瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

三菱電機、子会社でも過労自殺 時間外月100時間超も


  大手電機メーカー、三菱電機の子会社の男性社員が2017年末に過労自殺
し、今年10月に労災認定されたことがわかった。三菱電機では14〜17年に
男性社員5人が長時間労働が原因で相次いで労災認定され、うち2人が過労
自殺だったことが昨年9月の朝日新聞の報道で明らかになっている。16年度
から「働き方改革」を掲げて長時間労働を抑制する方針を打ち出し、子会社へ
の指導も進めていたが、過労自殺の再発を防げなかった。

  複数の関係者によると、過労自殺したのは、半導体製品をつくる三菱電機の
パワーデバイス製作所(福岡市)内に本社を置く子会社、メルコセミコンダクタエ
ンジニアリングの40代(当時)の技術者。

  別の子会社メルコパワーデバイスに出向後、豊岡工場(兵庫県豊岡市)で勤
務していた15年4月〜16年11月の間に長時間労働による精神障害を発症し
た。時間外労働が100時間を超えた月もあった。豊岡工場からメルコパワーデ
バイスの福岡市の職場に移った後の17年12月に自殺し、遺族側は長時間労
働が原因だとして昨年7月に労災を申請。但馬労働基準監督署(豊岡市)が今
年10月4日付で認定した。

  メルコパワーは「労務管理は適切だったと考えているが、労災認定は重く受
け止めている」(業務部)。三菱電機は「関係会社の働き方改革に対する指導
や支援は適切に実施してきた。亡くなる方が出たことは重く受け止めており、関
係会社を含めて適正な労務管理の徹底に引き続き取り組んでいく」(広報)とし
ている。

  三菱電機は電子機器などの消費電力を制御して省エネにつなげる「パワー
半導体」事業を成長分野とみて強化しており、メルコパワーデバイスが生産の
一部を担う。同社によると、男性は豊岡工場で副課長の職にあった。労働時間
の規制が緩い「管理監督者」の扱いで、三菱電機と業務上のやりとりもあった。
労働時間は自己申告を元に管理し、出向元のメルコセミコンダクタエンジニアリ
ングにも伝えていたという。自殺した当時は、実際に働いた時間でなく、あらか
じめ決められた時間を働いたものとみなす裁量労働制を適用されていた。

  三菱電機では12〜16年にシステム開発の技術者や研究職の男性社員5
人が長時間労働が原因で精神障害や脳疾患を発症したり自殺したりして、14
年12月〜17年8月に相次いで労災認定された。うち3人に裁量労働制が適用
されていた。認定当時の柵山正樹社長(現会長)の肝いりで16年度から「働き
方改革」に乗り出し、社員の3分の1にあたる約1万人を対象に適用していた裁
量労働制を18年3月に全廃。子会社でも同様の改革が進むよう支援し、メルコ
パワーデバイスも18年から裁量労働制を廃止した。

  同社の取締役・監査役8人中5人は三菱電機の社員で、社長はパワーデバ
イス製作所の所長が兼ねる。グループを含めた労務管理や企業体質に問題が
なかったかが改めて問われる。(北川慧一、内藤尚志)


※()内は認定した労働基準監督署

【三菱電機本体】

2012年8月 自殺→14年12月認定(名古屋北)

2013年6月 脳こうそく→15年3月認定(伊丹)

2014年4月 精神障害を発症→16年11月認定(藤沢)

2016年2月 自殺→17年6月認定(尼崎)

2016年4月 くも膜下出血→17年8月認定(中央)

【子会社】

2017年12月 自殺→19年10月認定(但馬)

(朝日新聞 2019年11月22日)


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