日録(抄)(アップツーデートな更新にこころがけておりますが、素人の悲しさで、そのぶん推敲不足で勘違いや、

変な文章、不適切な表現があるかもしれません。お気づきの節はそっとお教えください。よろしくお願いします)

2001年10月 9日(火) <芸大オペラ ドン・ジョバンニを観て>

10月8日の芸大オペラ ドン・ジョバンニ公演を日本モーツァルト愛好会のメンバー約30名

の方々とご一緒して観ました。(会員の滝澤さんのお骨折りに多謝!!)

まずまずと思いました。ウィ−ン・シュターツ・オパーでもプレミエはともかく

通常公演はこんな感じです。ルーティンでやられるレパートリー公演より

真剣さに勝る分だけこちらの方が観た感じがよいと思います。

  (キャストは下記をクリックしてください)

 序曲の演奏では、天下の芸大だけにオケに破綻あるはずもなく、標準的なテンポで伝統的な演奏。
演奏中、舞台ではスケボーやキックボードで遊び回る青年、ルーズソックスの女子高生
(またこの娘がピッタリのキャラクターで、余談だが終演後の酒席ではこの娘が本当に芸大生なのかとの話題でひとしきり盛り上がった次第)が登場し、せっかくの若杉御大指揮の演奏に集中できないほど。まあこういう演出(ウルトラマンで有名な実相寺さんの演出)も考えものだと思います。
それと、男根としか思えないようなワイセツな舞台装置、あれは何なんでしょう。
(一瞬熱海の秘宝館かと思いました!?)

 出演者の中で、レポレロとマゼットのみ大学教師・講師とのことでしたが、演出あるいは指揮者の意図かレポレロ登場の第1曲はあまり冴えない表現。レポレロの描き方に2通りあり、情けない使用人に徹するのと、ドン・ジョバンニと表裏一体というもので、最近の演出では圧倒的に後者が多い中でオヤッと思いました。
 この日のドン・ジョバンニ役はまずまずの出来と思いました。圧倒的な存在感はありませんが、それも演出家の解釈かもしれません。
ドンナ・エルヴィーラ、ドンナ・アンナは難役なだけに色々注文はありますが、破綻なく演じたとだけ言っておきましょう。
 ツェルリーナはもうけ役だけにこの日も受けていました。歌は一本調子なところが気になりましたが、演技が達者で容姿も可愛らしく、ちょっと上品すぎて最近流行りのエロチックな点 に欠けるものの、良かったです。20年くらい前、デビュー直後の鮫島有美子さんが演じていたのを思い出しました。

 演出で面白いと思ったのは、ドンナ・エルヴィーラの侍女を大きく取り上げていたこと、プログラムにも岩森美里さん(プロの歌い手さんですよね)と明記されています。私の知っているドン・ジョバンニの演出でエルヴィーラの侍女をとりあげたのは、昨年見たカナディアン・バロックでした。(この演奏会については別途とりあげたいと思います)

特筆すべきは、 騎士長殺害がルールに則った決闘の結果とされていること。                                                                伝統的な演出では老齢の騎士長を、ドン・ジョバンニがあたかもなぶり殺しするようなものが多いのですが、                (実際、台詞の趣旨はそうなっていますが) 今回の演出は、決闘用のピストルに一発ずつ弾を込め、互いに打ち合うというルール通りの果し合いの結果、騎士長が倒されたというものでした。

 ドン・ジョバンニが爵位を持つ騎士という身分にあり、単なる女たらしの不良中年にあらずということを再認識させてくれるものです。

(これもカナディアン・バロックの演出で、騎士長の従僕が3名一斉にドン・ジョバンニに襲い掛かるのを難なくしりぞけた上で、騎士長を倒すというシーンを想起させます)
 

 指揮の若杉さんは、当初の指揮者の急病を受けての登場だそうで、あまり独自の解釈もなくその意味ではせっかくのマエストロ登場の意味がなかったような気がしました。伝統的な解釈に終始したのはいいのですが、あまり覇気なく、悪い意味でのN響を聴いている感じに思えましたが、これは如何でしょうか。
 学生オペラとはいえ、国立の芸大の演奏とあれば冒険もできないのでしょうが、(演出は結構、冒険だったと思いますが)オケにもうひと暴れを期待したいと思いました。


 しかし、全体としては楽しめましたし、学生オペラでこれだけやると、二期会あたりはつらいんじゃないかと思いつつ帰途についた  次第です。


 

 

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