■「10.7原発の運転再開を止めよう! 政府交渉 (参加者からの報告)
ストレステストや「緊急安全対策」は福島原発事故の実態を踏まえていません
津波の前に地震動で配管が破損した可能性を調査すべきです
◇定期検査で停止中の原発の運転再開はやめてください。
◇「やらせ」問題の調査対象を全ての電力会社に拡大し、調査対象の詳細を公開し、
責任を明らかにすべきです」
主催:Shut泊 /花とハーブの里 /止めようプルサーマル!止めよう核燃料サイクル!女川原発地元連絡会 /東海第2原発の再稼働中止と廃炉を求める実行委員会 /浜岡原発を考える静岡ネットワーク /eシフト /国際環境NGO
FoE Japan
/国際環境NGOグリーンピース・ジャパン /原子力資料情報室 /福島原発事故緊急会議 /福島老朽原発を考える会(フクロウの会) /原発からいのちとふるさとを守る新潟県民の会 /原発震災を案じる石川県民 /原発設置反対小浜市民の会 /プルサーマルを心配するふつうの若狭の民の会 /グリーン・アクション /美浜・大飯・高浜原発に反対する大阪の会(美浜の会) /島根原発増設反対運動 /原発さよならえひめネットワーク /玄海原発プルサーマル裁判の会 /プルサーマルと佐賀県の100年を考える会/ 反原発・かごしまネット/
―――について報告します。
(1)安全性の判断基準はないが原発稼働の審査は行うと強弁する政府―保安院
この日の政府交渉は、一連の政府交渉とは、空気も内容もかなり違ったものになっています。
政府側から1時間半という条件が付いていましたが、3時間に及び、その間、終了要請はでないままでした。
論議が白熱して長くなったのではなく、反対に、政府側(約10人)の沈黙や、内輪の小声の相談などの時間がしばしば続くという、これまでにない状況でした。
この日、主催者は、政府側に対して、福島第一原発1号機について、東電、保安院がそれぞれ提出しているシナリオ=津波がくるまで原発自体に深刻な事故は起こっていないというシナリオ(事故進行の状況)に無理があること、この間、明らかにされているデータに基づけば、津波の前の地震動ですでに配管が破損する重大事故が発生している可能性を突きつけました。
この間、東電や政府(保安院、安全委など)は、地震によって外部電源系は被害を受けているとしても、原発本体や、その安全上重要な施設は正常であったという見解を採っています。これによって、津波対策と外部電源への対策がとられるならば、耐震性については、これまでの安全基準で良いことになります。こうした結論を引き出し、それに基づいて、安全審査を行い、原発運転や再稼働を進めようとするものです。
しかし、この日、主催者側は、保安院が出しているデータ解析なども含めて、地震によるIC(非常用復水器)配管破損の可能性が高いこと、それに反して東電や保安院のシナリオに無理があることを突きつけました。
それに対して、政府側は、あれこれ、その意味合いを軽減しようと逃げまわったものの、地震による損傷の可能性を正面切って認めざるを得なくなっています。
しかし、今の耐震性評価やストレステストは、福島原発が、東日本震災の地震動でも壊れなかったことを前提にしています。そのため、津波の前の地震で破損した可能性があるとすれば、現存する他の原発について、今の安全基準では安全性が保証されないことになります。 この評価が出ていない段階で、原子力安全・保安院や原子力安全委員会は、どのような基準で安全性を評価するのか、ストレステストで何を評価するのかが、当然、問題になってきます。
それに対して、政府側は、追及されて、「基準はない」ことを、再三明言しました。しかし、基準はないけれども、電力会社が出してきたものを審査する(保安院)、保安員が出してきたものを審査する(安全委)、ストレステストはシュミレーションなので成立する(保安院)などと、論理破綻した発言を繰り返しました。
つまり、保安院、安全委ともに、「基準はない」けれども、電力会社が申請してきたら審査する(できる?)と言っているわけです。
後半参加した社民党の福島瑞穂議員は、「貴方達の言っていることは、教師がテスト問題の回答が分からないのに、生徒が答案を出してきたら採点するといっていることと同じです」と言って、基準なしの検査、テストなどただちに止めるように繰り返し詰め寄っていました。なかなかの名言です。実際、こうしたレベルです。
ところで、事故は津波以前に、地震動によって発生していたのではないか、ということ自体は、この日、はじめて出たことではありません。
首相答弁でも、津波以前に本体の損傷はないという見解への異論があることは承知している、といった内容が引き出されています。また、保安院のIAEAへの報告にも、それを仄めかしている部分があります。そして、なにより、政府、東電、御用学者を別にすれば、多くの研究者などにとって、その可能性を考えることは常識に近いのではないかと思います。
