独断と偏見による感想2

ここでは、私なりのこの作品についての解釈をしていこうと思います。
(といっても、これが絶対に正しい!というものではないので、一つの解釈として見てください)

この作品では、勇者であるアドル、二人のヒロインフィーナとリリアの三人の心の葛藤も同時に描かれます。

リリアは初めから、魔物に脅かされる村の一員として、何とかしたいという思いを抱く少女として描かれます。
(ゲームと違い、村はかなりおどろおどろしい所になっています)

そこへアドルがきりもみ状態で地面に追突しリリアに助けられるのですが、
彼に出会うことで、リリア自身気付かないうちに、自分なりの戦いを始めます。

いろいろあって、リリアはアドルへの片思いをするようになり、
二巻以降のフィーナとの間で葛藤するようになります。

そうするうち、フィーナと曖昧な関係にあるアドルは、リリアの方ともあいまいな関係になっていきます。

この辺の変化は非常に分かりにくいのですが、アドルの表情を観察していると、
微妙に揺れ動く感情を見ることができます。

お話は進み、アドルは自らの力の矮小なことに気付かされ、
やがて無力感に苛まれるようになり、ますます魔法の力に依存していくようになります。

(この辺は第一話のファクトの台詞によって暗示されています)

はじめは勇者であり、英雄であったアドルが希望や夢を失い、
殺伐とした感情に心を満たされる所は、悲惨としか言いようがありません。

一方、リリアは様々な困難に打ち当りながら、自分なりの戦いを続けていきます。

フィーナはというと、人間としてアドルと幸せに暮らしたいという願いと、
女神としての使命を果たさねばという思いの間で板挟みになり、自分からは何もすることが出来ません。
彼女の姉妹のレアは、そんな彼女の気持ちを思いやりながらも、
女神としての使命を果たすため、アドルを助けようといろいろ画策します。

結局、女神達が運命を託した勇者は絶望し、破壊と殺戮を繰り返し、罠にはまることになります。

ここには、暴力に訴えるアドルでは、イースを救うことが出来ず、
非暴力のリリアでは魔物に殺されるだけだという、ジレンマがあるように思えます。

しかし、最後に、リリアの深い同情と涙がイースを救い、それを見たアドルの目がさめるところは、
ジレンマの中にも希望を感じさせてくれます。

(といっても、アドルの力も必要なんですけどね。(笑))

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