イース 滅びしものの幻影



大場惑 著、ファミ通ゲーム文庫






ストーリー紹介 イース4の後、セルセタを救った赤毛の冒険者アドルとその親友ドギは冒険中に嵐にあいはぐれてしまう。
その頃、ブルドーの病院で働いていた少女リリアはアドルが敵に殺される夢を見る。
そしてアドルを心配するあまり、リリアは旅に出る。
一方、アドルのまわりでは奇妙な事件が頻発していた。
弟と名乗るロドル=クリスティンの詐欺事件、そしてダルク=ファクトの影・・
果たしてアドルの身になにが起っているのか?
リリアはアドルを助ける事ができるのか・・・?
感想 一見、ただの甘いラブストーリーですが、
その裏には当時のイースシリーズへの鋭い批判が満ち満ちていると感じました。

まず、アドルの薄さ。
ロドル=クリスティンなる人物が象徴するのは、
そもそも作品ごとにまるで別人のごとくアドルの性格が違うことだろう。

次に、リリアがヒロインであることから、ヒロインを次から次へとすげ替えることへの批判。

それはリリアの母バノアとリリアの会話からも読み取れます。
アドルが冒険家として各地で美少女と仲好くなることは、
彼に好意を持った前に出会った美少女との繋がりがなくなり、独身を通す事になる。
そうすると、女性が家庭を持つか男性として生きるしか無い社会では、
彼女の家族を支える大黒柱を失う事になってしまう・・苦しい老後が予想されます。

そんな罪深い事をアドルにさせておいて、
ただ萌えゲーのごとく哀れで可愛くて健気で控えめなヒロインを愛でるだけのファン達や、
(要するにストーリーもヒロインの立場も権利もどうでもいい人たち)
売れればそれでいいと哀れなヒロインを大量生産するゲーム会社の姿を批判したのでしょう。
(現在も事情が変わったとは思えませんが・・)

また、ダルク=ファクト復活(?)の下りは、
イースというモチーフを保つ為にどうしても過去の遺物(ダルク=ファクト)を必要とするような、
当時の形骸化したイースへの批判なのでしょう。
(だからといって全てを新しい要素(エメラス)で片付けるのもどうかと思いますが..)

ただ、惜しむらくは、リリアの役割がやはり従来のヒロインの枠を出ていないということでしょうか。
もうちょっと強いリリアの姿が見たかったと思います。
(カーナの登場理由も薄い・・)

壁紙は、kが独自に描いたものです。
OVAイース2と小説「滅びしものの幻影」をイメージしました。
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