しかし、この日の政府交渉では、東電や保安院の解析に無理があること、津波前の破断の可能性が非常に高いことを、データ解析を通じて突きつけ、この点に対して政府側が、言い訳程度の受け身の対応しかできなかったことが、交渉全体を方向付けました。
なお、主催者側のこの解釈は、「不意打ち」でこの日に出したものではなく、事前に文書による質問として政府側に明らかにしてあるものです。にもかかわらず、保安院や安全委が、言い訳にせよあれこれ「堂々と」まくし立てるのではなく(これが、これまでの手でしたが)、しばしば、まるでいじめられているように沈黙してしまったのは、この分析をめぐって、保安院などが、(言い訳であれ)対抗する軸を喪失している状況に見えました。
いずれにしても、浮かび上がったのは、保安院や安全委が、福島原発事故の原因調査、把握なしに、他の原発の安全評価を行おうとしていることです。そして、それについて問われると「基準はない」と幾度も繰り返すほかなかったことです。
こんなことで、他の原発が運転され(現在11基)、また再稼働が画策されています。 この日の論議では、政府側は、地震による破損があったかどうかも今後調査して行く、(福島原発内に入って)現場を調査するまでたしかなことは言えない、と言っています。事故を終息させ、「そのもの」を調査することでしか、事故の様相を正確に捉えるのは困難でしょう。その調査が望まれますが、ただし、放射能で汚染まみれになっている原子炉内を調査できるのは何十年先か分かりません。
東電や保安院のような、特定の利害に縛られた立場でなく、普通に考えれば、福島第一原発が、地震によってかなり損傷した可能性が非常ンに高いことは、簡単に納得できることです。
そうであれば、他の原発も、いくら津波対策を行っても、地震で同様の事故を起こす危険は十二分にあります。実際、日本では多くの原発が地震帯の上にあり(日本ほど、地震多発地帯の上に原発が集中しているところは、他にありません)、しかも、東日本大震災を引き金に(?)地震活動が活発化しているようです。
実際に、今の状況は危険です。
再稼働なしに、このまま原発が定期検査でとまって行けば、来年5月には、稼働原発はゼロになります。
もちろん、保安院などが、安全の基準はないなどといって、これだけ根拠が破綻していながら、安全審査を止めようとしないのは、政府、経産相など原発推進派・原子力村による原発稼働・推進へのなみなみならない意向を示すものに他なりません。
「判断基準のない」保安院や安全委の「検査」による再稼働をゆるさず、全原発廃炉に追い込んで行く重要な局面に入っていると思います。
(なお、付け加えると、「基準がない」のに、どうして再稼働の是非を判断できるのか《事故原因判明までは審査自体を止めるべきだ》という主張に対しては「1,電力会社から出された内容を審査する、2,地元の理解」の2点であると繰り返しています。基準なしに地元を説得するというのでは「やらせ」でやる以外はないのでは、と思えます)
この日は、原発地元各地で反原発に取り組んでいる人たちも多く参加していました。
「地元」との関係では、8月19日に開かれた石川県原子力環境安全管理委員会に保安員が出席して、「プリントデータ等を精査したところ、地震による被害は外部電源系に係わるものであり、原子力施設の安全上重要なシステムや設備、危機の被害は確認されておらず津波到達までは正常に作動し、管理された状態にあったと考える」と説明を行っています。
このように、地震による主要部の破損はなかったと説明することは、保安員自身も、IAEAへの報告などで仄めかしている地震による内部機器破壊の可能性を反古にしたもので、また、この10月7日の交渉ではっきり認めざるを得なかった「地震破損の可能性は調査しなければ分からない」という見解とも背反するものです。にもかかわらず、保安院は、はっきりした結論でないにも係わらず、地方に行って「地震被害はなかった」と言って、あたかも、他の原発が安全であるかのようにウソを言っていることになります。
この追及に対しては、保安院は、「はっきり言っていない」「東電の見解を伝えただけだ」などの逃げ口上を繰り返しました。上の文を見れば、はっきり言っていないとは到底読めません。「なぜ東電の見解を、自分の見解のように伝えるのだ」という弾劾も出たのは当然です。この交渉では、保安院に対して、石川県の上記管理委員会などに誤解を与える内容を伝えたのだから、その訂正に赴くことを確認せよ、と詰め寄りましたが、確約を逃げ回りました。
現在、福井県知事がストレステストで安全性が確保できるのかと疑問を提出しています。また、原発立地15首長が、安全審査への不安を表明しています。
