瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)

裁量労働制を違法適用、社員が過労死 野村不動産


  裁量労働制を全社的に違法に適用し、昨年末に厚生労働省東京労働局か
ら特別指導を受けた不動産大手、野村不動産(東京)の50代の男性社員が過
労自殺し、労災を認定されていたことがわかった。男性は裁量労働制を違法適
用された社員の一人だった。東京労働局は遺族からの労災申請をきっかけに
同社の労働実態の調査を始め、異例の特別指導をしていた。

  労災認定は昨年12月26日付。同労働局は、同じ日に特別指導を公表して
いた。

  安倍晋三首相や加藤勝信厚労相は今国会の答弁で、同社への特別指導を
裁量労働制の違法適用を取り締まった具体例として取り上げたが、特別指導
は過労自殺の労災申請が端緒だった。

  安倍政権は、裁量労働制の対象拡大を働き方改革関連法案から削除し、来
年以降に提出を先送りすることを決めたが、今の制度でも過労死を招く乱用を
防げていない実態が露呈した。改めて対象拡大への反発が強まりそうだ。

  関係者によると、男性は転勤者の留守宅を一定期間賃貸するリロケーション
の業務を担当する社員だった。東京本社に勤務し、入居者の募集や契約・解
約、個人客や仲介業者への対応などにあたり、契約トラブルへの対応で顧客や
仲介業者からの呼び出しに追われていた。2015年秋ごろから長時間労働が
続き、頻繁に休日出勤もしていた。体調を崩して16年春に休職。復職したが、
同9月に自殺した。その後、17年春に遺族が労災申請した。

(2018年3月4日)


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