虚と実の狭間で

 毎日の事ですが、仏壇に手を合わせていた時、突然飾ってある写真の中の死者たちに無性に会いたくなった。
 まず近くにある母の育った町へ行った。町はすっかり変わって、知っていた店などはすっかりなくなって、別世界になっていた。そこで私の小学校次代の番長と呼ばれていた友を尋ねると、家はなく、スーパーマーケットになっていた。隣の金物屋の人に聞くと、立ち退く前日に自殺したと。次いで洋服仕立て屋の友を尋ねると、ビルに変わった一角に店はあったが彼も死んでいた。その後小学校に行き、校庭を眺め、遊ぶ子供に自分を重ね、いつの間にか近くを歩き回って、生きていた自転車屋の友人とその息子さんと話をし、不思議な時間、空間をさまよってしまった。虚と実の間、表現と生きること、金満里の舞台に求めて私は歩き始めていた、と思った。

大野慶人

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