この日の政府交渉の中身を知れば、こうした不安が根拠あるものであったことは、より明らかになるはずです。
各地から参加した人たちは、この日の政府交渉の内容を持って返り、地元での行政との交渉や、住民への説明に活用して行く意欲などを様々に述べて帰って行きました。
なお、このほかに、この日は、「やらせ」問題も議題に載せています。
当初、担当者が来ていないので答えられないと言っていたものを、連絡してこさせるようにという追及によって、結局、途中から出席しました。
「やらせ」の動機については、本来の目的を忘れて、外観を整えることに関心が行ってしまったことにあるとまとめ、「外観」とは、空席が多いとまずい、スムーズに進むようにする、の2点をあげました。
これに対して、浜岡から訪れた参加者が、「ウソを言うな、空席をつくりたくないと言いながら、わずか一週間で参加受付をうち切り、当日も、人を入れなかった」と怒りの糾弾を行っています。政府側は、こんなに簡単にウソがばれる報告をつくっているのです。
調査は非公開で、具体的な内容もほとんど分からない調査報告なので、再調査と公開を強く要請しています。
(2)1号機事故のプロセスについて
この日の政府交渉の土台は、福島第一原発が、津波までは正常な状態にあったのか、それ以前の地震で、すでに深刻な事故が発生していたのかをめぐるものでした。
東電や保安院のデータ解析によれば、15:37の津波によって全電源喪失にいたり、その後、炉の水位が下がり、燃料棒が破損したということになっています。
津波よりも約40分前の地震では、外部電源系は被害を受けているが、「原子炉施設の安全上重要なシステムや設備、機器の被害は確認されておらず、津波到来までは正常に作動し、管理された状態にあったと考える」(保安院、8月19日文書、前掲)と述べています。
このように、津波までの「正常」を主張しています。しかも、それを原発の地元で言っています。より正確に言えば、根拠なしに強弁しています。
このことが問題になるのは、地震によって福島原発が深刻な事故に至っているならば、他の原発の安全基準も根本から見直さなければならないからです。
そのため、10月7日の政府交渉では、事前打ち合わせでも、なにより、この事故原因解析をめぐるところを、論議の入り口であり、最大のポイントに置くことが確認されています。
この内容は、解析の細部に渡るものになっていて、図やグラフなしでの説明は難しいのですが、論点の中心になったところなので、概容をできるだけ説明して行きます。
なお、この図・表や解析の詳細内容は、最後に紹介している美浜の会のアドレスで見ることができますが、これはかなり長文で立ち入った内容なので、ここでは、簡単な輪郭を示すことを追求しました。
この手がかりになるのは、「17時50分事象」というものです。
事故発生後、東電社員が、事態の推移をホワイトボードに書き込んでいて、それは後に公表されました。その中に、この書き込みもあります。
17時50分とは、地震発生から4時間4分後、津波到来から2時間13分後ということになります。
当該部分は短いもので、相当乱雑な字で書き込まれていますが、次のように読みとれます。
「17:50 IC組撤収 放射線モニタ指示上昇のため 300CPM
外側のエアロックはいったところでOS
(1行省略)
? 廊下側からしゅーしゅー音有・・・??」
上の「?」は読みとれない部分です。
「1行省略」は、主催者の資料でそうなっていますが、敢えて読めるところを読むと「? 給電から、新福島ダメージ有り/1,2v?旧きびしい」と読めます。
このOSは(OVER SCALE)、つまり、計器の測定範囲をこえた高い線量の意味と推測できます。
ところで、さきまわりすると、「OS」について、この推定が正しいのかどうか、解析上重要なことは言うまでもありません。これは、このボードを書いた東電社員に確かめれば明らかになることです。したがって、事故を調査している保安員に、これを書いた社員から聞き取りなど調査しているのか、と質問したところ「個人に係わることは答えられません」といい、「個人名を聞いているわけではない」といっても「答えられません」を繰り返しました。
本当にあきれ果てた連中です。
一体、これを書いた人物を調査したかどうか(例えば「OS」の意味は何かを確かめたり、当時の状況をより具体的に聞くなど)ということの、どこが、個人情報になるのでしょうか。そして、この問題は、事故解析の重要な位置にあります。
答えないのは、そもそも調査をしていないためかもしれませんが。
