■ 8月17日「福島の子どもたちの声を政府に届ける集会」報告

    (1)福島の子供たちの声を政府に
           

 8月17日、福島の高い放射線量の中で生活・登校させられている子どもたちが、政府と直接話す場を設ける試みが、衆議院第一議員会館、多目的ホールで持たれました。

 主催は、子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク、協力が福島老朽原発を考える会(フクロウの会)と国際環境NGO FOE Japanです。

 福島原発事故の最大の被害者は福島をはじめとする子供たちなので、政府に対して、その子供たちの言葉を直接伝えたい、というのが、この日の主旨でした。

 今、福島県内の多くの地域は、3・11前の許容限度1mシーベルト/年などという数字をはるかに超えて、放射線管理区域の5,2mシーベルト/年さえ超えるところが県の75%に達しています。放射線管理区域では、18歳以下の入室が禁止され、中での飲食も禁止されています。それを超える地域で、多くの住民が生活を強いられ、子供たちが登校させられています。

 この夏、福島の子供たちは、放射能への不安で外で遊ぶこともプールにはいることも出来ずに過ごしています。30万近い生徒のうち、これまで約1万4千が避難していますが、そのため、避難した生徒も残った生徒も、多くの生徒が、それまでの友達と引き裂かれています。

 20万人以上の子ども、生徒が、こうした中で、日々、高い放射線にさらされて、将来白血病やガンになるのではないか、子供を産めなくなるのではないか、といった不安に苛まれながら暮らしています。

 チェルノブイリ事故をめぐる様々な実例を見るならば、福島の住民の中から、とりわけ子供たちの中から、将来、深刻な健康被害の多く出る可能性を否定できません。そして、3・11直後に大量の被曝をしている住民、子供たちは、今、一日一日の被曝の積み重ねで、致死的な障害を受ける危険をますます高めています。

 まず、子供たちの疎開・避難から、一刻も早く実現しなければならない情勢です。

 一体、これだけ多くの子供たちを、室内に閉じこめ、生命と健康の不安の中
に閉じこめておいて、何を守ろうというのか。

 佐藤県政―山下(などその手先)は、「(県から避難する者を増やすと)風評被害をおこす」と称して、20mシーベルトを国に認めさせ、避難指定を避けるため奔走し、県内で「安全デマ」を繰り広げ、放射能への不安を持つ者、避難する者などを「利己的」などと白眼視し、攻撃しています。

 県を衰退させないため、産業のため、風評被害を避けるため、子供たちの健康、生命、日々強まる深刻な不安を引き替えにしているのです。

 「大人は命よりお金が大事なのですか」とこの日福島から来た子どもが政府に対して言った言葉は核心を突いています。


 8月9日の、約350名が参加した脱原発弁護団全国連絡会シンポジウム(弁護士会館)で発言した「子どもたちを放射能から守る福島ネットワーク」世話人の佐藤幸子さんは、「子どもを守ろうとしない国など滅んだ方がいい」などと、福島の状況を報告しました。激烈な言葉ですが、納得行く内容に、発言の後半は拍手がなり止まず、強い共感を呼び起こしました(このシンポジウム報告は遅れてしまいましたが、別途行います)。
 まったく同感です。

 将来を担う子どもたちの命や健康が、大人の社会の犠牲にされる状況、子供たちがそのことを自覚してゆく状況を放っておいて、そこから、積極的な社会の未来など展望できるはずがありません。

 まして、それを放置しての社会の発展的な変革・改革など考えることもできないと思います。

 被災を受けた福島の人々の生活、産業、農漁業などを最大限支えなければなりません。 しかし、佐藤県政は、そのような県の経済、産業と、子供たちの生命・健康とを真っ向から対立させる構造をつくったのです。この対立構造を解くことを抜きに、子供たちの被曝を放置して、福島の経済・産業復興だけを唱えるなら、途方もない犯罪行為になると私は思います。

 社会の犠牲を払っても、子供たちの疎開・避難を実現し、それを前提に、震災、原発事故で疲弊する社会の再建や改革に進まなければなりません。社会のため、産業のため、等々を理由に、子供たちを福島に縛り付け、疎開・避難を敵視し、被曝を強いるというのであれば、戦前の日本とどこが違うのか。北朝鮮や中国を批判する資格などまったくないことも明らかです。

 しかし、残念ながら、疎開・避難を実現する一つの節目であった夏休みまでに、政府に疎開・避難を認めさせられずに来ました。

 ただ、微かな光明は、「自主避難」への賠償が認められる方向になったことで、これは、政府が指定した避難区域以外の住民も、政府が責任を負う被害者・被災者であることを認めた意味を持ちます(従って、避難できず止まってきた人たちへの被曝や精神的苦痛に対する賠償も求めて行く必要があります)。
 一刻も早く、福島の子供たちの疎開・避難を実現させなければなりません。


