次の皇帝は宮廷魔術師のアリエス2世である。
正確にはアリエスの前にサイゴ族・ハールファグルが皇帝になって人力風おこしというアイテムを手に入れたものの、戦死したのでアリエスがその後を継いだのである。
ジェラールに仕えたアリエスとそっくりだがその辺は気にしてはいけない。
アリエスは皇帝に就任すると、打倒七英雄・領土拡大の旅に出ることにし、帝国軽装歩兵のグレタ、ホーリーオーダーのベネディクトとバルバラ、帝国猟兵のユリアナを護衛兵として選び出した。
ソーモンからマイルズの町へと船出し、ステップ地方を支配するノーマッドの村を訪ね、リーダーと話す。
彼の話では七英雄ボクオーンは麻薬で儲けてるらしい。
なんてやつだ、許せん!とばかり、アリエスとリーダーは彼の要塞へと攻め込んだ!
ところが、要塞が動き出してしまった!
どうにも手出しができないリーダーは、一人で帰ってしまった・・というか、消えてしまった。
ステップで生まれ育っただけあって身を隠すのも素早い。
・・などと感心していたら、陣形を乱された状態でモンスターと戦闘するはめになってしまった。
ステップの地上戦艦クリアはあとまわしにして、突然反乱を起こした武装商船団の本拠・モーベルムに向かうことにしたアリエス皇帝は、真っ先に港の無人倉庫に向かった。
ここは以前ビーバー皇帝がエンリケの話を盗み聞きしたところである。
皇帝一行が中に入ると、以前とは異なりすんなりと中に入らせてくれた。
現在のリーダー、エンリケ2世に事の次第をただすと、彼はギャロンという男に商船団を乗っ取られてしまったのだと言う。
ギャロンは金と力を利用して商船団員の心を引き寄せ、ついには反乱を起こしたという訳だ。
しかし、幸いなことに、エンリケ1世は以前ハリア半島から帝国が攻め寄せてきたことを後世に伝えなかったらしく、ギャロンもハリア半島から攻められることは考えていなかった。
というわけで再びハリア半島を進軍し、ギャロンの隙をついたアリエスは、ギャロンとの戦いに勝ち、追放に成功した。
ある日、アリエス皇帝は帝国に有能な人材をもっと集めるために、大学を作ろうと思い立った。
もちろん資金は200万クラウン以上あったので建設はすぐに実施されることになった。
戦闘を繰り返しているうち大学は完成したのだが、生徒がどうにも集まらない。
アリエス皇帝は自ら入学して宣伝塔になることにした。
宮廷魔術師に選抜されたくらいなので、入学試験はもちろん一発合格である。
アリエス皇帝は大学内のカフェに昼間っから酒を飲んでいる奇抜なファッションの男を発見した。
行動を注意すると男はシゲンと名乗り、
「緊張していると、いざと言う時に力が出ないでしょう」
と言って、グラスに葡萄酒らしい赤い液体をどぼどぼ注いで飲み干し、ぷはっと息を吹きかけた。
あまりにも酒臭い。しかし、シゲンはちっとも酔っていないようである。
そして、彼は緊張しているといざと言う時に力が出ないのと同じに、頭もそうなのだ、と付け足した。
思わず感心したアリエス皇帝は、シゲンと腰を据えて話すことにした。
「今は大臣たちの働きと、陛下の御力で国が動いています。七英雄が全て倒されて、皇帝陛下の力が必要なくなった時、その力はどこへ向かうのでしょう?そして、その力に頼ることになれきった人々はどうやって生きていくのでしょう。」
一息おいて、シゲンは続けた。
「人々が自分で自分のことをする国を作らねばならないのです。私の能力はそのために使いたい。」
緊張した雰囲気が流れる。一歩間違うと不穏分子として抹殺されかねない。
しかし暫くすると、アリエス皇帝は破顔一笑して、
「どうだ?その力、七英雄を倒すためにも使ってみないか?」
と彼を七英雄との戦いに誘った。
「かまいませんが、リラックスしすぎて役に立たないかもしれませんよ!」
やっと安堵したせいで大汗をかき、足は恐怖に小刻みに震えていたのだが、シゲンはそれを見せまいと軽口をたたいたのであった。
こうして帝国のために生涯を捧げることを決心したシゲンは、内政や戦略を得意とし、術法も使える特異な頭脳集団『軍師』を結成し、そのリーダーとなって新人の育成を推進した。