巨神ゴーグ について語ろう!
「巨神ゴーグ」とは?
「巨神(ジャイアント)ゴーグ」…それは、1984年に放映されたTV用全26話アニメーション作品で、私ポコポコにとっては今まで見たあまたのアニメーションの中で「No.1」の地位にある不朽の名作アニメであり、未だに最終回のビデオ(今はDVD)を見ると本気で泣いてしまう作品であります。謎の島「オウストラル」における15歳の少年「田神悠宇(たがみゆう)」の冒険活劇アニメという一見「地味」な作品になぜこれほど惚れ込んでいるのか?を、そしてこの作品の素晴らしさとは?をここに書こうと思います。
その1:丁寧な作画
かつてこのアニメの布教(笑)にと友人に全26話のビデオを貸したことがありました。そしてその友人が言ったただ一言がこのアニメの作画の丁寧さを表していると思いました。その言葉とは
「何処を切っても安彦良和さんだね」
と言うものでした。安彦良和さんとは「機動戦士ガンダム」等で有名なイラストレーターの方でして、この「ゴーグ」においてはキャラデザ、作画監督その他をしておられました。この方の絵をご存じの方ならお分かりになるかと思いますが、安彦氏の絵柄は個性的な絵柄でして多くの人が作画に関わるTVアニメーションと言う物においてはどうしても絵柄の統一というのがしにくい物でした。この絵柄がバラバラになったりすることことをよく「作画が荒れる」と言うのですが、この作品においては奇跡的とも言っても良いくらいその「作画荒れ」がありませんでした。未だにこれほど丁寧に作画されたアニメーションというのは他に見たことがありません。
その2:練り込まれたストーリー
キャラクター設定・各回のストーリー展開のうまさ・台詞回しの格好良さ等、どれも水準以上なのですが、私が特に高く評価するのは次の点です。それは
「何の前知識が無くても本編を見ているだけでキャラクター設定、世界観等がきちんと解る」
「全26話でストーリーが見事に完結している」
ということです。このアニメーションが本放映された当時は今のようにインターネットなどはなく(パソコン通信でさえやっている人は限られた人だけでした)せいぜいアニメーション関連の雑誌を見てこれから放映されるアニメや放映中のアニメの設定やストーリーの情報を仕入れるしかありませんでしたが、この頃から徐々にTVアニメーションがそのようなメディアに作品の前情報を流し、それを見ていないと本放映を見ても設定が解らない…という手抜きとも言える作品作りをするようになってきました。また、それと平行するようにTVアニメーションとして本来完結するはずの全26話を放映しきっているにもかかわらずストーリーが完結せず、「完結編はOVA(あるいは劇場版)を見て下さい」と言って終わってしまう作品が増えてきました。
やむ終えぬ事情で放映途中で打ち切りとなってしまった作品(当時の作品で例えれば「蒼き流星 SPTレイズナー」や「伝説巨人イデオン」)でならそれも納得出来るのですが、それ以外でそのような結末(続きはOVA等で…)を迎えるというのは「脚本が不出来」としか言いようがありません。
しかし、この「ゴーグ」においてはそのようなことが皆無でした。キャラクターや世界観の設定は何の前知識が無くとも本編を見ているだけで十分に解りましたし、各所に張られた複線は最終回近くに全て解明され、ストーリーは最終回において見事に完結しました。これは時間をかけて初回放映からストーリー(脚本)を練り込んで作らなければ出来ないことです。
※ 実はつい最近知ったのですが、この作品は諸事情により予定されていた放映時期より半年遅れで放映されることになったそうです。そのため制作時間に余裕があり(なんでも第一回放映時には既に最終回の作成に入っていたとのことです)結果的に「丁寧な作画を描くこと」ができ「ストーリー(脚本)を練り込んで書くこと」が出来たらしいです。
上記二点が私がこのアニメを高く評価している主な理由ですが、他にもこのアニメについては個人的に気に入っている所があるのでそれを書きたいと思います。
・挿入歌「TWILIGHT」の美しさ
この曲は最終回間際になって一回だけ流れる英語のデュエットソングなのですが、とにかくこの曲が、そしてこの曲が流れるシーンが美しいのです!もうすぐ核弾頭が落ちてくると言う状況下で本来なら殺伐としているはずなのですが、それに反してのんびりとセイリングをしているロッドとレイディ、その二人にゆっくりと手を振るベーム大尉、部屋の窓を開け海を眺めながらバーボンを飲む船長…そんなシーンのバックにこの歌が流れます。私はこのシーンがこのアニメの中で一番好きです。
ちなみにこの歌の作詞は自身もシンガーである当山ひとみさんです。
・ロッドとレイディの過去
主人公「田神悠宇」の敵役として出てくるこの二人ですが、ほんの数カット、時間にして1分もないシーンでこの二人が過去どのような関係にあったのかを解らせてくれる場面が出てきます。この二人の過去のシーンがたまらなく切なくて良いのです。そして、このシーンの後に出てくる今の二人の状況がその過去のシーンをより際だたせています。たった数カットでこれだけ表現出来るのか!と、感動したものです。私がこの作品で2番目に好きなシーンです。
もし皆様が何処かで「巨神ゴーグ」を見る機会に恵まれましたら是非ご覧下さい。「全26話TV用オリジナルアニメーション」の神髄がここにありますので。
※ おまけ:今のTVアニメーションについて思うこと
私にとってこの「巨神ゴーグ」は今までの人生の中で「No.1」のアニメーションであると書きましたが、実は90年代後半に「もしかしたらゴーグと並ぶ、いや、もしかしたらゴーグを越えるかもしれないアニメ作品になるのかも?」と思いながら見ていたTVアニメーションがありました。
そもそもこの頃のTVアニメの傾向を見ていて「なんかヒットした原作付きのアニメばかりだなぁ。ゴーグのようなTV放送用のオリジナル空想科学アニメが見たいなぁ。」と、思っていた矢先「TV用アニメとして本格的なSFアニメが始まるらしい」という話を聞き、視聴しだしたのがこの某アニメで、14歳の少年が主人公で巨大ロボット(汎用人型決戦兵器)が出てくる所や、そのロボットが謎だらけで始まるストーリー展開などゴーグに似ている所があり、また、作画も見始めた頃は丁寧であったので「このまま全26話で見事完結してくれたら…」と、毎週ワクワクしながら見ておりました。ところが、その作品は終盤間際になってもストーリーに収拾がつかず、最終二話ではストーリーが破綻するどころか作画すらまっとうな物では無くなってしまいました。で、結局そのアニメはどうなったかというと前にも書きましたがおきまりの「最終回は劇場版」公開となり、その劇場版ですらもはやまともなアニメーションとは言えないシロモノでした。
別にこの作品についてどうのこうの言うつもりはないのですが、この作品の劇場版が大ヒットしたと後に聞いたときに「ああ、もうTVアニメーションと言うジャンルは駄目になってしまったのかも…」とがっかりしたのを覚えております。今までもTVアニメがこれから最終回までにストーリーが完結せずにみな「OVAあるいは映画館で」になってしまわないか…と危惧していたのですが、これのヒットによりますますこの方向にTVアニメは向かって行くのだろうと思えたからです。そして、実際今のTVアニメーションは「メディアミックス」と言う名の下、この方向に向かっています。これではもはや「TV用アニメーション」ではありません。全26話TV用オリジナルアニメーションを作りたいという人(制作サイド及びスポンサー)はこの「巨神ゴーグ」をみて少し勉強してもらいたいです。いわゆる「キャラ萌え」に頼らない、本当にストーリーで人を魅了するTVアニメというのがここにあるのですから…