 この日は、こうした状況で、福島の子どもたちが考えていることを政府に伝えることを目的としました。

 政府側は、原子力災害対策委員会と文科省ですが、要請した原子力災害対策委員会の委員長である菅総理の出席は実現出来ない結果となりました。

 この取り組みは、福島の上述ネットワークのHPには掲載されていましたが、公式の対外的な呼びかけは直前になったため、私は、どのくらい参加するか不安がありました。福島から来る子供たちを迎えるためにも、政府への圧力のためにも、参加が貧弱になってしまっては、と心配したのです。

 しかし、これは、杞憂でした。
 「午後3時開場、30分前から入館証を配付」ということで、私が30分前頃に着いたところ、すでに、第一次の配付は終わっていて、結局、私は、第三次の配付で辛うじて会場にはいることができました(立ち見を入れて200人くらい?。その後の人たちは、別会場をとってモニターで見学の形になったので、その人たちを含めた総数は分かりません(FoE Japanが300人と報じていました)。

 当日、福島から来た子どもは4人でしたが、多くの子供たちの直筆の声、訴えが会場の机の上に並べられました。

 政府(原子力災害対策委員2名、文科省8名)の前で、子供たちは、「外で遊べなくなった、避難するものとしないものとが別れ別れになった、まとまって疎開したい、きれいな福島を帰して下さい」などと訴えました。

 福島の子供たちは、夏なのに外やプールで遊べず、放射線の恐怖を感じながら、窓を閉め切った部屋の中に閉じこもった生活を強いられています。

 ところが、それを聞いた感想を政府委員に求めたところ、回答は、異口同音に「早く除染して欲しいという願いだと聞いた。最大の努力をする」と、子どもの発言をまったくねじ曲げて受け止め、「回答」するというものでした。

 この日は、子どもが主役なので、参加者のヤジは控えるよう予め確認されていましたが、それでも、しばしば抑えきれない怒りの声も飛びました。

 政府は、福島の学校について、疎開・避難ではなく除染という方針を出しているために、子供たちが言ってもいない「除染の要望」を中心に据え、回答するという、本当に恥知らずな対応を横並びで行ったのです。

 「何で大人は、言っているとおりに答えてくれないのか」などの子供たちからの反応が出たのは当然です。「大人なのに、子どもの言葉がちゃんと伝わらないのは、子どもの頃ちゃんと勉強していないのかなと思った」と感想を述べる子どもまでいました。

 集会には、脱原発を言って事務所を辞めることになった俳優の山本太郎さんも参加し、官僚答弁への強い批判などを行っていました。

 この日、多くのマスコミ関係者が訪れました(ネットワーク関係が多いと思いますが、)。広い会場の左右前方はカメラの列で埋まりました。

 日々、被曝を重ねている子供たちを疎開・避難させる課題は非常に難しいところにありますが、それでも、以上のように、いくつかの希望が見えたところもありました。

 第一に、先に「自主避難」への賠償の可能性が出たこと
 第二に、この日、多くの人たちが参集したこと
 第三に、多くのマスコミ関係者の注目、ネットへの広い広報
 そして第四に、この間、脱原発の発言を発信している山本太郎さんの参加
も、福島の子供たちの疎開をめぐる問題を広く報せる大きい要素です。

 以下、子供たちの声を中心に報告します。
 (子供たちの氏名、学年は集会後、入り口に張り出されたのですが、マスコミが囲んでいてなかなか近づけず面倒なので書き写さないで来ましたm(。。)m。政府関係者の名前も確かめていないのですが、今後、子どもネットワークやフクロウの会などのブログで見ることができると思います。

 以上、怠慢をお詫びしますが、ここでは、発言内容の概略をとり急ぎ伝えることを主眼にしました。メモを起こしたもので、不正確なところは私の責任です。

 分からないところは、そのまま「**」としました)


   (2)子供たちと政府の対話


    (イ)政府側が来る前の集会
 
阪上(フクロウの会)
 今日の集会について。 
 放射能はいつ無くなるのか、といった子どもの問いに大人が答えられない。
 この原発事故の一番の被害者は誰か。一番弱い立場にある子供たちだ。
 子供たちは何も考えていないのではない。多くのことを考えている。
 一番の被害者である子どもの声を直接聞くことが大前提。
 子どもが原子力をどう考えているのか、それを国に届ける。
 子供たち一人一人が何を考えているのかを聞いて行きたい。

