瀧本労働衛生コンサルタント事務所(大阪)
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運転開始40年を超えた関西電力高浜原発1、2号機(福井県高浜町)の運
転延長を巡り、原子力規制委員会による審査に対応していた関電課長の40代 男性が昨年4月に自殺した問題で、福井労働局敦賀労働基準監督署が関電 の岩根茂樹社長を出頭させ、管理職を含む全社員の労働時間管理の徹底を求 める指導票を交付していたことが分かった。
関係者によると、今月6日に福井労働局への出頭要請があり、同日中に岩
根社長が同局に出向き、指導票を直接受け取った。指導票では、全社員の労 働時間の適正な把握や長時間労働者に対する産業医による面談の確実な実 施などを求めているという。過労死問題に詳しい森岡孝二・関西大名誉教授は 「業界全体に指導するのではなく、特定の企業のトップを呼び出して指示するの は非常に珍しい」としている。
自殺した課長は管理職に適用される「管理監督者」に該当するとされ、労働
基準法による労働時間の規制から外れていた。管理監督者についても会社側 は健康状態を管理し、過重労働とならないよう努めなければならないが、労務 管理はおろそかになりがちだとの指摘がある。
高浜1、2号機は昨年7月7日までに原子力規制委の審査手続きを終えなけ
れば廃炉になる可能性が高かった。課長は工事計画認可申請を担当し、規制 委への説明や対応にあたっていた。昨年4月に出張先だった東京都内のホテ ルで自殺しているのが見つかり、その後、敦賀労基署が労災を認定している。
関電広報室は、課長の自殺については「プライバシーの問題もあるので回答
を控えている」とし、労基署の指導については「真摯(しんし)に受け止め、引き 続き適正な労働時間の管理に努める」としている。
(朝日新聞 2017年1月16日)
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