時はバレンヌ帝国が世界を統一してから数年後。
共和国になった首都、アバロンのとある酒場にて、まだ小国だったころからのアバロンの歴史を綴る詩人の歌から物語は始まる。
酒場は夕暮れ時の仕事帰りの労働者たちや、遊びにきた子供達等で酒場はにぎわいを増し、カウンターの片隅にはちびちびと酒を飲む金髪の美人の姿が見える。
彼女は相当の修羅場をくぐり抜けてきたらしく、顔のあちこちに傷をつくり、強い意志と知性を伺わせるきりっとした顔立ちをしている
が、なにか悲しい過去でもあったのか、その表情は決して明るいとは言えず、洋服もかなり使い込まれているために、浮浪者にも見えかねない格好をしていた。
その喧噪の中、一人の詩人がハープを奏でると、酒場中がひっそりと静まり返った。
精霊に祈りを捧げ、彼は長い長い戦いの詩を歌いはじめた。
それは西暦千年の、バレンヌ共和国がまだ帝国であったころから、今へと続く壮大な歴史の詩だ。
・・最初の全土平定を目指した皇帝はレオンだった。
昔は首都のある北バレンヌ地方のみならず、その南の地方まで支配したバレンヌ王国も、いまや帝都の周辺のみとなっていた。
つまり、世界の再北西の、ごくごく一部である。
そんな小国バレンヌを大帝国にのしあげるのが彼の悲願だった。
ヴィクトールとジェラールの2人の息子に恵まれたレオンの悲劇から、物語は始まる。