司会 ニシカタ(子供たちを放射能から守る福島ネットワーク《以下「子どもネット」と略》)
 (子供たちに)政府の人が来たらになにを言いたいのか話して欲しい

三春町 中2
 私がこうしている間も、友達が放射能を浴びている。
 私たちを疎開させて欲しい。
 避難している間に福島を綺麗にしてください。

福島市 **まりこ
 官僚の人たちに福島の子どもの情景を伝えたい。
 このままでは白血病やガンになるかも知れない
 そういうことを政府に伝えたい

福島市  
 放射能を吸い込むと大人になってからガンになる。
 小さいので、ガンになったら命がなくなるので、放射能を無くして欲しい

福島市
 今日は、福島の子供たちがどう思っているかはっきり言いたい。
 
 子供たちの言葉に、熱烈な激励の拍手が起こっています。
 

    (ロ) 子供たちの意見、政府側の回答

(政府委員来場10名)

 自己紹介
 原子力災害対策本部2名
 文科省8名

(子供たちの意見、4名)

(子ども1)
 官僚の皆さん
 福島の子どもは外で遊ぶことが出来ない
 避難する人は、友達、家を奪われてしまった。
 責任を取って下さい。

(子ども2)
 震災と原発事故から五ヶ月、
 福島に残っている人は窓を閉めて暮らしている。
 全国に避難した人は、それを思っている。
 福島に残っている人はマスクをしてプールにも入れない生活をしているのに、それを安全だという政府が信じられない
 事故の後、もともとの基準を何十倍にも引き上げて、こんなことはおかしいと皆思って いる。中学生の間でも、こんなことが正しいという話は通用しない。
 大人は命よりお金の方が大事なのですか。
 私は6月に転校した。
 みんながそうできないのが悲しい。
 出ていった人も残った人も、互いに心配している。
 学校の友達みんなと避難できるようにして下さい。
 避難している間に福島を綺麗にして下さい。
 私の友達をだれ一人傷つけないようにして下さい。

(子ども3)
 今年3年になって、2年のときに仲が良かった友達が避難した。
 外で遊べなくなった。
 こんな生活をしなければならないなら原発はなくなった方がいい。

(子ども4)
 今年の夏はずいぶん暑いのにプールには入れない。
 **学習(合宿しての学習のようなものと思います)も、これまでより短くなった。


 こんなことになるなら、原発を動かさなければ良かった。

(政府側回答)

キンジョウ(原子力災害  委員会)
 話しを聞いて、我々もできるかぎりのことをしなければならないという内容だった。


 原子力で被災した人たちの生活を支えて行く。福島県民になりきるつもりでやる。
 除染をしっかりして貰いたいというのが、みんなの声であったと思う。政府としても除染をしっかりやってゆきたい。

佐久間(同前)
 四人の子供たちの願いは、除染が一番であったと思う。除染をして早く帰れる環境に戻して欲しいということであったと思う。

山口(保安院?)
 安全についての反省を含めて、福島の支援チームをつくり除染に力を入れる。
 原子炉の安全をはかってゆく

大野(文科省)
 地元で、プールや校庭がつかえず、学校の活動に不便が生じていることが分かった。


 担当部などに伝えて、最大限、改善を図りたい。

**(文科省)
 皆さんが、どこに避難しても、小中学校に通えるようにしたい。
 (なにを見当違いなことを言っているのだ、というヤジ。・・・行く先で学校に通うことはどこでも出来ます)

**(文科省)
 学校に戻りたいという子供たちの意向が分かった。
 学校のグランドは**(何かの技法のよう)で除染をやっている。
 安心して学校に戻れるように頑張っていきたい。

**(文科省)
 福島を、将来、安心して暮らせるようにしたい。
 
原(文科省)
 子供たちの声を聞かせていただいて、モニタリングをしっかりしなければならないと思った。福島への支援チームで、財政支援もしっかりしてモニタリングをしていきたい。

松永(文科省)
 学校に早く戻りたい、避難している友達と学校で一緒に早く生活したいという要望が分かった。
 除染への財政支援をしていきたい。

**(文科省)
 損害賠償について、東電と賠償の指針を決めている。東電の賠償をしっかりさせる。

(以下、政府委員と、子供たち、司会との直接のやりとりです。
 政府側は、しばしば発言を譲り合って、なかなか回答できない場面がしばしばでした。回答内容も、文章に出来ないような筋道のはっきりしないものも多く、大分省略することになってしまいました)


司会(ニシカタ)

 子供たちは除染のことを言っているのではない。
 原発事故によって起こった悲しい思いを伝えたい。
 除染ではなく、集団疎開の実現を求めている。
 子供たちが言うことに答えて下さい。


