と2日続けてコシ・ファン・トゥッテを観てきたわけです。
 前者は日本語上演、後者は原語、字幕付きという違いはありましたが、コシの魅力を堪能しました。
 以下に感想を少々。 (キャストは後掲)

最初にモーツァルト劇場版。
この団体が演じる他のモーツアルト作品同様 高橋英郎総監督による独自の日本語版によるものです。たしかに字幕を見ないで付いていけるというメリットはありますが、初期オペラならいざ知らず四大オペラとなると、耳に原語が刷り込まれていますからどうしても違和感の方が先にたってしまします。

 フィオルディリージには問題がありました。高橋照美さんはこの日よほど体調が悪かったのか、最初の二重唱から高音が苦しく、第一幕の聞かせどころ岩のアリアでは、曲の魅力が引き出せない歌唱に終始してしまったようです。
名にしおう難曲だけにベスト・コンデションで臨んでほしかったと思います。


ドラベルラとデスピーナは共に好演。特にデスピーナの高橋薫子さんは絶好調、登場すると舞台の人気を一手にかっさらうほどの出来でした。礒山先生の著書にあるデスピーナがいいと、このオペラは成功するという趣旨がまさにその通りと実感しました。
豊かな声量と伸びのある高音。この人には華があります。伸び盛りなんでしょう、いくらでも声があふれるという感じです。ここ数年の彼女の舞台は見逃せないと感じました。


 ドラベルラも好演でした。小澤のコシ公演の時もフィオルディリージよりドラベルラの出来がよかったのですが、メゾ・ソプラノの主流が従来のヴィヴラートの多い含み声からクリアーな明るい声へと変わってきている のを実感しました。


男声陣はいささか低調、なかでグリエルモはまずまずでしたが、ドン・アルフォンソとフェランドはあまり印象に残りませんでしたが、これは好き好きかも。(フェランドの場合、アリアで日本語訳に違和感があったし、ドン・アルフォンソの歌唱は演出の影響が大きいため)
 

オケはピリオド楽器演奏を意識しての、メリハリ利いた早めのテンポ(当世風)による演奏。(アンサンブルof トウキョウ)
このためか、独自の日本語訳のためか、オケピットにプロンプター(副指揮者?)が立ち歌手にキューを出すという光景が見られました。

演出では、登場人物の衣裳は現代そのもので男性陣は最初スーツで登場、変装後はパンク青年の格好。(金持ちにはみえない)   序曲演奏中 カフェで恋人たちがお茶している風景をウエィターが手持ちVIDEOカメラで撮影し、舞台奥のスクリーンに投影すると  いうのは興味深かったが、その分、序曲の鑑賞が妨げられたわけで、評価としてはどっちとも言いかねるところでした。            

 コシといえば、デスピーナの変装した医者がインチキの磁石療法を施すシーンをどう演出するかが見ものなのですが、今回はパソコンのディスプレーにつないだ金属棒が磁石という設定、それなりに楽しめました。       

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 次の国立音楽大学版ですが、これも女声陣が好調とみました。
フィオルディリージが、学生オペラの通例で1幕と2幕が別人というキャステイングでしたが、結果的にはこれが幸いしたようで、1幕の難曲 岩のアリアも無難以上の出来と思いましたし、2幕の歌手もアリアと大二重唱をまずまずの出来の歌唱でした。
スタミナを考えずに全力集中できた賜物かもしれません。
 ドラベルラは出だし今一歩不安定で心配したが、尻上がりに調子をあげ、2幕のアリアは好演。
デスピーナは前日モーツァルト劇場の高橋薫子さんとは、違うコンセプト 細く軽い声というコケティッシュ路線でしょうか。
声量はあまりないが、響きを生かし、コケティッシュな演技はとても良かったと思います。

男性陣、フェランドは声量、声質ともよかったんですが、張り切りすぎたのか最初から音程がふらつき気味で、心配していたら、    とうとうアリア「愛しい人の愛のそよ風」で高音がひっくり返ってしまいました。でも、その後良く立ち直り、2幕は無難に通したのは 立派です。
グリエルモは無難の出来でしたが、学生オペラだけに不満、矛盾したことを言うようですが今からこじんまりとまとまらずに、フェランドのように冒険もしてもらいたいと思いました。
 ドン・アルフォンソはやはり難しい。声楽的に不満は少ないのですが、あとは演技にからむものだけに経験でしょうか。

演出で面白いと思ったのは、序景がランプの灯った夜の居酒屋で始まること、古典ドラマの約束で1日の出来事となっていますから、前夜から今夜までとしたわけなんでしょうが、こうハッキリ設定したのは初めて観ました。 (たしかに、酒を飲みながらその勢いでカケをするわけですから朝であるはずがないわけです。納得)

 衣裳は伝統的なもの。男性コンビの変装もアラビア人イメージ、デスピーナの磁石療法も馬蹄形の磁石使用ということで、特に目新しい工夫はありませんでした。(皮肉でなく、こういう素朴なものが珍しく思ったほど)
 

オケは伝統的な演奏。テンポも標準的。
序曲での管楽器のリレーも破綻なくまずは、安心して聞けました。2幕フィオルディリージのアリアでのホルンがちょっともたついたように感じましたが全体にはまとまっていたと思います。
欲をいえば、所によっては、もっと雄弁に聞かせてほしいとも思いましたが、これはないものねだりと指揮者の解釈かもしれません。


(以上 素人の勝手な感想ですので読み流して下さい。違う印象をお持ちのお方もあるかもしれません)

 

 

モーツァルト劇場     (10/13)

国立音楽大学(10/14)

フィオルディリージ  高橋照美  第1幕:  平川千志保

 第2幕:  高橋織子

ドラベルラ  小畑朱美  田村香奈
フェランド  上原正敏  吉田知明
グリエルモ  黒田 博  押川浩士
ドン・アルフォンソ  大澤 健  北川辰彦
デスピーナ  高橋薫子  武田仁美
指揮  城谷正博  福森 湘
演出  中津邦仁  中村敬一

(2001.11.5 一部修正)

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