あるいは、これを書いた社員は、このときの建屋内の状況を具体的に知っているので、当人から、東電や保安院にとって、より都合の悪い情報が語られているのかも知れません。保安院は、すでに、当人から聞き取りなどやっていて、その内容を知っているため、その事実を隠蔽するため本人が特定されないようにしているとも充分勘ぐれます。
なお、このOSを「オーバースケール」と解釈して良いのか、という突きつけには、保安院は、「それも一つの解釈」と言っていました。
OSを、計測器の針が振りきるような放射線が出ていたと解釈するなら(どう見ても、これが一番自然な解釈です)、この17:50分段階で、(建屋の)エアロックを入ったところに、すでに、高い放射線漏れがあったことを示しています。
そして、「IC組撤収」とあるのは、この高線量が、IC、すなわち非常復水器と関係することを推定させます。
このIC(非常用復水器)の配管の破損の有無が、ここで問題になって来ます。
この日は、事前打ち合わせで、このICについて、図やスライドなどでその形状、位置や役割等の解説・確認などを行いました。残念ながら、このメールでは、図を送れないので分かりにくいと思いますが、説明を行います。
原子炉は、燃料棒が入っている「圧力容器」、その外側の「格納容器」、さらに外側の「建屋」で囲われています。
IC(非常用復水器)は、原子炉の格納容器の外、建屋内にあり円筒状で水が入っています。それが二つあります。圧力容器からの配管が格納容器の壁を貫いてICに入り、その円筒内に入って冷却されて水になり、再び格納容器内への配管を通って圧力容器にもどります。これは、電源なしに、一定時間作動します。
主催者側の見解は、データを解析すると、1号機では、地震によって、この配管が壊れ、強い放射性物質が建屋内に漏れだしていた強い疑いがでてくるということです。この放射能が、17:50の時点で、エアロックを入ったところで「OS」=針が振りきれるほど高い放射線量の要因になった可能性が高いということです。
では、地震による破壊を認めたくない保安院がどのようなシナリオを描いているのかということです。
保安院によれば、「蒸気が逃がし安全弁から格納容器に流出→炉水位低下→燃料破損→逃がし安全弁から格納容器に流出している蒸気が高い放射能汚染→格納容器圧力高で容器外に」というプロセスで、17:50時点で、建屋内で、高い放射線が検出された、ということになります。
ところで、冷却水位の低下は燃料破損を引き起こしますが、東電によれば、冷却水が燃料棒の上端まで下がった時点を17:46としています。高い放射線が検出される4分前です。燃料が破損してから、こんな短時間で、大量の放射性物質が建屋内に出てくると考えることは困難です。
それに対して、保安院は、この時点を16:20まで引き戻して、何とかつじつまをあわせようとしているようです。
ところが、保安員の出しているデータ(表)によると、18::00まで、格納容器の圧力はほぼ1気圧です。格納容器の圧力が1気圧なら、「格納容器圧力高で容器外に」という放射線漏れのプロセスは、時間が前後してなりたたないことになります。
また、「逃がし安全弁」が開いたという証拠か、それに準ずるものがあるのか、という追及に対しては、そこにいる保安院は答えられず、そとにでて電話で確かめた上で、「証拠はない」と回答しています。
他に「配管破断信号」が出ている(保安院は電源喪失のため出たと解釈)など、論点はいろいろあります。
ここでは大ざっぱな輪郭だけですが、大体、このような論点になると思います。
以上の点の詳細な内容は、美浜の会代表の小山英之さんの「福島第一原発では地震で配管が破損した−1号機と3号機の検証
」(10・5)で読むことができます。
↓
http://www.jca.apc.org/mihama/fukushima/1f1ic_hasonron_20111005.pdf
(3)原発の耐震性、評価基準
東電は、原発の安全基準地を評価基準値41,4MPaとしています。これに対して、今回の東日本地震の福島第一原発での計算値は22,8MPaです。もしも22,8で破損していたとするなら、従来の耐震性評価自体がなりたたないことになります。
実際、この可能性が非常に高いといえるでしょう。
これらの追及に対して、保安院は、
「独立した立場で調査している。
地震によってどこまで壊れたのか関心を持って調査している。
17:50事象については、疑問を持ちながら調査し、ヒアリングをやっている。
中間的には、12月26日までに分かったことを、とりまとめて報告する。
地震でどこまで壊れたのかは、現地で中に入って確かめるまで分からない」
などと答えています。
ここまで、感心にもよくぞ認めたとは思います。
そのため、交渉では、「地震での破壊の可能性もある」と認めたことを幾度も念を押しました。