イシダ(文科省) 
 実現するために、原発が安定しなければならない。
 学校が綺麗になって、少しでも早く帰って行けるよう頑張る。
 夏休みの間は、サマーキャンプなどに行く方法もある。急に、といっても行
けないかも知れないが(よく意味が分からない)

子ども
 きれいにするというが、なんで早くやらないのか。

子ども
 最大限と政府の人々が言う最大限とは何なのか。

 (この辺、政府側の回答、意味不明)

子ども
 なぜ集団疎開が出来ないのか

政府
 避難のため、土地の線量を計って、避難区域を設定してきた。
 避難の指定のためにはコミュニティの状況も考慮しなければならない。
 考慮の内容
 線量の多いところは・・・
  (・・・・・・・このあたり、メモも混乱していますが、政府答弁内容が
わけがわか らず、報告不能です) 

山本太郎
 政府から来ている人たちは、決定権がない。
 サテライト疎開をさせなければならない。
 子供たちの未来がないのでは日本の未来がない。

中手聖一(子供ネット代表)
 質問に対する答えが返ってこない。
 大人の一人として、子供たちにまともな答えができないような大人が政府にいる国を許してしまった責任を感じている。
 これまで、なにか間違っていた。これから何をやって行かなければならないのか。

山本太郎
 あまりに言葉がストレート
 ここに並んだ人々はボールを受け取らない。ここにいて分かりました。
 この人たちは、組織の中で本心を言えず可愛そうだと思う。


   (3)記者会見

(政府との話し合いの後、子どもたちの記者会見が行われました。
 記者会見の内容について、FoE Japan がまとめたものがあるので、以下、それを使わせていただきました。
 以下、貼り付けです)

記者会見

●記者会見で今日の感想を問われて

・何で大人なのに、ちゃんと子どもの質問をきいていないのかと思った。
・大人なのに、子どもの言葉がちゃんと伝わらないのは、子どもの頃ちゃんと勉強していないのかなと思った。
・もう少しちゃんときいてほしかった。
・集団疎開が決まっていないなら決まっていないと言ってくれればいいのに、ずっと黙っていて、質問の内容も変えられていてがっかりした。

●誰に一番きてほしかった?と問われて

・総理大臣、文科省の一番えらいひとなど

●みんなと一緒だったら、福島ではなくても集団疎開したい?と聞かれて

・一番は福島だけれど・・・学校中の誰もが安全じゃないと思っている。みんなと一緒にいたい。みんなと一緒だったら・・・

●生中継を見ている2万5000人の方へのメッセージを送って下さい

・福島県の人たちだけが真剣に考えているだけではダメ。福島は東京の電気を作っていた。東京の人たちや、他の全国の人たちにも今どういう状況で、私たち福島の人たちがどんな目に遭っているのかをしっかりと考えてほしい。よろしくお願いします。

●東電に対するメッセージ

・福島の人たちを被ばくさせて、将来ガンとか白血病とかにならさせる東電が許せない。
・今年生まれた赤ちゃんがガンになっちゃったりしたらかわいそうなので、そういうことした会社がちゃんと直してあげてほしい。
・失業した人もいるのに、東電の社長は5億円ももらって、それについて東電がすごく憎い。

●泊原発再開することについて

・原発再開をめざすのはすごくおかしい。放射能でガンになるとか、そういうことが見えているのに、またガンになるものを自分たちの手で再開するというのは。こういう事故があるのは、原発はいけないっていうことを教えてくれるものだと私は思うので、この事故でどういうふうになっているのかというをちゃんと考えて、これからの原発をどういうふうにしていくかをちゃんと考えていくべき。

・子どもは大人じゃないけれど、子どもが大人に言うんだから、大人はちゃんと考えて、営業をしないでほしい。

・今回の事故で日本中の人が困っているのに、また再稼動するって言うことは、また何かあったときに、また人間に有毒なものをばら撒くってことなので、再稼動しないほうがいいと思う。

・福島第一原発の事故が起きているのに、北海道で同じような事故が起きたら、北海道の人も被ばくしちゃうし、日本中の人たちが大変で悲しいです。

●最後に

・事故後、原発はあってはならないものだと思った。
・これから疎開する人もいると思う。私たちが大人になったら原発のない社会を作れるように今から協力していきましょう。

  (貼り付け以上)

 子供たちが直筆で書いた文など、机に展示してあるものを写真に撮ってきましたが、このメールでは添付できないので、残念ながら紹介できません。
 機会があればテキスト化して紹介します。
 (他のブログでテキスト化するかも知れません)

 日々、放射線管理区域を超えるような高い線量の中で生活している生徒、子供たちを疎開・避難させる課題は、時間の猶予がありません。
 厳しい状況ですが、出来ることをやって行くつもりです。

 とりあえず