もっとも、小学生程度の常識でも持った人なら、ここから、他の原発も、耐震性評価基準を下回るこの程度の震度で壊れる危険がある→その安全を確保できるまで動かさない(停止する)という結論が当然出てくるはずです。
ところが、保安院は、「完璧に分かるところまで行っていないとしても、それまで何も審査しないという立場はとらない」「地震の破壊というのは仮定の問題だ」などと、なおも見苦しく言い抜けしようとしました。
「仮定」ではなく「現実の可能性だ、考慮の前提にするのが当然」といった声がでています。
保安院は、このように言い逃れをして、「基準はない」ことまで認めながら、電力会社から申請が有れば安全審査を行うというのです。
「保安院が、なぜ、そこまで原発を稼働させたいのか」という当然の声が飛びました。 しかし、いずれにしても、保安院は、地震による破損の可能性を(しぶしぶ?)認めました。
前述のように、事前に文書で出してあるこの内容について、保安院が「しぶしぶ」であれ、その可能性を認めるような言葉をはいたり、ときに沈黙を続けたということは、保安院の中でも、地震での破損は否定できない(あるいは、内部では、すでに、そうとしか解釈できないという評価になっている?―――この可能性も高いと思われます)ことを示すのではないかと思います。
このシュミレーションをめぐっては、途中、とんでもない発言が保安院から出てきました。
この検査の際に、機器の新品のときの状態を基に行うと言ったのです。
これには、驚きの声があちこちから上がりました。
福島第一原発一号機は運転開始から40年たっています。40年たてば、多くの機械は疲労しますが、特に核分裂によってでる中性子は金属をもろくします。
緊急冷却した場合などに容器が壊れやすくなる温度の境目を脆性遷移温度といって、原発では、圧力容器と同様の金属片を入れてこれを計測します。建設後36年を経過した玄海原発一号機は、この温度が運転開始時の1975年は零下16度、その後、35度(76年)、37度(80年)、56度(93年)と推移し、2009年は98度に大幅上昇しています。つまり、当初、圧力容器の温度から零下16度まで冷やすと壊れる危険があったものが、36年後には98度までへの冷却でも壊れるまでにもろくなっているのです。玄海原発一号炉は、こうした状態のため、現在、最も危険な原発とも言われています。
しかし、玄海原発に限らず、老朽化した原発は他にもあります。これらを「新品」の強度を前提に審査するとするなら、これほどめちゃくちゃなことはありません。会場がどよめいたのは当然です。
「とんでもないはなしだ」という追及にも、保安院は「そのようになっています」と受け身で繰り返すだけでした。
参加者は、あまりのことにあきれながらも、このことを確認して次の話に移っていました。
ところが、しばらくして、今度は、同じ保安院から、「実はさきほど勘違いしていました。審査の際には、経年の減肉(管の擦り減りなど)を検査して、それを前提に行います」と訂正が入ったのです。
ここまで重要な問題について、原発の安全を監視し、稼働の是非に判定を下す役割のはずの保安院が、審査の際に「新品の強度でおこなう」といってみたり(一度の発言ミスではなく、この主張を頑強に維持していました)、あとになって思い違いだったと訂正する、などになると、一体、何を信じればいいのか、皆訳が分からなくなったのではないかと思います。
未だに、本当に思い違いだったのかどうか、判明できません。
ただ、思い違いであったのか、そうでなく、実際「新品」と見なして審査しているのか、どちらにしても「どちらもより悪い」としか言いようのないしろものです。
この日の交渉内容は、主催者がまとめることになっています。
また、「アワー、プラネットTV」などでも見られるということです(このPC動画関係の領域は私は弱くて良く分かりません)。
原発再稼働を阻止し、全原発を廃止するため、この交渉内容を各地、全国で積極的に活用して行くことが有効と思います。
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このほか、安全委の「ダブルチェック問題」他、論題になったことは幾つかありますが、ここまでを報告します。
また、これに引き続いて、「福島の子どもたちを放射能の戦場から救いだし、原発再稼働停止を求めるー女たちの経産省前座りこみ」の記者会見があり、福島から訪れた佐藤幸子さん(子供たちを放射能から守る福島ネットワーク(「子ども福島」))とアイリーン・スミスさんが、10月27日からの座り込みの決意を表明し、賛同・参加を呼びかけました。
この内容は、先の記者会見紹介にそったものです。
今後、この取り組み過程のより具体的な報告を行うことになると思うので、今回は、簡単な報告で失礼します。
とりあえず